リバイスFORWARD 〜仮面ライダーリバイと叛逆のデモンズ〜 作:大島海峡
――その日の午後から、雨が降り始めた。
五十嵐
だがその手首には、ビニール傘がかかっている。
(さっすが母ちゃん! こういう辺り、抜かりない)
行きがけにこれを持つよう押し付けてきた母の慧眼に感謝と感心をする。
それを開こうとした矢先、ビニール越しに、隣にいる青年に目がいった。
手ぶらで軒先を見上げる彼は、一見すると引き締まった身体をしている好青年だが、どことなく線の細い印象を受ける。
ただ漫然と天を仰いでいるようだが、何故だかその横顔は透けて消えてしまいそうな儚さがあり、そんな己を顧みることなく、妙に張り詰めて、何かに追い立てられているようでもあり、生き急いでいるような感じもあり――
それこそ、身近な人で例えて、
(前の大二みたいだ……)
と想起した。
だからこそ、またぞろ一輝の中で『お節介焼き』の虫が騒ぎ始めた。
「あの」
開きかけた傘を畳み、遠慮がちにそれを差し出した。
「良かったら、使います?」
と、見ず知らずの相手に、曇りなく微笑みかけて、
怪訝そうに見遣る青年に、軽く慌てて
「別に余計なお世話だったらすみません! でも、なんだか思い詰めた感じだったから、なんか焦ってるのかなって。あぁ、傘とかも気にしなくて良いんでっ 俺けっこう近所に住んでるから、走って帰ればすぐ乾きますし」
事情は汲めども、これが相手の気分を和らげるきっかけになることを願って、一輝は屈託なく笑みと傘とを傾ける。
すると、彼もまた一輝の方にあらためて向き直り、微笑みかけた。
「――まさか、貴方の方から話しかけてくるとはね。聞いていたとおり、ユニークな人だ」
何も響かない、上っ面だけのスマイルだった。
逆に訝る側に回った一輝に、折り目正しくお辞儀をして、
「はじめまして、五十嵐一輝さん。大二さんと同じ職場で働いていました綱本と言います」
と青年は言った。
「同じ職場……てことは、ブルーバードの?」
「ブルーバード、ですか……その名は、今日限り捨てました」
え、と問い返す一輝のズボンのポケットで音が鳴る。
旧フェニックス時代に譲り受けて、なお彼の生活を支える携帯端末、ガンデフォン50からの呼び出し音だった。
そこに表示された相手先を見てから、また綱本という若者を見遣る。
どうぞ出てください、と手と笑みで促す彼に頭を下げてから、通話に出た。
「大二か? 仕事中にどうした? ていうか今お前のとこの」
『兄ちゃん……ブルーバードが乗っ取られた!』
「――え?」
だが出し抜けに、予想だにしない声が鼓膜を震わせた。
次いで、大二の声の後ろから、剣呑な銃声もまた、断続的に響いていた。
『クーデターだ! 首謀者は、新設デモンズ部隊の隊長綱本畷! 狩崎さんが負傷してて、今ヒロミさんと一緒に連れて連中から逃げてるッ、兄ちゃんたちも襲われる可能性があるから気をつけて!』
「ああ――そいつなら、今目の前にいる」
『……なんだって!?』
「そのまま切るなよッ、大二!」
合致する苗字。思わせぶりな言動の数々。何より、本人から漂う只者ならざる気配。
すべてが偶然であろうはずがなかった。
電話を下ろした時には、五十嵐一輝は戦士の、仮面ライダーリバイの変身者の顔になっていた。
「――なにが目的だ、俺の家族に何をしたっ!?」
鋭く問い質す一輝の前を横切って、スーパーの軒下を出た綱本畷はその先にある駐車場へ。
「家族、ね」
気づけば利用客の姿は絶え、代わり、異形の兵隊たち――かつて一輝たちとともに立ち向かったデモンズトルーパーたちが畷の周囲を固め、その構成員らしい若く屈強な男女たち数名が彼のために傘を差し出す。
「それって一体、
〈トタテグモ!〉
傘の下、そう挑発的に問いかける彼の手には見覚えのない、明るい色相の蜘蛛型バイスタンプが握られていた。
そのスイッチを押すと同時に、どこからともなく発生した無数の蜘蛛型ボットが鈍色の空の下を舞い、八方に飛散した。