リバイスFORWARD 〜仮面ライダーリバイと叛逆のデモンズ〜   作:大島海峡

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エピローグ:長い雨が晴れて

 役目を終えて力を失い、地に落ちたリバイスドライバーを、一輝は細めた目で見つめる。

 

「ありがとな……リバイスドライバー」

 もう一つの『相棒』に、礼を呟く。

 

 最初は偶然だった。

 本来はおそらく、大二やヒロミが使うことを想定されていたはずだ。

 それが何の因果か、漠然と日常を送っていた自分の手に渡り、バイスと二度目の出会いを果たした。

 

 ありがとう。自分に家族や世界を守る力を与えてくれて。

 ありがとう。忌むべき力を、正しい方向に導いてくれて。

 ありがとう。バイスの姿を見て、言葉を交わせるようにしてくれて。

 さようなら。いつかまた――五十嵐家が、世界が必要とする、その時まで――

 

「悪魔、め」

 残火の中、仰向けに身を投げ出した綱本畷が、気の無い調子で吐き捨てた。

 

「いかにもタイマンでクリーンなファイトって風に戦ってたが……結局、あんたの中には、大勢の人々との記憶があって、悪魔の助けがあって……俺にはもう、何も無いってのに……より、惨めになっただけじゃないか……」

 そうか細い声でぼやく彼にはしかし、先までの身を焦がすほどの憎悪は感じさせない。心魂のすべてを出し尽くした若者の姿が、そこにはあった。

 

「あぁ、畷。俺は、お前の悪魔だよ」

 彼の悪態に対してそう認めつつ、一輝は静かに歩み寄る。

 

「だから――もし今みたいに、お前が感情や義務感に押しつぶされそうになった時は、とことん付き合ってやるよ」

 と笑いかけて、手を差し伸べる。

 

「……んだよ、それ。意味わかんねぇよ」

 その手を取らず、起き上がった畷の横顔はしかし、どこか憑き物が取れたようで、常の張り付くようなものとはまるで違う、ほろ苦い笑みが浮かんでいた。

 

「システムダウンの間際、トルーパーの反応もロストした……敗けみたいですね。こっちもあっちも」

 

 ~~~

 

 敗残の兵士たちが、変身を解いたライダーたちと、そして施設から解放された田淵たち隊員たちに囲まれている。

 

「……我々は、どのような処分でも甘んじて受けます。ですが、隊長だけはどうか、寛大な処置を」

 その捕虜たちの中心で、皆を代表して拝郷は肩を落とし、深々と頭を垂れて乞う。

 

「なんのことかな?」

 対して狩崎は、空とぼけた様子で返した。

「最初に言っただろう。これは、私による最終テストだと。ま、良い実戦データがとれたんじゃないかな、うん」

 つまり、あらためてチームリーダーの座に返り咲いた男は、言外に断を下している。

 

 ――今回のことは、無かったことにする。不問に処す、と。

 

『つか、大二(コイツ)のやらかしに較べたら、こんなん可愛いもんだろ』

 己の脳内で意地わるく揶揄するカゲロウを煩わしげに咳払いした大二も

「……そういうわけだから」

 と、トップの判断に賛意を示した。

「俺たちだって、色々傷のある身だ。お前たちを責め立てるつもりはない」

「それでも、敵だったヤツも含めて、みんなやっていけてるから」

「どっかの誰かさんのお節介のせいで、死にぞこなっただけかもねー」

「うっさいなぁ、そのおかげで、今は上手くやってけてるでしょ」

 目を細める玉置の裏から花が茶々を入れ、それに対してさくらがむくれる。

 

「たとえその道が間違っていたとしても、進まなきゃどうにもならない時と感情がある……わかるよ」

 と、温かい目を部隊の面々の一人一人に、元太は向ける。

「でも、間違った先にも出会いはあるから、やり直すチャンスは必ずある」

「たとえ復讐を果たせたとしても、現実はそれでエンドにはならない。その後に日常も、色んなこととの戦いも巡り巡って続くんだ……一週間(ウィーク)と同じように、どうしようもなくね」

 希望と光も、それに倣った。

 

 その中から進み出て、ヒロミは拝郷の前に立った。

「たしかに、俺たちは多くを間違えた。そのために、お前たちからの信頼を失い、傷つけてしまった……これからも、失望させることがあるかもしれない」

 だが、と生真面目そのものを体現した真剣な面持ちで続ける。

「何かを切り捨てて段階を飛ばして、そうして駆け上った先に、人々の幸せがあるとは思えない。一歩一歩、全身全霊で進んでいくしかないんだ。その先にある、幸福の青い鳥を追って……それが本物だと、いつか追いつく未来を信じて。だから頼む……もう一度、信じて欲しい――俺たちにやり直すチャンスを、ください」

 依然、頭を下げたままの拝郷たちに対し、勝者であるはずのヒロミもまた、深々と頭を落とした。

 

 その様子を裏手に下がって見守り、狩崎はひとまず丸く収まったと、安堵の息を漏らす。

 そして人知れずその場を後にしつつ、自らの携帯端末を取り出した。

「Hello, Mr.?」

 と、何度か着信のあったその番号に、リダイアルする。

 

「――えぇ、こっちはカタがつきました。貴方の予想通りのことかと思いますが……わざとらしいリアクションは結構。貴方たちが政府に密かに協力して、綱本畷を焚きつけたことは察しがつきます。かつての騙され上手が今や騙し上手、というわけですか」

『……』

「しかしあれだけのライダーのtechnology、特にダークドライブ――重加速を無効化する力なんて、何処から……それこそ時間移動でもしない限り……いえ、今の時点で詮索は止めましょう。今度会った時のsurprise、を楽しみにしておきます」

 通話の向こう側で笑う気配が伝わってくる。

「こうなっては認めましょう。ジュウガやトラップデモンズのシステムだけでは未だ不十分。ましてや、人の意思は移ろいやすく、感情を完全に排除して善悪の判断を下すことなど出来ない。それを今回思い知らされました……貴方たちのプロジェクトに、私も協力させていただく……あくまで、私自身の計画の為に」

 

 しかし、と。

 色眼鏡の奥底で、狩崎の目が歪む。

 

「気に入らない……私の大切な部下を利用したことなど、特にね。この上は、これより我々の創り出す白き善意の使徒が、それに見合うだけの代物であることを願いますよ……Mr.(たちばな)

 

 〜〜〜

 

「行こう」

 無理に立ちあがろうとして崩れかける畷を、一輝は支えて歩き始める。

「ここまで派手なことをしたんだ。良くて独房送り、最悪……まぁ、その覚悟は、ハナからしてますよ」

 いくらか落ち着きを取り戻した口調で、静かに決意を示す畷に、一輝は

「何言ってんだ」

 サッパリと言った。

 

「雨の中喧嘩して、全力出し切ってヘトヘトで……とくれば、やることは一つだろ?」

 と問いかけつつ、その足は仲間たちの集う場所へ。

 丸くした目を瞬かせた畷に、一輝はその先で待つ彼らと同じように、屈託なく笑いかけた。

 

 

 

「ウチの風呂、入っていけよ!」




おかげさまでどうにかこうにか完結にこぎつけることが出来ました。

まさか三作連続でリバイス絡みのリクエストが来るとは思いませんでしたが、やれるだけのことはやったと思います(大量の誤字から目を逸らしながら)
しかし本編終了からはや三年は経過しようとしているのに、かくも多くのご要望をいただき、根強い人気に些か驚いております。
そういう方たちに「やっぱリバイス、良いよね……」と思っていただけるような作品づくりを私なりに心がけてまいりました。

とは言え、思い通りに進まなかったことや早まったこともそれなりにあるわけで。
実のところ設定をかなり拡大解釈してたり原案者様の知らない機能を追加したり。
ストーリー面では累計1000万部を突破した、某超人気リアル系本格派格闘漫画のセリフパロでの悪ふざけが過ぎたり。
それを流して寛容な目で見ていただいた原案者様には、慚愧と感謝の念でいっぱいです。

サンゴヤドカリ様、貴重な場、素晴らしいアイデアを頂きましたこと、あらためてお礼申し上げます。
また、ここまでお読みいただきました読者様にも、深く御礼申し上げます。

名残惜しくはありますが、今回はここで締めくくりとさせていただきます。
またいずこかでお会いできる日を楽しみにしております。
ではでは!
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