徐々に佳境へと向かいましょう
(ネルギガンテ……!)
話は硫黄島急襲以前に遡る。
日本を中心とした東アジア・太平洋の争乱にシャーロットは憤りを隠せないでいた。
バルファルクが討伐したかに思われていたネルギガンテだが実際のところ行方不明である。直接ネルギガンテと相対し攻撃を受けた身であるシャーロット一派は北極を中心に捜索隊を組織、人海戦術で目星を付けてネルギガンテの捜索に並々ならぬ情熱を注いでいた。手掛かりが無い中での捜索だったが太平洋上で硫黄島に向かおうとするネルギガンテを捕捉できたのである。
シャーロットは船上でネルギガンテの様子を観察していた。既にネオユニヴァースから謝罪と共に情報を受け取っている。ネオユニヴァースがやった事に文句の一つ二つも言いたいところだったが、事態はその暇すら与えない。ネルギガンテの位置はすぐに共有され自衛隊から対空ミサイルが叩き込まれた。
恐ろしい事に飛行するネルギガンテはミサイルを喰らってもなおも飛行を続けた。爆発の衝撃で態勢を崩したりはするのだが、決して吹き飛ばされる事は無く自慢の再生能力で耐えていたのだ。
ミサイル以上の火器が無い以上足止めすら出来ない。本来ならバルファルクが最も迎撃に適していたのだが、この時バルファルクはヤマツカミを相手に戦っていて、終わらせた頃には硫黄島から目視圏内にまでネルギガンテが近付いて来ていたのだ。
(私達じゃ手出しできない……セイウンスカイとバルファルクに任せるしか……!)
多数のミサイル攻撃を受けてもなお進行したネルギガンテは勢いそのままに摺鉢山の頂上へ降り立った。
「きゅい?」
「アステラ……何か感じているのね?」
「きゅーん」
硫黄島の航空基地でアステラと共にいたアドマイヤベガにもネルギガンテの来襲は伝えられていた。
摺鉢山の頂上に降り立ったネルギガンテは周囲を探るように見渡している。一直線にアステラの元へ向かうかと思われたが、そうではなく迂回するように山へと向かったネルギガンテの行動は不可解であった。
ネルギガンテに通常の兵器は意味を成さない。一撃で仕留められなければならない以上レールガンが適任かと思われたがそれを保有する米海軍はゾラ・マグダラオスに付きっきりになっていた。対古龍戦線として硫黄島にはいつもより多くの兵器が運ばれていたがネルギガンテの前には焼け石に水でしかなかった。
「アドマイヤベガさん、私達の指示に従って下さい。場合によっては基地の放棄も視野に入っています」
「え、ええ……どうしてネルギガンテはこっちに来ないのかしら?」
「きゅー」
実はネルギガンテはアステラの気配に導かれている訳ではなかった。アステラの気配に気付いてはいるがネルギガンテにとって追うべき相手というのは生体エネルギーを豊富に蓄えた存在である。アステラにも相応のエネルギーはあるとはいえ、ネルギガンテにしてみればより膨大な気配をした相手を狙うのは自明の理であった。
島全体が揺れる。
アドマイヤベガのいる航空基地は突如として砂の如く崩れ去った。
『ぐぉっ!?何事だ!』
イナガミは航空基地の中でネルギガンテの出方を窺っていた。
直接対峙したバルファルクからは相性最悪との評価が下されており、実際肉弾戦ともなれば剛力で押し切られる可能性があった。故に島のあちこちに持ってきた種をばらまき自身に有利なフィールドを作り上げていたのである。もしネルギガンテが近付いてくる場合、地雷の如く設置した種を発芽させ邪魔する遅滞戦術で時間を稼ごうしていた。本来硫黄島に外来の種を持ち込むのはご法度だがイナガミの能力を活かすためにも今回ばかりは仕方なかった。
しかしイナガミの努力は完全に崩れ去ってしまっていた。硫黄島には自衛隊の航空基地があり滑走路などが一通り整備されているが、それらが見るも無惨に破壊されている。まるで地面が流砂のように絶えず鳴動しており、建物は瓦礫の山と化していた。
噂に聞くアン・イシュワルダの仕業に違いなかった。
『そうだ、アドマイヤベガとアステラは!?』
瓦礫から身を起こし慌てて二人を探すイナガミ。
日本の建築学が誇る耐震性も古龍の前には無力である。基地だった建物は多くの自衛官らが被災しあちこちに悲鳴が挙がっていた。
『我は未だに人の言葉が発せぬ……!これでは呼び掛ける事も出来ないではないか……!』
イナガミは必死に瓦礫を起こして二人を探す。途中幾人かの負傷した自衛官も助けて背に乗せているが二人を見つけられていなかった。
奇妙な事にネルギガンテは摺鉢山から見下ろすだけで何もしなかった。イナガミも含めて襲撃する絶好の機会にも関わらずに、だ。まるでそれは、獲物を今か今かと待ち伏せする肉食獣のような冷静さと冷徹さを兼ね備えていた。少なくとも、ネルギガンテはそのように振る舞っていた。
だからだろう。
ネルギガンテが空中から落下してくるラオシャンロンに気付かず潰される羽目になるのは仕方がない事だった。
『なんてことだ……イナガミ達は無事なのか?というか山にいるあいつはなんなんだ?』
ヤマツカミとの戦闘を終えたバルファルクは日米間との話し合いに奔走しており、ネルギガンテの来襲には遅れて対応する事となった。バルファルクは現在のところ唯一人語が話せる古龍である。既に英語もマスターしている上に文字にすら一定の理解があるため文字は書けなくても幾つかの書類の前で証言しなくてはいけなかった。所謂お役所仕事というやつである。
『山にいるそこのデカいの!貴様どこから現れた!?』
『小生にもよく分からん。突然声だけの者に"わーぷ"させるから人間の味方をしろと言われて気付いたらここだ。気配の主に近付いたのは間違いなさそうだが、ここで何をすれば良いのだ?』
「グググ……」
『ん?おい、貴様何か踏んでいないか?』
『むっ?なんだこやつ、不幸にも小生の真下にいたのか?可哀想に……』
『いや、完膚なきまでに踏み潰してくれ。そいつは見境無しに俺達をエサだと思って襲ってくるぞ』
『はぁ?』
「ググ……グギャア!」
『むぉっ!?』
ラオシャンロンが足をどければそこには踞るネルギガンテがいた。超重量に押し潰されたというのに獰猛さは健在で動けるようになってすぐにラオシャンロンの頭部へ噛みついたのだ。しかしラオシャンロンは噛みつかれた頭をすぐさま振り回し地面に叩きつける。そうして無理矢理引き剥がしたネルギガンテに向かって前足からのボディプレスをお見舞いした。
『本気で小生をエサだと思ったのか?生まれてこの方長く生きてきたが、喰われそうになるのは初めてだ』
『人間の味方をしてくれるならそのままそいつを抑えこんでほしい。これ以上こいつにこの場を引っ掻き回されたくはないんだ』
『こんな事なら幾らでも良いぞ。……しかし恐ろしく頑強だなこやつ。割りと本気で力をかけているのに死にはせんのか』
「グギギギ……」
滅尽龍ネルギガンテはその生態からなる戦闘思想において、同格の古龍の異能をタフさと再生能力で受けきり剛力で粉砕するという方針となっている。そのため生命力の凄まじさが注目されがちだが、翻ってネルギガンテにとって相性が悪い相手というのは純粋に体格やパワーで勝る相手だった。そして老山龍ラオシャンロンは異能を持たず、ネルギガンテの倍以上の体格がある。
死なないだけ、まだネルギガンテに温情がある状態だった。
『俺はこのまま人間達を助けてくる。まだ敵対する他の龍がいるようだからな』
『承知した。名も知らぬ龍よ、この場は小生に任せて行ってこい』
『全て終われば互いに名乗ろう。これは持論だが、人間と共に生きるのは退屈しないぞ』
摺鉢山からあっという間に基地へ駆けつけるバルファルク。
その様子をラオシャンロンは憧れるように目を細める。
『退屈か……何度それに殺されそうになったことか。あれだけ溌剌とした龍を見るのは久しぶりだ。人間というのも悪くはないのかもしれぬなぁ』
自身の経験────あまりにもただ生きる事だけに飽き、さりとて死にたくはないので休眠という時間潰しを選んだ古株の龍はそう羨ましげな声で呟いていた。
「っ……ここはどこ……?」
アドマイヤベガは基地が振動による倒壊の憂き目に遭った直後、地面に空いた穴から落下してしまっていた。
唐突な浮遊感に何も出来ずただ恐怖と共に目を瞑ってアステラを抱き締めていたのだが、落下の衝撃は無かった。
「これは……障壁?アステラ、もしかして貴方が守ってくれたの?」
「きゅー」
地底に勢いよく叩きつけられるはずが、何の痛みも無い事にアドマイヤベガは驚いていた。不思議に思って目を開けると自身を包む半透明の青い球体のようなものがある。そしてアステラはいつもよりも強い光を発していた。
「ありがとね、アステラ。貴方のおかげで助かったわ。……ただ、ここからどうしましょう」
穴の深さは地下から見上げて数十mは超えていた。幾つか壁に起伏はあるものの、ほぼ垂直のため登る事もできない。何か無いかと周りを見渡すと横穴が続いている事が分かる。そしてその奥からはまるで歌うような、響くような音が聞こえていた。
「これって……もしかしなくてもネオユニヴァースさんが話してた地啼龍よね……ってアステラ!?何してるの!?」
アステラはアドマイヤベガの腕の中から抜け出し音の方へと歩いていく。成長した分前より力が強くなっており簡単に振りほどかれてしまった。
「きゅいー」
「まさか……私を呼んでいるの?そっちは危ないのよ」
「きゅーん」
「こら、待って!」
アステラはアドマイヤベガを促すように振り返るとまた先を歩いていく。振動で無理矢理掘削されたのであろう洞窟はそこかしこが不安定であり、時折壁や天井から岩が落ちてくる危険な場所であった。
不思議な事にアステラはそれら危険な場所を最初から知っているかのような足取りで歩いていく。必然的にアステラの後を追うアドマイヤベガもその恩恵に預かってか一度も怪我する事無く後を追えていた。
進む度に音はどんどん大きくなる。その響くような音が単なる音ではなく、生き物の鳴き声であるという事に気付くのはそう時間はかからなかった。
一際広くなった大広間に蠢く岩の塊が存在していた。
「これが……地啼龍……」
『……』
「きゅおー!」
百聞は一見に如かず。
岩を纏っているとネオユニヴァースから聞かされていたがどちらかと言えば岩そのものとしか見えない姿だった。岩の隙間もびっしりと埋められ本体を窺う事は出来ない。翼と思われる部位も翼膜は存在せず、まるで人間の指のようにも見えていた。
(まるで仏像みたい……)
二人が来たからといって地啼龍が何か行動を起こす事は無かった。ただじっと、作り物でしかない偽物の顔を二人に向けているだけだ。見られている事は分かっても全く行動を起こさない地啼龍にアドマイヤベガは寒気を憶えた。
「きゅーん!きゅおー!」
「何かを吸収してる?まさかこれが地脈なの?」
アステラは地啼龍の前で叫ぶと手足を地面に突っ込み光輝く何かを吸収していた。ちょうどそれは、アステラが生まれた直後に見せた卵の殻を吸収していた様子に近い。ただアステラのその様子を見ても地啼龍が行動を起こす気配が無かった。
「まさか貴方がアステラを呼んだの?だとしたら何のために?……いや、こんな問いかけは無意味ね。私じゃ貴方達の言葉が分からないんだから……っ!?」
地面が再び揺れる。しかし地啼龍から特有の声が発されている様子は無かった。むしろ地啼龍も動揺しているようで、周りを見渡すような動きをここで初めて見せた。
揺れる原因は地啼龍ではなかった。揺れが大きくなると共に気温が上昇していく。慌ててアステラを抱き上げたアドマイヤベガは来た道を引き返し距離を取る。そうして離れた先から地面が黄金に輝いている事に気付いた。
地啼龍の真下が融解する。自重で融解した地面にハマり動けなくなった地啼龍をその真下から黄金の巨体が突き飛ばした。
『ようやく追い付いたぞ、この怨敵めぇぇぇ!!!!』
「あれってまさか……コロンビアの古龍!?」
黄金の巨体────コロンビアで奈落の底に落下したはずの爛輝龍マム・タロトは、黄金を脱ぎ捨て激昂した姿で暴れ回っていた。
「『認めて貰えてよかった』」
『セイウンスカイ、オデのタメに、アリガトウ』
日本本土から硫黄島の間までの海上にて。
セイウンスカイは空を飛ぶゴグマジオスの上に乗っていた。
セイウンスカイがゴグマジオスの要望に応え政府に提案したゴグマジオスの外出は予想通り良い反応が得られなかった。戦いが始まってしばらくの間、現地に赴かずセイウンスカイはひたすらゴグマジオスの外出を認めるよう働きかけていた。
焦点になったのはゴグマジオスから取れる重油であった。過去に人間の集落を襲撃した点についてはセイウンスカイによる説得や自衛隊などの実力行使でどうにかなるという見解で概ね一致していた。ただ重油はどうしても誤魔化せない。見た目のインパクトもそうだが、やはり戦略資源となる物質を生理的に採取できるという点は諸外国にいらない刺激を与えると考えられたのだ。重油の見た目がもう少し違っていれば誤魔化しが利くのだが、流石に見た目は誤魔化せない。もっと言えば、ゴグマジオスが出歩けば体からそれが滴り落ちてしまうため単純に公害も考えられた。
これに対してゴグマジオスはある程度コントロールする事で解決を図った。流石に戦闘となれば体温が上昇するため難しいが、平常時ならば流れ出ないよう固形化できる。更に言えば体にこびりついた重油も取り除いてしまう事で一見すると重油を持つとは分からない姿にもなれた。
今回戦闘が想定されている硫黄島は本土から離れた離島であり自衛隊の直轄地だ。飛行する姿は一般人に見られるが戦闘までは見られない。こうした経緯から懸案を払拭し、無事硫黄島にまで参戦する事が可能になった。
実のところゴグマジオスの詳細は同盟国である米国や情報収集で世話になっている英国に共有されている。これら2か国は日本と戦略資源を巡って争われる事が無いため今回の戦いで誤解が無いように情報が迅速に共有されたのだった。
はためく風の上で気持ち良さそうに座るセイウンスカイ。しかし事態は刻一刻と変化していた。
「『硫黄島が壊滅って……』」
『ソノ龍は知らナイケド、タブン強いンだと思ウ。タダ、動機がワカラナイ』
「『動機?』」
『オデ達は、意味無イ戦いヲしなイ。食べル、ナワバリ、とか。デも、話ダケだとそノ龍が戦ウ理由が無イ』
「『なるほど……』」
ノイズが混じりながらも以前よりずっと饒舌になったゴグマジオスの見解にセイウンスカイも考察を重ねていた。
(戦いが始まってそれぞれの動機も報告されてる。アステラの気配が気になったからっていうのは一番だけど、大蛇の龍と火山の龍は喧嘩仲間みたいだし、ナバルデウスの亜種は親戚の甥っ子に会いに来てた。みんな何かしらの理由があるんだ)
「『急ごう。集まった古龍達の中には味方してくれる龍もいるけど、それでも人手が足りてないんだ。やっぱり君の力が必要だよ』」
『イマ、今マデで、イチバン早くトン出る。ケド、モウ少し、頑張ル』
この巨体で飛べる事そのものが神秘なのだがそれに構う事は無い。
(頼むよバルファルク……私達が着くまで時間を稼いで!)
『この穴がそうなのか?』
「『自衛官の話じゃこの付近にいたそうだ。ここだけ不自然に穴が空いている。狙い打ちにされたんだろうよ』」
『なんという事だ……』
セイウンスカイがバルファルクを思う一方で現場には緊張感が漂っていた。
崩れた基地から自衛官達を救出し、意識があった一部の自衛官から直前までアドマイヤベガのいた部屋の付近を聞いて捜索したのだ。そうして、見るからに意図的な穴を発見し、一同は意気消沈していた。
「『あのガキの気配はまだある。少なくともあいつは無事なんだ。恐らくは、な』」
『重要なのはアドマイヤベガの方だろう!我はもう嫌なのだぞ、目の前で人間が死ぬのは!』
「『ならお得意の植物でも弄ったらどうだ。地下にまで根を伸ばせば何か分かるだろう』」
『やってはいるが、多くの種が振動で巻き上げられてしまった。期待できるような効果は難しいのだ。悔しいが……ん?』
「『どうした?』」
バルファルクも言って気が付く。
アドマイヤベガが落ちたと思われる穴から時折熱気が吹き出すようになっていた。それに応酬するように地啼龍の物と思われる特徴的な声も聞こえている。
「『なんだこれは。音は分かるが……熱?地啼龍とやらに熱を操る能力があったのか?』」
『いや、違う。もしそうならこんな不規則に音と熱が吹き出ないはずだ。つまりこれは……』
突如として付近の地面が音と共に陥没する。
そうして陥没した地面からところどころ纏う岩が凹んでいる地啼龍とそれに追い縋るマム・タロトが現れたのだった。
────面倒
地啼龍アン・イシュワルダはマム・タロトの猛攻の前に簡素にそう思った。面倒な理由は単純で
『我が都市!信徒の遺物!それらが受けた痛みを思いしれぇ!』
マム・タロトの激昂は当然であった。地啼龍が出す特徴的な音からコロンビアにおける一連の元凶が地啼龍によるものだと気が付いていた。奈落に落ちた後、地啼龍が振動によって作り出した地下道を追い続けこの硫黄島でようやく追い付いたのである。
アステラによる誘引能力は全く関係無かった。
纏う黄金を脱ぎ捨てたマム・タロトは巨体に似合わず俊敏で、地啼龍の振動や翼による殴打を躱しながら的確に炎熱のブレスを当てていく。金属を容易に融解させるマム・タロトにとって岩石を溶かすくらいは造作もない事だった。岩石を纏った地啼龍は動きが鈍いのもあり、その様子はほぼ一方的な展開である。おかげで地啼龍の鎧には幾つか溶けたような痕が付いていた。
「『あれが地啼龍……と?なぜマム・タロトがここにいるんだ!?』」
『今それは置いておけ。重要なのは奴が地啼龍と敵対しているという事だ!』
狭い洞窟ではマム・タロトの攻撃にされるがままであったため地啼龍は地上に待避する選択を取った。地啼龍はどちらかというと振動による遠距離攻撃をメインウェポンとする。しかし岩石を纏ったままでは距離を取るにも軽快な挙動が出来ない。
────仕方が無い。真体を晒すか
『なんだあの姿は……!?』
唐突に身体を起こし、岩が剥がれ落ちていく。
その威容に誰もが呆気に取られていた。バルファルク・イナガミは言うに及ばず、怒り狂っていたマム・タロトですらもだ。
『人も龍も、誰もが盛りを迎えては、どのみち呆気なく死んでいく』
『都市も遺物も同じこと。絶えて消え去るは摂理也』
『森羅万象、その輪廻を見届けん』
『しまった!こいつ、大技をこのまま放つつもりだ!』
上体を起こしたまま地啼龍はその前足と異形の翼を重ね合わせていた。異形の翼から目視出来るほどの振動が球形に生成されている。
『全員逃げ────』
『一切合切、あまねく全てを入滅せよ』
『入滅蓮華劫珠砲』
放たれた振動波は容易に大地を抉り、硫黄島全体を震撼させた。
初っぱなから最終形態