リバイスFORWARD 〜仮面ライダーリバイと叛逆のデモンズ〜 作:大島海峡
トラップデモンズのくり出した直拳を、リバイの両の掌が受け止める。
だが構うことなく彼の片腕はそのまま押しまくり、後へ後へと退がらせていく。
そして驚異的な握力でリバイのアーマーを握り込むと、腕力で逆に引き寄せ、逆の手で殴り抜ける。
〈ネオウルフ・ゲノミクス〉
間合いが遠のけばそれ相応の、苛み方がある。
地を滑り転がる一輝に、ショットライザーによる追い討ちがかかる。起き上がりざま、光の弾雨の中、伸びた恐竜の尾がその銃身を絡め取った。
それを彼の手より引き剥がしつつ、かつ己を牽引して間を詰める。両脚をデモンズの胸部装甲に叩きつける。
数歩分退いた畷に、リバイスラッシャーを己の手に転送して叩き込む。
〈クラゲ・ゲノミクス〉
だがその刃が彼の身に達する瞬間、転送された青き刃がそれを防いだ。
返す刀で押し戻すと、その手元でマズルが閃き、雷光を帯びた銃弾を至近で浴びる。つんのめる一輝の首根を畷の腕が締め上げる。そして頭部にゼロ距離で連射する。
だが一輝も、もう一方の手にガンデフォン50が握られている。その引き金を絞り、まったく同じ距離で撃ち返す。
たがいの弾圧に怯み合い、自然その間は開いた。
遮蔽物らしきもののない、互いに身を晒しての銃撃戦が始まった。
その中でも許される限りの回避、防御行動の応酬と共に、並行で連射を続ける。
だが点的なものから、面的なものへと畷はその攻め口を切り替えた。
すなわち、手にした武器――ブレイドガンナーを翻し、斬撃を飛ばす。
〈レックス! スタンピングフィニッシュ!〉
その上へと跳ね上がり、後ろで起こった爆風を背に、飛び蹴り。
エンブレムを宿した爪先が、トラップデモンズの顔面を捉える。
確かな直撃の感触。にも関わらず、一歩とても退かない。防がない。
顔面でそれを受け切った畷は、その足首を掴むとリバイを振り回して壁へと叩きつけた。
武器を取り落としながらダウンした一輝を、畷は手ずから引き立たせる。そのうえで、強烈なヘッドバッド。刃ではなく、そのグリップで殴りつける。鳩尾や顔面に何倍もの威力と数でやり返す。
痛々しい金属質の音が鳴り響き、その衝撃で背後の隔壁が割れる。
その裂け目に空けた手を突っ込んだ畷は、その裏より鉄骨を引きずり出して、勢いそのままに一輝の側頭部へと叩きつけた。一瞬意識を飛ばした彼の胴部ににさらにそれを蹴りつける。
だがつんのめる一輝の手には、ジョージ狩崎より託された、『切札』がすでに握られていた。
〈コンドル! バディアップ!〉
振り返り様に起動、直後に飛び上がり、空中でベルトへ換装する。
〈翼広げる! 踊る! 彩る! コンドル! バードワイルドに決めるぜ!〉
宙を舞い、音も無く着地した時、リバイスはその色味はそのままに造詣を変化させていた。
かつて使っていたイーグルゲノムから腰のマントを取り払い、よりシンプルに、かつ紫を強くした感じの姿。
かつて未来の仮面ライダー、センチュリーら相対した時には、即時リミックスしていたので、正当にフォームチェンジしたのは、これが初である。
その姿でもって畷のとあらためて対峙し、そして駆け出した。風を呼び、飛翔した。
〈ニワトリ・ゲノミクス〉
畷も新たにバイスタンプを捺す。変形した踵に蒼炎を宿して旋回させる畷の上を、跳び抜ける。背後に回った一輝は、すぐさま手刀を主体とした連撃を見舞う。
たとえ相棒がいなくても、その存在を感じ戦い続ける。そう強く念じ続ける限り、どこまでもその力が高まっていく気さえする。
〈マンドリル・ゲノミクス〉
〈フンコロガシ・ゲノミクス〉
優勢に乗じてくり出した貫手はしかし、ブレイドガンナーと入れ替わるかたちで畷の手の甲に精製されたメテオギャラクシーが防ぐ。
〈OK! Jupiter!〉
その拳が惑星状に膨れ上がる。それに気を取られている間に、逆の手にアームがリバイの喉首を捉える。
星雲渦巻く巨拳が、呻くが如き勇声と共に何度となく一輝に叩き込まれる。
〈バディアップ! 突撃野郎! 衝撃備えろ! バッファロー! 明日のガッツがあればいいネェ~!〉
鷹とも猛牛とも取れる、原住民的な意匠のマスクとなったリバイの手首に、円形の盾が形作られる。
アギレラの用いる戦輪をそのまま小型化したかのようなそれをねじ込む形で拘束を外す。
浮いていた足裏が地に落ち着き、体勢を整えると同時に反撃、猛攻。
だが相手は怖じも怯みもせず、正面からの殴り合いを展開する。互いに急所へのヒットを盾と
そして四肢に限界が来て、退くのはほぼ同時だった。
〈Saturn!〉
互いに向けて突き出した装備から発せられた輪形、円形のエネルギーが互いに打ち合わさり、相殺される。
〈バディアップ! 奥から触覚! 遅れず出発! オクトパス! ひとっ絡み付き合えよ!〉
レーシングメットのようとタコが絡み合ったマスクへと、リバイは換わる。
たすき掛けになったタイヤ風の装飾から触手が飛び出し、トラップデモンズの両腕を封じんとする。
〈キリン・ゲノミクス〉
だが、畷もまたメテオギャラクシーを、油滴のついたクレーンへと換装するや、そのフックを振り飛ばす。
ワイヤーと触手が絡み合い、互いを引き合う。だが、その張り合いの間際、一輝は自ら駆け出し、急接近。肉薄して両脚でデモンズの胸部を打ち据えた。車輪が鉄を噛むが如くエネルギーがその接点で巻き起こり、火花を散らす。
〈ホワイトレオ・ゲノミクス〉
用を為さなくなったクレーンが消える。両腕に生えた長く鋭い、金と黒とで彩られた鉄爪が、そこに流れる電流でもって絡まる触手を焼き切った。
〈Dominate up! ケツァルコアトルス・ゲノミクス〉
さらにそこに重ねがけ。またあの神速でもって、リバイを容赦なく攻め立てる。
〈飛躍を誓った! 希望となった! ネオバッタ!〉
であれば、こちらも同じ手を使うよりほかない。たとえ技術と時代を前借してでも。
スマートなバッタの外甲を身にまとった一輝の眼が、その動きを捉えられるようになった。
正面から迫り来た畷の突撃を跳ね上げ、爪先で喉元を穿つ。
そのうえで、自らも紫電の尾を引き、ジャンプした。
二筋の迅雷が、広く取られた倉庫中を、なお狭しとばかりに駆け巡る。
そして中空、互いを叩き墜とすようにもつれ合い、二人分の重量で地を砕く。
形としては、一輝が畷の上で制したかたちになっているが、畷は動じることなく、デモンズドライバーの左右を強く押し込んでいる。それに素早く反応し、一輝もまたバックルを手早く左右させる。
〈ネオバッタ! スタンピングフィニッシュ!〉
〈More! ホワイトレオ・ケツァルコアトルス! デモンズレクイエム!〉
組み敷き、敷かれたままに、必殺技を繰り出す。烈しい光と熱が、空間を満たす。
……単純なスペック差か。あるいは感情の重さゆえか。
畷の爪先から発せられた雷の円錐が、下から一輝を突き上げ、諸共に屋根にまで達し、跳ね返って壁を突き破る。
飽和した電流が塊となってリバイの一身を襲い、かつそれを墜落せしめた。
落ち着きかけていた雨が、より一層激しさを増していた。
〈オウム・ゲノミクス〉
よろめきながらなお起き上がって戦意を示さんとする一輝。その至近に、畷は降り立った。
手にした盾を、よろめく一輝に投げつけ転倒せしめる。残った棒を音を立てて引きずりながらゆっくり近づき、足で盾を一輝の胸板の上に置いた。
そして、上からそれごと強く踏み躙った。
「ぐはっ……!?」
望まずして押し出される呼気。肺より酸素が奪い取られる。
身動きを取れず、抵抗の出来ない一輝に向けて、残る棒を振り上げた。
顔と言わず、腹や腕を問わず。
しなる凶器が、一輝を打擲する。
余人であれば耳を覆いたくなるほどに痛ましい音の連続が、雨音を縫う。
ついに一瞬意識を手放した彼の身から、リバイの仮面が、外殻が外れる。
力なく倒れ臥す青年の心臓に、その棒先が向けられる。
そして落ちてくる。
だがその先端は心臓を穿ち砕くことはせず、脇の下のアスファルトを貫いた。
「――立てよ」
低い声で、畷は言った。
「この程度で、俺の怒りが晴れるわけないだろ」
ギリギリとさらに盾で圧迫しながら、続けた。
一輝にそれに言葉で応じる力は、残されていない。
ただ彼の足首を掴み、憐れむような眼差しで見上げる。その心は、まだ折れてはいなかった。
畷は、深く溜めた息を巻いた。
そして、彼から足と盾を外すと、バイスタンプを落とした。
白いボディに赤のレリーフが、そして緑のストレージが輝く。直前までまで彼が使っていたオウムのものだ。
「使え」
と促した。
「まだやる気があるなら、その肉体もろとも完膚なきまでにブッ壊してやる」
温情や慢心などではない。明確に、正面から、徹底的に相手を滅ぼすという殺意。
この厚顔無恥で無遠慮な男のすべてを打ち砕かなければ収まりがつかないという、堰を切った怒情がそこにはある。
それを汲み取った一輝は、飛び退き、痛みに耐えつつ立ち上がる。
「あぁ――こうなったら、とことん付き合ってやる! だから思いっきりぶつけて来いッ」
〈オウム!〉
与えられたスタンプを手に、リバイスドライバーを起動させ、装填する。
〈Come on! オウオウオウオウム!〉
「変身……っ!」
〈バディアップ!〉
落ちてくるスタンプ型のエネルギー体に身を委ね、またそれは彼の不屈の意思を反映し、戦闘の装束となる。
〈空舞い帰る、声真似返す! オウム! ヒナ鳥に……手を出すな……!〉
鳴禽は高らかに謳い、リバイの頭頂に爪の装飾がそれより下の顔の輪郭を覆う。その様は、鬼の角のようにも見えた。
長い尾羽は、蓑の如く腰に巻かれ、マッシブな上体の局所には、戦国の気風を伴う具足が取り付けられていた。
仮面ライダーリバイ オウムゲノム――。
互換性に富んだドライバーが、遥か遠き時代より遺伝された記憶を呼び覚ましてデザインした、新たな形態であった。