リバイスFORWARD 〜仮面ライダーリバイと叛逆のデモンズ〜 作:大島海峡
混乱させるようで申し訳ありませんが、ご了承いただければ幸いです。
ーー都内某所、大人気回転寿司チェーン、その一店舗。
ギフとの死闘の後、人知れず世界は改変され、その命運を決するゲーム『デザイアロワイヤル』が開催された。
「いいのか? これ、持ったままでも」
その勝利者二人のみであらためて設けられた、打ち上げの席。そこで黄色いボックスに収められたドライバー一式に手を置きながら一輝は向かいの男に尋ねた。
「あー、別に良いんじゃないか? 運営からは何も言ってきてないんだろ?」
稲荷寿司を頬張りながら、泰然とした様子で男は答えた。
「まぁ奴らも、今回の件じゃ少なからず負い目があるってことかな」
年頃は一輝と同じぐらいに見えるのだが、それに見合わない達観と老成を感じさせる、奇妙な男だった。
「そもそもそのドライバー、バイスの形見だろ?」
「いや、死んでないからな」
「あと、お前のIDコアも」
寿司よりも小さな、その円形のチップを箸で指しながら、彼は言った。
「そいつは、お前の記憶と願いの結晶だ。お前自身が持っておくに越したことはない。俺はまだまだ不敗神話を続ける気でいるが、この先世界がどう転ぶか俺でも分からない。でもそれさえ持っていれば、最悪の事態は避けられるはずだ」
預言者めいた口ぶりでそう続け、背もたれに寄りかかる。
「……忘れちまった方が、良い
そう呟きつつ、遠くに眼差しを投げていた男は、キョトンと見返す一輝に気づき不敵に
「それでも」
と彼へと目線を流した。
「忘れたくないんだよな、お前は」
手で狐を作って弄びながら、スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズは不敵に笑う。
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〈Rock Fire! Tactical Fire!〉
リバイの武器より、散弾よろしく撃ち出された火の玉が、押し寄せる敵の第一陣を退ける。
「Funk Blizzard! Tactical Blizzard〉
包囲に穿たれた穴へと飛び込み、斧刃で薙ぎ倒していく。そこに帯びた氷気は雨水を凍てつかせ、その動きを封じる。
〈Metal Thunder!〉
現れた第二陣の先陣に、翻した斧を叩きつける。
〈Tactical Thunder!〉
親指で弦をかき鳴らせば、激しいサウンドと共に電光が迸る。
それは突き立てられた彼らのみならず地面を奔り、その周囲をも感電させた。
それでもなお四方から迫る後続に、雷刃で振り返りざまに背後の空間を裂いた。
生じた隙に小型のパーツを、ビートレイズバックルとは真逆にセットする。
〈Armed Propeller〉
足首に形成されたプロペラが旋回すると同時に、リバイの身体はその天地を逆さまにした。
虚空でブレイクダンスのごとき動きを取り入れつつ、その回転する『刃』でもって、敵兵の壁と意識とを火花と共に削り取っていく。
〈Revolve On〉
着地と同時に反撃を狙ったトルーパーたちの隙間を、バックルを左右に回しつつ側転する一輝の身体がすり抜けていく。
如何なる原理か分からないが、肉体ごと、その上下の装甲は逆転する。
上半身は胸当てのごとき簡素なものに。逆に寂しかった脚部を、ブルーとピンクが彩る。
そして強くその足裏で踏み込めば、イコライザを立体化したかのような色彩の柱が地中より突き出て、トルーパーたちを衝き上げた。
「下がっていなさい」
と、畷は言った。
穏やかだが、妙な強制力のある言葉に、打ち落とされた部下たちが後退していく。
「変身」
〈Decide up! Trail. Train. Trigger……仮面ライダー・トラップデモンズ!〉
彼はデモンズドライバーを自らに装着するとともに、手にしたトタテグモバイスタンプを押印。散っていた蜘蛛が彼の周りに集結し、繭で彼を囲む。
それを片手で突き破って現れたのは、マントとデモンズドライバー付きの、他のトルーパーたちを豪壮にしたもの。見るからに、指揮官機という塩梅である。
「親玉自らご出馬ってか」
「えぇ、仮面ライダーとしての貴方の経験値と力量は、見誤りませんよ」
ストイックなようでいて、自分ならば倒せるという自信の裏返しだった。
手にしたままのビートアックスを強く握り締め直し、一輝は彼へと肉薄する。
縦横に振るわれる斧を絶妙なタイミングで躱し、捌き、そして腕の甲で受ける。
空いた脇腹に、肘鉄が強かに叩き込まれる。
軽く退いた一輝だったが、同時にその手の甲に再度プロペラを展開。アックスとの二刀流で新型デモンズに反攻、長短一対のコンビネーションで逆に畷を追い立てていく。
だがその両腕を巻き込み、動きを封じたうえで頭突き、蹴たぐるや、その手のスタンプを青緑に発光させ、ドライバーに二度押しする。
〈Add! ハリモグラ・ゲノミクス〉
畷の両腕の先を、赤・黒・緑が混淆とした、毒々しい色のスパイクが覆う。
そこから発射される無数の針が、体勢を整えかけのリバイに胴体に当てられ、触れると同時に爆炎へと変わった。
「だったらコレだッ!」
拳と拳のぶつかり合い。バイスの残したもう一つのバックル。眠れる幼獣のあしらわれたそれを両サイドのバックルと取り換える。
〈Monster!〉
その頭をはたいて覚醒させると同時に、アーマーチェンジ。星のあしらわれた青いアーマーが、半身を護る。
たくましく肥大化した腕が、光の尾を引くようにして飛ぶ。
不意打ちのロケットパンチに、畷は両籠手を重ねるようにして防ぐ。その厚みある様相は、塁壁のようでさえある。だが同時に視界もまた塞がれている隙に、その懐に飛び込む。
そして自らの拳にて、そのガードをこじ開ける。
息をつかせぬ、一針も撃たせない。その覚悟で、猛攻を仕掛ける。
その体勢が、崩れた。畷が膝を折る。
さらに畳みかけるべく、鉄槌と化した両腕を振り下ろす。
〈ニワトリ・マンドリル・ゲノミクス〉
だが新たに二種のスタンプを捺印しつつ、地につけた膝を軸として身を切り返す。その直後に跳ね上がって、鳥類のごとき脚の裏が、蒼炎を帯びて一輝の胸板に叩き込まれた。
両手の針拳は解除され、代わりその右手首には、見慣れない装置が星光とともに転送されてくる。
シーケンサーを小型化させたようなその装置の、ツマミの一つを持ち上げる。
〈OK! Saturn!〉
ひときわ大きなボタンを押して起動させたのは、小型の土星。そこから飛ばされた環が、戦輪の如く空を裂いて回る。蛇行しながら一輝を追討していく。
〈Mars Ready〉
〈ケツァルコアトルス・ゲノミクス〉
瞬歩、というべきか。
赤い光帯を伴って、驚異的な速度で詰め寄った畷の、火拳がストレートに叩き込まれ、吹き飛ばされたリバイは、店舗の柱に激突した。
「他のライダーシステムを流用しているのは、貴方だけではないということですよ……これでも政府関係者や警察機構に『友達』が多くてね。彼らが保管していたライダーの戦闘データを応用させてもらっています」
そんなことを嘯きつつ、本来の己のものに戻した足で緩やかに、畷は近づいていく――確実に、トドメを指すために。蜘蛛のバイスタンプを画面に押し当て、両サイドを押し込む。
「だったらッ!」
己は、元のありように立ち返る。
〈Revice Driver〉
リバイスドライバーを小型化させたようなそのバックルをベルトの左側へ。
〈仮面ライダーリバイ! バイス! リバイス!!〉
その下半身が、リバイ通常フォーム、レックスゲノムのそれへと変わる。
〈トタテグモ! デモンズレクイエム〉
〈Monster/Revice Strike〉
悠然となお歩くデモンズの足下を、その全身から精製された白い糸が這いずり、互いに織りなす。敵へと続く、白いトンネル兼カタパルトが出来上がる。
リバイの尾てい骨の辺りから生えた尾を推進力として、一輝は飛び上がる。
そして中空にて、足裏に蜘蛛と恐竜の刻印を宿した両者は激突した。
――だが、残酷かな。奇跡はそう何度も起きるものではない。起こせるものでもない。
かつては宇宙よりの大悪魔をも退けた彼であっても、いまこの時、心身ともに不完全な状態での単純な競り合いでは、優劣は明らかだった。
数秒の拮抗さえも許さず、敵の勢いに跳ね飛ばされるかたちで、一輝は地表へ叩きつけられた。
地にめり込むほどの衝撃は、背面をあまねく襲うその激痛は、どれほどにまだ意気が残されていようとも、立ち直ることを許さない。
そのまま力尽きて変身を解除した彼の頭上に、不気味な蜘蛛男のマスクがある。
「これが、最後の温情です――バイスさんを、消させてください」
まるで子どもに言い含めるような口調で勧告される。まともに口をきく余力はないが、睨み上げることで断固たる拒絶の意志を示した。
返ってきたのは、諦めにも似た溜息ひとつ。
そして一本一本、丁寧に指を端から順に折りたたんだ拳を、畷は一輝の顔面目掛けて振り下ろしたのだった。