スカタン転生記   作:コミュニ爺

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どうも、コミュニ爺です。前回よりもさらに投稿が遅くなって申し訳ありません…。
今回は記憶喪失のあの人と、強欲系姉属性ヒロインのあの人が登場します。お楽しみに。


第四話 「神殿」

「えぇっ、どうしてもダメなんですか!?」

「残念だがそういう規則なんだ。諦めてくれ」

「そんなぁ…」

ジェノスの町、北側の門にて。俺のダリルシェイド行きの夢は早くも打ち砕かれてしまいましたとさ、チャンチャン。……いや、笑いごとじゃねぇよコレ。通行証がいるなんか知ってるワケないだろ?つーかじっちゃんとリリスに合わせる顔がねぇよ…。一体どーしたらいいんだ…?肩を落としながら、衛兵さんに背を向けてトボトボと歩を進めた。

 

「はぁ…困ったなぁ…」

「うーむ、困ったな…」

目の前の女の人と、俺の声が重なった。しかし、どっかで聞いたことのある声だ。それもつい最近…って、あぁっ!

 

「マリーさんじゃないか!生きてたんだ、よかったぁ…」

「たしかお前は…スタン、だったな。そっちも無事で何よりだ」

「いやぁ、危うく死ぬところでしたよ…。ははは」

どうやらマリーさんは何事もなく飛行竜から脱出できていたらしい。いやぁ、よかったよかった。俺は運良く助かっただけで、二人は死んでました———。なんてことになってたら、寝覚めが悪すぎるもんな。…あれ?二人?

 

「そういえば、ルーティはどうしたんですか?一緒じゃないんです?」

「実はだな…」

マリーさんの話によると、この近くの神殿に入ったはいいものの、ルーティがワナにかかって閉じ込められてしまったらしい。マリーさんはルーティを助けるため、協力してくれる人を探しにジェノスまでやってきたそうだ。

 

「…そりゃあ災難でしたね。俺でよければ付き合いますよ、ルーティ助けんの」

「本当か!?それはありがたいが…報酬は期待できないぞ?」

「いいっていいって。顔見知りが野垂れ死にかけてるのを見殺しにしたら、寝覚め悪すぎるでしょ?それに———」

———困った時はお互い様、ですから。そう言うと、マリーさんは納得がいったのか、素敵に笑ってくれた。やっぱ誰だって、笑ってる方がずっといいもんな。そんな気障ったらしいことを考えていると、腹の虫が大きな声を上げた。山を降りてからずっと何も食べてないのだから、さもありなん。それを聞いて、ルーティを助けるのに協力してくれるのだから、と言ったマリーさんが、軽食を奢ってくれた。ごちそうさまです。腹も膨れたし、ルーティがいる神殿へ向かうとしますか。

 

☆☆

相も変わらず雪の降る山道だ。ディムロスにホットカーテンを展開してもらい、快適な気温を維持しながら進んでいく。すると、ジェノスから少し進んだ先に、木々に隠された洞穴があった。マリーさん曰く、そこから神殿へ行くことができるらしい。よし、それじゃ行きますか!………おーい、マリーさーん?

 

「あぁ、すまない。少し考え事をしていてな…」

「あ、いやいや、別に責めるつもりはないんだけど…。まぁ、何か困ってるなら、話ぐらいは聞きますよ?俺にできることならなんでも言ってください!」

「…ありがとう。実はな———」

———過去の記憶がないんだ。そして、それを助けてくれたのがルーティなんだよ。予想よりもはるかに大事な困りごとがやって来た。大口を叩いておいて早速で悪いけど、これ俺に何とかできんのかなぁ…。軽はずみに聞いていいことじゃなかったと頭を下げる。マリーさんは笑って許してくれたが、申し訳ない気持ちが溢れてきた。マリーさんの記憶については何もできなくとも、せめてルーティは絶対に助けよう…!決心も新たに、俺たちは洞穴の中へ進んでいった。やはりというか、洞穴の中は薄暗く、湿っている。魔物も山道にはいない種類のものもいるらしい。注意して進まないとな。

 

☆☆☆

洞穴の奥は、明らかに人の手が加わった跡があった。石造りの地面、倒壊した柱、そして重苦しい最奥の扉———。ついさっきまでの、湿気溢れる洞穴と地続きなのか疑わしいほどだ。

 

「事実は小説より、ってヤツか…。すごいなぁ」

『…この時代に、未だ形を遺していようとは…』

「なんだ、ここのこと知ってんの?ディムロス」

『…ああ。ここは千年前に作られた、レンズを研究するための施設だ』

「マジかよ、レンズってそんな前からあったのか…。ん?だったら、なんで今更レンズの技術が急に発展したんだろうな?オベロン社がレンズ製品を販売しだして、まだ二十年も経ってないだろ、確か」

『我にもわからん…だが、相当な腕と頭脳の技術者がいたのだろうな。…千年前のレンズ工学を知っている者がいるとも思えん』

いけね、思わず遺跡のことから現代のレンズ産業についてまで熱く語ってしまった。しかし意外だなぁ、ディムロスがレンズのことにこんな詳しいなんて。良かったらいろいろ教えてもらおうかな、就職に有利だろーし。…ん?

 

「…ちょっと待った。なぁディムロス、お前何歳だ?最低でもこの遺跡が千年前のモンだってわかるぐらいには歳食ってるってことだよな?」

『相変わらず妙なところで鋭いな…。我は千年前の天地戦争の折に作られた、意思もつ剣(インテリジェンス・ソード)、“ソーディアン・ディムロス”だ。…どうした?スタン』

「…おいおいなんだよ、千年前の方が技術が発展してんじゃねーか…!ロスト・テクノロジーってヤツか!?くぅー、燃えるぜ!!」

『お前という奴は…鈍いのか鋭いのか…』

なんかディムロスが呆れてる声がするけど無視だ無視。科学だ、テクノロジーの匂いがする…!そうだ、俺はこれを目指してきたんだ。文明の利器にあやかって楽で快適な生活をするんだ…!ぐへへへへ。

 

「スターン!ルーティが閉じ込められているのはこっちだー!」

「あ、はーい!すぐ行きまーす!」

っとと、いかんいかん。今はまずルーティを助けることが先決だな。マリーさんに続いて、最奥の扉へ向かう。倒壊した柱を伝い、扉を開く直前、背後から嫌な気配を感じた。

 

「…マリーさん」

「…ああ、分かっている」

即座に武器を構える。薄いガスの塊のような光球が二つ浮かんでいた。…なんだあれ、魔物か?

 

『あれは精神体と呼ばれる魔物だ。力は弱いが危険な攻撃をしてくる…。注意して戦え』

「———忠告ありがとよ!」

言うが早いか、ガス魔物に飛びかかる!先手必勝ォ!喰らえ———!

 

「空翔斬!…あれ?…なーんか手ごたえがないんですけどぉ…」

困惑している隙を見逃すほど相手も馬鹿じゃないらしい。閃熱とともに体を膨張させてきた!咄嗟に後方へ跳躍して距離を取る。なるほど、危険な攻撃ってあーゆーヤツなのね…。

 

『この馬鹿者が…!注意して戦えと言ったばかりだろう!』

「うぅっ、スンマセン…。でも剣が効かないんじゃどーすんだよ、打つ手ないじゃん!」

『確かに直接打撃は効果が薄いだろうな。だが、我は普通の剣ではない…!』

「…そうか、“昌術”だな!」

『そうだ、詠唱は我が行う。お前はイメージを強く持ち、昌力を練り上げろ…!炎の球を撃ち出すイメージだ!』

「よっしゃ、やってやるぜ!マリーさん!そいつらの足止め頼みます!一発デカいのブチかましますんで!」

「わかった、頼むぞ!」

「合点でぇ!」

———目を閉じ、ディムロスの刀身から炎が溢れる様をイメージする。

———やがて炎が渦を巻き、切っ先に集中。巨大な炎の球が生まれる。塵も残さん!

 

『今だ!スタン!』

「ああ!“燃えろ”っ!『ファイアーボール』ッ!」

獄炎の魔弾が魔物を襲う。二体のガス魔物はあっという間に蒸発、塵ひとつ残っていない。圧倒的、その言葉が脳裏をよぎる。

 

「すげぇ…これが“昌術”の力かぁ…」

『どうなっている…?あの程度の術でこれほどの出力が出せるはずがない…()()()スタンは…』

「助かったよ、スタン。すごい攻撃だったな」

「いえいえ、マリーさんが奴らを引き付けてくれてたお陰ですよ。俺一人じゃあ隙だらけで上手いこと使えないだろうし」

互いの無事を確認しつつ、俺たちは最奥の扉の目の前に改めて向き直った。魔物は片づけたいま、後はルーティを助けるだけだ。俺たちは遺跡の扉を開き、奥へと進んでいった。

 

☆☆☆☆

扉の中は、ステンドグラスに包まれた幻想的な空間だった。宗教にはあまり詳しくない俺だが、協会の中の雰囲気に近いだろうか。本当にこんなところでレンズの研究をしていたのか…。昔の人の考えることはよくわからんね。まぁ、今はそんなことはどうでもいい。ルーティを助けないとな。

 

「ちょっとマリー!あたしをほっといて一体どこに行ってたのよ!?」

「すまない。ジェノスの町で助けを探しに行っていたんだ」

…はぁ、どうやら本当に千年前の技術ってヤツは、今よりずっと進んでたらしい。光るエネルギーの檻の中に、ルーティが閉じ込められていたのだから。しかもなんか浮いてるし。

 

「よっ、助けにきたぜ。で、俺はどーすりゃいいの?」

「スタンは左手側の装置に向かってくれ。私は右手側に向かう」

マリーさんの指示通り、向かって左手の装置の前に立つ。マリーさんも反対の装置に着いたみたいだ。

「では、いち、にの、さんで同時にボタンを押すぞ」

「了解。だから俺が必要だったんですね」

「あぁ、どこのどなたか存じ上げませんが、本当にありがとうございます…!」

「…一応会ったことあるってのはツッコまない方がいいのかな…」

「あの、なにか?」

「あぁ、いえいえ、困った時はお互い様ですよね~。あははは」

ルーティからの疑問を曖昧に躱して、仕掛けを作動させる。左右の装置から放たれた光がぶつかり、ルーティを縛っていた檻に命中。そのまま砕け散った。

 

「いや~、やっと自由の身になれたわ。ありがと、マリー。そしてそっちの人も」

「いいっていいって。飛行竜のときもお互い助け合っただろ?」

「え?飛行竜…?……あ、あぁーっ!あんたは!盗人スタン!」

「誰が盗人だっ!助けてもらっといて、その言い方はないだろ!?」

「うっ…確かに。…………その、ありがと。助けてくれて」

「…………どう、いたしまして」

…………やばい、ちょっとドキッとしちまったよ。飛行竜で会ったときから、べっぴんさんだとは思っていたけど…。ちょっと素直になるだけでとんでもない破壊力だな…。きっと今の俺は顔が真っ赤になっていることだろう。だ、だってしょうがないじゃないか!リーネでは歳の近い女の子なんてあんまりいなかったんだし!大体前世の頃から女性経験がないからって———。

 

「足音が近いな…。まずい、誰か来るぞ」

「そうね、急いで隠れるわよ。ちょっと、スタン!あんたも来るのよ!」

「あぁ、うん。わかった」

ルーティに手を引かれ、神殿の舞台袖のような場所に身を隠す。スペースが狭いから必然的に身体が密着せざるを得ない。いかんいかん。心頭滅却心頭滅却!

 

「…どうやらあいつらは出て行ったみたいね。あたしたちも長居は無用よ。早く行きましょ」

「あぁ、そうだな。…そういや二人はなんだってこんなところに来てたんだ?…まさか、盗掘でもしてたとか?」

「…や、やだなぁ~!そんなわけないじゃない…これは、その…見回りよ!この辺に狂暴な魔物がいないかの見回り!」

「…そっか、んじゃそーゆーことにしとこうか」

「なによ、あたしのことが信じられないって言うの?」

「いやいや、そんなことないっスよ。流石ルーティさんだぜ。地域住民の皆さんのために率先して魔物狩りに来るなんてスゴイナーアコガレチャウナー」

「絶対信じてないでしょあんたぁ!」

ルーティをからかうのもほどほどに、俺たちは神殿の外へ出ることにした。しかし、俺たちの後に神殿に来てた連中は、一体何が目的だったんだろうか。嫌な予感がするが、気のせいだろう。たぶん、そう、きっと、めいびー。かぶりを振って迷いを振り切る。俺とマリーさんでやって来た扉とは異なる、正面入り口にあたる扉を開き、俺たちは外へ出た。

 




ルーティさんはかわいい。これだけは伝えたかった。
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