いやぁ、ワイルズの新情報凄いですね。違うフィールドですらシームレス移動とは……
何よりクック先生とババコンガですよ。初心者の頃クック先生には森丘で焼かれた思い出が甦ります。ババコンガは兎に角睡眠爆殺ですね。2Gの頃訓練所ヘビィで亜種相手に完封する攻略がありましたねぇ
年明け
「うぅ……変じゃないかな……」
元日元旦。
姿見の前でセイウンスカイは唸っていた。
着ているのはいつもの制服や私服ではない。実家から送りつけられてきた由緒正しい振り袖である。
「何言ってんだ! あたしが太鼓判押すよ! それを着て堂々としてな!」
唸るセイウンスカイを後ろで鼓舞するのは寮長であるヒシアマゾンである。一人では着付けできないと、セイウンスカイはヒシアマゾンに泣きつき見かねたヒシアマゾンは嬉々として着飾った。
「さぁ! それであんたのトレーナーを驚かせてやんな!」
ヒシアマゾンの激を受けセイウンスカイは足元を引きずるように歩いて外へ向かう。
(もう……みんな気が早すぎるよ……)
振り袖と共に送られた実家からのメッセージにただただ辟易するしかないセイウンスカイであった。
ホープフルステークスを勝った後、勝利の余韻に浸り過ぎてうっかりバルファルクの存在を忘れていたセイウンスカイ。まだトレセンに来たばかりの頃のように寮の外から窓辺に前足を乗せて部屋の中を覗き込む姿は中々シュールである。まだ夜明け前なのもあって同室のサクラローレルが起きる前には何とか退いてもらえたものの、去り際に『俺の事最近忘れていないか……?』と呟かれたのはセイウンスカイにとって衝撃的だった。
(あいつ、寂しいって感情あるんだ)
今まで孤独を過ごしてきたバルファルクであったがセイウンスカイと関わるようになり、良くも悪くも刺激的な体験を多くするようになった。それらの体験が今のセイウンスカイとバルファルクの関係を構築している。バルファルク自身も、本人(本龍?)は気付いていないが徐々に興味の対象をセイウンスカイ一人ではなくその周囲に向けている節がある。セイウンスカイからすれば嬉しい成長であった。
ホープフルステークス以前はトレーニングを詰め込むのと暇さえあれば上野に通っていたセイウンスカイ。もちろん1日のどこかで必ずバルファルクと話していたものの色々と忙しくなるあまり、どこかおざなりになっていたと言われればぐうの音も出ない。さすがに悪い気がしたセイウンスカイは年始の予定変更をバルファルクとトレーナーに伝え同行をお願いする運びとなった。
ちなみにバルファルクが伝えたがっていたライブの感想であるが、一言『頑張ったな!』である。どちらかというとそのセリフは無理して感想を絞り出したバルファルクに向けてセイウンスカイが言うセリフだと彼女は苦笑いしている。いつぞやの友人達の言う通り、バルファルクに人間らしい感性を求めるのは間違いだろうとセイウンスカイは己を納得させた。
さて年を跨ぎ年始である。
トレセン正門前へ向かったのは車の前でいつも通りのスーツ姿で待つトレーナーである。停車する車はあまり車に詳しくないセイウンスカイでも知っている国産高級車でありそれが一層セイウンスカイの緊張を引き上げた。
「明けましておめでとう。今年もよろしくね。……その振り袖、よく似合ってるよ」
「あ、ああ明けましておめでとうございます! 今年もどうぞよろひゅくお願いしましゅ」
狼狽え噛みながらも新年の挨拶をするセイウンスカイの手を取り車までエスコートするトレーナー。動き慣れない格好のセイウンスカイを心配した心からの善意であったのだが手を取られた時点でセイウンスカイの顔はゆでダコのように真っ赤になりろくな言葉すら話せなくなっていた。
これから向かうのはトレセン近郊の神社ではない。
二人が向かうのはあのゴグマジオス事件のきっかけとなったアマツマガツチが祀られる神社である。実は事件の終息後かねてからアグネスタキオンを通じてセイウンスカイが国に本殿の建て直しを依頼しており、ちょうど年末前に竣工したとの連絡を受けていたため思いきったセイウンスカイはバルファルクも参拝できる場所として方々に声をかけたのだった。
まずはセイウンスカイの実家へ挨拶に伺う二人。振り袖姿のセイウンスカイを見た彼女の祖父が亡き祖母の生き写しだと涙を流すトラブルもあったがそれ以外は滞りなく、どこかニヤニヤした親戚達に見送られた二人は挨拶も早々に再びユクモ村へ訪れた。
あの旅館前には女将と猟師の老人がいる。あのゴグマジオスに関わった者達みんなで再建された神社にお参りしようと、セイウンスカイの呼び掛けに集まってくれていた。
「皆さんお久しぶりです。急な話だったのに来てくれてありがとうございます」
「いやいや、礼を言うのは儂の方だよ。まさかまたあの神社でお参りできるなんてな」
「セイウンスカイ様、私の方からも改めて御礼申し上げます。村の危機に尽力して下さった運び、感謝の念に絶えません」
挨拶もそこそこに和気あいあいと談笑しながら神社へ向かう一行。以前はろくな整備がされていない山道であったが事件以降ゴグマジオスの管理と調査で人が出入りするようになり、村周辺だけでなく山道も含めて整備されたために車でも神社や決戦の地の大穴まで行けるようになっている。
「お嬢さん、その振り袖よく似合っとるなぁ。確かあんたのばあさんが着てたのと同じ着物だよ」
「あっ、そうなんですね。……だからおじいちゃん泣いてたのかな」
「スカイは可愛い系だけど、それを着ると美人に見えるよね。きっとおばあさんも綺麗な方だったんだろうな」
「そりゃそうさ! 気紛れで誰にも靡かない男勝りな女でね。あんたのじいさんが射止めたと聞いた時はどうやったものか村の男みんなが嫉妬したもんだよ。お嬢さんもほんまに可愛いなぁ」
「あははは。褒めすぎですって。私はどこにでもいるしがない普通のウマ娘ですよー」
「失礼ながらセイウンスカイ様はご自身の魅力についてもっと自覚された方がよろしいかと。件の龍について差し引いてもセイウンスカイ様ほど魅力に溢れた方はそういませんよ」
「え……私怒られてる……? 魅力とかそういう話で……?」
「スカイ様が少し微笑みかけるだけで大抵の男は堕ちますよ。それだけの資質をお持ちでいらっしゃいます」
「女将さんには同意ですね。スカイは素敵な女の子だよ」
「なっなな、にゃにをいってるんですかトレーナーさん!?」
集まった大人達全員がセイウンスカイを褒めるのでセイウンスカイはたじたじである。これがエルコンドルパサー辺りなら真に受けて天狗になりそうなものだが真っ直ぐな好意には弱いのがセイウンスカイというウマ娘の魅力だ。あたふたと、身振り手振りを交えて必死に弁解する様子は、まだ寒いこの季節に大人達の心へぬくもりを与えた。
そうこうしているうちに神社へ到着した。徒歩で一時間以上かかった道のりも整備され、車で行けばおよそ10分ほどである。本殿前は石畳を挟んでバルファルクと自衛隊特選群の隊員が数人、整列して一行を待っていた。
『おい。おまえ達、遅いぞ』
「『遅いなんて言わないでほしいなぁ。君より速い存在はこの世にいないんだよ?』」
『当然だ。今のは言葉の綾というやつだな』
「『ちょっと言葉の使い方違う気がするなぁ』」
「お久しぶりです、セイウンスカイさん。新年明けましておめでとうございます!」
「『自衛隊さんも明けましておめでとうございます。陰ながらご迷惑おかけしますが今年もよろしくお願いします』」
「ご迷惑だなんてとんでもない。それが我々の任務ですので」
隊員達はいつもの迷彩ではなく所属を示す制服を着ている。見ればあの比較的年長だと思われる隊長はおらずトレーナーと同じ年頃の若い男性達で構成されている。隊員達に聞けば隊長は別の任務に就いているとの事で察しの良いセイウンスカイは曖昧な笑みをする他無かった。
実はセイウンスカイと彼女を護衛する特戦群の間に正式なチャンネルは無い。セイウンスカイがアマツマガツチの神社に参拝すると決めた際どうしてもお世話になった自衛隊の護衛に礼がしたいとアグネスタキオンに話し、そこからアグネスタキオンの両親を通じて自衛隊にまで話が届いたのだ。
自衛隊と仲良くしたいセイウンスカイだが直接的なやり取りは政府の方針でしないことになっている。政府としてはあくまで何も知らないセイウンスカイを秘密裏に守っているという体でいたいらしく、アグネスタキオンからその事を聞いたセイウンスカイはお偉いさんも大変なんだなぁ、と人知れず奮闘する自衛隊や関係閣僚に的外れな感謝の念を抱いていた。
「『よしっ。それじゃあお参りしましょうか』」
『それはいいが。ところでお参りとは何をするんだ?』
「『お参りっていうのはね、神社に行ってそこで祀られてる神様にお祈りすることだよ。一年の一番最初に神社に行って今年一年またよろしくお願いしますって仕事や勉強……あと、恋愛の事とか祈るんだ』」
『うーむ。セイウンスカイと話せるようになってから色々とおまえ達人間の事を知れるようになったがまだ分からん事の方が多いなぁ。それをやって何か得られるのか?』
「ああ。バルファルクはお参りが分からないからスカイが教えてるんだね」
「改めて見ると凄い光景ですね。私達には一切分かりませんが本当に会話しているように見えます」
「『あはは……。バルファルクはお参りの事よく分かってないみたいですけどね。バルファルク、何となくでいいから私達の真似をすればいいよ。こういうのって最初は分からなくても後から意味が付くものだからね』」
『分かった。セイウンスカイが言うならそう考えよう』
「はぁ……。かつての初代様が水神様相手に同じ事してたって聞くと感慨深いなぁ」
「『あ、おじいさん。ここでお参りする時に独自の作法とかってあったりしますか? あるならそちらに合わせたいです』」
「そういうのは特に無いぞ。みんな思い思いに参拝してたな。しきたりとか堅苦しいもんは無かったはずだ」
二拝二拍手一拝。本殿の前で皆が一様に手を合わせる。
本殿の中にはあのアマツマガツチの角で作られた弓が改めて神具として奉納されておりセイウンスカイはそれに向けて祈りを捧げていた。
(今年こそ何事も起こりませんようお願いしますアマツマガツチ様。あと出来ればトレーナーとの仲が良い感じのペースで進展すると嬉しいかなって)
やたらとお願い事が多いセイウンスカイ。
バルファルクは一行の後ろで邪魔にならないよう見様見真似で槍翼を動かし同じ動きをする。ちょうど槍翼が腕のように動かせるので意外と格好は様になっていた。
『こんな感じでいいのか?』
「『そうそう。バルファルクは何かお願い事とかした?』」
『そういうのは特に思い付かないな。願うくらいなら自力で実行している。そういうセイウンスカイはどうなんだ?』
「『えへへ、私のは秘密だよ。女の子はこういうの、秘密にするものなんだ』」
「私はスカイがこの先のレースでケガ無く勝てるように祈ったよ。無事是名バを目指してほしいんだ」
「儂もお兄さんと同じ事を祈ったぞ。お嬢さんは大人しいようで意外と向こう見ずだからな。ケガなんぞしてほしくない」
「皆様、セイウンスカイ様を大変愛してらっしゃるのですね。私もご不幸が無いようお祈りしましたわ」
「我々もセイウンスカイさんの護衛に尽力できるようお祈りしました!」
「『な、なんでみんなそんなに私の事を……』」
「嬢ちゃん良い子だからなぁ。可愛い子には自然とみんな甘くなっちまうもんよ」
「『……ええっと、ほら私久しぶりにダイダラボッチ……じゃなかったゴグマジオスの方にも顔出してきますから!』」
『待て、俺も行く』
照れ隠しに慌てながら大穴へ向かうセイウンスカイ。
新年の参拝もそうだが8月以降大人しいゴグマジオスとは全く会えていなかったため参拝のついでにと大穴にいるゴグマジオスにも会うつもりでいた。
さすがに大穴付近は整備されたとはいえ危険な地形が多いために特戦群の先導付きである。かつて決着の折り、相対したあの淵から大穴を見下ろしてみれば無骨な鉄骨の骨組みが大穴の底から顔を覗かせている。極秘裏ではあるが地下資源の調査という名目でゴグマジオスを収容するための施設を建設している最中なのだ。
セイウンスカイが大穴を見下ろしていると予想していた大きな影がゆっくりと、それでも地響きを鳴らしながら穴の壁を這いずり上がってきた。
ゴグマジオスはセイウンスカイの気配に気付いていたようで、穴の淵から上半身を乗せて嬉しそうにセイウンスカイに話しかけていた。
『セイウンスカイ、ヒサシブリ』
「『久しぶりだね。元気してた?』」
『ウン。ココニイルト、チイサイノ、タベモノイッパイクレル。ウレシイ』
「『うんうん。それは良かった』」
ゴグマジオスの餌となる硫黄だがこれに困ることは無かった。硫黄と聞くと火山資源に聞こえるため山から掘り出されるイメージがあるが、実際に日本で使われる硫黄の生産元は輸入した石油を精製する際に行われる脱硫で発生する副産物がほとんどである。石油輸入大国である日本はそれに伴って硫黄の生産量も世界上位であり数少ない日本の輸出資源でもあるのだ。
ゴグマジオス一頭を賄うのに必要な硫黄の量は日本全体から見ればさほど多い量ではなかった。
『おい黒いの。貴様ただでさえ臭いのだからそれ以上近づくな。セイウンスカイが穢れる』
『ヒサシブリナノニ。オマエダケ、イツモイッショ。ズルイ』
「『こらこら、喧嘩しないの。バルファルク、普段ゴグマジオスとは会ってないんだから意地悪しちゃダメだよ』」
『ぐっ……』
『オコラレテル。イイキミ』
「『君も調子に乗らない。またボコボコにされたいの?』」
『ソレハ……ヤダ』
『ふん。おまえはセイウンスカイの言う事に従っていればいいんだ』
「『君も人の話聞かない方だからね?』」
やはりだがバルファルクはゴグマジオスの事が気に入らないらしい。だがセイウンスカイがいる手前喧嘩などできようはずもなく、しょうもない罵り合いに終始していた。セイウンスカイからすれば体がデカいガキんちょ二匹抱えているようなものである。セイウンスカイが一喝しないと止まらないため顔合わせも早々にバルファルクを連れて大穴を後にした。
この日レースの勝利とは別の意味で充足感を得られたセイウンスカイ。
バルファルクのせいで(半分くらいはセイウンスカイ自身が原因だが)面倒事に巻き込まれがちではあるが、弓の記憶から自身が巻き込まれた運命に逃げようとせず正面きって立ち向かうことを彼女は選んでいる。何事も無いのが一番だが、それでも面倒事は向こうからやってくるのだと、心新たに新年に進むことを決意していた。
「ん……? なんやあれ……」
同じ頃。
タマモクロスもまた実家に帰省し大切な家族との団欒に勤しむ。寮生活というのは離れてくらす家族に寂しさを与えるようで、まだ幼い子供達を抱えるタマモクロスの家庭は長女である彼女の存在がとても大きい。
「タケノコ……? もしかして光っとるんか?」
家族達の引き留めるような視線を我慢してトレセンへ向かう帰り道だった。
タマモクロスは不思議な現象に遭遇する。不思議に光るタケノコに何故かタマモクロスが惹かれてしまう。
(タケノコが光るだと……我々では観測できない)
護衛を勤める特戦群がタマモクロスの様子に疑問を感じる。フラフラと道からそれて竹林に進むその姿はまるで夢遊病患者のようだ。もしアグネスタキオンがこの場にいることが出来たのならこう言うだろう。────まるでいつかのセイウンスカイのようだと。
(対象に異常発生。これより確保に向か────)
昏倒。
声を上げる間もなく倒れた隊員が最後に見たのは急成長し謎の気体を漏らす竹林であった。
セイちゃんって老人受け良い子だと思うんですよね
それはさておき不穏な年始です。新古龍登場のフラグですね