リバイスFORWARD 〜仮面ライダーリバイと叛逆のデモンズ〜 作:大島海峡
雨粒が装甲を叩く。
互いの手足が装甲を叩く。
行き交う閃光が、互いを穿つ。
幾度とも知れない衝突の果てに、一輝と畷の身からバイスタンプの一部が離れ、宙を舞う。
だがそれには目もくれず、殴り合う。蹴り合う。両者共に身を削り合う応酬が展開された。
リバイは、鋭く両腕を突き出し、デモンズの前面に密着させた。
「はぁっ!」
そこから送り込まれた音の波濤……音撃が、畷を撃ち抜く。余剰のエネルギーが羽や花弁のごとく紅く舞い散る。その片手に、ハリモグラのバイスタンプが落ちてきた。
そのうえで、リバイスラッシャーをもう一方の手に携えた一輝は、数メートル先に吹き飛ばされた畷を追い立て斬り立てる。
鈴鳴りの音と共に、刃が踊る。
だが、それを肩口で受け止めたトラップデモンズ手には、リバイと同じく中空より奪取した、二種のバイスタンプが収められていた。
〈レックス・ゲノミクス〉
〈カブト・ゲノミクス〉
パステルカラーに巨大化したデモンズの右脚が、濡れた地を蹴り大きく翻る。
異形のサマーソルトキックにより剣は吹き飛ばされ、横向きになったカブトムシを模した肩部装甲の下よりくり出された百裂の拳が、無防備に晒されたその胴体に浴びせかけられ、強かな反撃を喰らった。
その衝撃で、リバイスドライバーからオウムのバイスタンプが弾き飛ばされ再び畷の手元へ還った。
〈バディアップ! 愛ゆえ凶暴、針千本、ハリモグラ! ……串刺しタイムだ。喜べ!〉
その頭部や肩は、毛を逆立てた土竜の如く。
新たなる姿へとチェンジしたリバイは、その頭部を傾けた。
そこから無数の針が撃ち出された。
〈オクトパス・ゲノミクス〉
〈クラゲ・ゲノミクス〉
右肩から先が触手つきのマントが精製され、それで風を切るように押し出すと、重ねられた触手が防壁と化す。
と同時に左手に転送されてきたブレイドガンナーが、なお貫通せんとする弾を撃墜させる。
そこから外され、弾かれた針が、畷を囲うように地面に突き立つ。
と同時に、その『陣』の内を闇が沈ませる。その中を交錯する濃緑の光芒が、足下よりデモンズを苛烈に攻めた。クラゲのバイスタンプが弾かれ、虚空を漂う。
〈ヘッジホッグ・ゲノミクス〉
その猛攻を、畷は気力で凌ぐ。強行に腕を突き出した腕の先端が、黒鋼に金と赤を絡ませた突起物に変わる。
それでもって、地面ごとに自らを苛むを抉り取る。その勢いで、針を飛ばし返し、反撃。火花を散らして、リバイはつんのめった。
〈Add! ハリモグラ・ゲノミクス〉
自らのバイスタンプをその手に取り返したトラップデモンズは、もう一方の手に青緑と紅の混在となったグローブを宿す。その手には、笛とも鞭ともつかない武器が転送された。それは地を穿ち獲物モグラの舌のごとく、伸び上がってリバイを打擲した。
散々にそれを叩き潰し、火花を散らした後に、脇へと投げ捨てる。
異形化した両拳を打ち鳴らし、背をのけぞらせて吠えるや否や、飛びかかってリバイの身を撃ち抜く。
数段に分けてステップし、飛び退く。そのうえで一輝は、未だ空に留まるクラゲのバイスタンプを掴み、ベルトに押し込み承認させる。
〈クラゲ! バディアップ! 流れた痺れた長い手だ! クラゲ! START OUR PROLIFERATION!〉
文字通りのクラゲを模した帽子が、追撃の拳を受け止める。頭部を揺らめきながら威力を流し、その下で凶猛に尖らせたリバイの眼光が閃く。その帽子の縁から伸びた触手が畷の腕に巻きつき、そこから増幅された生体電流が放出される。
一旦は苦悶の悲鳴をあげた畷だったが、絡まる無数の糸のごときそれは、離れようとも肉薄しようとも、容易に抜き去ることが叶わない。
互いの身をその触手に繋がれたまま、リバイ優位の状態で肉弾戦に持ち込む。
ならば、と。
強引にそのまま腕を持ち上げた彼は、触手ごと、一輝の身ごとに、壁へと引きずり叩きつけた。
「ぐはっ……」
一輝が崩れることで、力無く触手がたわむ。それを腕力のみで引き千切り、ダウンしたリバイに一撃を喰らわせるべく両腕を重ねて振り下ろす。
〈バディアップ!〉
その両腕を、十本の爪が挟み込む。
〈恐れよ! 俺を! ホワイトレオ! 時代をレオから始めよう!〉
ピンクならざる、紫のアーマー、その中心に屹立する、黄金の双角。
赤い瞳のリバイは、その尋常ならざるまでに強化された膂力をもって、今度は下から捧げ持つ体勢で、畷を持ち上げ、地面に叩きつける。遥か先まで身が跳ねる。自重も加わって、地をへこませ、何ヶ所も亀裂を作りながら沈む。
〈ホワイトレオ! スタンピングフィニッシュ!〉
両手を開いて腰を沈めたリバイは、一息に駆け出した。獅子の威を借り、白雷を纏い。
〈ヘッジホッグ・ハリモグラ・デモンズレクイエム!〉
対する畷は、起き上がり飛び上がって針を飛ばす。そして顕になった拳には赫奕と、血のごとき紅蓮を宿していたそれを、飛んでくる相手に向けて突き出した。
雷鳴と共に、リバイの足裏が畷の腹を叩く。
その身が引き剥がされる間際、トラップデモンズの拳が側頭部に二段に叩き込まれる。
水溜りを蒸発させ、生じた気流で浮かび上がった水滴が、音を立てて落下した二人に降りかかる。
「――もう、戯れ合いは終いだ」
己にも言い聞かせるように震え声で宣い、畷は身を起こす。その右手に束ねた四種のスタンプを立て続けにバックルに押し続け、かつそれを雨天高くに放り投げた。
〈More! ニワトリ! オウム! キリン! ハリモグラ! デモンズレクイエム!〉
その印判を読み上げる。取り込む。その輪郭が、エネルギーの奔流と共に人の範疇を超えていく。
その身の丈が、脚部の歪曲化、蒼炎と共に五分増しに伸び上がる。それを支えるのは、斑模様の多脚。
背には極彩色の羽。両腕は先の、棘つきのガントレット。
「地獄に堕ちろ……仮面ライダァーッッ!!」
という咆哮が、地を揺らす。リバイの装甲を震えさせる。
そしてくり出された手足の一閃が嵐を招き、直撃せずとも一輝の身柄を彼方へ飛ばす。
その威、その殺意をあらためて感じ、一輝は奥歯を噛みしめた。
たとえ相討つとも、あるいは敵わずとも――その覚悟で、膝に手をつき立ち上がる。
――なァに、しゃちほこばっちゃってるワケ?
内より、言の葉が響く。
――そうじゃないでしょ、一輝。もう、せっかく昨日忠告したのに、忘れちゃった?
それを確かに聴いた強張っていた肩が、すとんと落ちた。揺れる心が、あるべき場所に落着し、定まる。
――あいつに教えてやれよ、一輝。オレらが選んだ世界も、悪魔も、そう捨てたモンじゃないってな。
あいつ――綱本畷。
戻る過去さえ奪われたこの世界で、理不尽に絡め取られ、胸に巣食う怒りに狂わされた男。
散々に痛めつけられて、重かった身体が、自然に起き上がり背が伸びる。
悲壮を負った、その魂が、支えられた。
――だから楽しめよ、一輝。オレらが歩んで来た道も、これから歩んでいくお前の道も、そうでなくちゃダメでしょ?
「あぁ、そうだな。バイス」
仮面の奥では、涙ではなく笑みがこぼれる。
決死ならぬ、だがその同量以上の覚悟を抱き直したその手は、自然残された最後のバイスタンプを抜き取っていた。
十の獣。それらを象徴的に形作った、銀色のバイスタンプ。
〈ジュウガ!〉
プロトタイプらしいそれを渡したジョージ狩崎は、
否、信じたのだろう。人と悪魔の紡ぐ、その可能性を。
一輝が息を吹きかけると、それがパステルに、多彩に色づく。自分たちのものとして、認められた証だ。
〈レックス! メガロドン! イーグル! マンモス! プテラ! ライオン! ジャッカル! コング! カマキリ! ブラキオ!〉
腕で十字を組んだ仮面ライダーの周りに現れるのは、己の半生にまつわる無数の情景。五十嵐一輝に刻まれた、悪魔の
ただの数ではない。そこに込められた過去現在、万感の想いと願いをドライバーに読み取らせ、呼び起こす。
変身を超えた変身――超変身を。
〈十種の遺伝子、強き志! Great! Amazing! Wonderful!〉
本来のジュウガよりも一層陽気な調子で謳う。
ホワイトレオゲノムを彩るように、黄金の獣たちを、猛禽を、恐竜を、模した装甲が四肢に、胴の上下に宿る。
〈仮面ライダー! Over9!〉
ますますに角を猛らせ、輝きを燦然と強めた姿。その光輝は長く続いた曇天を突き破り、青き空をよみがえらせた。
仮面ライダーリバイ オーバーナインゲノム。
新たなる英雄の姿、新たなる伝説――その幕開け。