セイウンスカイとバルファルク   作:エドレア

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皆様、日々ご愛読して頂き誠にありがとうございます
ワイルズOBT楽しかったですね。個人的にはフィールドの湧き数が片寄り過ぎてて悪天候でもレ・ダウを狩れたのが一回くらいなのが心残りでした。太刀手軽に火力出せて楽しいです!


ドキっ!564ちゃんの一本釣り作戦!

 

 

 

 

 

 

「『うわ……沖の方に見えてきたよ。でかいのに足早いんだね』」

『俺よりは遅いだろう』

「『今そういう話はしてないよ』」

 

 アグネスタキオンとゴールドシップの策。

 それを実現させるためにセイウンスカイは動いていた。

 

『だ、大丈夫なんだよね』

「『大丈夫だよ。上のお兄さんが君を守ってくれるから』」

『……ガキのお守りなどしたことないんだがな』

『ひぇ……やっぱりこのお兄さん怖いよ……』

「『バルファルク、子供をいじめないの』」

『俺が悪いのか!?こいつが殊更に臆病なだけだろう!』

 

 セイウンスカイは今砂浜から少し離れた洋上でナバルデウスの背に乗っていた。

 彼女の役割は単純である。ナバルデウスと共に少しでも可能な限りオストガロアを陸地に引き寄せる囮の役割を任されている。

 当初セイウンスカイの役割はあまりにも危険過ぎるとして方々から反対されたがセイウンスカイ自身が志願しこの位置にいた。アグネスタキオンの提唱する作戦はナバルデウスを標的としてセイウンスカイ達の砂浜付近にオストガロアを誘き寄せなければならないのである。

 

「『頼むよナバル君。合図したらやっちゃって。バルファルクも同じように』」

『おう、任された』

『分かった、がんばるよ!』

 

 セイウンスカイは無線を片手にタマモクロスとイナガミのいる砂浜を注視していた。

 

 

 

 

 

『やれやれ……タマモクロスに呼ばれたかと思えばこんな作業とは……』

「『すまんなぁ。今はイナガミのこういう力が必要やねん』」

 

 タマモクロスに呼ばれたイナガミは砂浜の波打ち際でせっせと木を生やしていた。汽水域に根を張る独特な生態を持ったマングローブである。日本では沖縄を中心に分布する南国を代表する樹木の一つだ。

 イナガミの能力を活用するにあたり農業面での貢献を果たしていたが、それとは別に特殊な生態を持った植物をイナガミは欲していた。基本的に植物であればイナガミの能力の対象であるので、イナガミの生息域にない植物でも有効活用ができるのだ。

 今イナガミは砂浜を隠すようにびっしりとマングローブを生やしまくっていた。

 

『まさかこんな海にまで出張ることになろうとは』

「『なんや?海は初めてか?』」

『初めてということはない。ただ我には縁が無いと思っていた。まさか海辺を好む木があるとはな』

「『そうやな。普通の植物は塩を嫌うんやったっけ』」

『おまえたちから紹介された他の土地の植物は中々面白い。竹ばかり扱ってきた我からすると色々と試したいことが思い浮かぶ。あのバルファルクだけにでかい顔はさせん』

「『そ、そか……。まぁ張り合うのはほどほどにしてくれな』」

 

 イナガミの背には革で作られた大きな袋があり中には様々な種類の植物の種が入っていた。この袋はイナガミが人間達に協力すると決めた際に要求した対価の一つである。

 バルファルクと戦った後のイナガミは戦闘に使える手数が他にないものかと思案していた。イナガミが竹を好んで使う理由が真っ直ぐに生長し硬くしなやかで、何よりも増やしやすいという理由からだ。

 竹は他の植物とは違った形で増えており地下茎という根とはまた違う部分を横に伸ばしそこからまた新たな芽を出すという繁殖を行う。言ってしまえば竹林というのは大部分が一つの竹から派生して生まれたクローン群なのである。他の植物であれば種から一々根を張るところからのスタートだが、竹であれば地下茎を思い通りに生長させて使えるので、利便性という意味では竹を重宝しているイナガミであった。

 しかしそれでは竹一辺倒になる。タマモクロスと人間に協力すると決めた際、様々な作物からこの世にはまだ知らない植物があるのではないかとイナガミは思い至り世界各国の植物図鑑をタマモクロスに翻訳してもらいながらイナガミは急速に力を付けていた。

 

 遠方から覗く水平線には蠢く異形の影がある。それをイナガミは臆することなく、むしろ今か今かと待ち構えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────ん?あそこにいるのは……そうかそうか。ようやく追い付いたぜぇ……!!!

 

 オストガロアは着々とナバルデウスの方へ向かっていた。

 かつて捕まえた時に覚えた臭いからナバルデウスの追跡は難しくない。いつの間にかオストガロアを攻撃していたミサイルや魚雷も止まりオストガロアは調子に乗って上部が海面からはみ出るほどの浅瀬にまで来ている。

 

『お、おい!おまえなんか怖くないぞ!こっちにはとっても強い人達がいるんだ!』

『ほーほー。そりゃあいい。さっきの空飛んでたやつのことかぁ?あいつは俺様に何もできなかったぜ?』

「『ようやく君の声が聞こえたよ、オストガロア。随分と威勢が良いみたいだね』」

『あン?誰だ?』

「『誰かと言われたら……そうだね、ただの人間だよ』」

 

 オストガロアがナバルデウスをよく見ると背には小さな生き物が乗っている。かつてハワイで食ってやった無力でどうしようもない生き物だ。

 

『なんだおまえ?俺様の言葉が分かるのかよ。変なやつだぜ。それで、そいつの背に乗って何しに来たんだ?そいつと一緒に食われようってんなら大歓迎だぜ。おまえらは大して旨かないけどな!』

 

 げらげらと笑うオストガロア。オストガロアにしてみれば食う対象が一つ増えただけに過ぎない。それもナバルデウスより遥かに弱い存在だ。何一つ考慮する事が無い。

 このオストガロアは悪趣味な癖を持っていて獲物の断末魔を異常なほど好んでいた。普通に捕食すればいいものを、触手でじわじわと縛り上げ苦痛に歪み泣き叫ぶ姿を至上のスパイスとしていたのだ。かつてハワイを襲った時も逃げ惑う人間を見て悦に浸っていた。

 今度の人間もきっとそうだろう。そう考えていたオストガロアの期待をセイウンスカイは容易く裏切る。

 

「『私はね、警告しに来たんだ』」

『警告ぅ?おまえらが?おいおい、誰が誰に警告するってぇ?』

「『私が君にだよ。今すぐ尻尾巻いて逃げるんだったら私達は追わないよ。でも……これ以上暴れるつもりなら痛い目見る程度じゃ済まなくなるよ』」

『がっはっはっはっ!こいつは傑作だぜ。おまえらのどこにそんな力があるんだよ!無様に逃げ回ってろよ!』

「『その言葉、そっくりそのままお返しするよ。今の内に逃げなかったことを後悔するってね』」

 

 セイウンスカイの挑発にオストガロアは言い知れない不快感を感じた。オストガロアにとって弱者とは須く蹂躙されるべき存在である。それがこうまでして露骨な挑発をしてくるのだ。聞きたいのは悲鳴であって挑発ではない。セイウンスカイも勝ち誇ったかのような笑みを浮かべていて、それがオストガロアの癪に触れた。

 挑発は終わったのかセイウンスカイを乗せたナバルデウスは全速力で砂浜の方へ逃げていた。あれだけの挑発をしておいて逃げるとは。

 

『おいおい、尻尾巻いて逃げてるのはどっちだよ。まぁ俺様からは逃げられねぇけどなぁ……!』

 

 本気を出して泳げばナバルデウスの幼体よりオストガロアの方が速い。二人を触手に絡みとるべくオストガロアは動き────直後に爆発に襲われた。

 

 ────なんだ!?さっきの破裂魚は見てねぇぞ!

 

 オストガロアを襲ったのは機雷である。通行する船舶に対して効力を発揮する海の地雷はオストガロアにも作用した。潜れるほどの深さがあるわけでもないため海面を浮遊する機雷をオストガロアが避けるのは難しい。正確に追尾する魚雷と違って機雷はただ浮遊しているだけなのでオストガロアからすればどれが爆発する浮遊物なのか見分けがつかなかった。

 

 ────クソが……!小賢しい真似をしやがって

 

 ビームはまだ使わない。オストガロアにとってビームは奥の手でありそして獲物の断末魔を聞くとどめの一撃だ。こんな些事に使うようでは己の沽券に関わる。

 逃げるナバルデウスはなぜか機雷に引っ掛からないでいるようでビームの射程から遠ざかっていく。それでもビームを使う気にはならなかった。自ら砂浜の方へ行くのだから、詰めれば射程には収まるとオストガロアは考えていた。

 

 ────埒が開かねぇ。無理にでも詰めてやる……!

 

 オストガロアは機雷を無視して強引に突破することにした。機雷の一つ一つは魚雷ほど威力があるわけではない。機雷を受けなかったナバルデウスの後を追おうにもやはり図体のせいでどこか引っ掛かる。それでも後を追うのはやめなかった。

 恐らく罠だろう。そうだとしてもその罠ごと粉砕してやるつもりでオストガロアは追っていた。オストガロアはどちらかと言えば罠を仕掛ける側の捕食者である。しかしそれは彼にとって罠を避ける理由にならない。オストガロアが罠を仕掛けるのは馬鹿な獲物を嘲笑うためで、格下から仕掛けられる罠を避ける判断は彼のプライドを傷付けることになるからだ。

 

 ────どんな姑息な手段を使おうが、俺様への決定打にはならネェ……!

 

 既に水深は10mを切っていた。ここまで来ると泳ぐのではなく浅瀬に乗り上げて触手で歩くような移動である。

 何やら目の前には波打ち際に林が生えている。その手前でナバルデウスとセイウンスカイは待っていた。

 

『おいおいどうしたよ。逃げるのはこれで終わりか?おまえらがここから何をしようってんだ────ガッ!?』

「『ちょうど発動したみたいだね』」

 

 オストガロアが意気揚々と声をあげたところで突如体を縛り上げる苦痛に苛まれる。見れば体の各所から謎の植物が芽を出し巨木となってオストガロアの体を這っていた。

 

『ほう……無事発芽したようだな。宿り木の種ならぬ、【宿り龍の種】が』

 

 マングローブの林を挟んでその光景を見ていたイナガミが満足そうに頷いていた。

 オストガロアを縛る巨木はイナガミが作り出した植物である。しかしイナガミが直接尻尾などを用いて干渉している様子は無かった。

 

『苦心したぞ。そのヤドリギは我謹製の特注品だ。我自身を苗床とし、可能な限り早めた世代交代の末、龍属性を養分とする種を作り出したのだ』

 

 イナガミが人間に協力すると決めた際に対価として得た知識でイナガミの目を引いたのがヤドリギであった。ヤドリギ自体は日本にも生息しているが、地面に根を張ることが無く生態のほとんどを他者に依存するその異質さはイナガミが求めていた能力と合致した。

 人間に協力すると決めた以上バルファルクと同じように他の龍と対峙することになるだろう。そしてセイウンスカイとタマモクロスは両者とも無益な殺戮を嫌っていた。であれば必要なのは生かしたまま拘束する能力となる。宿主に半共生するヤドリギの生態はまさにうってつけだ。

 この【宿り龍の種】は機雷と共にオストガロアが通るであろう海域に散布したものだ。機雷の爆発と共に種が突き刺さり多数がオストガロアに根を張っていた。

 

『【宿り龍の種】は龍属性を養分とするため無闇に蒔いたところで環境に影響を与えない。それどころか対象が強大であればあるほどそれを苗床に成長する。……せいぜい苦しむといいぞ、オストガロアとやら』

「『……えっぐいもん作ったなぁ』」

 

 タマモクロスがイナガミの偉業に引きながら見ている先には巨木に縛られつつあるオストガロアの姿があった。暴れながら必死に振り解こうと藻掻くが巨木はますます成長していく。

 

『クソがぁ!こんなんで俺様を仕留められるとぉ……思ってんじゃねぇぇぇ!!!』

「『うわぉ……。キレてるけどクレバーさは変わらないのか』」

 

 オストガロアはやむを得ず自身の触手を縛る巨木に向かって体の向く限りのブレスを放った。自分ごと焼くことになるが縛られるよりかはマシだという判断である。それでも纏う骨の隙間から本体に到達した一部の【宿り龍の種】は着実にオストガロアから龍属性を吸い上げその重みでオストガロアを鈍くしていった。

 

『おまえら許さねぇ。俺様をここまでコケにしやがって……!』

『ねぇ!ほんとに大丈夫なんだよね!?凄く怒ってるけど!』

「『だいじょぶだいじょぶ。お姉ちゃんを信じて。もうそろそろだから』」

 

 オストガロアがチャージを開始する。もうなりふり構っていられなくなった。下等な雑魚にここまで見下されるのはオストガロアにとって初めての経験である。今すぐに焼き尽くし全てを絶望に染めなければ気が済まない。

 オストガロアの口元に莫大な龍属性の球体が現れる。セイウンスカイが感じた中でも最大規模となる龍属性の塊だがセイウンスカイは微塵も揺るがなかった。

 

『調子に乗るのもここまでだ!あの世で俺様を怒らせたことを後悔────』

 

 瞬間、轟く雷。

 

 (いにしえ)の龍に、人類最新の叡知が脳天を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「命中しました。対象の無力化には至っていません。第二射を準備しますか?」

「それには至らない。どうやらあちらさんにはプランがあるようだ」

 

 砂浜から約5km。

 洋上にはオストガロアへ砲口を向ける米海軍の駆逐艦の姿があった。

 

「プランですか。それはこの秘匿兵器を持ち出してまでやるような事なのですか?」

「ああ、何せ彼女達の要請だからね」

「彼女達?失礼ながら一体どなたでしょう。米海軍の意思決定に関われるほどの方でしょうか」

「いいや?何の変哲も無い日本のウマ娘だよ。軍人ですらないさ。確か一人は日本のダービーで惜しくも二着という子だったかな」

「……それが何故こんなことに?」

 

 若い下士官は艦長を胡乱げに見る。彼からして見れば世界最強を誇る米海軍が子供の都合に付き合わされているようで面白くないのだろう。他の者達も聞き耳を立てていて艦橋には緊張感が漂っていた。

 しかし艦長はそんな緊張を一笑に付す。

 

「そりゃあ何故かといえば、彼女達がドラゴンと話せるキーマンだからさ」

「それは理由になりません。そのような力を本当に持つのなら然るべき保護組織で監視下に置かなければならないでしょう。加えて可能ならばそれは我が国でなければ……」

「君、映画は好きかね?」

「はい?」

「映画は好きかと聞いたんだ。そうだな……スパイダーマンなんかはどうだ?」

「人並みには見ますが……それが?」

「おいおい。頭が硬いな。加えてロマンが無い」

 

 艦長は一息つく。そこには映画の話を持ち出して世間話を始めるようなおじさんの顔は無かった。

 

「例えるならそうだな……俺達はああいう映画の脇役だ。スパイダーマンが活躍する裏で日々奮闘するポリスの影がある。スパイダーマンは主人公だから一番焦点が当てられるが、だからといってポリスの仕事に意味が無いわけじゃない」

「我々が脇役だと?」

「当然さ。俺達はランボーでもなきゃターミネーターでもない。軍人なんてのはな、本来脇役なんだよ。そりゃ命懸けて戦ってる奴は偉いが今の時代俺達が本気で求められてると思うか?」

「……思いません。もし求められることとなればそれは平和の崩壊を意味します」

「だろ?同じ話だ。バルファルクが日本のウマ娘と話せるようになって既に一年は経過してるらしい。それまで何故彼女の存在を秘匿していたと思う?」

「彼女を守るためでしょうね。我々を含め利用されないための」

「そういうことだ。ピーター・パーカーだって昼間はただの学生さ。けど、そんな子が大いなる力と責任を伴って悪に打ち勝つんだ。そいつは大人が全力で応援してやらなきゃ損ってもんだろ」

 

 椅子に座り直す艦長。

 艦橋の画面から遠くに映し出されているオストガロアとその向こうにいるセイウンスカイを彼は慈しむように見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グッ……ガッ……』

「『凄い生命力だね……』」

 

 米海軍から放たれたレールガンは正確にオストガロアの眉間を貫き鎧として纏っていた骨の大部分を衝撃で吹き飛ばしていた。傷口から紫紺の血液がたらたらと滴りオストガロアは大きく傾斜している。溜めていた龍属性は暴発しオストガロアの口内を焼いていた。

 それでも死んではいなかった。明らかに急所に致命的な一撃を喰らってなおも触手を振り回しているのだ。そしてそれはアグネスタキオンが事前に予測していた情報と一致していた。

 

「龍のカテゴリには含まれるだろうが、生態のほとんどは頭足類に近しいと予想される。その身体構造もね。頭足類は心臓と脳が複数あるとされるんだ。恐らく脳天をぶち抜いてもしばらくは活動が可能だよ」

 

 セイウンスカイは"龍呼びの声"としての感覚拡張で感じ取っていた。レールガンの砲弾はごく僅かに頭の中心部分から逸れている。詰まるところそれは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という結果を生み出していた。

 

「『バルファルク!やっちゃって!』」

『おう!』

 

 合図を受けたバルファルクが未だ昏倒しているオストガロアに近づき呆けて開いている口の中に何かを投げ込む。

 

『クソが……一体なんだって……あ?』

 

 ブス

 

 ようやく意識を取り戻したオストガロアが図らずも口を閉じることで力がかかり口内にそれが突き刺さる。

 口元から砂浜へ黄金の鎖が伸びていた。

 

『はっ?おい、なんだこりゃ!?』

「『君達ができるなら私にだってできるよね』」

 

 セイウンスカイが己のイメージを龍属性に込めオストガロアに向ける。それは今まで散々セイウンスカイが感じ取っていた記憶の共有に他ならなかった。違うのはそれをセイウンスカイから龍に共有する点と、今回共有するのはセイウンスカイの記憶そのものではないところだ。

 オストガロアの脳裏に知らぬ記憶が過る。砂浜で雑魚だと認識している者達が楽しそうに何かを食べていた。焼いたり、煮たり、揚げたり、多くが美味しそうに食べているその正体は────オストガロアの足。

 

『はぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?』

「『今までいっぱい食べてきたんでしょ?たまには食われる側に回ってみたら?』」

 

 バルファルクが投げたのはゴールドシップがどこからか持ってきた黄金の錨である。それを釣り針に見立てオストガロアを釣り上げるのだ。

 マングローブの林から隠れていたウマ娘達が続々と姿を現す。全てはこのためだった。砂浜にぞろそろとウマ娘達が待機している様子が見えていたらオストガロアの注意はそちらに向いてしまっていただろう。

 

「ゴルシちゃんのたこ焼き作戦大成功!おら、みんなでこいつを釣り上げんぞ!!!」

「タコではなくイカでは……?」

「細けぇ事気にすんなよマックイーン!今からここはイカ釣り祭りだ!」

「タコかイカかはっきりしてくださいませんこと!?」

 

「タマ、あいつを釣りあげたら腹いっぱいタマのたこ焼きが食べられるのは本当か?」

「『せやせや。今回制限は無いで。食って食って食いまくりや!』」

「分かった。私も今回は────本気を出そう」

「てやんでぃ!タマがここまで根性見せてんだ!ここで気合い見せなきゃ江戸っ子が廃るってもんよ!」

「あらあら、みんな気合い入ってますね~。タマちゃんも帰ったらたっぷり良い子良い子してあげますよ~」

「『あかん、帰ったら赤ちゃんにされてまう……!』」

『赤子にされるとは一体どういう状況なんだそれは???』

 

「キタちゃん!お祭りだって!あのイカみたいなのをみんなで釣り上げよう!」

「うん!祭りと聞いたら黙ってられないよ!お助けキタちゃん、行っきまーす!」

「あれ~シュヴァちは行かないの~。みんな楽しそうにしてるけど~」

「僕なんかが行っても……」

「キタちゃーん!シュヴァちがみんなと一緒に行きたいって~!」

「えぇっ!?」

「お助けキタちゃん参上!ほら、シュヴァルちゃんも行こっ!こういうの人手が多いほど良いんだよ!」

「わ、分かった、行くよ。行くからそんなに手を引っ張らないで……」

 

「ヴィルシーナさん。どうかしたのかしら。そんなに妹さんが気になるの」

「……そうね。シュヴァルは少し引っ込み思案なのよ。ああやって友達に囲まれているのを見るのは……感慨深いわ」

「ふふっ。いいお姉さんをしているのね」

「そういう貴女はどうなのかしら、ジェンティルさん。貴女にも御兄弟がいらしたでしょう?」

「私?今さら気にかけるほどの相手ではないわ。家督を巡って争いあう仲ですもの。まぁ、彼らにも示す手向けとして……このイカ釣りは面白いわ。私一人で釣り上げてみせてもよくってよ」

「!言うじゃない……私だって黙って見ているつもりなんてないわよ……!」

 

「おいおい。面白そうな事やってんじゃねーかタキオンよぉ」

「久しぶりだねポッケ君。君なら呼べば来てくれると信じていたよ」

「……事実は小説より奇なり、ですね。まさかこんな怪物がいるなんて」

「カフェ、君が来てくれるとは珍しい。こんなことに興味があるとは思わなかったんだが」

「私達が連れてきたんだよタキオンちゃん。人手がいるんでしょ」

「いやぁ、実にありがたいよ。安心したまえ、今回は実験でもなんでもないからねぇ。私も参加するから、とにかく引っ張ってくれたまえ」

 

「セイちゃーん!!!聞こえてるー!?話は聞いてるよー!」

「『聞こえてるー!みんな来てくれたんだね!』」

「あったり前じゃない!スカイさん一人だけにカッコいい真似させないわよ!」

「エル、興奮の、大爆発、デェースッ!!!みんなと一緒に釣りあげますよっ!」

「みんな、バルファルクとのトレーニングを思いだそう!綱引きと一緒だよ!みんなで引っ張るんだ!」

「あらあら、ツルちゃんも張り切ってますね~。みんなで力を合わせましょう」

 

 他多数。合宿に来ていた面子もそうでなく呼ばれた面子も合わせて総勢百名以上のウマ娘が黄金の鎖を引っ張り上げる。

 

『……!?なんなんだこいつらは!?俺様を食うだと!?何故俺様を恐れねぇ!!!』

「『恐れる理由がないからだよ』」

 

 オストガロアはセイウンスカイの言葉を無視できない。変わらずセイウンスカイは仁王立ちで腕を組み堂々オストガロアにその威風を伝えている。その姿に初めてオストガロアは震えていた。

 

『俺がっ……この俺様が……!恐れているだと……!?』

「『さぁ勝負と行こうか、オストガロア。君の悪意と私達の熱意、どちらが上か決着(ケリ)付けよう!』」

 

 

 

 

 




やっぱり最後はウマ娘。ウマ娘の世界なので最後は彼女達に締めてもらうのです
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