ウインバリアシオンの育成にハマっていたのですがこの子ビジュの良さとオルフェに対する口の悪さがバチクソ好きになりましまね。足の細さとバレエとかスタイルの良さとか好きなとこしかなくてすごくすごいです()
「ふむ……今のところ大きな問題は無し……か」
賑やかさで湧くトレセン学園。その様子を屋上から学園長秋川やよいと、隣に控える秘書駿川たづなが見下ろしている。
「大きな混乱が予想されましたが現状では滞りないようですね」
「平穏!未だ煩い声があるが、大きいだけの声に意味は無い!……こっそり公安とかいるかもだが」
「あー……やっぱりそういうお話が?」
「無いぞ。無いが……いないと考える方がおかしいからな……」
龍二頭と共に駿大祭を開催するにあたっては政府から
基本的にはどの意見も気にする必要の無い戯言でしかないのだが、人間というのは厄介な者で自らの思想を暴力で肯定しようという輩が時折発生する。社会での居場所が無い弱者が過激な意見に身を委ねて事件を起こした例は枚挙に暇が無い。
「おそらくですけど……本当に危ない方がいたら事前に目を付けられてるのでは……」
「……あれこれ考えても仕方がない。そろそろバルファルクのトークショーが始まる。我々も遠目から観衆を観察しよう」
イナガミと大豊食祭プロジェクトチームが運営する八百屋にも今のところ大きな問題は発生していない。レースだけでなく、多才な才能を持つウマ娘達。その能力が遺憾無く発揮されているおかげで大規模な混乱は避けられていた。
「……さて皆さんお時間になりました。皆さんこんにちは~」
「「「「「「こんにちはー!」」」」」」
バルファルクのトークショー開幕は子供達の可愛い挨拶から始まった。
老若男女問わず客がターフに詰めかけているのだが、輪にかけて多いのがまだ幼児期の子供達である。元々バルファルクは人気が高いのだが、特に男児が憧れを抱く事が多い。鋭角的でスタイリッシュなフォルム、何者をも置いていく速さ、赤く光る謎のエネルギー、そしてドラゴンという要素、どれを取っても男の子をワクワクさせるのには十分な特徴と言えた。
司会を勤めるのはシャーロットである。家柄もあり人前で登壇する事の多い彼女は司会進行役としてちょうど適性がある人材と言えた。
「皆さんお待たせしました。司会進行を勤めますシャーロット・アーサーと申します。ご存知の方が多いと思いますが、先週の菊花賞、衝撃的なカミングアウトがありましたね。今日はそんな話題のバルファルクとセイウンスカイさんと一緒にお話していきましょう」
「『皆さんよろしくお願いします、セイウンスカイで~す。それと……』」
「『おう。知ってるやつも多いだろうが俺がバルファルクだ。自己紹介というのはこんな感じで良いのか?』」
「『もう、ぶっきらぼう過ぎるよ。まぁ、こんな感じで話せるようになったので、みんなよろしくね~』」
ほんとに喋ってる!とあちらこちらから聞こえる驚愕の声。どうやらテレビ中継も来ているらしい。誰もが皆、初めて聞くバルファルクの生の声に興奮を隠せないでいた。
「それではですね、まず始めに、どうしてバルファルクが話せるようになったか、気になる方が多いと思います。これについてはバルファルクと……あれ?アグネスタキオンさんは……」
「『ああ。何やら資料を投影する機材を運んでるらしい。アグネスタキオンの方が詳しく話せるのだが……まぁ俺から話すとするか』」
バルファルクが話せるようになった経緯を話していく。いつの間にかコンプライアンスの概念すら学習していたようで、きっかけになったイナガミとの事件はぼかされて話していた。今年の1月頃に話せるようになりたいなぁと、そんなやんわりとした希望という風に流暢に話していく様子はどこかセイウンスカイにある種の寂しさを感じさせていた。
(そういえば、もう私やタマモ先輩に依存しなくていいんだよね。これなら私が寿命を迎えても大丈夫かなぁ)
「『アグネスタキオンに言わせれば、俺はかなり知能が高いらしい。あまり自覚はないんだがな』」
「『その頭の良さをもうちょっと気遣いができる方向にシフトしてほしいんだけどねぇ……』」
「『いやー分からないな。人間は分からない事がいっぱいだなぁ』」
「『君分かってて言ってるでしょ!?』」
どっと笑いが起こる観客達。話せるばかりかお笑いのボケとツッコミのようなやり取りは観客の心を掴むのに十分だったようだ。皆一様に笑顔が広がっている。
「ではここでですね、皆さんの方から質問タイムとしましょう。セイウンスカイさんとバルファルク、お二人がたくさん話してくれましたけど、まだまだ気になる事いっぱいありますよね。質問ある方は手を挙げてください。一人一回までですよ」
待ってましたとばかりに挙がる沢山の手。今度はあの記者会見のようなはりつめた場ではなくフランクな雰囲気での質問である。少なくともセイウンスカイを追い詰めたあの悪徳記者のような輩はいないだろう。
控えめに大人からも手が挙がっていたが、子供達が多いという事で時間いっぱい子供達の質問に付き合う事になった。
────バルファルクってどれぐらい早いの?
「『俺の速さか。そういえばあまり考えた事はなかったな』」
「『確か誰かが計測して、マッハ10とかって言ってたような』」
「『マッハ……というのはなんであったか』」
「『音の速度だよ。マッハいくつって言えばその数字だけ音の倍の速さになるんだ。バルファルクは音の10倍速いって事だよ』」
「『音?目に見えないのにどう基準とするんだ』」
「『そこはほら……そういう機械があるんだよ。計測する機械がね』」
(おかしいな。タキオンさんが遅い。機材取りに行くだけってそんなに時間がかかるのかな)
セイウンスカイがアグネスタキオンの遅れを心配するがその間にもトークショーは続いていく。
────好きな食べ物はなんですか?
「『おっ。ベタなのが来たねぇ。人間同士だったら割りとある質問なんだけどバルファルクはどう?』」
「『好きな食べ物……特に思い付かんな。好きかどうかで食べる物は決めていない。期待に沿える回答じゃなくて悪いな』」
「『美味しいのとかはどう?オストガロアの触腕美味しいって言ってたじゃん』」
「『そういえばあれは初めて美味しいと感じた食べ物だった。あれなら好きな食べ物と言えそうだ。また今度奴を見つけたらレールガンとやらを撃ち込んでもらいたいな』」
慣れている筈の冷たい深海の底で寒さとは違う悪寒を感じた頭足類モドキがいたそうだがそれはまぁさておき。
────バルファルクに乗ってみたいです。乗って空を飛べますか
「『それはちょっと……いやちょっとどころじゃないな。普通に危ない』」
「『まぁ憧れるよねぇ。風圧とかつまらない事気にしなきゃ背に乗って飛ぶのはやってみたいし』」
「『……セイウンスカイが望むのなら』」
「『乗らないよ!?なんで子供達の時はまともな発言するのに私の時は振り切れるの!?』」
「『セイウンスカイを乗せて飛べないかどうか考えなかった事もないのだ。まぁアグネスタキオンに危険だと諭されたが……』」
(こういう時にファインプレーするタキオンさんマジで何なの)
────飛ぶ時に出してる赤い光はなぁに?
「『俺もちょっと分からん。手足を動かすのと同じ感覚で使っていたから、いざそれが何なのかと言われても考えた事がなかったのだ。セイウンスカイ達が考えてくれているようだが』」
「『えっと、私はこれを"龍属性"って呼んでます。ゲームとかやった事ある人なら分かるかな。なんていうか、ドラゴンの生命エネルギーみたいな感じ……です。ごめんなさい、私も詳しい事は分かってなくて……』」
「概ねその説明で間違いはないよスカイ君。いやぁ、遅れてしまって済まないね」
予定より大幅に遅れてアグネスタキオンが会場に姿を現した。
アグネスタキオンもまた皐月賞を勝った【超高速のプリンセス】として有名である。その振る舞い故かタマモクロスのような大規模な人気ではないものの、コアなファン層から根強い人気を得ていた。
「まず"龍属性"というのは先ほどスカイ君が話したような考えで間違いないんだが、細かく言うとドラゴンそのものの熱量のようなものでね。熱量とは何か?という話になるが、所謂カロリーだよ。ほらお店で売っている食べ物の箱とかに書いてあるだろう?あれと似たものだと思っていい。大事なのは似たものであって人間のカロリーそのものではない事だ」
アグネスタキオンがバルファルクの発話や"龍属性"についての解説を始める。先ほどまで子供達との和やかなトークショーだった会場が一気にアグネスタキオンによる講義の場へと変えていった。意外にもアグネスタキオンなりに配慮しているようで、子供達にも分かりやすいよう専門的な用語は使わずに論拠を交えて説明している。子供達が分かるなら大人にも分かりやすいという事で、突如乱入気味にやってきた筈のアグネスタキオンの講義を会場の誰もが黙って聞いていた。
「……ここまで彼ら"ドラゴン"について解説したが、最後に一つ気をつけてもらいたい事がある。バルファルクやイナガミのように人間と仲良くなれるような者もいる一方で、オストガロアのように強大かつ凶暴な者もいる。これはここにいる者達だけでなく、全世界に向けた注意喚起なんだが、新しいドラゴンを見つけても簡単に会いに行ってはいけないよ。新しいドラゴンが必ずしも仲良くなれる存在とは限らないからね」
最後にこう締めくくるアグネスタキオン。途中子供達の疑問に答えながらの講義であったために基本的には子供達に語りかけるような調子での解説だったが本筋としては最後に語った注意喚起が最も重要だろう。
「済まないスカイ君。駿大祭が終わるまでしばらくニュースやSNSをなるべく見ないでもらえるかな」
「えっ?」
会場から退く去り際、アグネスタキオンがセイウンスカイに小声で語りかける。その表情はいつも自信ありげな堂々とした顔とは違い秘密を抱えるように真一文字に口を結んでいた。
(もしかしてさっき遅れたのと関係してるのかな……)
「『なんというか、俺達以外の龍か……。まぁ何かあったら俺が飛んで行けばいいだろう。世界のどこでも、俺は飛んで行けるしな』」
「『あんまり節操無く飛ぶのは困る人多いから控えてね』」
「『俺は困らん。そういえばいつぞやに航空法なるものを覚えろという話があったな。飛ぶのにも規則がいると。俺からすれば規則なぞどうでもいいが』」
「『そういう炎上しそうな発言はやめてね!?本当にめちゃくちゃ面倒臭い事になるから!』」
「『俺はセイウンスカイが好きだからここにいるだけで、全て人間の都合に合わせる訳じゃないぞ。どうやら勘違いしてる者もいるようだからな。俺のスタンスとやらを発しておいただけだ。俺はセイウンスカイがいなければここにいない。人の言葉を話せるようになって色々な関係が増えたが、セイウンスカイが一番大事だというのは変わっていないぞ』」
「『アッハイ ソウデスカ』」
(なぁんでそういう事人前で言えちゃうのかなこいつは!)
セイウンスカイがバルファルクに如何に愛されているか、このやり取りだけでも分かるだろう。会場の観衆から暖かい視線が注がれ顔を赤くするセイウンスカイ。人間的な羞恥感性を持たないバルファルクだからこその発言だろう。
既にトークショーが始まって二時間余り。耐え性の無い子供達は集中力がなく寝ていたり好き勝手に話していたりする。そんな子供達に向けてトークショーの終わりにはまだ触れられなかった子もいるだろうという事で午前中にやっていた触れ合い体験を再開した。単純にバルファルクと触れ合える事を喜ぶ子供達も多いが、親等の大人達はセイウンスカイのレースでの奮闘ぶりも見ていたようでセイウンスカイにこれからのレースを願って激励を向けていたりもする。
バルファルクの影に隠れがちだがセイウンスカイとて皐月賞・菊花賞を制した現役の二冠バである。アスリートとして見るなら押しも押されぬ優駿の筆頭であるのだ。アスリートとしての側面とバルファルクの相棒という二面性、それが彼女の人気に火を付けていた。バルファルクに関連してか海外でもセイウンスカイの実力に気が付いている者もいるようで、一部では自国のレースに招待できないかという声も上がるほどである。
セイウンスカイとバルファルク、二人揃っての人気が固まりつつあった。
何事もなく進んだ駿大祭。秋川やよいが懸念していたような事はなく、誰もが楽しんで学園を過ごしている。
日曜日もまた同じ日程で進み駿大祭は大盛況の内に幕を閉じた。二日目からはアグネスタキオンも遅れずにトークショーに参加しそれ以外に大きな変更点は無い。イナガミと大豊食祭プロジェクトチームの八百屋も大変繁盛したようで、二日目の昼からは在庫切れにより泣く泣く閉店せざるを得ない程の売り上げを経ていた。この業績にイナガミはホクホク顔である。
(みんな色々心配してたけど、事件とか起きなくて良かったな。そういえばタキオンさんが不思議な事を言ってたけど……)
だからこそ、油断していたのかもしれない。アグネスタキオンの神妙な顔と、滞りなく進んだ駿大祭が嵐の前の静けさでしかなかった事に気が付くべきだったのだ。
翌日。
凶報は全くの予想外から訪れる。
駿大祭の振替休日でいつもより長く惰眠を貪っていたセイウンスカイを起こしたのはバルファルクだった。
「『え~なに、今日休みなんだけど……なにかあったの?』」
『なにかどころではない。急いでテレビでもネットでも何でもいい。ニュースを見てみろ。後でアグネスタキオンから説明があるはずだ』
言われるがままに携帯でSNSを確認する。トレンドに上がっていたのはとある映像だった。
「『なにこれ……』」
コロンビア首都、ボゴタ壊滅。
その見出しと共に、映像では黄金の巻き角を持つ何かが町の中で暴れている様子が映し出されていた。
ネオユニ「発掘武器の時間と聞いて」
アルバ「おまえじゃねぇすわってろ」