ウマ娘4周年、おめでとうございます。まさかここで来るか九冠馬アーモンドアイ。お目目キラキラで無敵のアイドル感満載ですね
あとカレンブーケドールが癖(へき)。友達の妹カレンブーケドール概念出した人に1億ペリカ投資したい
掲示板形式にしたかったけど使い方分からんかった……
「『うぐぐぐ……』」
「『どうだ、見ろ。使いこなせているだろう』」
「『まともにやり取りしてるんじゃあないよ』」
「スカイ姉さん。それは流石に理不尽だよ……」
11月。
無事に天皇賞(秋)が終わり、そして約定通りバルファルクへ試作品が届けられた事でセイウンスカイは言い知れない敗北感に襲われていた。
ターフでは早速届いた特注の大型PDAをバルファルクが触って試運転している。バルファルクとしては単に巨大なスマホをイメージしていたらしいがそれでは上手くいかなかったのだろう。付属の説明書をふむふむと読み込むバルファルクに神秘的なドラゴンとしての姿は一切無かった。
それを羨ましそうに見るのは硫黄島の一件から物理的に成長したアステラである。未だに龍としての言葉が発せない彼は他の古龍よりもウマ娘達とのコミニュケーションの方が圧倒的に多く、話を聞いてから自分も欲しいと願うようになっていた。
ちなみにチーム:ドラコや同期の仲間達はいない。どうせバルファルクとセイウンスカイがなんやかんや騒いで面倒臭くなるのは明白なのでもう放置しているのだ。少なくとも天皇賞(秋)で実力は示せたのだからいいだろうと、他のウマ娘達はセイウンスカイに対して達観していた。
「『これで自撮りを撮って……ほら、投稿だ。スレの反応が良くて実にいい』」
「『そりゃバルファルク本人が掲示板にいるなんて思わないでしょ』」
「『地面に置く自撮りだと画角が下からになってしまうのが欠点だな。自撮り棒も要求してみるか……?』」
「どうしても下において操作するからだね。確かに僕達の姿勢とPDAは相性悪いなぁ」
某大型掲示板では突然のバルファルク本人の降臨に阿鼻叫喚のお祭り騒ぎとなっていた。
バルファルクの前足には専用のグローブを装着して返信している。素のバルファルクの前足では爪が鋭く画面を傷付ける恐れがあったためだ。
「『なんでウマスタとかじゃなくて掲示板なの?SNSのアカウント作るって言ってなかったっけ』」
「『ウマスタとかいうのはカレンチャンがやってるやつだろう。あれは雰囲気がお洒落過ぎる。俺が見たいのは下水で煮込んで更に腐らせたような鬱屈した感じなんだ。こんなのを人間がやっているかと思うと愉快で仕方ない』」
「『ちなみにそれ教えた人誰?』」
「『ネオユニ「『OK。処しとく』」ヴァ……待て、最後まで言わせろ。ほら、俺達と共にいる大抵の人間は清廉潔白ではないか。例えば貴様のトレーナーがそうだろう?』」
「『それはそうだけどそれと掲示板がどう繋がるのさ』」
「『俺が人間の反応を楽しみにしているのはそれが千差万別だからだ。俺達にとって好意的な意見も否定的な意見も、どちらも俺からすれば面白い。とても同じ生き物が話しているようには見えないからな』」
「違いを楽しみたいってことなの?それでも悪趣味だと僕は思うなぁ」
「『いいかアステラ、ここのウマ娘はおまえに良くしてくれる存在だろうが、外に出ればそれだけじゃないんだぞ。悪意を持った人間など幾らでもいる』」
「『真面目な話で誤魔化すつもりだろうけど自分から鉄火場に突っ込んで荒らす真似は誤魔化せないからね』」
「『人間なのに文脈を読めないのが悪い』」
「……うん、僕巻き込まれたくないからお母さんのとこに逃げるよ」
アステラはバルファルクの嗜好を全く理解出来ずに不気味に感じてしまい、いそいそとターフから逃げてしまった。一階にあるトレーナー室の窓へ頭を突っ込みアドマイヤベガに甘えている。
「『アステラの判断は賢明だね』」
「『アンチ乙……と。面白いなぁ。俺より日本語が下手だぞこいつら』」
「『だからそういうのやめてよ。なんで自分のアンチスレに行きたがるの』」
「『燃料を投下したい』」
「『最っ低』」
バルファルクからすると普段接する人間は大なり小なり好意的な人間ばかりである。ただしそれは、バルファルクがまだ獰猛な猛獣だと考えられていた頃の名残で下手に怒らせて暴れさせるような事があってはならないからだ。しかしバルファルクからすればそれはつまらない。
人語が解せるようになって既に一年以上。好意的でない人物とも話したいというのは、ある種人外らしいバルファルクが持つ無遠慮さのおかげだった。極論セイウンスカイの居場所であるトレセン学園さえ壮健であればそれで良いのだ。
ちなみにセイウンスカイの情緒にはこれでも配慮しているつもりである。本気でブチキレたセイウンスカイには口すら聞いて貰えないため、その点も含めたある程度の線引きをしている。尤もセイウンスカイ本人はそんなバルファルクの配慮など何も知らないのだが。
「『荒らしになるのだけはマジでやめてね。収拾つかなくなるから』」
「『そのくらいは分かっている。ほら、意図的に煽るような言葉は使ってないだろう?』」
「『存在そのものが煽りというか……言葉はともかく君が話すだけでカチンと来るやつがうるさいというか……』」
「『そんなもの、好きなだけ囀らせれば良い。俺からすれば、何故そこまでして俺を嫌うのか確かな根拠が欲しいだけだからな』」
「『……なんで絶妙にワードチョイスが上手いのかなこいつ』」
バルファルクは自分のアンチスレに突撃して《どうして俺が嫌いなんだ?》とだけ最初に投下して反応を楽しんでいる。紡がれる言葉の数々はそういった悪意に耐性があるつもりのセイウンスカイですら顔をしかめる内容なのだが、バルファルクは丁寧に一つ一つ言葉を返して余計にスレの流れを加速させていた。
「『強い言葉は使わないようにするのがコツだ。そうすると、相手が勝手にヒートアップしているように見えるからな。どうした?俺のスレに介入するつもりじゃなかったのか?』」
「『いや、いいよ……なんだかもう疲れた……』」
とぼとぼと踵を返して学園に戻るセイウンスカイ。胡乱な発言をして関係各所に迷惑をかける可能性ばかり考えていたが存外配慮された発言をしている。
なるようになれ、とスレの炎上騒ぎが自分にまで飛び火しない事を祈るセイウンスカイ。
(とりあえずネオユニさんしばこう)
ネオユニヴァースへの確かな八つ当たりだけを心に秘めて鬱憤を発散するつもりのセイウンスカイであった。
「ふふふ……そうか、この子が……」
フランスにて。
凱旋門賞で惜しくも二着に敗れたモンジューは日本の天皇賞(秋)のレースを粒さに観察していた。
バルファルクがネットに降臨し、無事いつもの騒ぎになっていたが、ジャパンカップに挑む海外のウマ娘はそれに感化される事無く冷静にセイウンスカイを含む"黄金世代"への対策を進めている。
「ツルマルツヨシ……この実力で今までG1未勝利とはね。セイウンスカイは敗れたけれど、バルファルクが言うように日本のウマ娘は層が厚いようだ」
惜しくも二着であったものの、セイウンスカイの走りは高く評価されている。
まず差しへの転向。ウマ娘の脚質は生来決まっていてそれを変える事は中々難しい。出来るにしろ、先行なら逃げ、差しなら追い込みと比較的位置取りが近しい物になりがちだ。逃げウマ娘が差しで走り二着という戦果は十分誇れていい内容だった。
「スペシャルウィーク。末脚が脅威、ガッツもある、と。一番まともに勝負してはいけない類いか。真っ向からぶつかればぶつかるだけ応えてくれるような子。だからこそセイウンスカイは彼女をマークした」
セイウンスカイの走りにはもう一つ、マークを使い分けたブラフも評価の内に入っている。
後から見れば、本命がツルマルツヨシだったというのは分かる。だがそれを直前まで悟らせないように振る舞えたのは他ならぬセイウンスカイの才能だ。マークというのは基本一人にしかできない。それは単純に物理的な視野からなる限界が由来のため、"龍呼びの声"を使うセイウンスカイについては不思議がられる事もあるが、この際理屈はどうでも良いのだ。重要なのはどのような意図を持ってそれを実行出来たかである。
「キングヘイロー、ジャパンカップには出ないのね。今度はマイルを制覇するつもり?今回に限れば嬉しい誤算としか言えない。全距離対応の末脚など、意識を外した瞬間どこから飛んでくるか分かったものではない」
セイウンスカイへの対抗バとして名高いのはキングヘイローである。稀代のトリックスターが巡らせる策謀についての察知が他の誰よりも優れているからだ。スペシャルウィークもダービーでセイウンスカイに勝ってはいるが、あれはセイウンスカイにもトラブルが見受けられた上に肝心のスペシャルウィークは策を弄する気質に向いていない。そういう意味で、セイウンスカイに対抗したいならキングヘイローを見ろ、というのがここ最近のセイウンスカイに対する対抗策の一つとなっていた。
「日本一国で
モンジューは一つ、煮詰まった頭を冷やして嘆息する。
別に悲観的になった訳ではない。ようやく凱旋門賞に手が届いたとはいえ依然として日本と海外それぞれのウマ娘の間には隔たりがあり、日本のウマ娘が世界を席巻するとまではいかないと見られていた。ただし、レース人口という規模においては日本と欧州はほぼ同等である。日本一国とヨーロッパの国々が連合して作り上げた共同体が同等なのだ。
これは、ある種のヨーロッパ各国におけるレース基盤の脆弱さを露呈していた。フランスこそが凱旋門を掲げ名実共にレースの頂点に君臨しているが、逆に他のヨーロッパ各国はそこまでレースに力を入れられていない。G7に名を連ねるドイツ、イタリアはまだ良いとして、それらに比して経済基盤が貧弱な東欧────特に旧ユーゴスラビア地域などはまともなレース場すら無く身体能力に優れたウマ娘は単なる労働力として消費されている始末であった。
勿論ヨーロッパのレース連盟はそうした貧困に喘ぐウマ娘に対して支援を行っている。だが進んでいると言うには難しい状況だった。例えレースで頭角が現れても、レースの世界は実力勝負である。名門であるモンジューを始め、幼い頃から、それどころから血統からしてレースを走るために生まれた文字通りのサラブレッドと、在野の駄バが共に走って勝負になる訳が無い。結果として欧州のレースは比較的経済基盤が豊かな西側が主流となっていた。
連合であるが故の弱点もある。共同体という手前、誰も言わないがヨーロッパレース界における親分とはフランスである。そして親分であるからして、子分の言い分を聞かなければ務まらないのだがその子分が皆足並み揃えてくれる訳でもない。どこの国にも面子が立つよう微細な調整を行うのだが、それが却ってヨーロッパレース界における政治の鈍化をもたらしていた。
こうしたヨーロッパレース界の現状を反映してか現在のヨーロッパレース界における競技人口はほぼ横這いである。減ってないからいいのではないか、という声もあるが、自国でレース業を完結させられる米国、英国、オーストラリア、そして日本は右肩上がりでありそれに対する相対的な維持は、緩やかな衰退とほぼ同義であった。
モンジューは欧州最強ウマ娘である。そうであると同時に、ヨーロッパレース界の行く末を真摯に憂う勇士でもあった。いずれ現役を引退してもモンジューがヨーロッパレース界を背負って立つ事に変わりない。順当にキャリアを積み、ヨーロッパURAの会長にまで登り詰めるのは必定であった。
(あそこまで露骨に煽られたのだ。ここで勝ってヨーロッパは磐石であると示さなければ)
のし掛かる重圧。それをひしひしとモンジューは肌で感じている。モンジューも凱旋門賞で二着と大健闘しておりフランスウマ娘の面子はまだ保たれているが、勝負とはすべからく勝利を目指すものである。
ヨーロッパ代表として、ジャパンカップでの勝利は何としてももぎ取りたい野望であった。
「バルファルクめ。ここまで私達をコケにしてくれるとは」
モンジューが目を見張る黄金世代はバルファルクの煽りのおかげで世界中から注目を集めている。セイウンスカイが二着に敗れた事に嘲る声もあったがバルファルクは全くと言っていいほど相手にしなかった。
どういう訳だがネット端末を手に入れたバルファルクはSNSで大層目立っていた。バルファルクが携帯機器を使いこなしているだけでもおかしいのだが、掲示板だったりSNSでよくオチも付かない論争を吹っ掛けられている。直近ではイルカ・クジラの過激な保護団体から野生動物保護云々を手前勝手に語られそれに《イルカは美味しい》と返し炎上していた。どうやら自然的な動物であるはずのバルファルクからの同意を得たかったらしいがバルファルクからしたらイルカはただの獲物である。話を吹っ掛ける相手を間違えていると、反応は冷められていた。
「全く、日本は私を飽きさせないな。ここまで面白い国ならもっと早くに行けば良かった」
バルファルクがSNSのアイコンにしているのはデフォルトでも自分の写真でもない。
抜けるような青空、そしてそれに写る芦毛のウマ娘。
「セイウンスカイ────おまえが日本の特異点だ。確実に勝たせてもらうぞ」
そんなバルファルクのアカウントを怨み節とは裏腹に楽しげな口調でモンジューはフォローしていたのだった。
今回のモンジューの要約
モンジュー「許さねぇぞ。よくもオレ様をここまでコケにしてくれたな……」
バルファルク「くっ、ヤバいぜセイウンスカイ」
セイウンスカイ「知りません」
モンジュー「倒してやるぞセイウンスカイ」
セイウンスカイ「知りません(泣)」
お知らせ
皆さん予想はしているでしょうがしばらく更新できません。なぜなら28日……驚天動地の狩りに没頭しているからです。ストーリークリアなど一通り目処がつきましたら引き続き更新致しますのでどうかご了承下さい。
ウマ娘4周年と重なり気持ちが昂る次第。