リバイスFORWARD 〜仮面ライダーリバイと叛逆のデモンズ〜 作:大島海峡
「ウソくさい……」
狩崎はその意見に、自らの顎をつまみ、悩ましげに眉尻を下げた。
「君は基本的には常識的だが、時折突飛もないことを言いだすね。すると君は、綱本畷の行動には、別の目的が存在すると?」
「すいません、そこまでしっかりした考えがあるわけじゃないんです……」
彼の目的、行動に矛盾はなく、手間はかかっているが至ってシンプルなものだ。そこに欺瞞を指し挟む余地があるとは、たしかに思えない。
「でも、なんかあの畷の言葉が自分の中でしっくりこないっていうか、そのまま飲み込めないっていうか」
「うさんくさいっていうこと?」
「まぁ、強いて言うなら……それが近いかな」
さくらの手探り的な質問に、唸って一輝は首をひねる。
「うさんくささレベル的に、あのオルテカとかと同じぐらい?」
「いや、あそこまでじゃないだろ」
「じゃあ、光君レベル」
「……いや、ちょっと待ってください」
そこで名を挙げられた光が、手も挙げた。
「なんで、そこで彼の次に僕の名前が出てくるんです?」
「あー……」
「『あー』!?」
「いやいや、ジョーダンだって。光だって、こうやってピンチに駆けつけてくれたんだ。今はちゃんと信頼できる仲間だって思ってるよ」
「……今は、なんですね」
光は口を尖らせた。
かつてはウィークエンド構成員として鉄面皮に徹していた彼が、年相応の反応を見せてくれる。そうして軽口憎まれ口を叩き合う今の姿こそ、互いに打ち融け合っている証拠に他ならない。
彼自身を除く周囲で起こった笑いが引いた頃合いで、一輝は表情を改め、向き直った。
「……でも、近いのは、どっちかというと狩崎さんに近いかもしれない」
そう名指しされて、色眼鏡越しに狩崎は目を丸くした。
「Why私?」
少し面食らったせいか、だいぶ怪しい文法で問い返す彼に、
「正確には、ちょっと前の狩崎さん……俺たちと戦った時のですけど」
と、偽りない感触をそのまま口にする。
「あまり、思い出したくないところを突いて来るね」
狩崎は憮然とした。
あの時は父親に先立たれ、かつ彼に悪魔を仕込まれていたという事実に動揺した彼は、整理のつかない愛憎の末に思い余って、今のネオフェニックスと同様の、極端な悪魔不要論者に変心した。本人からしてみればすでにそれは、忘れ去りたい過去なのだろう。
「私自身からすれば、むしろ真逆だと思うがね。たしかに、他の構成員は我らの現状や悪魔憎しで敵になった。だがそれも、彼が理性と大義で己を徹底的に律しているからこそ統率が出来ている。あの時、自分の感情に振り回された私とは違う」
「そう、でしょうか」
「……とはいえ、だ。綱本くんは君に興味を持っていることは確かだ。でなければ、自ら偽って君の前に顔を出すこともなかっただろう――だから彼の処分は、君に委ねるよ」
肩に手を置き、そう懇ろに頼み込む。裏切られたとしても、元は自分の見込んだ若者だ。
単なる研究対象だけではなく、多少の情もあるのだろう。
「無論、ただでさえ手が足りない状況だ。出来る限りの装備は持ってきたから、ここにいる皆の力を借りたい……恥を承知で、頼む」
深く頭を下げてから、ヒロミは自らが奪還してきたケースをそこで開いた。
中に入っていたデモンズドライバー、そしてクワガタとギラファのバイスタンプを、光と玉置は迷いなく手に取った。
「僕も、出来る限りのことはします。復讐に身を焦がすことの辛さ、少しは分かりますから」
少しばかり蚊帳の外にいた希望が、元太へ目くばせしながら名乗り出た。
五十嵐夫妻は、優しく温かみのある目で頷き返した。
「いやいや、そう言ってくれると思っていたよ。こんなこともあろうかと、用意はしてたんだ」
と、狩崎はいそいそとケースに入っているのとは別に、小さめの荷物カバンに入った、己のジュウガドライバーに似た基幹を持つそれとツインキメラのバイスタンプを、彼へと差し出す。
「ジャーン。キメラドライバーのスペア、ちゃんと安全に使えるよう調整しておいたよ。もちろんギフの瞳なしで」
「あ……ありがとうございま、す?」
複雑そうな笑顔で受け取る希望に対し、狩崎はまた己の理想に近づいたことで満悦の笑みを浮かべていた。
「……お前、反省してるんだよな?
ヒロミは、非難めいた視線をその背に刺している。
「兄ちゃん」
ふと、大二の手から一輝の横に差し出された。そこには、かつて彼が使っていた装備、リバイスドライバーが載せられていた。
「これ、一旦返すよ。あの妙なドライバーだけじゃ、畷相手だと心許ないだろ?」
一輝は苦笑と共に、弟の好意を受け取る。でも、と言い添えながら。
「返すとかそういうんじゃないだろ? お前やカゲロウが必要になったら使えば良い。リバイスドライバーは、俺やバイスだけじゃなく、五十嵐家みんなのものだ」
「だったら、私が使ってもいいよね?」
いたずらっぽく間にさくらが割り込みドライバーに手を伸ばすのを、兄弟は苦笑とともに取り上げる。
「さくらにはリベラドライバーがあるだろ?」
「それを言うなら、大ちゃんだってもうドライバー直ったじゃん」
「まぁ、おいおいな」
そう和気藹々と語り合う。
その間で様々な葛藤や衝突があった。それを乗り越えたうえで、今この光景がある。
「いや、厳密にはブルーバードの所有物なんだが」
狩崎の余計な横槍を、ヒロミが無言で後頭部をはたいて制したのだった。