セイウンスカイとバルファルク   作:エドレア

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皆様、平素よりご愛読頂きまして誠にありがとうございます。

今度は対ゾラです


古龍大戦 PACIFIC STORM 【ゾラ・マグダラオス戦役】

 

 

 

 

 

 

 各地で古龍達が出現して既に数日が経過。

 天気は快晴、波も穏やか。

 タマモクロスは艦隊の旗艦の中で静かにその時を待っていた。

 

 ゾラ・マグダラオスは日付変更線を越え接近は間もなくという段階であった。ゾラ・マグダラオスを攻撃していた米海軍も今は撤退し日米連合艦隊に組み込まれている。

 海上ではイナガミが役に立たないと自己申告し残って硫黄島本島の防衛に当たっていた。

 

「『やっこさんも海の中で静かにしててほしいわぁ。初手話しかけに行くのウチなんやで?』」

 

 ナバルデウス亜種のように話が通じた例もある。ゾラ・マグダラオスと遭遇した際はタマモクロスが説得を始める算段となっていた。本来なら米海軍が会敵し攻撃を加えているため平和的な話し合いにはならないと思われたのだが、ゾラ・マグダラオスはそれらの攻撃に意を介さず全くの無反応であったためにこの懸念は無いものとして解釈されている。

 共に艦隊の中で組んで行動していたナバルデウス亜種とオストガロアは先行して海底付近を捜索している。何かあればすぐにタマモクロスへ報告が上がるはずだ。

 

「『例のゾラなんたらはデカい分動きは鈍いって話や。いきなり戦いには────』」

『タマモクロス、海底にそれらしき姿が────』

「レーダーに感有り!これは……海底火山……?」

 

 タマモクロスの呟きとナバルデウス亜種の報告、そして護衛艦のレーダーによる索敵は全く同時だった。

 海底から伸びた火柱はタマモクロスが乗っていた護衛艦の傍を掠めていた。

 

 

 

 

 

『外したか』

 

 海底に潜む巨躯────溶山龍ゾラ・マグダラオスは簡素にそう呟いた。

 なんて事は無い。海上の艦隊接近に合わせて待ち伏せし、適当な艦艇を狙って背中の噴出口から攻撃したのである。旗艦が狙われたのは偶然であった。

 

『なにやってんのこいつ!?あともう少しでタマモクロスの船に当たるところだったぞ!?』

『こやつめ、事前情報とは訳が違う。兵法を理解しているぞ!』

 

『われらのことは感じとる。気配がしたでな、龍ならずとも龍に与する小さき者。こもうとも(小さくても)その力は脅威じゃ』

 

 巨体が海底から起き上がる。全生物史上最大級の巨体はそれだけで海底を揺らし海上に波を作った。

 

『大方、灯火の方へ行かせにゃあとする魂胆じゃろう。われたちからすりゃあワシの体は大きいけぇな、そりゃ必死に止めるか。しかし────』

 

『あっつ!え、ウソだろこいつまさか体の熱だけで()()()()()()()()()()()()()!』

『く……これでは近付けん!』

 

『祭りじゃ、祭り。あの大蛇の気配もする。大蛇も目指しとるんならワシが行かん道理は無い!』

 

 ゾラ・マグダラオスは好敵手との再会を願って胸を踊らせていた。

 

『あやつとの再戦の前に肩慣らしじゃ。そう簡単に死んでくれるなよ……!』

 

 話が通じるどころか極めて好戦的な気性にオストガロアは顔を青くしていた。

 

 

 

 

 

『ダメだ、タマモのあねさん!あいつ話通じねぇ!通じねぇってか、戦うの前提みたいだ!めちゃめちゃテンション高ぇ!』

『んなもん聞こえとるわぁ!こちとらさっきの火柱が船を掠めとんのや!』

 

 米海軍が攻撃していた頃とは打って変わって好戦的なゾラ・マグダラオスに日米連合艦隊は散逸しながらも陣形を整えていた。

 ネオユニヴァースからの情報共有が届いておりいたずらに外殻を攻撃するのではなく、各所にある排熱器官が狙い目であるというのは周知の事実である。問題なのは巨体に見合わずアグレッシブに動く機動力と、背中の火口から絶えず放つ噴石がランダムな軌道で艦艇を襲っておりその対処に追われている事だった。

 

『周囲の熱が熱すぎて近付けん!噴石は某達でも叩き落とせるが、本体を攻撃しなければジリ貧だ!』

「『排熱器官を攻撃しいひんと話にならん!なんでもええからこっちから攻撃を……!』」

 

 要請に応えて日米艦艇から魚雷が発射される。

 排熱器官の場所はある程度マークされており魚雷は正確にそれらを攻撃した。

 

『むっ。やはり攻撃してくるか。ワシのこともそれなり知っているようじゃのう』

 

 ゾラ・マグダラオスは排熱器官から熱を放出する事で周囲の温度を急激に引き上げている。そこを潰せばまだ対処はしやすくなるはずだ。

 

『やはり上のフネとやらを直接潰すか────』

『させるか!タマモのあねさん、さっきの破裂魚をありったけやつの顔面にぶつけてくれ!こっちにも切り札ってのがある!』

『ウチが指示しとる訳やないんやけどなぁ……!』

 

 海底を蹴りあげ海上に向かおうとしたゾラ・マグダラオスは視界いっぱいに広がった魚雷群に面食らう。対して効きやしないが爆破の衝撃は確かにゾラ・マグダラオスを押し止めた。

 

『こんなもの何発喰らったところで────』

『こいつを見て同じ事が言えるか?』

『……!?』

 

 爆発が晴れ広がったゾラ・マグダラオスの視界には大口を開けて構えるナバルデウス亜種とオストガロアが並んでいた。ナバルデウス亜種は大質量の海水を吸い込み、オストガロアはいつぞやに披露した莫大な龍属性をチャージしている。

 

『人間の発想は面白いよなぁ。合体技とかロマンあるぜ!』

『よく見ておけ、我が甥よ。我らが放つ必殺の渦────』

 

『大激流』『瘴龍』『『二重螺旋!!!』』

 

『オオオッ……!?』

 

 ナバルデウス亜種による大激流とオストガロアが放つ龍属性ビームが合体、互いに螺旋を描きながらゾラ・マグダラオスへと直撃する。

 ゾラ・マグダラオスは勢いそのままに海底へ叩きつけられ身動きが取れなくなった。

 

 

 

 

 

『すごい.……』

 

 艦隊の中で少し離れたところからその光景を見ていたナバルデウスの幼体は圧倒されていた。

 人間から見れば彼も巨大生物だがやはり古龍としては子供なのだろう。ナバルデウス亜種は甥の幼体に手本を見せてやるからと少し離れたところから見ているように促していた。当初圧倒的な巨体を誇るゾラ・マグダラオスにハラハラしていたが、意外にも戦闘としては形になっている。自身の4倍以上の体躯を相手に優位に戦局を進めている様子は憧れを抱かせるのに十分な動機となった。

 

 ナバルデウス亜種とオストガロアの合体技の威力は想像を越えたもので、ゾラ・マグダラオスを突き落とした勢いのままに炸裂した爆発は海底に巨大なクレーターを作り出していた。そのクレーターの中央でゾラ・マグダラオスは伏して沈黙している。

 

『はぁ.……はぁ……流石にこれは効いたろ』

『お主との併せ技なぞ考えたくもなかったが、しかし威力は図りしれんな』

 

『全く……ワシは勘違いをしていたようじゃあ』

 

『おいおい、野郎まだ動けるってのか……』

『気にするな、もう一度さっきの攻撃を当てれば────』

 

『肩慣らしと考え油断しておったわい。本気でかかってくる相手に本気は出さんというのは無作法というもの……!』

 

 周囲が振動する。

 先ほどよりも膨大な熱量は一瞬で海を赤く染め上げ、それどころか海上にいるタマモクロス達にもその熱気を伝えていた。

 

『なんやねんこの暑さ!?』

『あねさん逃げろ!ちょっとこれは止めきれない!』

 

『ワシの本気、特と味わえい!』

『大 噴 火!!!』

 

 その威容、まさに火山の如し。

 海中から海上まで黒煙が立ち上ぼり周囲数kmに渡って噴石が降り注ぐ。噴火の衝撃は津波を引き起こし日米艦艇を揺れ動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……困ったな』

『困りましたな』

 

 同じ頃。

 中国・上海にて。

 

 ラオシャンロンとダラ・アマデュラ二体の超大型コンビは港で立ち尽くしていた。

 ラオシャンロンを落とし穴にハメるまでは良かったがその後は全く有効な攻撃を与えられなかった中国軍は結局上海にまでその進行を許してしまっていた。業を煮やした某国家主席はこの惨状を軍の失態と捉え、人事には粛清の嵐が吹き荒れているという。無論そんな事をしたところで現実は変わらないのだが、某国家主席の都合は関係無く二体は立ち往生していた。

 

『ここから先はまだ陸地が広がっていたような』

『小生もそう思いますれば。寝ている間に随分と様変わりしてしまったようで』

『泳げんこともないのだがな。しかし……うむ……やはり面倒だ……』

 

 千単位どころか万単位の年月で休眠していた二体は現在の地形を知らなかった。確かに古代には日本列島が大陸と繋がっていた時期もあるが、現代にその頃の光景は欠片も無い。ダラ・アマデュラなら長大な体をくねらせて泳げない事もないがラオシャンロンには難しい話だった。

 

『大蛇殿、小生を置いていって下され。ここで小生は役立たずであります』

『せっかくここまで来たというのにそれは無いだろう。何とか背負ってやるから』

『あのー、お二人さん?』

『む?どこからか声が……?』

『あ、今頑張って声だけそっちに飛ばしてんの。俺ならあんたら二人をワープさせられるからさぁ。めちゃくちゃ疲れるけど……

『何奴か。姿を見せぬばかりか、どだい不可能な提案とは。疑ってくれと云わんばかりではないか』

 

 ネオユニヴァースに情報を与えていた煌黒龍アルバトリオンだった。海を前に已む無く止まっていた二体に機会を与えるようだ。

 

『話が怪しいのは俺も分かるよ。けどここにいたって何もできないじゃない。ここは一つ、騙されたと思ってさ。ただ代わりに人間の味方してもらいたいんだよね。それが条件』

『人間……?ああ、あの小さき者か。朕がそれに与すると?』

『侮っちゃあいけないさ。彼らに強大さは無くても知恵はあるからね。何より彼らの中には俺達と話せる子がいる。ちょうど今、"火山"と戦ってるところだよ』

『なに?』

『このままだと君たち乗り遅れちゃうなー。ここから泳いでも間に合わないなー』

『……条件追加だ。終わった後貴様の面を見せよ。一発ははたかねば気が済まぬ』

『そんなことでいいなら、どうぞ』

『大蛇殿!彼奴奴(きゃつめ)を信用なされると?』

『信用するわけ無かろ。しかしここにいても進展しないのも事実。ならば使えるものを使うまでよ』

『お二人さんじっとしててね。あと二人ともそれぞれ別の場所へのワープだよ。海の上にラオさんほっぽり出せないんで』

『待て、説明が少な過ぎる。もう少し話を────』

 

 二体が巨大な龍属性の光に包まれたかと思えば忽然と姿を消していた。これにより中国は古龍大戦が終わるまでしばらく混乱し続ける羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アカン……被害が酷すぎる……」

 

 タマモクロスは己の無力さに歯痒さを感じていた。

 タマモクロスは安全圏で古龍達の話を自衛隊や米軍に伝える中継の役割を担っている。それだけでも十分貢献出来ているのだが、安全圏にいなくてはならない立場がより一層彼女に悔しさを滲ませていたのだ。

 

 ゾラ・マグダラオスが放った噴火の衝撃で幾つかの艦艇は横転し、噴石に被弾してしまっている。横転した艦艇は自力で立て直せないため多くの自衛官や軍人が海に投げ出されていた。ナバルデウスの幼体はそんな人達を一人でも多く救おうと必死に自らの体へ乗せている。

 

『ナバルの叔父さん、オストガロア!あんたら無事か!』

『多少の火傷だ。これくらい屁でもない』

『いてて……こっちはまぁだいじょぶだ。あねさんの方こそ無事か?』

『こっちは船が何とか躱してくれたからなんとかなっとる。……ここからどうすれば……』

 

 噴火が続いているせいで誰も近付けない。どうやら魚雷を学習したらしく、魚雷が接近した際に爆発的な噴火を起こして衝撃で誘爆させるという無理やりな防御で魚雷からの被雷をゾラ・マグダラオスは避けていた。

 

『さっきの合体ブレスは使えんの?』

『先ほどよりも熱水と化した範囲が広すぎる。有効射程にまで近付けんのだ。もう少し近寄らねば……』

『どうする、あねさん。これじゃあ打つ手無しだぜ』

『んなこと言うても……』

 

『どうしたどうした!?さっきまでの威勢はウソか!?』

 

 ゾラ・マグダラオスは噴火を繰り返す事で噴石の範囲を広め、より広範囲に攻撃を繰り返していた。噴火の衝撃でろくに近づく事も出来ずに誰もが有効打を打ち出せないでいる。

 

(考えろ、無敵の存在なんてあらへん!どこかに何とかする術や穴があるはず……!)

 

 誰もが絶望を抱きかけたその時だった。

 

「対空レーダーに感有り!これは……これは……?」

「今度何や!?もう何が起きても驚かへ……ん……」

 

『うおおお!?!?!?あやつめ、空から落とすならそう言えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?』

 

「『なんでダラ・アマデュラぁ!?』」

 

 戦場は更に混沌を極める事態に。

 空から蛇王龍ダラ・アマデュラが降ってきた。

 

 

 

 

 

『むぅ。一発どころか何回でもやつをはたかねばならなくなった.……』

「『おーい!そこのデカいの!』」

『む。おお、やつが言っていた話の通じる人間とはおまえの事だな?小さくて見失いかけたぞ』

「『ウチ、タマモクロス言うねん!色々と聞きたい事あるんやけどまず一つ!何しに来たん!?出来れば戦いたくないんやけど!』」

『朕の目的か?それなら一つだ……』

 

『待っていたぞ、大蛇ぃ!』

『ははは、その暑苦しさは変わらんな、"火山"!』

 

 海上でタマモクロスと話していたダラ・アマデュラに突貫するゾラ・マグダラオス。二頭の超巨大龍は揃って拳を固めて互いにそれをぶつけ合った。拳と拳の応酬だというのにそれだけで衝撃が発生し海面を叩いていく。

 

『見ての通り、朕の狙いはこやつよ。朕をここに行くよう飛ばしてきた者がおまえ達人間に味方するよう言ってきてな!利用されるのは癪だが味方してやらんでもない!』

『大蛇、お主どこぞで彷徨っていたのか?ボケが始まっとるんじゃないのか?』

『抜かせ、人間相手に本気を出すようなやつと一緒にするな!』

「『……あー、皆さん聞こえてます?ダラ・アマデュラは一応ウチらの味方する言うてますよ。味方っちゅうか、ただゾラ・マグダラオスとやりあいたいだけみたいなんやけど……』」

 

 一同、怪獣映画さながらの大乱闘に放っておくしかない。

 一応タマモクロスのアナウンスにより情報は共有されだが、なぜかブレスも使わずひたすら互いを殴り続ける様子に巻き込まれないよう離れて見る事しか出来なかった。

 

『あー、あねさん。一先ず解決?』

『解決っちゅうか、これもうあいつ一人でええんとちゃうかな……』

『待ってくれ、我が甥が海に落ちた人間達を助けている。それらも助けてから撤退しよう』

『それもそうやな。えーとこういう時は溺者救助ーって叫ぶんやったっけ?』

 

 幸いな事に海に投げ出されて負傷した者はいるものの死者はおらず行方不明となる者もいなかった。

 こうして対ゾラ・マグダラオス戦役はダラ・アマデュラに一任するという事で、情報収集用の最低限の艦艇を残し一旦の終結を見せたのである。

 

 

 

 

 

「自衛隊さん、苦労をかけてもうてホント済まへんな」

「お気になさらないで下さい。これが我々の仕事です」

 

 艦橋でタマモクロスは平身低頭するばかりであった。タマモクロスが乗る旗艦は無事だったが、他の艦艇は沈んでしまった物もあり、タマモクロスが乗る旗艦には救助者でごった返している。

 

「ヤマツカミはバルファルクが倒した。ゾラはダラに任せとる。残るはラオシャンロンとアン・イシュワルダとネルギガンテ……」

「タマモクロスさん!緊急なんですが────」

 

 残りの古龍を数えていたタマモクロスへ急報が走る。

 それはタマモクロスを戦慄させるのに十分な内容だった。

 

「頼むでイナガミ。アヤベとアステラを守ってな……!」

 

 硫黄島にネルギガンテとアン・イシュワルダが急襲。

 残されたイナガミはバルファルクと突如現れたラオシャンロンと共に対処に当たっていた。

 

 

 

 

 





アルバトリオンと三女神のダイジェスト

アルバ「うおぇっ……あいつら重すぎなんだよ……オエッ……気持ち悪い……あ、もっと背中擦って下さい」
バイ「過度な転移を使うと体調崩すんだな」(背中なでなで)
ゴドル「けど貴方にはまだ仕事があるのよね」(エチケット袋持ちながら)
ダレ「いや、ヤバい暴れっぷりだよねぇ。あ、女神印のお薬いる?フィーリングで作ったプラシーボ頼みのお薬だけど」
アルバ「それ口に出したらプラシーボにならないじゃん……まぁ気持ちだけ貰っとくわ……しばらく寝かせてくれ……」
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