セイウンスカイとバルファルク   作:エドレア

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皆様、日々のご愛読誠にありがとうございます
さて前回ではタキオンがまたとんでもないことしてますね。どうやらイナガミも企んでいるようです


イナガミの野望

 

 

 

 

 

 

「「ま、マカ錬金?」」

 

 セイウンスカイとタマモクロス、二人揃って疑問の声をあげる。

 旧理科準備室は、巨大な鍋から発せられる異様な気配に包まれていた。

 

 

 

 

 

「順を追って経緯を説明しよう。まず私はあのオストガロアから取れた検体で色々と研究をしていたのだが、調査を進める程に謎が増えていくばかりでね。1の謎を解き明かしたと思ったら10の謎が発生する……そんな始末さ。しかしそれを解消する手段をネオユニヴァースは提案してくれたんだ」

「"SOS"……"受諾"……ネオユニヴァースにも"メリット"があるよ」

「合宿初日にネオユニヴァースの能力について解説しただろう?あれからネオユニヴァースも"あちら"の世界を観測できるようになったみたいで、色々と面白い話が聞けているんだよ」

「それがその……マカ錬金言うやつか?」

「そうだ。少し解説すると、あちらの世界では既存の科学的摂理に全く囚われない技術があってね。それが錬金術なんだが、この錬金術にも種類があるんだ。ネオユニヴァース、実演してくれ」

 

 アグネスタキオンの指示を受けたネオユニヴァースが無言で何かを取り出す。それは、明らかに焼き過ぎて炭にしか見えないコゲ肉と何らかの虫の死骸だった。

 

「例えば、ここに焼き加減に失敗してしまったコゲ肉があるとしよう。当然はこれは食べるに値しない訳で本来なら廃棄するところだが……」

 

 実験台の上でネオユニヴァースがその二つをこね出す。どう見てもおかしな組み合わせなのだが、何故か謎の煙が発生し見えなくなったかと思えば煙が晴れ、そこには新鮮な生肉がネオユニヴァースの手に握られていた。

 

「とまぁ、このように例え焼き加減に失敗してもやり直すことが……」

「どないなっとんねん!?どこからツッコんだらええんや!?」

「だからそれを追求するだけ無駄なんだよ。いや、無駄という事ではないんだが、少なくとも私達の世界の常識では全く計れないということさ」

 

 けらけらと笑うアグネスタキオン。その様子にタマモクロスは何とかツッコミを入れるが焼け石に水といったところである。

 セイウンスカイはふと当然の疑問に気が付いた。

 

「あれ?そうするとポケット先輩は何で……?」

「ポッケ君のあれかい?カフェ達と一緒になってこのマカ錬金を止めに来たみたいなんだが、その際についうっかりこの"マカ麹"が入った液体を飛ばしてしまってね。運悪く口の中に入ってひどく苦い思いをさせてしまったみたいだ。甘党のポッケ君には酷な真似をさせてしまったよ」

「最低な人です……。既に犠牲者(ジャングルポケット:苦味により昏倒)がいるというのにまだ実験を続けるなんて……」

 

 マンハッタンカフェがアグネスタキオンをこき下ろすがその程度で止まるアグネスタキオンではない。ダンツフレームはジャングルポケットをいそいそと抱えると介抱しに出ていってしまった。

 

「……あれ?話が二転三転してますけど、普通の錬金術とは別に【マカ錬金】という技術がある訳なんですか?」

「良い質問をしてくれるねぇスカイ君!ここが肝要なところでね、実は先ほどネオユニヴァースに実演してもらった錬金術は、ほとんどあちらの世界の物を使わなければ成立しないんだ。コゲ肉を生肉するのとは別にこちらで再現出来るのはあと一種類、トウガラシともえないゴミを使って"火薬草"というあちらの世界で自生する植物くらいしか作れなくてね」

「物騒な名前の草やなぁ……」

「まぁこの自発的に発火成分を含んだ"火薬草"も大変興味深いがこれだけでは研究が進まない。そこで、ネオユニヴァースの"友達"に何とかできないか融通してもらってね。そうして手に入れたのがこの"マカ麹"なのさ」

 

 アグネスタキオンが古びた壺を開けると中からはドロッとした黒に近い紫色の物体が見え隠れしている。麹という説明であるため物体としては米麹等に近い存在なのだろう。

 

「この"マカ麹"を使った技術こそが【マカ錬金】でね、あちらの世界では異なる素材を複数これを煮たした鍋の中に放り込み時間をかけて混ぜる事で全く異なる物を生み出す事が出来るそうだ。基本的に何でも入れられるそうだが、傾向として生物の一部位や装飾品がよく入れられてるそうだよ」

「"砲術珠"求む……"ガ性"は妥協……『当たらなければどうという事はない』……『火力は正義』……」

「ネオユニヴァースの言葉は置いといて……それがタキオンの研究が進む理屈になるんかいな?」

「先ほど言っただろう、生物の一部位を入れると。そしてここにちょうど特異な龍が1頭、近い内にもう1頭来る予定じゃないか。つまりはそういう事だよ」

「あー、もしかして、ランダムではあるにしろ、さっきの話だと生物の部位を入れたら生物の素材が、装飾品を入れたらまた別の装飾品が作れるって事ですかね?ある程度傾向が絞れると」

「素晴らしい理解力だスカイ君!先ほど私達の世界の常識では計れないと話したが完全に不明な訳ではない。【マカ錬金】によって様々な素材を精製し、それの傾向や物体の研究を進めるのは全く違ったアプローチとして有効だという事だよ!」

 

 最早有頂天という他ないアグネスタキオン。未知を目の前にして心が踊っているのだろう。

 ネオユニヴァースは何故か手にキラキラした色とりどりの宝石のような物を持っている。それがアグネスタキオンが話した装飾品の一つなのだろうが、明らかにレースのそれとは比べ物にならない気迫を静かに放出していた。

 

「えっと、色々話を総合すると、色んなアイテムを混ぜて煮込んで別の物を生み出す技術で、特に危険がある訳じゃないんですよね?」

「その通りだとも。既に備品申請は出している。通らなければそれはそれで別のやりようがあるが、少なくともここで使って支障がある類いではないはずだよ」

「私のスペースに支障が出ていますがそれは関知しないと……?」

「すまないねカフェ。ここ以外置ける場所が無くてねぇ……」

「……はぁ。もういいです」

 

 アグネスタキオンとマンハッタンカフェが占拠している旧理科準備室だが実は無許可で使っている。マンハッタンカフェがこの惨状を訴えようにもその点を突かれてしまえば自身も痛い目を見るのは確実だろう。不承不承ながらもマンハッタンカフェはこの【マカ錬金】を消極的に容認した。

 

「まぁとにかく、私とネオユニヴァースはしばらくこれを使って研究を進めるつもりだ。錬金に使用した際に生み出せる物品のデータは取り纏めておくから、もしかしたらその内君達でも興味のある物が生み出せるかもしれないよ」

「ははは……世話になる事はまず無いと思いますけどね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『────っていう事があったんだよ』

『……あのアグネスタキオンとかいうのは毎度毎度驚かせてくれるな』

 

 その晩。

 ベッドに入りながらも寝付けないセイウンスカイは眠くなるまで今日あった事をバルファルクと駄弁っていた。

 

 あの後一応は【マカ錬金】そのものに危険性は無いと判断しそれを学園長秋川やよいに報告した。あまりにもぶっ飛んだ内容に秋川やよいもしばらく目を丸くしていたが、未知の可能性を潰すまでには至らないと最終的には申請を通している。もちろん完全に全て了承とは行かず生み出された物品のデータを逐一報告する事が求められている。

 

『タキオンさんには振り回されっぱなしだよ。君に文字を教えるよう提案したのもタキオンさんだからね』

『確かあのイカもどきを仕留める策を提案したのも奴だと聞いている。素行はともかく頭は悪くないようだが』

『頭良すぎて一周回って理解できない事をしてるって感じかな。頭良すぎてっていうとネオユニヴァースさんもそうなんだよね。あの人テストじゃいつも満点って聞くし』

『ネオユニヴァース……ああ、あいつか。結局あいつの隣にいた強大な龍は分からず仕舞いか』

『ネオユニヴァースさん曰く友達らしいんだけどね。なんか武器とか貰ってたりするみたいだし……』

『あの謎の龍の目的が分からない以上用心に越した事は無い。武器というのも得体が知れん。あれは、恐らく俺を殺せるぞ』

『マジぃ?いや、なんか圧が凄かったしなぁ……。ぶっちゃけ初見の威圧感だとバルファルクより謎の龍の方がヤバかったもん。今でも思い出すと怖いくらいだからね』

『ネオユニヴァースとやらはよくあれと付き合えているな……』

『まぁ、分からない存在をあれこれ考えても今は仕方ないよ。どっちかと言えば今大事なのはイナガミが来る事の方かな』

『あいつか……まぁ来る分にはどうでも良いんだが如何せん何かと突っかかって来るのがな……』

 

 バルファルクは珍しく龍の中では縄張り意識が低い。その気になれば世界のどこにでも飛び立てる移動能力故だろう。また他の龍が森林や洞窟など周囲を囲われた地形を好むのに対し、バルファルクが好むのは飛ぶのに邪魔な物が無い山頂や平原といった開けた土地である。そのためかバルファルクは今まで縄張り争いというのを経験した事が無かった。

 この縄張り意識の低さ故にイナガミがトレセン学園に来る事もそれなりには容認していた。

 

『まぁ大丈夫だよ。あっちだって分かってて来るみたいだからさ』

『いつ頃来るんだ?確か駿大祭という催し物に俺達を出すんだろう?』

『それは確実だから……遅くても10月の頭には来るんじゃないかな』

『10月というとセイウンスカイにとって大事なレースがある月だったな』

『菊花賞だよ。ダービーの時みたいな醜態は二度と晒さないさ。こう見えても私、強いんだからね』

『……うむ。そうだな、ここらで一つ言っておくか』

『なになに?どしたの?』

『ほら、前に隠している事があるという話をしただろう。俺がタマモクロスとアグネスタキオンと共にいた件だ』

『あー、あったねそんなこと。確か皐月賞の前くらいだったかな。教えてくれるの?』

『その菊花賞というので勝てば教えてやる、という話だ。本当なら前のレースで教えてもよかったんだが勝てなかったばかりかあんな事になってしまっただろう?』

『ダービーの時のあれか~。あれはきつい経験だったな~』

『今度こそは、という意気込みがあるならちょうどいいと思ってな。セイウンスカイの勝利を期待して待っている』

『そこまで言われたらなおさら負けられないね。期待して待っててよ。必ず勝って来るからさ』

 

 菊花賞に勝つ理由が一つ増えたセイウンスカイ。

 らしくもなく必勝宣言をするセイウンスカイだが、これはバルファルクが他にセイウンスカイの必勝宣言を漏らすような相手がタマモクロスくらいしかいないからだ。

 

(実はみんなの言葉が分かるようになってるとか、そういう事だと思うんだけどな)

 

 合宿前後からセイウンスカイは何となく察していた。バルファルクは隠しているつもりだが、セイウンスカイ以外の人間と一緒に集まっている時に本来なら理解できないはずの会話の前後を理解している振る舞いをしている事がある。どうせアグネスタキオンあたりが人間の言語をヒアリングさせたりして覚えさせたのだろう。

 

(イナガミと戦った時に私以外の言葉が分からないのは不便って言ってたしなぁ)

 

 実際にはそれを上回るカミングアウトがバルファルクの口から発せられる訳だが……セイウンスカイは菊花賞への勝利に気を取られていてそこまで頭が回らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ほう……ここがトレセン学園とやらか。心が踊るな。広々としていて開拓のしがいがあるではないか』

「『イナガミ、畑作る場所は決まってるから開拓はそこでやってな』」

 

 10月初め。

 無事予定通りイナガミがトレセン学園にやって来た。

 イナガミをトレセン学園に迎え入れる事が公表された際は賛否両論どちらともに世間の反応は沸き上がっていた。賛成派は駿大祭で出会える事を楽しみにしておりヒトと龍の距離が接近する事を歓迎している。反対派はというと、得体の知れない生物を子供達が通う学園に連れ込むのはどうかという意見、そもそもトレセン学園はウマ娘の育成校なのだから安易に経営理念から外れた事をすべきでないという意見にしっかり別れていた。意外にも世間の反応というのは賛成反対半々といったところに収まっており駿大祭でどのような変化が起きるか注目されている。

 合わせて今回の駿大祭では初となる整理券の配布も行われる。元より人気が高い駿大祭だが、今年は二頭の龍と触れ合える事もあって例年以上の混雑が見込まれていた。

 

「歓迎!私の申し出を受けいれてくれた事に感謝の念が尽きない!是非ともここで自由にのびのびと過ごしてほしい!」

「初めまして、駿川たづなと申します。畑は旧校舎の裏手にありますから、そこまで案内致しますね」

「『イナガミ、歓迎しとるって言うとるよ。ネコを帽子に乗せとるのがここで一番偉い学園長秋川やよいさんやって、緑のがその補佐務めとる駿川たづなさんや』」

『歓迎、感謝する。なるほどな、秋川やよいとやらがここの群長といったところか』

 

 実はイナガミがトレセン学園に来る際に一悶着あった。どのようにしてやって来るか、という事だ。

 当初自衛隊の車両で搬送する案があったがイナガミは多少改善されたとはいえバルファルク程人間に心を許している訳ではない。車両での搬送はイナガミも良い顔をしなかった。

 ではどう来たかというと、普通に徒歩、というか走って来た訳である。イナガミの竹林からタマモクロスの気配を元にトレセン学園へ向かい堂々昼間から人前で爆走していた。イナガミなりに気を使ってなるべく人の少ない地域を走っていたが、それでも平均的な一戸建てを軽々飛び越える程の身体能力を披露しており各所ではその様子がSNSにあげられていたりしていた。

 

『道中他の人間共が騒いでいたな。我が通ると事前に伝えていたのだろう?』

「『言うてイナガミがどこ通るかなんて分からんもん。まぁちょっとしたサービスみたいなもんや。あれで駿大祭に来てくれる人も増えるやろ』」

 

 イナガミが案内された旧校舎裏手にはこぢんまりとした畑があった。イナガミの能力で出来る事を考えると少々狭く見劣りがしてしまう程だ。

 

「来てもらった手前悪いのだが、イナガミの能力が活用できる程あまり広くはないのだ。後々業者を派遣して耕作可能な面積を広げる予定だ」

「『今はまだあんま広くなくてごめんやって。その内広くするから待っててや』」

『広げるというのは、奥の木を伐採するのか?』

「『伐採?学園長、イナガミが広げるのに木を切るのかって聞いとるよ』」

「確かにその予定だが、何か気に障っただろうか?」

『どの辺りを切るのだ?』

 

 タマモクロスに翻訳された学園長秋川やよいが、畑の奥にある林の一角に指を指すとイナガミがその内の適当な木に近づく。何をするのかと三人が見守っていると、なんとイナガミはその長大な尻尾を木に巻き付け文字通り根こそぎ木を引っこ抜いてしまった。

 

「きょ、驚愕!ドラゴンの身体能力はとても高いと聞いていたがここまでとは……」

『他の人間がおらずとも我一つで十分だ。整地もこの足で行えるし、倒した木も我なりに活用できる事がある』

「『すご……木ってそんな簡単に抜けるもんなんや……』」

『いくら緑豊かな自然といっても無節操に生えていては逆に弊害を招く事がある故な。適当な木を見つけては間引くのも重要だ』

「『なるほどなぁ……生えてばっかりじゃダメなんや。適宜切らんといけんって』」

「あの……もしかしてイナガミさんが話されている事って所謂“間伐“ではないでしょうか。木を切る事で森林のライフサイクルを適切に管理するという話を聞いた事があります」

 

 イナガミの見識深さに驚かされる三人。

 その後イナガミは幾つかの木を同じように引っこ抜き簡易的な寝床を作成していた。本当ならまだ広げられるが初日という事もありまずは寝られる場所さえあれば良いという体である。

 

 ゆくゆくは学園の中から適当なウマ娘を選出してイナガミと共に大豊食祭達成に向けたプロジェクトチームを立ち上げる予定だという。当然その中にはタマモクロスが内定しており、既に引退している割に色々と駆り出される自分の忙しさをタマモクロスは困ったように笑っていた。

 

 

 

 

 

『さて、ある程度はここを把握した。次は奴のところだ。()()()()()を持て、タマモクロス。あやつには挨拶せねばなるまいな』

(まーたしょうもない事企んどるなぁこいつは……)

 

 おおよそイナガミと学園長らの間での顔合わせが終わった後、やはりというかバルファルクがいるターフへとイナガミは向かおうとしていた。

 タマモクロスが持つタブレット端末は政府から支給された物である。その中にはイナガミがこれまでの農業協力で農林水産省と交わした取引のデータが入っていて、タマモクロスはイナガミがバルファルクに何を自慢したいかおおよそ察しがついてしまっていた。

 

 ターフを訪れる一人と一頭。そこには同じようにセイウンスカイとバルファルクがいた。セイウンスカイは体操着姿であり近くにはトレーナーもいる事からトレーニング中であった事が窺える。

 イナガミの登場に一同目を丸くしていた。

 

「『トレーニング中済まへんな。見ての通りや』」

『久しぶりだなバルファルク。海での騒動以来か』

『ああ……うんまぁ久しぶりだな。別に来なくても気配で悟れるのだから分かるだろうが……』

「『イナガミ久しぶり!来るの今日だったんだ』」

『うむ。セイウンスカイも久しいな。あれか、トレーニングというやつをしていたのか。邪魔をしてしまったか?』

「『ううん。全然大丈夫だよ。ちょうど切り良くあがるところだったからね』」

「大丈夫だよスカイ。イナガミと喋っておいでよ。こっちは先にトレーナー室へ戻ってるからさ」

 

 イナガミの事を気遣ったセイウンスカイのトレーナーはあっさりと引き上げていきターフに残るのはそれぞれ二組の一人と一頭となった。

 バルファルクは面倒臭そうに嘆息している。

 

『ほら、もう顔見せは済んだだろう。さっさと自分の寝床へ行ってこい。どうせまだやる事があるんだろう』

『おいおい、随分と冷たいじゃないか。しかしこれを見てそんな事が果たして言えるか?』

「『……はぁ。これや、これ。自分だって読めへんのにもう……』」

「『ん?タブレット?なになに……え!?何この金額!?』」

 

 タマモクロスが見せたタブレットにはイナガミと農林水産省の間で行われた取引のデータが入っている。そしてその取引はイナガミ自身に対して農林水産省から報酬となる金額が支払われていた。

 金額、つまりイナガミは自分で口座を持ちそこに資産を蓄えていて実際に運用していた。流石に文字は読めないため操作はタマモクロス任せなのだが、トレセンに移住するにあたってこれまで行っていた狩りが行えなくなるために、それを解消するため人間と同じように肉を購入して自分の食費に当てていたのだ。

 

『良いか、金は天下の回りもの、という言葉が人間にはあるようだ。おまえも人間社会の事はある程度知っているだろう?人間と関わる上では金があって損は無い』

「『えぇ……口座とかこれどうやってるんだ……』」

「『政府のお偉いさんがな、イナガミの要望聞いて何とか通したんやと。通帳とかカードとか丸々ウチに届いて焦ったわ。こんな大金扱うのが怖いっちゅうねん……』」

『……なぁ、こいつの言ってる事って何がどう凄いんだ……?俺には今一分からん』

『どうやら我の偉業が理解できんらしいな。ま、それもそうだろう。人間というのは最初期はおまえと同じように狩りをして暮らしていたそうだが、後に農業を始めるようになってからその生活が安定し現在の発展の礎となっている。おまえが理解すべきは、我が一次元違った高みにいるという事だ』

 

 余程気分が良いのか、らしくもなく笑っているイナガミ。

 確かに偉業ではあるだろう。何しろ政府が人外の要望に応え口座を開設し報酬として大きな声では言えない金額を支払っているのだ。イナガミは人類以外で初めてお金の価値を正しく認識し実際に使用した存在として後の教科書等で載るべき偉業を達成していた。

 だがこの場ではイナガミ以外の全員に受けが悪かった。

 

「『ちゃんと凄いよ?人間じゃないのにお金を使って馴染もうとしてるんだからね。最初の人間嫌いが嘘みたいじゃん』」

『そうだろう、そうだろう。もっと言ってくれて良いのだぞ?』

(たださぁ……)

 

(お金持ちを自慢するのは典型的な小物メンタルなんだよねぇ……)

 

 神秘的なはずのドラゴンが俗世に被れている様子にセイウンスカイは頭を痛めていた。タマモクロスも同じ感想なのだろう。お手上げといった様子で両手を上げ首を横に振っている(コメ食いてー顔)。

 自由気儘に飛ぶバルファルクと土地に根差した生活をするイナガミとでは考え方が違うのだろう。飛べるバルファルクは別に今まで通りの生活が出来るが、そうでないイナガミは土地ごとに生態を変えなくてはならない。結果としてイナガミが金を稼ぐ事を選ぶのにはある種の合理性があった。

 

『大豊食祭で、ウマ娘達の腹を満たすのが我の今後の役目らしいがそれだけには留まらん。このトレセン学園で独自の優良品種を生み出しそれで富を築いてやろう。当然その恩恵を真っ先に預かれるのはウマ娘達だ。悪い話ではないだろう』

「『ああ、うん、イナガミがやる気ならそれでええんとちゃうかな……』」

『好きにやればいいだろうに。俺は関係無いからな』

「『……はぁ。タキオンさんの【マカ錬金】に続いてなんでまた……』」

 

 アグネスタキオンの【マカ錬金】とイナガミの野望。

 菊花賞で必勝を誓ったとはいえ、そこに駿大祭と上記二つを抱えざるを得なくなったセイウンスカイはキリキリと胃の軋む音にしばらく悩まされる事となった。

 

 

 

 

 




超ダイジェスト
ネオユニとアルバ
ネオユニ「他の防具無いの?」※意訳
アルバ「いやぁ、自分が素材じゃないと……」
ネオユニ「じゃあ装飾品は?」※意訳
アルバ「そっちも一緒でして……」
ネオユニ「はぁーつっかえ。砲術無いガンスの意味分かってる?」※意訳
アルバ「世界線越えると制限がね……」
ネオユニ「チャンネルこっちで閉じれるよ?」※意訳
アルバ「分かった!何とかするから!(滝汗)」
ネオユニ「じゃあ何かちょうだい」※意訳
アルバ「こ、これなんかどう?」(そこらへん飛んでた龍識船からかっぱらってきたアイテムポイー)
ネオユニ「マカ錬金やれそうだからこれでガチャるわ」※意訳
アルバ「良かった」
ネオユニ「でも砲術珠出なかったら覚悟しろよ」※意訳
アルバ「えっ」
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