セイウンスカイとバルファルク   作:エドレア

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皆様、平素よりご愛読頂きまして誠にありがとうございます。
前話の感想で龍識船の心配してる人いなくて笑いましたw
特に関係が無いネオユニのおねだりが龍識船を襲ってます。一番の被害者は龍識船です

超ダイジェスト
ネオユニとアルバ
アルバ「そういえば装備整えてるけど武器はどうするの?前あげたやつはイカ野郎に刺したままでしょ」
ネオユニ「だから素材集めてる」※意訳
アルバ「えっ、そっちで作れるの?」
ネオユニ「作れないからこっちで集めてそっちに渡して作ってもらう」※意訳
アルバ「えぇ…工房持ってかないといけないの……。盗むのはギリできるけど作ってもらうのは流石に……」
ネオユニ「そういえば砲術珠出ないんだよね(装飾品も持ってこい)」※意訳
アルバ「喜んで貢がせていただきまぁす!(やけくそ)」



『農業に対する爆発的な想い』

 

 

 

 

 

 

 10月中旬。

 菊花賞が目前に迫りつつある中、セイウンスカイはトレーニングを重ねている。

 その一方トレセン学園では、新しくやってきたイナガミと共に行う農業が爆発的な人気を呼んでいた。

 

 

 

 

 

「ふ~。相変わらず凄い量が採れるなぁ」

「ボーノ!これだけあれば、みんなにいっぱい美味しい料理が作れると思うの~」

「カレー、ラーメン、ハンバーグ……」

「え、えっとスペシャルさん、料理の名前を言ってもいきなりは作れませんよ……?」

「イナガミさんすごいなぁ、これだけやっても疲れたりしないんだ……」

 

 カツラギエース、ヒシアケボノ、スペシャルウィーク、ニシノフラワー、ライスシャワー。

 五人のウマ娘達がイナガミと共に農場を管理している。

 

『うむうむ。土の状態は悪くない。あまりに育て過ぎると土地が痩せてしまうが、こやつらが肥料を掻き回して入れる限りその心配も無い。人間の技術さまさまであるなぁ』

 

 イナガミはその光景を満足そうに眺めている。その傍らにはセイウンスカイもタマモクロスもいない。

 イナガミがやってきて早二週間、かつて合宿で触れ合えたのもありイナガミと共に行う農業への参加希望は殺到した。それを可能な限り学園長秋川やよいの元で振り分け選別し、残ったのがこの五人である。

 通訳ができるセイウンスカイとタマモクロスがいないのはある種の慣れのおかげだった。最初は二人が交代制でいたのだが、慣れてくるとルーチンワークとなる事が多い。イナガミもウマ娘達の身振り手振りを理解できるため緊急でなければ通訳の必要もないという結論に落ち着いたのだ。

 

「イナガミさん。また土を耕していきますね」

「おう!そっちはスペとライスだな。ヒシアケボノとフラワーは……」

「はーい!私達でいっぱい運んで、いっぱい作るよ~」

「はい!任せて下さい!」

 

 本来なら時間がかかるはずの農業だが、イナガミの能力でそれをスキップできるため耕運と種蒔き、水やりと収穫を一週間で回していくというやり方になっている。

 プロジェクトチームとしては上記五人がメンバーなのだが、簡単な手伝いなら他にもやってくるウマ娘は多い。園芸を趣味としており土いじりの経験があるエアグルーヴ、お助け大将として積極的に手伝いを申し出るキタサンブラック等多くのウマ娘がこの農業プロジェクトに関わっていた。

 

「おっし!ペースは……あんま変わんないな。やっぱ水の量がネックか」

『まさか水道という問題に当たるとはな。我とて盲点であった』

 

 順調に進んでいるかのように見えたイナガミとウマ娘合同の農業プロジェクトだが、進めていく内に水量という問題に当たった。

 植物が育つのに必要なものは大まかに三種類、土壌の栄養と、光合成のための太陽光、そして十分な水分なのだがイナガミの能力で成長を繰り返した場合その分だけ水分も必要な事が分かったのだ。本来なら定期的に日を跨いで行う水やりが短期間に集約されるために一度の生育で必要な水分が莫大な量となってしまった。

 これが個人農園のような小規模なものであれば解決できたのだが、学園長秋川やよいとイナガミが目指しているのはトレセンにいるウマ娘達を腹いっぱい食わせてやれる大農園である。元々トレセン学園はマンモス校として水道も含めたインフラ設備が充実しているのだが、イナガミ農業プロジェクトにおける必要な水分量は試算した駿川たづなが悲鳴をあげる程の金額が必要となっていた。

 当初の予定ではまるでわんこそばのように1日で生育したら収穫、生育したらまた収穫と、イナガミとウマ娘の高い身体能力をアテにした手法を予定していたのだが、現在は水分量を切り詰めて一週間のサイクルで生育する手法に切り替わっている。これでもサイクルとしてはかなり遅くしているのだが、秋川やよいと駿川たづなは金という人類普遍の問題に頭を悩ませ続ける他無かった。

 

『カツラギエースといったか。色々と書き込んでいるな。勤勉なのは良い事だ』

「このままだったら収穫は安定するけど……イナガミさんは新しい品種を作りたいんだよな。どう手を加えるといいんだろ?」

 

 カツラギエースは今回のプロジェクトに集まったウマ娘達のリーダー的立場である。元々はイナガミのお手伝いという立場であるため特に役職は無かったはずなのだが、一番の年長者という事もあり自然とまとめ役をやっていた。

 快活な一面とは裏腹に収穫した作物の種類について詳しく纏めてノートに書き込んでいる。今のところ着手している作物は誰でも育てられるよう改良された品種なのだが、それだけではいけないとカツラギエースは考えていた。

 

「要するにトレセンブランドの作物がほしいって事だもんな。売るのはまぁ……そういう伝ある奴に話してみればいいからやっぱ作物そのものだよな。ニンジン、ニンニク、ジャガイモ、トウガラシ、イチゴ……。どこから手を付けたもんだか……」

 

 カツラギエースは農場の隣に併設された簡易的なプレハブ小屋で、イナガミの目的であるブランド化に頭を悩ませている。

 作物で必要なブランドというのは、多少値が張っても買いたいと思わせてくれるような特徴が必要だ。トレセンで普通の農作物を育てたところでイナガミとトレセン以外に変わったところは無く商品としては普通のスーパー等で売られている通常の物と変わらない。それではいけないのだ。

 

 ここで言う特徴とは作物そのものの個性だ。例えば品種。

 例の一つとして柿を挙げる。一般に流通している柿は富有という品種になる。柿の渋味の原因となるタンニンが不溶性のため、特に手を加えなくても美味しく食べられる甘柿だ。しかしそれとは別に渋柿も当然存在する。種が無く食べやすい平核無(ひらたねなし)は渋柿だが、干したりアルコールに漬ける事で富有を上回る甘さを味わえるだろう。

 このように一口に柿と言っても一般に流通するものとそうでないものでは全く特徴が違うのだ。他にもブランド化には地域の特色や生育が真似出来ない独自性を持っている等色々条件はあるがそれらはイナガミとトレセン学園のおかげで解決できる。最終的には作物そのものに帰結するのがカツラギエースの悩みの種だった。

 

(ニンジンはノーだ。品種と市場規模が桁違いで勝負にならない。っていうか食堂で使ってるニンジンが一番良いの仕入れてるし。ニンニクは人気あるけどメイン張れる食材じゃないんだよな。ラーメンとかでニンニクを盛り付けたりはするけど要するにアクセントだし。ジャガイモは生産量がな……色々品種が無い訳じゃないけど店先のジャガイモが万能過ぎて勝てない。トウガラシはそもそもこの五つの中で一番人気が低い。イチゴは人気あるけどその分人気取りのためにブランド競争が激化してて差別化が難しい)

「あーダメだ。できる理由を探したいのに出来ない理由の方がどんどん出てくる……」

 

 カツラギエースは天を仰ぎ煮詰まっていた。

 ここまで来ると彼女が考える領分を越えてくるのだが、そこはそれ、彼女なりに手が抜けない気質という事でもある。

 窓の外ではイナガミがライスシャワー、スペシャルウィークと共に土に前足を入れ肥料を程よくかき混ぜていた。言葉が分からなくても意思の疎通が図れている様子はある種の牧歌的な雰囲気を漂わせている。

 

「はぁ……。あれこれ悩んでも仕方ないか。スペ達を手伝って────ってあれ?」

「カツラギエース……“コンタクト“を開始。ネオユニヴァースは貴方達に『依頼する』よ」

 

 気分転換にカツラギエースがスペシャルウィーク達を手伝おうとすると、プレハブ小屋にネオユニヴァースが入ってきた。手にはなぜかトウモロコシを抱えている。

 

「えっと……確かネオユニヴァースって名前だったよな?依頼っていうのはこのトウモロコシか?うちで育ててほしいのか?」

「“アファーマティブ“。でも“必要“なのはこの“SIZE“じゃない」

「は……?」

 

 それは、ネオユニヴァースからもたらされる新たな事件のきっかけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一週間後。

 菊花賞まで残り一週間を切った頃、突如としてトレセン学園に爆発音が響き渡った。

 突然の爆発音に騒然とするトレセン学園。

 

『た、タマモクロス、セイウンスカイ!来てくれ!ネオユニヴァースが……』

『どうしたんやイナガミ!まさか今の音と関係あるんか!?』

『口頭では説明できん!とにかく来てくれ!どうしてこうなったのか我にも分からん!』

『待ってよ、また何の騒ぎ……?』

『……俺は近づかないからな』

 

 爆発音の発生地は農場。

 イナガミからの緊急要請にセイウンスカイとタマモクロスが慌てて急行すると、そこには唖然とするイナガミとプロジェクトチームの面々、そして。

 

「『ね、ネオユニヴァース?そのバカでかいトウモロコシはなんや……?』」

「“スフィーラ“。完成して嬉しい。これが、ネオユニヴァースが求めていたものだよ」

 

 身の丈を越える巨大なトウモロコシとなぜか麦わら帽子を嬉しそうに持つネオユニヴァースがそこにいた。

 

「『ネオユニヴァースさん、それって何なんです?イナガミに頼んでトウモロコシを大きくしてもらったんですか?』」

 

 言葉ではなく首を縦に振る事でセイウンスカイに返答したネオユニヴァース。これだけでは巨大なトウモロコシがあるだけで爆発音の正体が分からない。

 だが正体は自ずとネオユニヴァースの方から明かしてくれた。ネオユニヴァースが右手に持った巨大なトウモロコシを振るう。そしてその動作と共にトウモロコシが半分折れ薬莢と機械的な中身が一瞬見えてしまった。

 

「『は?』」

『わ、我は依頼された通り大きくしてやっただけなのだ。それがなぜこんな事に……』

「『エース先輩、ネオユニヴァースさんから何か依頼されました?』」

「ああ……新しい大きなトウモロコシの品種を作ろうって話をしたんだけど……」

 

 よく見るとトウモロコシの先端が銀色になっている。それをネオユニヴァースが上に向けると先ほどと同じ爆発音が響き渡った。

 

「これが最強……【大砲モロコシ】。貴方達の農業に対する爆発的な想いが“ガンランス“に昇華された逸品……」

「『んなわけあるかぁ!どう見ても大砲に魔改造されたデカトウモロコシやないかい!?』」

「デカトウモロコシじゃない……素材はオオモロコシ……」

「『気にするとこそこか!?』」

「セイちゃん、もう訳が分からないよ……」

「『えっとスペちゃん、状況を確認したいんだけど、ネオユニヴァースさんの依頼で大きなトウモロコシを作ったらそれが食材じゃなくて武器に改造されたってこと?』」

「そ、そうなんだけど、これ銃刀法とか色々大丈夫なのかな……」

『我はなんというものを生み出してしまったんだ……』

「い、イナガミさんが落ち込んでる……」

 

 てんやわんや、ネオユニヴァースからなるカオスに一同収拾がつかない。温厚さで知られているニシノフラワーですらネオユニヴァースの奇行に唖然としている。

 

「試運転はここまで……流石にここには置けない……」

「『当たり前やろ。さっさとそれ警察なりどっか預けてしまえと……』」

「うん。“友達“に預ける」

「『友達ぃ……?』」

「『タマモ先輩!ネオユニヴァースさんから離れてください!』」

 

 タマモクロスより早く気配を察知したセイウンスカイが声をあげ、それに呼応したイナガミが尻尾をタマモクロスに巻き付け急いで引き上げる。ネオユニヴァースの隣にはいつの間にか極小の龍属性の塊が、まるでワームホールのように穴を覗かせておりネオユニヴァースはそこに『大砲モロコシ』をいそいそと片付けていた。

 

「No problem。これで武器はかいけ────」

「『何も解決してませんよ?』」

「あっ」

 

 ネオユニヴァースの後ろから、そっと、しかし確かな力で首根っこを掴むセイウンスカイ。その顔はニコニコと穏やかで、しかし目は一切笑っていない。

 

「『タキオンさんところに行きましょうか。あとたづなさんとルドルフ会長も呼んでじっくりお話ししましょう。事と次第によってはマカ錬金も禁止します』」

 

 ズルズルと引きずられていくネオユニヴァース。

 

 セイウンスカイがブチキレるのも当然である。

 菊花賞前でそこそこピリピリしているというのに、イナガミの農業とアグネスタキオンのマカ錬金で気を配らなければならない事が多いのだ。そこに巨大トウモロコシを武器に改造したばかりか、合宿初日に遭遇した謎の龍によるものであろう龍属性を一般人の前で晒している。今回ばかりは事無かれ主義者のセイウンスカイと言えども堪忍袋の緒が切れた。

 

「『なぁ、スペ、あないにキレとるスカイ見た事あるか?』」

「いやぁ、私も見た事無いです。普段優しい人が怒ると怖いってほんとなんだべなぁ……」

『なんだかイネを思い出すな……。あやつも態度は丁寧だというのに一度怒らせるととことんヘソを曲げる事があった……』

「えっと、これで一件落着なのかな……」

「なぁみんな、このトウモロコシどうしよう。もしかしたらトレセンブランドこいつでいけるんじゃないかって思ってたんだけど……」

「と、とりあえず学園長に相談しません?ネオユニヴァースさんが何もしなければきっと普通の品種だと思いますし」

「ら、ライスもそう思うよ!粒が一粒一粒おっきくて、色んな料理のアレンジができそうだし!」

 

 カツラギエースの提案で無理矢理今後のブランド化について相談を始めるプロジェクトチーム達。ネオユニヴァースが起こした【大砲モロコシ】事件を一刻も早く忘れたいのだろう。

 

 この後ネオユニヴァースは呼びつけられた面子にこってり絞られ、しばらくはアグネスタキオンとの共同研究を停止する事となる。アグネスタキオンからすれば完全なとばっちりであるのだが、事情聴取によりネオユニヴァースはマカ錬金を利用して自分の武装を作ろうとした疑惑が浮上したため停止せざるを得なくなった。

 ネオユニヴァースは最後まで「マカ錬金は装飾品だけ」と抵抗していたが、話を聞いたシンボリルドルフが【装飾品】の意味について恣意的に説明していない点をネオユニヴァースに突きつけている。どうやらネオユニヴァースが観測している世界では装飾品それ自体に何らかの力があり、【スキル】という形で装備者に様々な恩恵をもたらす事ができるのだが、これをネオユニヴァースはセイウンスカイらにあえて説明していなかったために悪質性があるとされあえなく御用とされた。

 なお【スキル】について詳細を説明したのはアグネスタキオンである。共同研究しているアグネスタキオンは当然ネオユニヴァースから【装飾品】について知らされており、ウマ娘に装備させて怪我や事故、病気等を防げないかを真面目に研究していたのだ。同志であるネオユニヴァースが起こした失態に流石のアグネスタキオンも擁護出来なかった。

 

 

 

 

 

 後に【砲モロコシ事件】と呼ばれるようになるこの事件は、トレセン特産品【トレセンオオモロコシ】を生み出すきっかけとなりトレセンブランド品への第一歩となるのだが……それはまだ先のお話。

 

 

 

 

 




農業に対する爆発的な想いが
ガンランスへ昇華した。
こう見えて使える。(原文ママ)



本当に使える。上記は砲モロコシの説明テキスト
ハンター諸氏ならご存知であろうあの砲モロコシ。攻撃力と斬れ味は残念だが最高レベルの拡散タイプがそれを覆す。初出2ndGではミラ相手にお世話になった方も多いのではないでしょうか
サンブレイクにも登場していますが流石に初出全盛期ほどの活躍とはいきませんね

またウマ娘世界の農作物事情について個人的な解釈を混ぜています。ニンジンが大好きなウマ娘がいるあの世界じゃニーズも現実と異なるでしょうから市場規模も異なると考えました
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