セイウンスカイとバルファルク   作:エドレア

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皆様、日々のご愛読誠にありがとうございます。
さて前回言った通りアルバトリオンについては盛りました。そのまま登場すると環境がやベー事になるので頭だけのご出演。まぁ禁忌の一角だし何も分からんやつだから多少はいいよねって事でどうぞ


時空からのお便り

 

 

 

 

 

 

(なにこれ……信じられない……)

 

 セイウンスカイは目の前の光景が信じられなかった。

 全く分からない原理で宙に浮く頭と首は、何かしら人間が理解できない理屈によって別の場所から覗いているのだということを理解せざるを得なかった。

 そしてその頭と首だけでセイウンスカイの知るあらゆる"龍"と、いや全生物から隔絶したナニカであることが、脳による理解ではなく魂に刻みつけられた。

 

(なんだよ、この圧迫感……。あの大蛇よりヤバい……!)

 

 ネオユニヴァースは依然として椅子に座っており平静を保っていて、それがよりセイウンスカイに理解させるのを苦しめていた。あれだけの存在感、近くにいるだけで息が詰まるどころかそのまま窒息死しかねない重圧がある。それを指してネオユニヴァースは友達と呼ぶので、ますますセイウンスカイは状況が分からなくなっていた。

 

『おい、しっかりしろセイウンスカイ。何でもいいから俺に掴まっておけ。いざとなれば緊急離脱をするぞ』

『……』

『セイウンスカイ!』

『あぁ……うん。聞こえてる……。ごめん、あいつの存在感ヤバすぎてさ……』

 

「……最初の"コンタクト"、失敗……? "交信"は継続……」

 

 セイウンスカイとバルファルクの反応が想定したものと違ったのかネオユニヴァースが首を傾げながら近付いてくる。それ自体は可愛いらしい動作なのだが、あろうことかあの頭も隣について来るためそのシュールさがあまりに不気味過ぎた。

 パニックになりそうな感情を抑えてネオユニヴァースに話しかけるセイウンスカイ。逃げることは簡単なのだがどう考えても尋常ではない存在を放置するのは後々に禍根を生みかねないと理性で判断した。

 

「『あの、ネオユニヴァースさん、隣のそれは……なに?』」

「……"遭遇"……"異種生命体"……。ネオユニヴァースは『仲良くなった』よ」

「『よし……ギリギリまだ何とか分かる言葉だ……。それでそれが何か私達に用事でもあるのかな?』」

 

 セイウンスカイの問いかけにネオユニヴァースは答えなかった。代わりに謎の龍へ両手を掲げている。

 

(お願いだから理解できる行動してくれないかな!?)

 

 セイウンスカイが冷静さを保っていられるのは一重にバルファルクがいるおかげである。そうでなくては遭遇した時点で逃げだしていてもおかしくはない。

 何かの交信をしているのか、ネオユニヴァースは腕を掲げていたがやがて腕を下ろすと謎の龍がまたゆっくりと近付いてくる。

 

「"交信"……『記憶の共有』。貴方達に伝えたい事が────」

 

 ネオユニヴァースの言葉が続く前に謎の龍から黒い稲光が瞬く。その瞬間セイウンスカイの視界には今見ているものと別の映像が映っていた。

 

(……なにこれ。海の中? 何かウネウネ動いてる……?)

 

(骨? 2つの頭が……いや、これもしかして腕か! 何かが骨を纏ってあたかも生き物のように見せてるんだ。骨の下は……なんだろう。イカみたいなタコみたいな……)

 

(何かを追いかけてる? 白い……大きな角。食べようとしてる……? あれ、なんかそこら中の生き物食い荒らしてない?)

 

 映像の最後は巨大な何かが極大の龍属性のブレスを視界の主に向かって放っていたところで終わっていた。

 

「『……なんだったの今の……』」

「セイウンスカイ」

「『わひゃあ!?』」

 

 映像を見ていた時間は一秒にも満たないがその間にネオユニヴァースはセイウンスカイに近づきなぜか後ろからセイウンスカイの頬をつついていた。

 

「"ミッションコンプリート"……交信は達成……」

「『いやもうほんとにあなたなんなんですか』」

「最後に一つだけ」

 

 すぅっと音も無く頭だけの謎の龍がセイウンスカイに近付いてくる。

 

 ────そのうちこっちの世界もよろしくね

 

「『は……?』」

 

 声にもならない思念のようなものが伝わってくると突如として謎の龍は消失し、辺りには静寂が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フゥん……。なるほどね、つまり君達が山で受けたのはある種の注意喚起だと」

「多分、そうなんじゃないかなとは思いますが……」

 

 昼。

 とりあえず事態は落ち着いたためネオユニヴァースを連れて民宿に戻ってきたセイウンスカイ。バルファルクは他に異常が無いか周囲を警戒して飛んでいる。

 セイウンスカイは先ほど起きた事態を昼食の最中にチームへ相談していた。

 

「ああ、やだやだ。落ち着いたかと思えばまた厄介事かい。全く困るねぇ」

「スカイ、気負わんでええ。今ならウチもおる。イナガミも呼んどるからウチを頼ってや」

「ありがとうございます、タマモ先輩。でも今回の相手は……海の中っぽいんですよね」

「それに龍の姿をしていないんだろう? 君達の能力が有効か、ちょっと分からないんじゃないかな」

「ともかく、政府筋には私の伝手で知らせておくよ。万が一、ということもあるからね」

「皆さんありがとうございます……。できれば話が通じる相手だといいなぁ……」

 

 セイウンスカイが横目でチラリとネオユニヴァースを見る。そこにはニンジン丸ごと一つ入ったカレーをもっきゅもっきゅと食べているネオユニヴァースの姿があった。これだけ見ると小動物的な可愛さがあるのだから何とも憎らしい。

 

「それで……ネオユニヴァースさんに"龍呼びの声"としての力が無いっていうのは信じていいんですかね」

「本人の証言のみ、というのもあるが彼女は分かり辛いだけで嘘を付くような真似はしないよ。交信というのも本当なんだろう。私としては何とも興味がそそられる話だがねぇ」

 

 ネオユニヴァースに"龍呼びの声"としての能力は無い。これは本人の自弁をアグネスタキオンが訳した言伝である。

 どうもネオユニヴァースは自前で並行世界を観測する能力があるらしいのだが(この時点でチームの大半は?でいっぱいである)、ある時別世界からの干渉で自身を対象とした観測ができなくなったらしい。代わりにその別世界の存在と交流するようになり今回のコンタクトはその別世界の存在たってのお願いということであった。

 

「無いなら無いでなんで交流できてるんですかね……」

「本人はチャンネルの同期と話していたよ。言葉は分からないがイメージは共有できるらしい。おそらくなんだが、彼女が並行世界を観測する際に何かしら周波数のようなものを使っていて、それが別世界とリンクしたからではないかな」

「専門的な事はそちらにお任せします。何かもう理解が追い付かないです」

「……ひとまず、方針としては普通にトレーニングを行っていこう。正直こういった警戒についてはバルファルクを頼る他無いからね。もし本当に何かあれば国の偉い人からお話もあるだろうし」

「だね。こんなところで躓いていられないさ。そら、しっかり食べて力を付けるんだよ。明日からビシバシしごいてやるからねぇ!」

 

 セイウンスカイのトレーナーが纏めそれにタマモクロスのトレーナーが発破をかける。

 不穏な初日となったが今の段階でできる事は何もない。例え警察といえど起きてもいない事件の犯人を捕まえることなどできやしないのだ。

 不穏さに警戒しつつも、チーム【ドラコ】はセイウンスカイの菊花賞制覇に向けての準備を進めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~♪ ~♪」

 

 鼻歌混じりに散歩するセイウンスカイ。

 昼食の後、昼前と同じように散歩していた。昼前と違うのは山ではなく海沿いを歩いているところである。

 

(合宿じゃなきゃ釣り道具一式持って来てたんだけどなぁ)

 

 セイウンスカイの趣味の一つに釣りがある。海釣り、川釣り、穴場があればそこにひょっこり顔を出すのがセイウンスカイの楽しみだ。その関係で魚には結構詳しい。

 

(この時期ならイサキかマダイかなぁ。磯で結構釣れるんだよね)

『なんだ、魚が欲しいのか?』

『何も言ってないはずなんだけど』

『おまえがそうやって海の方を見ているときは大抵魚について考えてるときだ。なんだったら俺が獲ってきてやってもいいぞ』

『見分けつかないでしょうが。イルカ獲ってきてこれ美味しい魚だぞなんて言ってたでしょ』

『泳いでいるやつなら大体魚だろ』

『違うってば。生き物には詳しい区分があるの』

『食ってしまえば区分も何も無いではないか』

『食べていいやつとそうじゃないのがいるんだよ。人間は厳しいルールでそういうのに制限付けてるの』

『食べるのにもルールがいるのか。人間はこんなにも繁栄しているのに不便は事をしているのだなぁ』

『……君ほど自由なやつは他にいないと思うよ』

 

「あら?」

「……あれ?」

 

 セイウンスカイがバルファルクと雑談しながら歩いていると一人の少女が行く先に佇んでいるのが見える。彼女もセイウンスカイに気付いたようでなぜか驚きの声をあげていた。

 

「まぁ! 出会えればと思っていたけれど、まさかこんなにも早く会えるなんて!」

「え、えっと、どちら様?」

 

 セイウンスカイにとっては見ず知らずな相手である。金髪に麦わら帽子、白のワンピースに身を包むその姿はどこをとっても育ちの良さを感じずにはいられない。そんな知り合いなどいないはずなのだが。

 

(わたくし)ったらはしたない。ごめんなさい、ようやく貴方に会えて舞い上がってしまったみたい。無礼を許していただけるかしら」

「いやぁ……許すも何も……」

「私ね、貴方のファンなの。皐月賞、見事だったわね! ダービーでは残念だったけど、貴方なら次の菊花賞きっと勝てるわ!」

「あ、はい。ありがとうございます……?」

 

 少女の押しの強さに圧倒されるセイウンスカイ。

 ファンというのは本当なのだろう。実のところセイウンスカイはあまりファンとの交流を行っていない。クラシックで忙しいという建前はあるが、無闇な不特定多数との交流で余計な間者を紛れ込ませないという防諜意識もあった。

 とはいえセイウンスカイからすればそこまですることはないだろうという意思もあり行く行くは感謝祭などで顔を出していくつもりではあった。セイウンスカイは自身に人気があるのは一応理解している。ダービーでは一番人気であったわけで余計な注目をもっと作戦に活かせないかとトレーナーらと相談しているのだ。

 しかしこうした形で自分のファンと遭遇するのはセイウンスカイにとって初めての経験であった。

 

「えっと、サインとか要ります? ペンはありませんけど……」

「嬉しいお誘いだけどそれはまた今度にするわ。それよりもね……あら、来たみたい」

「来たって誰が……えっ」

「お嬢様、茶の用意が出来まし……おや?」

 

 振り返るとそこには見覚えのある優男な偉丈夫が、夏だというのに執事服を着て立っている。

 

「見ての通りよ。良かったらうちでお茶にしない? 貴方のお話────特に"龍"の話を、よく聞かせてほしいのよ」

 

 悪戯でも成功したかのような笑顔で、《騎士を従える少女》は茶目っ気たっぷりに笑うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(うわ、緊張する~。本物のお金持ちのお屋敷じゃん……)

「そう緊張なさらないで。貴方とは気兼ねなく話したいのよ」

 

 騎士の主人であるという少女に連れられて、セイウンスカイは高台にある別荘の一つを訪れていた。

 よくある洋式の私邸である。白を基調とし、下品にならない程度に細部を彩られたそれは、テレビで紹介されるような成金の豪邸を置き去りにする気品さを漂わせている。

 庭園もしっかり整備されており洋式の庭園は噴水によって流れる水の音ですら景観の一部として完成している。その庭園の奥、海を望む絶景のポイントでスコーンと紅茶が用意されていた。

 

「紅茶が苦手かしら? 日本人ならグリーンティーを好むのよね」

「あー、お構いなく。お茶の好き嫌いはありませんよ」

「そう? なら敬語もいらないわ。貴方と私、歳は大して変わらないもの。もっと砕けてほしいの」

「……いいんだ? あんまり砕けるのもどうかと思ったんだけど」

「いいのよ。だって私から押しかけて連れているようなものだもの。貴方とはファンであると同時にお友達でいたいわ」

「そっか。それなら遠慮なく。友達が増えるのは私もウェルカムだよ。ちょうど貴方達に聞きたい事が出来たしね……」

 

 セイウンスカイはネオユニヴァースを探した際に遭遇したあの謎の龍について話した。そして見せられた映像についても何か手掛かりが無いか聞いていた。

 

「時空を越える"龍"……。貴方、何か心当たりあるかしら」

「恐れながら寡聞にして存じ上げず……」

「貴方が分からないなら私も知らないわね。彼らの能力はおよそ人知を越えたものであることが多いのだけど、流石に空間を超越してくるのは類例すら聞いたことが無いわ」

「そうですか……」

「けれど、記憶から見せられた映像の方なら心当たりがあるわね」

「え、本当!?」

「心当たりというかそれそのものね。一件だけだけど、まだ独立していた頃のハワイで確認されているの。海岸の村を襲い全てを貪り尽くした怪物……私達はそれを【骸龍オストガロア】と呼称しているわ」

「骸龍オストガロア……」

「"龍"であるか疑わしい姿をしているけれど、龍属性と貴方が言う莫大なエネルギーを内包しているわ。間違いなく"龍"に該当する生物よ」

「性質は極めて獰猛であると推察されます。また、その甚大なエネルギーを維持するために食欲も旺盛であると」

「巨体からして本来は深海に生息しているはずの生物よ。ダイオウイカやマッコウクジラを食べているみたいだけど、足りなくなれば浅瀬にも現れるみたいね」

「えぇ……。たった一件だけなのにめちゃくちゃ詳しい……」

「当時の私達の仲間がちょうどそれを追っていたのよ。最終的にはハワイに政治的な圧力をかけるために来ていた日米の砲艦で撃退されたみたいだけどね」

「いやそれもう映画じゃん……」

「事が事なだけに"クラーケンを撃退した日米連合艦隊"というのは創作の題材では有名ですが、基本はフィクションであるのが前提です。実際に起きたとは信じられていないのです」

 

 少女が説明し騎士がそれを補足する。

 説明を聞いていたセイウンスカイは顔を青くするばかりであった。ゴクマジオスも人的被害を出しているが、あれは食料となる硫黄を求めての事で人間が対象なわけではない。だがオストガロアは自身以外の全ての生物を食料と見なしている。人間も例外には含まれない。

 

「もし本当にオストガロアが日本に近付いているのなら重大な脅威となるわ」

「はっ。急ぎオストガロアについての危機を日本政府に伝えます」

「我が国の王立海軍(ロイヤルネイビー)にもよ。ちょうどリムパックに参加するために【女王陛下】が横須賀に寄港しているでしょう。集められる戦力はいくらでも集めるべきだわ」

「えっ、あの、いくら何でも大事(オオゴト)じゃ……」

大事(オオゴト)大事(オオゴト)よ。過去に明確に人を襲っている実績がある相手よ。用心してし過ぎる事はないわ」

「……あの、うちだとタキオンさんが私から政府への窓口やってくれてるのでそれ経由の方が早いかもしれません……」

「あら。また敬語に戻ってるわよ」

 

 一体どういう伝手があるのか。

 スコーンの味など忘れセイウンスカイはテーブルに突っ伏していた。目の前では着々と対オストガロア包囲網として軍事に疎いセイウンスカイですらテレビで聞いたことがある艦名が挙げられていく。

 

 菊花賞対策と並行してオストガロア対策も進められることになるとは思わず胃が痛くなるセイウンスカイであった。

 

 

 

 

 




ワイルズOBT遊んでますがこれが体験版のボリュームなのかってぐらいヤバいですね。フィールド探索だけで飽きません。太刀も新モーションかっこ良すぎますし……

オストガロアがヤバい相手ならこっちもヤバい戦力揃えるんだよの精神です。
夏なんだ。敵も味方も派手に行こう(リアルはハロウィン)
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