リバイスFORWARD 〜仮面ライダーリバイと叛逆のデモンズ〜   作:大島海峡

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12.それぞれの決意の先に

 ……元より、だが。

 開発者自ら謹製のチューンナップをしているジュウガと、数あれどデモンズトルーパーでは、スペック差が段違いに違う。

 

 それでも、それこそ蜘蛛の子の如く、数を恃んで押し寄せる旧式トルーパーたちを、ジュウガは純粋な腕力と出力でもって押し返した。

 

「君たちの待遇はそれなりに良かったはずだが……あらためて、それに対しての要望、改善点を伺おうか」

 組み合いながらも余裕のある口調で問いかける狩崎に、そのうちの一兵が答えた。

「何度も言ってんだろ……! もうお前の趣味と気紛れにはついていけねぇんだよ……ッ」

 と。

 

「なるほど、凡人らしい物言いだね。だが、凡庸なればこそ皆の意見というわけか」

 そっけなくそう言い放ち、その彼を投げ飛ばす。

「だが、否応なしに人とは変わっていくものだ。その都度、技術や力、なにより価値観は更新(アップデート)されていかなければならない……過去を受け入れつつ、先に進まなくては」

 

 その彼の手中には、時代が、そして己が先へと進んだ証が握られている。

 すなわち、赤いボディに金を施した、最新式バイスタンプ。それを、ドライバーへと押印する。

 

〈カジキ! アブゾーブ・セイバー!〉

 天より飛来せし銀光りする両刃を、ジュウガは掴み取る。と同時にその刃を翻せば、その剣閃は炎を纏い、火の粉の尾を引いて並居る敵に熱閃を浴びせた。

 

「だが――この火炎剣烈火(とも)に誓う。これより先、私はこの悪魔の技術を悪しき方向へは、皆を惑わす方向へは使わないと」

〈カジキ・カエンアタック!〉

 

 振り返り様、大振りの一閃。猛火とともにデモンズたちを薙ぎ倒し、その過半を先頭不能に追い込む。

 そして開けた空間を、デモンズトルーパー・オウムゲノムと、彼女と競り合うジャンヌ、アギレラが通過していく。

 

「……デッドマンズ! アンタらがのうのうと生きていることが許せないッ! その罪を死んで償え!」

 雛守の怨嗟の比重は、花に傾けられている。攻撃にもそれが反映され、棒と、そしてそれと対となっている円盾で苛烈に彼女を苛烈に攻め立てる。

 

 それを真正面から受け捌く。その細身に、上から盾の重圧がのしかかった。

「――死んで許される程度の罪ならね……とうに首、くくってるっつーの!!」

 自らの耐久の限度まで攻勢を凌いだアギレラは、その身を捻り、盾を受け流す。

〈必殺承認! クイーンビー・スタンピングデストロイ!〉

 地を削って勢いを殺す雛守の頭上で、蜂の翅を展開したアギレラが飛翔する。

 

 オレンジ色の光帯の尾を引き、高速で蛇行しつつ、急降下。盾の雛守の足の合間に潜り込むや、逆手で持った両短刀を足の甲へと叩きつける。

 

「行くよ、ラブちゃん!」

『奥歯ァガタガタ言わしたるでェ~!』

 

 その覚悟と意図を汲み取って、さくらと、彼女と一体化したラブコフもまた低く跳ぶ。

 

〈必殺承認! キングコブラ・スタンピングストライク!〉

 さながらギリシャ神話のゴーゴンの如く。

 ジャンヌの後頭部より這い出た鞭がしなりながら相手の武器防具を剥ぎ取り、かつ両腕を縛る。

 

 蛇のしなやかさと毒気を帯びた回し蹴りが、雛守の側頭部を捉えた。さながらコブラの剣である。

 足を封じられて身動きがとれなくなった彼女は防ぎも躱しも出来ず、直撃を喰らう。

 勢いそのままに転がる雛守から、蜘蛛の装甲が剥がれ落ちた。

 

「しゃあっ」

 着地と同時に低く腰を落として捻りながら、女仮面ライダーは残心と気概を示した。

 

「――確かに、今のおれ達は、欺瞞に満ちた見せかけの幸せの中にいるのかもしれない……! 哀しみや痛みを我慢して、生きていかなくちゃいけないのかもしれない!」

 拝郷の二丁の銃器から連射される、無数の光弾を浴びながら、玉置はそれでも退かない。呻きつつも、前進を止めることはない。

「それでもッ、その中でおれ達なりに生きて罪を償うって、そう決めたんだァ!」

 そのまま一気に距離を詰め、食いつく。組み打ち、武器を落とさせて押しまくる。

 その押した先には、身を低くして構えた光の姿があった。

 

〈クワガタ! デモンズフィニッシュ!〉

〈ギラファ! デモンズフィニッシュ〉

 

 甲虫のパワーの後押しを受けて、オレンジ色に発光しながら機関車の如く。

 ゲットオーバーデモンズは周囲からの斉射に耐え、跳ね除けつつ拝郷を光の方へと押し遣った。

 

 そして前後双極より、オーバーデモンズがトラップデモンズを挟撃する。

 それぞれの両脚に、エネルギーにより具現化した鋏が、間を詰め、拝郷を中心に巻き込んで噛み合う形で閉じる。

 

 爆炎より、トラップデモンズのスーツはそのユーザーの身柄を強制離脱させ、転がり出させた。

 そして互いの立ち位置を入れ替える形で、背中合わせに二体の装甲戦士は着地した。

 

「これで、少しは信頼してもらえるかな?」

「――やっぱお前、根に持ってるだろ」

 

 〜〜〜

 

〈キリン!〉

 トルーパーの下肢に展開された巨大な四脚が、コンクリートを踏み荒らし、大地を揺さぶる。

 

 その脚の下に潜り込み、デストリームとキマイラは背に回る。

 だが前後にぐるりと反転したデモンズトルーパーの、大振りな裏拳によって弾かれた。

 

 希望は上へと打ち上げられ、

〈NEXT! Dominate up! キングクラブ!〉

 元太は咄嗟にスタンプを押印、起動させてそれを防ぐ。

 すなわち、青地に金の施された、分厚く巨大な鋏にその右手を覆わせて。

 次いで部隊に浴びせかけられた弾の雨を、それを自らの前へと傾けて盾として除ける。

 

「おぉぉぉぉ!」

 金属音を断続的に鳴り響かせながら、雄叫びの尾を引かせ、吶喊、肉薄。

 攻防一体となって敵の群れを片端から薙ぎ倒していき、なお遠巻きに銃を構えるトルーパー部隊に向けて、地面に鋏の刃先を突き立てる。

 その接点から電流が迸り、アスファルトの上を駆け、蜘蛛兵たちを貫いていく。

 

 一方で、吹き飛ばされた希望は、非常階段の比較的高い階層、そこの手すりに片手で掴まっている。

 だが、そこには数人ばかりのトルーパー、おそらくは高所からの狙撃がために回り込んでいた小部隊が待ち受けていた。率いているのはかのニワトリ男である。

 

「だーん! どーん! ほらっ、墜ちやがれ!」

 擬音と酷薄を混在させた物言いとともに、蒼炎伴う脚部を振りかざし、希望を蹴落とそうとした。

 その圧倒的不利な状況の中、呻きながら彼は、ツインキメラのバイスタンプを左右させた。

 

〈キングクラブエッジ!〉

 瞬間、その右手が鋏のオーラを帯びた。

 鋼の質感さえ伴ったそれが、一閃。階段を外壁との接合部もろともに切り裂いた。

 

 支えていた部位の大半を失い、階段が大きく傾き、トルーパーたちが悲鳴と共に滑落していく。

 そして自らの意思と両脚で着地したキマイラに、早口でスラングめいたものを口走りながら、巨大なアームを展開させたトルーパーが飛びかかってきた。

 その腕の下をくぐり抜けるようにしながら、その過程でさらに二度、ベルトの操作を付け加える。

 

〈クロコダイルエッジ!〉

 そして倒立のごとく腕を地につけ、身体の向きを逆転させたキマイラは、上へと向けた両脚でそのアームを挟み込んだ。どれほどの怪力でも振りほどくことの能わぬ、鋼の『咬筋力』によって。

 それはいわばデスロール。トルーパー自身の肉体を巻き込むように捻り込み、地面へと叩きつける。

 

〈Dominate up! クロコダイル!〉

 一方でその右手にドリル、クロコウィザーローリングを宿した元太は、ニワトリ男と対峙する。

 起き上がりざま、炎孕む回し蹴りを繰り出した彼の猛攻を、回転があらぬ方向へと受け流し、螺旋渦巻く刺突でもって反撃を決める。

 

「クソッ……だったら!」

「見せてやる!」

「Our remix!」

 

 口々に発せられるなお折れぬ発言の数々。それとともに、三人衆は四つ足の個体(キリン)を中心に寄り集まる。

 すなわち、広げた両腕に、ニワトリは手で、フンコロガシのトルーパーは足でしがみつき、自ら麒麟の腕部を保護する武器と化す。

 もっとも、正式なリミックスではなく、ただキリントルーパーの腕に二人が抱きついているだけだとも言えるが。

 そして一喝とともにその腕を乱雑に、かつ全方位に振り回す。青い焔を纏わせたクレーンアームがデストリームらの攻めを、その身柄ごとに吹き飛ばす。

 ともすれば味方を巻き込むことさえ厭わない旋回は、数の利を跳ね除けて元太たちの側へ好転しかけた形勢を、再び彼らの流れへと引き戻す。

 

「くっ……デタラメなナリして、隙がない!」

「こうなったら、こっちもリミックスだ!」

「はい! …………え?」

 合流の後、思いがけないことを言い出した元太に、希望は聞き返す。

 呆気に取られた彼の前へと回り込み、

「いや、なんか狩さんの話だと出来るらしいんだよね、君のドライバー。確かこう……」

「ちょっ、いきなり……あぁっ!?」

 元太はおもむろにツインキメラのスタンプを握ると、何度も倒しては起こす。

 

〈マッドリミックス!〉

 二人のライダーは、軽く驚きの悲鳴をあげながら磁力の如く互いを引き合う。

 それぞれのパーソナルカラーと四肢とが組み合わさり、部位となりながら一つの巨大な生物と成る。

 すなわち、左右非対称の造型。でありながら二つの鰐の頭部、四本の鋏を持つ、それこそ合成獣(キメラ)のモンスターに。

 

 それはさながら、特撮の大怪獣バトルのごとく。

 人を超えた身の丈、人の形ならざる獣たちが、派手な破砕音と共に身体をぶつけ合い、殴り合う。

 

 そしてその応酬の果て、軍配が上がったのは、本物のリミックス、元太・希望のチームだった。

 

〈必殺カオス! ツインキメラチャージ!〉

 さらに出力を上げた彼らは、即席とは思えない一体感で、四鋏で敵の下賜を絞り上げる。そうして引きずりバランスを崩し、赤熱する二頭の鰐がその上体に叩き込まれる。

 

 彼らの姿は、それぞれに戻る。

 だが最早、形勢は明らかだった。転がる三人衆に、それを挟み込むライダー二人。しかも、起き上がる前にすでに必殺の構えは完了している。

 

 本能的に、かつ反射的に。

 身を寄せ合い、一か所に固まるのが仇になる。

 

〈ツインキメラエッジ!〉

〈More! キングクラブ! クロコダイル! ヘラクレス! デストリームノヴァ!〉

 

 飛び上がった彼らの背に、黒とオレンジの咢が開く。

 そこから発せられた光と魔炎に押される形で、両足に宿る二対の鋏が三人衆の途を閉ざす。

 そのまま一気に締め上げて、飽和状態に至ったエネルギーは天へと昇り、豪壮な火柱を立てた。

 

 それに吹き飛ばされるかたちで、断末魔と共に三人の男たちがボロ同然の姿で弾き出された。

 

「これからもうやるつもりもないですけど、ライダーやるのも、大変ですね……」

 肩で息をしながらの希望のぼやきを拾い、

「でしょ?」

 最初の仮面ライダーは、苦笑と共に頷いた。

 

 ~~~

 

 敵も必死だった。

 銃座からの弾幕は厚く、ライブの空路を阻む。

 

「くっ……」

 容易に目的の荷物に近づけさせないまま、敵はさらにアクセルを踏み込み、再び距離を開けてくる。

 いわんや、デモンズは――。

 その威武は容易に敵の近接部隊を寄せ付けないが、であればこそ、追手護衛入り乱れる戦場の、もっとも最後尾に在る。

 

 ――これ以上、引き離されると不味い。

 そう判断した大二は、一度翼を大きく撓ませてから、

「一気に行くぞ、カゲロウ! ついて来れるか?」

 と、もうひとりの己にその覚悟を問う。

『ハッ、誰にモノ言ってやがる。』

 その強気の物言いを受けて、彼らは直線的に一気に加速し、被弾も構わずそれによってバランスが崩れることも厭わず、トレーラーの荷台に突っ込んだ。

 

〈ブレード!〉

 一見してそれと分かる、ダークグリーンのタンク。中にいてそれを守る数人の護衛を刃で切り伏せ叩き落とす。最後に残った一人は、

「良いのか? ここで壊せば――お前の相棒はここで消える」

 張り詰めた声で、だが愚直に問う。

 

 それに応えたのは、内なるカゲロウだった。

「悪ィが、二度と消えてやるつもりはねぇ」

 と大二の口を借りて宣うや、ドライバーに装填されたスタンプの羽を、上向きに畳む。

 

〈エビル/ライブ・チャージ!〉

 そしてそのコンテナの上辺を切り裂き、トリガーを引くと同時に、

〈Fly High! エビリティ・パーフェクトフィナーレ!〉

 返す刃でそのコンテナを穿った穴へ、外へと射出した。

「あとはお願いしますッ、ヒロミさん!」

 と、そう言い置いて。

 

 ――そう、相手がブラフを使うのなら、こちらもブラフ。

 本命の破壊役は誰あろう、もっとも出遅れている、この男。

 

〈ADD! イーグル・ゲノミクス〉

 デモンズがドライバーのディスプレイをバイスタンプで、そしてドライバーの両脇を押し込むと、マントの下から緑碧と黒紫の、左右一対の翼が展開された。

 そして不意を突かれた一切合財を追い抜いて、天高く飛翔する。

 

 ――門田ヒロミの体内には、すでに悪魔は存在しない。

 よって、ガスの影響を受けることは無い。よって、もっとも始末に適任だった。

 

 以前は、どうあったかは知らず。

 だが、バイスやカゲロウたちに接し、その心に触れた。決して彼らが、ネオフェニックスが想う、冷血な脅威ではないことを知った。

 ゆえに、これは破壊する。

 

「我が全身全霊に賭けて、人と悪魔の未来は、俺が繋ぐ!」

〈スパイダー・イーグル! デモンズレクイエム!〉

 タンクの周囲を高速で巡り、竜巻を発生させる。その中を、無数の糸が泳いで虚空にそれをきつく絡めとる。

 1㎖とて、この糸と風の檻の外へは漏らすまい。

 

 宙吊りになったタンクの上へ、ヒロミは降り立つ。

 そして正拳を振り下ろし、閉じられた嵐の中、高圧のエネルギーを送り込みそれを爆散せしめ、かつ内なるガスをその熱で蒸発せしめたのだった。

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