ワイルズにダラやゴクマジオス来ないかな。シリーズ一本限りの登場で影薄いモンスターっているんですよ。ダラやゴクマジオスはラスボスだからまだ知名度あるとしてギザミ亜種やドドブランゴ亜種とか知ってる人今の時代にどれだけいるんでしょうね()
黒い龍がバルファルクと人間達の抵抗により大人しく降伏した後。
やはりだが様々な関係各所が悲鳴を上げていた。
「『まさか2泊3日程度の温泉旅行が8月いっぱいになるとはね~』」
「状況からして仕方がないけどね。スカイの家族にも責任もって面倒見ますって言っちゃったし」
(まだ籍入れてないのにそういうこと言わないで下さい)
『人間というのは事が起こった後の方が忙しいものなのだな』
「『まぁ私達が関わることは無いけどね。せいぜい私がダイダラボッチとの通訳をやるくらいだし』」
『まさか俺以外の龍から龍としての在り方を教わるとはな。まぁそんなものどうでもいいのだが』
「……すっごいナチュラルにセイウンスカイとバルファルクの会話が成立してるなぁ。私には聞こえないけど、スカイはもう完全に聞こえてるんでしょ?」
「『ご先祖様のおかげですね。元々素養はあったみたいなんですけど"記憶"のおかげで心構えというか、コツを掴みました。やっぱり認識が大事ですね。手足を動かすような感じで声が聞こえるのが当たり前って感じないと』」
『何よりも伝える意思というのも重要だな。セイウンスカイは今までどちらかが欠けていたから中途半端に俺の声が聞こえなかったようだが』
黒い龍との激戦を繰り広げた次の日、セイウンスカイとトレーナーは旅館でまったり過ごしていた。
二人が泊まる旅館だが一時的に封鎖措置が取られている。余計な第三者が来られないようにするのと事態の収拾に適した建物が他に無いため自衛隊の作戦本部とするためだ。
二人は事態収拾の功労者として特別に彼らに混じって泊まることを許されていた。
今回の事件について不幸中の幸いと言えるのがメディア等の各報道機関に情報が流れることがなかった点である。元々特戦群に加えて諜報については公安がセイウンスカイの周囲に睨みを利かせていたためセイウンスカイが実家に帰省する際も尾行は排除されていたし、セイウンスカイの家族に張り付くような輩も丁寧に刈り取られていた。また事件が起こった場所が携帯の電波も通らないような山奥であったことと、唯一電波が通じるユクモ村も旅館の従業員以外第三者に相当する人物はいなかったことが防諜の助けとなっている。
バルファルクは事件以降またセイウンスカイがトラブルを招きかねないと心配して縄張りでもないこの旅館に留まるようになった。
『この温泉とやらはいいなぁ。今まで湯に浸かる慣習はなかったがそれがここまで気持ち良いとは。セイウンスカイも俺と入らないか?』
「『……君が入ってるとこ70℃以上の源泉だよ。熱過ぎて入れないって』」
バルファルクはセイウンスカイがここで温泉に入っていると聞きそれに興味を示して同じように入りたいと言い出した。当然だがバルファルクが入れる浴槽など無いため旅館裏手の源泉を引いている水道管の横に自衛隊が急遽穴を掘り水道管を繋げて即席の露天風呂を作り上げたのである。
曰く歩兵の仕事とはまず土木であるらしい。1日足らずで全長20mを越すバルファルクが入れる露天風呂を作り上げた自衛隊にセイウンスカイは申し訳なさと称賛でいっぱいいっぱいであった。
『それで。あの黒いやつはおまえ達ヒトの……なんだ、偉いやつらの預かりになるんだろう?』
「『そうだね。奇跡的に昨日の戦いがどこにもバレてないから、このまま秘密にしてダイダラボッチの体を調べるんだって。私がいなくても硫黄さえあげれば結構大人しいみたいだから、しばらくは政府預かりだね』」
事態の収拾に動いていたのはもちろん自衛隊なのだが、それ以上に政府の役人は黒い龍の体から漏れ出す重油らしい液体に強い関心を抱いていた。本格的な調査はこれからになるが、もし黒い龍から取れる重油が工業製品等に使える物であった場合日本が求める戦略資源に一石を投じることとなる。近年は海底資源に力を入れている日本であるが、海底と陸上とではどちらが容易く資源を得られるか、議論の余地は無いだろう。
同じ理由で国内外に対しても完全秘匿である。元より石油等の地下資源は将来的に枯渇する見込みのため各国がそれらに頼らない新たなエネルギーを模索している。餌さえ与えれば半永久的に重油を生み出す黒い龍の存在は、政治も含めあらゆる意味で危険性を孕んでいた。
「『ま、難しい事は偉い人がやってくれるよ』」
「そういえばあのおじいさんは……」
「『すぐ帰っちゃいましたね。儂の出番はここまでだって。ああいうの仕事人っていうんでしょうねぇ』」
「あの人も扱いは私達と変わらないはずなんだけどね。家が近いからってことなんだろうけど」
『確か銃とかいう武器だったか? あれで左目を潰したのはあの人間の仕業というが』
「『本人は決して言わなかったけど自衛隊の人の見立てじゃ確実にかつての大戦の生き残りだっていう話だよ。南方帰りじゃないかって』」
『人間の歴史というのは知らんがそれなりの修羅場を渡ってきたのだろうな』
セイウンスカイやバルファルクと共に戦ったあの老人だがあの後二人をユクモ村まで先導した後普通に帰ってしまっていた。当初は情報保全のために自衛隊側で二人と同じように旅館に泊まってもらう方針だったのだが、ユクモ村ではないとはいえ、家がそれなりに近所で本人の気質からいたずらに言いふらす真似はしないだろうというセイウンスカイや旅館の女将からの信頼で扱いはそのままになっている。
結局、今回の事件に際して最終的な扱いとしては表向きユクモ村周辺での火山活動の活発化ということに決まった。セイウンスカイとトレーナーが予定を超えて旅館に逗留することになったのも、火山活動の活発化により道路が寸断されて安全に帰る保障ができないからというのが建前である。セイウンスカイとしては以前のバルファルクの文字履修騒動のように、世界中から注目が集まるのは避けられたことに安堵したものの、やはり家族からはトレーナーを是非モノにしてこいと全く別方面からのエールを送られたために旅館に滞在する8月いっぱい終始気が気でなかった。
なおそのことに関してバルファルクは『まだ
ちなみにセイウンスカイとトレーナーの仲については無事にセイちゃんクオリティが発動した結果となっている。
9月。
如何な夏休みを過ごそうが終われば皆、変わらずの学生生活である。
セイウンスカイもまた例に漏れず再び学園に戻り学園生活を全うする。
始業式初日、友人達との団欒もそこそこにセイウンスカイは呼ばれることも無く自ら旧理科準備室へ訪れていた。
「久しぶりだねぇ、スカイ君。私が聞いたところによると……大変、大っ変、大きな進展があったかと思うんだがどうかな?」
「何で知ってるかは突っ込みませんよ。どうせそういう"筋"でしょうし」
「勿体振らずに教えてくれたまえよ。私のは結局、人伝の情報でしかないからねぇ。やはり当事者から直接聞くのが一番じゃあないか」
アグネスタキオンは期待に目を輝かせてセイウンスカイに説明を促す。アグネスタキオンは各所から"例外"という扱いだ。そもそもの文字騒動の発端でありまたバルファルクに単独で近付いても攻撃を受けない特異性はアグネスタキオンを縛るのに難解な姿勢を方々にもたらした。当のバルファルクからすればアグネスタキオンの事などどうでもいいとしか思っていないのだが。
「はぁ……。まずは龍属性の認識から。ご先祖様と龍神の記憶からある程度この力の使い方が分かりました。これはダイダラボッチからも聞いたんですが、私が以前定義した【古龍】はやはりこの龍属性を内包していて、その【古龍】ごとの特徴に沿ってそれを出力しているんだそうです。最初にここで見た鋼の龍なら風を、上野の博物館で見た大蛇の龍は……隕石? ご先祖様と一緒にいた龍神様は嵐を、といった具合です」
「生物が持つにしては随分と超常的な能力だね。しかし君が言うダイダラボッチ……正式名称が巨戟龍ゴグマジオスだったかな? あれにはそれらしき能力が見当たらないが」
「あれ、もうそんな名前すらあるんですか……。ええと、ダイダラボッチに言わせると龍属性を持っていてもそれを出力できるかどうかは種族ごとに異なるんだそうです。なんていうか……彼らの言う【古龍】は基本的に生まれた時点で種族としての強さが決まっているそうで、本来は【古龍】同士で戦うなんてしないんですって。強大な龍であればあるほど内包する龍属性の強さが目視できる距離にいなくても感じ取れるそうですから、力の弱い龍は強大な龍を避けるのが普通だったみたいです。ダイダラボッチからすると龍神様とバルファルクはどっちも弱い方に入るそうで、どうして弱い方から戦いに来たのか理解できないでいるようでした」
ダイダラボッチ────政府の方では既存の伝承と被るため極秘裏にだがバルファルクの命名法則に倣い巨戟龍ゴグマジオスと新たに名が定められた。"戟"の由来には背部の甲殻から突出した突起が武器のように見えるから、とされている。
「ほーう。最初から格付けが決まっていると。なるほど、つまり【古龍】は強大な生体エネルギーである龍属性に対して遠距離から察知できるレーダーのような知覚能力を併せ持つわけか」
「それと、私が完全にバルファルクの"言葉"を理解できるようになった件についてなんですが二つ分かった事があります。一つは私自身の意識の問題。これは以前からタキオンさんの方からも指摘があったと思います」
「そうだねぇ。言ってしまえば自転車を漕げるようになるのと同じだよ。漕げるようになる前は膝小僧を擦りむいて練習するものだが一度出来てしまえば忘れることなんて無いだろう?」
「今は完全にそんな感じですね。聞こえる、分かるっていうのが今は普通です」
「もう一つは?」
「ご先祖様の記憶からなんですけど、"言葉"が通じる能力だけは龍属性に由来しない可能性が出てきたんです。私の交信能力がご先祖様に由来している可能性はあるんですが、記憶を見る限りご先祖様の子供や孫がそういった交信能力に目覚めている様子はありませんでした。バルファルクに聞いてみれば富士山で私と会った際に、私がスペちゃん達と話している様子が"言葉"として理解できたから興味を持ったそうなんです。ご先祖様の記憶も龍神様との最初の出会いはご先祖様の一方的な文句からなので、交信能力はともかく、"言葉"については【古龍】じゃなく私達の方に何らかの
「ふむ……。君の能力が遺伝由来なら、例えば君のおばあさんにだって発現していてもおかしくはない。しかし、そもそも【古龍】と出会えること自体が極めて稀なのだから、能力が発現していてもそれを自覚できるかはまた別問題と考えられる。……うーむ、龍属性については進んだが、君の交信能力についてはますます謎が深まったね」
「それについてなんですけど、遺伝由来なのかどうか調べるのに巻き込みたい方がいまして」
「おやおや、君の方から実験のお誘いとは。巻き込みたいのは誰なんだい?」
「実はこの後トレーナーを通して併走をお願いしているんです。夏休み明け初日なのに快く引き受けてくれまして。なので午後ターフに来てもらえれば分かりますよ」
「お、来たなぁ。あんたが話題のセイウンスカイか」
「本日はよろしくお願いしますね、タマモクロス先輩」
「かーっ。堅い堅い。ウチ相手にそんな気使わんといてな。併走前なんや、もうちょいリラックスしたらええよ」
午後、ターフにて。
始業式ということで時間割は早く繰り上げられ、午後一からターフでの時間が取れたセイウンスカイは併走相手であるタマモクロスに挨拶していた。
タマモクロス。
身長は140cm程とセイウンスカイより小柄ながら18戦9勝という競走成績をあげた大優駿。宝塚記念と春秋天皇賞を制覇しており年度代表ウマ娘にも選ばれた功績を残している。白い稲妻とも形容されるその闘志は体格を感じさせない程の熱気を放つ。勝ち気な性格ではあるが、妹弟達を多数育ててきた経験から後輩への面倒見も良く方々から慕われるウマ娘である。
既に現役は引退しており卒業するまで後輩ウマ娘達の相談役のような立ち位置でいる。既にピークは過ぎてはいるものの、こうした後輩達への指導で見せる走りは現役時と変わらないパフォーマンスを披露していた。
セイウンスカイが巻き込みたい相手とは何をかくそうこのタマモクロスに他ならなかった。
「そういえば……オグリ先輩? オグリ先輩は何故いるんです?」
「私はタマの付き添いだ。タマは基本的に優しいが、こういうことに手を抜かないからな。それに、それを言うならそっちの白衣の……アグネスタキオンだったか? 彼女がいるのも気になる」
「私もただの付き添いさ。最近は色々とスカイ君と仲良くすることが多くてねぇ」
「おーい。駄弁るのは走らん二人だけにしといてな。ほな、ちゃちゃっと始めよか」
「はい! 今行きます!」
併走は順調であった。タマモクロスは稀有な才能を持ちセイウンスカイが仮想敵とする同期五人の脚質全てで走ることができる。完全再現とはいかないまでも、逃げのスローペースを主軸とするセイウンスカイにとって、追い上げてくる強烈な先行や差しを擬似的に体験出来る機会を得られたのは大変な収穫であった。
「ふぅー。あんたいい走りするなぁ。逃げいうたらかなり博打せなあかんというのに、上手く制御できとるやないの」
「……ふぅ。全部抜かれてるじゃないですか」
「そらまぁ二人だけやもんな。あそこで駄弁ってる二人連れてきたらまた変わるやろうけども」
「いやいや、タマ先輩と併走できるだけでも凄いのにオグリ先輩とだなんて」
「あいつなー。ごっつ人気あるけども本人はマイペースやねん。そんな気使う必要あらへんよ。次に誘ってみたらええ。ついでにそこのタキオンを誘えば脚質揃って良いレースになるなぁ」
時々タマモクロスがセイウンスカイに気になった点をあげトレーナー監修の元修正しながら走り込む。
セイウンスカイが次走として狙うホープフル・ステークスはG1だ。レースのタイトルで難易度が変わるわけではないが初回からG1ということでトレーナーの指導にも熱が入っていた。
ここまではごく普通のトレーニング風景である。もちろんセイウンスカイもクラシックに挑む競技者としてこのトレーニングは実りあるものだったがセイウンスカイとアグネスタキオンの狙いは別にあった。
併走の終わり際、9月に入ったばかりでは未だ残暑厳しく長時間の屋外トレーニングは熱中症を招きかねない。程よく走ったところで一度室内で休憩しようと校舎に戻ろうとした時だった。
噴進音を響かせて、赤い輝きが入道雲を超えて現れる。セイウンスカイにとっては見慣れた風景だが、オグリキャップとタマモクロスは驚いていた。
実は併走を始める前、セイウンスカイはバルファルクに一定の時間になるまでターフを離れるよう頼んでいた。セイウンスカイとバルファルクが会話できるようになったとはいえ、依然として事情を知らない大半の人間からすればまだ猛獣扱いである。ターフで円滑にトレーニングできるようにするための措置であった。
バルファルクがターフの中央ではなくセイウンスカイ達の前に降り立つ。気を利かせてか、バルファルクは以前のような荒い着陸はせずに巧みな制御でゆっくりと芝生に降り立った。
セイウンスカイの狙いはただ一つ、タマモクロスの"言葉"がバルファルクに通じるかである。
(まさかとは思うんだけどね。芦毛で気の強い関西弁って言ったらこの人だし。見た目もタマ先輩の方が似てる気がするんだよね~)
『おい。この小さい方がそうなのか?』
『もしかしたらね。ちょっと"言葉"を聞いてみてよ』
ある種の山勘であった。芦毛の関西弁などそれこそ関西に行けば幾らでもいる。とはいえセイウンスカイとしてはこの手の直感に裏切られたことが無いためその直感には素直に従っていた。
相対するタマモクロスとバルファルク。セイウンスカイは敢えて一言も告げずにタマモクロスとバルファルクの行く末を見守っていた。アグネスタキオンは興奮が抑えられないのかいつも以上に狂喜的な笑顔で二人を見ている。
タマモクロスとオグリキャップはただ困惑していた。セイウンスカイがバルファルクと仲が良いのは知っている。しかしそのバルファルクがセイウンスカイではなく自分達に、正確に言えばタマモクロスに向かってくるのは訳が分からなかった。
相対して何分か経つ。オグリキャップとタマモクロスはチラチラとバルファルクに詳しいはずのセイウンスカイに助け船を求めたがセイウンスカイは行動しなかった。セイウンスカイとしては自分を通さずバルファルクにもっとヒトに興味を向けてもらいたいため今回の顔合わせにはなるべく口出ししたくなかったのだ。
しばらくの沈黙の元、タマモクロスが口を開く。
「『……う、ウチになんか用か?』」
『おい、こいつの言葉、聞こえるぞ』
「『いや、聞こえるんかい』」
思わず関西弁が移るセイウンスカイであった。
言葉通じる子、増えました