最近のモンハンはネームドNPCが増えたり声優が豪華だったりするけど一番好きなNPCは"我らの団"団長です。
おまえさんなら、できるできる!
「……ふむ、少し疲れているのかな?今日の講義はここまでしておこうか」
「いや、続けて下さい。こっちの精神的な問題なんで……」
「なに、少しカウンセリングするだけだよ。そのような状態で講義をしても身にならないからね」
「……お気遣い頂きありがとうございます」
12月下旬。
セイウンスカイはとある空き教室の中で、憂鬱になりながらも赤衣の男────ジョン・アーサーから異世界についての講義を受けていた。
出立の時は近い。もう残り一月も無いのだ。
お正月、年始が明ければその頃には向こうの世界である。
「君はどこでも人気者だな。探さなくても君の話題がそこかしこで話されているよ」
「はぁ。今さらなんですけどねぇ」
「それでも、行く意思はあるか。今ならまだ引き返せるが」
「行きますよ。それくらいは自分でけじめ付けてるんで」
古龍大戦より以後、赤衣の男はセイウンスカイの要望に従い不定期ながらも異世界について教える事となった。
セイウンスカイだけでなく、その特異な出自に興味を持った他のウマ娘もよく講義に参加していた。特に多いのはマカ錬金で異世界のアイテムを作り出せるアグネスタキオンやネオユニヴァースだ。他にもセイウンスカイが行く異世界がどんなものかと知りたい同期友人達、知識欲からか暇を見つけてはシンボリルドルフなども講義を受けている。
単に異なる世界というだけでなく、生物の生態や文明からしてこの世界と違うのだ。様々な分野で他人の興味を引くのは当然だった。
「君と二人きりというのも久しぶりじゃないか?」
「師走ですからね。トレーニングやらなんやらでみんな忙しいでしょ」
「そういう君はいいのかな。あのモンジューが有マに出るみたいだが」
「トレーニングはそこそこやってるんで。あとはまぁ、走り方次第かな」
「やはり秘策があるのか。流石、世界のトリックスターだな」
「やめてくださいよそういうの。私に似合わないって」
「どうだか。今の君には覇者としての風格が身に付いているよ。過去会った、G級ハンターのような貫禄がね」
「ハンターねぇ……」
セイウンスカイが異世界へ行くにあたってまず求められたのは金銭や言語など基本的な知識の他にモンスターの知識だ。ハンターになるのは前提なので、そのための知識が無ければお話にならない。
「この鳥竜種ってやつ、羽無い方はどう見てもこっちの世界の恐竜っぽい見た目なんだけど……」
「世界を隔てているとはいえ進化のプロセスに変わり無いだろう。環境への適応という問題に対する進化という答えはある程度収斂するはずだ」
セイウンスカイが眺めているのは赤衣の男が取り揃えた【モンスターの書】である。言語の勉強がてら、ハンターとして比較的序盤にかち合うであろうモンスターについて教えているのだ。
「ランポスとかジャギィはまだいいよ。ゲリョスとか絶対会いたくない」
「難しいな。鳥竜種はモンスターの中でも比較的生息数が多い。時として大発生し多数の狩猟が求められることもある。ゲリョスもまた、大発生しやすいモンスターの一種だな」
「毒液吐いたり閃光だったりアイテム盗んだり……生理的にセイちゃん嫌いです。毒液ってゲロじゃん」
「多くのハンターからはあまり好意的でないのも確かだ。ただ、特徴さえ知っていれば狩猟は難しくない。君は弓使いだし、遠距離から毒液を誘ってその隙に頭部を狙い撃てば閃光を発生させるトサカは破壊できるだろう。……生理的に嫌われがちなモンスターと言えば、ババコンガが上回るぞ」
「うわ出た。う○ち投げつけてくるピンク色のゴリラでしょ」
「これも特徴さえ知っていれば対処は容易い。地域差は出るが、イャンクックで大型モンスターのなんたるかを学び、ゲリョスやババコンガでモンスターの属性、状態異常を学ぶというステップアップが望める。君が行くことになっているバルバレ管轄地域はそれらの狩猟が認可されているはずだ」
「バルバレね……砂上船とか信じられないよ。水のようにきめ細かい流砂だなんて想像できない」
「バルバレは地図に無い町、大砂漠の淵に沿って移動を続ける交易の要所だ。そして交易の中心になるだけあって情報も集まる」
「知りたいことがあったらバルバレに行け、でしたっけ。きっと凄腕のハンター達がいっぱいいるんだろうなぁ」
「豪山龍ダレン・モーランが現れる時期にはそれを狩猟するための【腕自慢祭】が開催される。文字通り、腕に覚えのあるハンター達がバルバレギルドが管理する高難易度クエストを受け、見事突破した者にのみダレン・モーランへの挑戦権を与えるのさ。君の言う通り、この時期には各地から腕利きのハンターがバルバレに集うぞ」
「ダレン・モーランって古龍ですよね。……会話できるかな」
「会話するには近付かないと話にならないからな。どちらにしろ、いずれは君も【腕自慢祭】に挑まなくてはならないということだ」
「うへぇ、気が滅入るなぁ」
ネオユニヴァースと関わりのある例の龍があの煌黒龍アルバトリオンであるという事を赤衣の男が知った時、彼は爆笑していた。不思議に思ったセイウンスカイが聞いてみれば、曰く
「【腕自慢祭】になれば先生の言う"我らの団"っていうのも来ますかね?」
「来るさ、ほぼ確実にな。……ああそうだった。この手紙を渡しておこう。これを"我らの団"団長────赤いテンガロンハットを被った彼に渡してくれ。彼ならきっと君の味方になってくれるはずだ」
「……わざわざ向こうの……羊皮紙じゃないな。なんていうんだろ、これ」
「アプトノスの皮を鞣したものだ。こちらの紙では質が良すぎてね。異質な物を持ち歩くのはリスクになる」
「……紙一つでも文明レベルが別れるんだなぁ」
セイウンスカイが受け取ったのは古くさい茶色の紙だ。それが簡単な巻物のように束ねられている。その裏地にはハンターズギルドの物であろう特別な刻印がある。
「この手紙を見れば分かるはずだ。くれぐれも、私のことは内密に」
「おぉ……なんだか悪企みしてる気分になりますねぇ」
「悪企みは君の得意分野だろう。ま、最初は気楽にやってくれ。ハンターとして振る舞う分には問題無いさ」
そのまま手紙はセイウンスカイの横にある革で出来た袋に纏められる。この袋も赤衣の男によって作られたものだった。中には回復薬や肉焼き器などハンター生活に一通り必要な物資が揃っている。赤衣の男はこれをセイウンスカイのための初心者ハンタースターターパックと称していた。
「砥石要ります?私ガンナーですけど……」
「何があるか分からないのがハンターだ。モンスターによっては遠くから戦うより懐に潜り込んだ方が上手く狩猟出来るものもいる。使いこなせる者は多くないが、武器の使い分けも重要だぞ」
「剣士か……モンスターにはそもそも近寄りたくないんですよね。体格で上回る相手ってやっぱ怖いし……いや龍属性ぶっぱしていいなら違いますけど」
「後は肉質だな。純粋な五属性だけでなく、物理属性についても教えたはずだ」
「えっと、斬・打・弾の三つでしたっけ」
「そうだ。概ねモンスターは共通して頭部が弱点と言えるが、そんな急所に黙って攻撃させてくれる訳が無い。動き回る相手なら足を狙い、飛竜など飛行モンスターには翼を狙う。態勢を崩すために如何に効率良く部位を狙えるか……熟練かそれ以下かを分ける境目はここだな。我々戦士ではなく狩人だ。わざわざモンスターの土俵に立ってやる必要は無いんだ。君の近寄りたくないという思考も、考えとしては間違っていないよ」
「落とし穴やシビレ罠……麻痺瓶で動きを止めてもいいし毒瓶でじわじわ削るのもありですなぁ」
「狩りの道に正答は無い。君だけの狩りを模索したまえ」
赤衣の男が持つ知識は書記官兼ハンターをやっていただけあってとても含蓄深い。セイウンスカイには知る由も無いが、ハンターの卵を育成する養成所ですらここまでの指導は受けられない。差があるとすれば、実戦機会があるかないかだろう。
同期やモンジューを相手に控えた有マ記念。
しかしセイウンスカイは着々と異世界への準備を整えていた。
「やぁ」
「げっ」
赤衣の男との講義を終えたセイウンスカイは今一番会いたくない相手に遭遇していた。
「ひどい反応だな。別に君を取って食おうとしている訳でもないのに」
「……どーしてモンジューさんがここにいるんでしょうねぇ」
セイウンスカイが一番会いたくない相手────モンジューはニヤニヤとおよそ彼女らしくない表情で空き教室から出てきたセイウンスカイを待っていた。
「君が学んでいるという異世界の講義が気になってね。私も受けられないかと思ったんだが」
「ご覧の通り今日は終日閉業でーす。またのご来店をお待ちしておりまーす」
「ははは、そうよく邪険にしてくれるな。ちょっと二人で歩かないか?」
「……断っても着いてくるんでしょ?勝手にすれば」
モンジューが日本中央トレーニングセンター学園に転校してから1ヶ月近く、最初はマスコミなどメディアによる取材がひどかった。あのヨーロッパ最強ウマ娘が日本に転籍を表明したのだ。その衝撃たるや、世界を震撼せしめるに十分である。
フランス現地メディアではこれまでの扱いが一転、ヨーロッパを見限った裏切り者という烙印を押されバッシングを受けていた。日本では比較的に歓迎する意見が多いが、わざわざ転籍する程の負けだったのかと疑問が挙がっている。だがモンジューは強い決意を表明していた。
《日本のウマ娘に勝ちたい。他人がどう言おうが、私はウマ娘だ。私は勝つために走っている》
短いながらも確かな意思にメディアは沈黙する事となる。
モンジューはメディアの前には一切姿を現さなかった。こうしたストイックな姿勢は語るよりも雄弁にモンジューの姿勢を表していた。
ちなみにトレセン学園の周囲でモンジューの動向を掴もうと張り込んでいた悪徳記者などがいたが、全てバルファルクが見つけて"お話"している。既にトレセンへ来て三年。今まで縄張りにしてきたどの山頂よりも馴染みのあるトレセン学園とその周囲は完全にバルファルクの領域だ。不審な動きをする輩は例外無くバルファルクの眼から逃れられなかった。
さて、トレセン学園に転入したモンジューであるが基本的には優等生である。どこぞのウマ娘らのように(該当者が多い)問題を起こすような性格ではなく、トレセン生として模範的な振る舞いを保っている。年齢を加味してモンジューはシンボリルドルフらと同じ高等部のクラスに転入された。
トレセン学園ではあまり無い転入生、それも海外随一の強者である。瞬く間にモンジューは人気者となった。
しかし。
「本当、しつこいよね」
「エルコンドルパサーも君の真似をして私に勝ったというんだ。なら実質二回負けたようなものじゃないか。だから君の動向には気を配るんだよ」
「セイちゃん見たって何にもなりませんよー」
「そうでもない。君を観察していると、色々と収穫があるからな」
基本的に問題は無い、はずなのだが。
セイウンスカイが絡んだ時だけ、露骨に分かりやすく彼女に執着していた。
逐一セイウンスカイの動向を把握しているようで、行く先々に現れる。セイウンスカイの真似をしてお昼寝スポットで寝るくらいだった。
「頑張り過ぎない、適度に肩の力を抜く、周囲の目を気にしない……君の図太さは、如何に私が矮小だったか理解させられるよ」
「遠回しに貶してます???」
「君は普通を自称したいようだがバルファルクが絡まなくても普通からは程遠いよ。レースで気に病むこともあるだろうに、昼寝や釣りに没頭できるのは流石としか言い様が無い」
「やっぱり貶してますよね???」
「貶してなんかないさ。その図太さを……少し羨ましいと、思ったくらいだ。優駿として振る舞ってはいても、
「ああ、分かった。私バカにされてるんだ」
「君もその、わざとらしい口調はやめたらどうだ?口で言う程悪くは思ってないだろ」
「……注目浴びたくないなーっていうのは本音ですよ?」
へにゃりと、口をくの字に曲げてセイウンスカイは嘆息する。そのモンジューは色々なところで表情豊かなセイウンスカイの魅力に引かれ、次第に彼女のファンとなっていたのだ。
「だが、勝者としての称賛を受けたいのも本音だ。違うか?」
「そりゃね……勝負事やってるんですから、勝つつもりで行くでしょ」
「もっと言うと、君の同期達"黄金世代"も羨ましくはある。私には、共に並び立ってくれる仲間がいないんだ。良い関係だよ、君達は。レースではライバルとして競い、学園では友達として振る舞える。故国では無かった文化だ」
「いや……そこはほら、ただのスポーツマンシップというか……」
「そんなもの口だけだ。勝てそうに無い相手が出走しようものなら如何にして出走しないか、なんて盤外戦術もある。昔はもっとひどかった。ウマ娘やトレーナーへ賄賂などの汚職が横行していたからな。日本だとあまり聞かないが」
「どうだろ。私が知らないだけで昔はあったんじゃない?今聞かないならそれでいいんだよ。悪い歴史を今さら掘り出したところで大した意味無いでしょ」
「君の言う通りだな。そんなもの知ったところでレースに影響は無い」
口ではモンジューを嫌うセイウンスカイだが、並んで談笑する様子はとてもそんな風には見えない。
モンジューは他の黄金世代とも中が良い。特にエルコンドルパサーとは何度か併走を重ねていたり、グラスワンダーからは日本のお茶文化を学んでいる。
「君は向こうの世界へ行くことに不安は無いのか?」
「なにさ、藪から棒に」
「事前に学んではいるが、向こうは外国どころか世界を隔てているんだぞ。帰れないかもしれないと考えたことは無いのか?」
「その時は、私を呼んだアルバトリオンってやつをしばくだけだから」
「……やはりだが君はドラゴンを相手にすると急激に非常識になるな」
「あいつらがそもそも非常識なの。こっちが古龍相手にわーきゃー混乱したところで意味無いし。だったら敵対してるやつぶっ飛ばして話はそれからじゃない?」
「常識は無意味と。まぁ確かに語るだけ無駄か」
「最初からこうだった訳じゃないよ。初めにね、ゴグマジオスってやつと戦った。その時は泣いてバルファルクの助けを呼んだんだけど、話せるようになってからあいつらも普通の生き物なんだなって分かるようになったんだ。だから、いくら古龍が強大だからってそれを理由に諦めることはしないって決めたんだよ」
「君の強さの源はそこか。それならレースでいくら走っても挫ける理由にならないな。……ああ、やはり君が羨ましい。これが隣の芝生を見ているのと変わらないのは分かっている。それでも、そんな鮮烈な体験をしてみたかった」
「……もしかして英雄譚とか好きなの?英雄の証とか前言ってたけど」
「……恥ずかしいな。この歳にもなって神話や叙事詩の英雄譚が好きなんだよ」
くしゃりと、バツが悪そうに苦笑いをするモンジュー。その顔はこれまで見てきたどの表情よりもずっと幼い。恐らくはこれが彼女の素なのだろう。架空の物語に自分を投影し、いつかは自分もと憧れを抱く。誰にだって経験はあるはずだ。
「なるほどね。じゃあ、例えば剣を握ってドラゴンに立ち向かって討伐する、なんてのも好きな訳だ。私をドラゴン扱いしたのはそれなわけ?」
「悪竜ファヴニールを討ったジークフリート、グレンデル────巨人とも言われる怪物を倒したベオウルフ、この国ならヤマタノオロチを酒で寝込ませ機転を利かせたヤマトタケルノミコトかな。ああ、そういう話には目が無いね」
「おお。前者二つはヨーロッパの伝説だけど日本神話も分かるんだ」
「日本のゲームのおかげだよ。こう見えてもゲームは結構遊ぶんだ。メガ○ンシリーズは外せない金字塔だな。あと日本神話と言えば白い犬の……」
「おっ、結構話せるねぇ。和風アクションがならフ○ムの……」
セイウンスカイもプライベートでは生粋のゲーマーと言える。
いつの間にか建前で嫌っていた振る舞いも忘れて、セイウンスカイはモンジューとゲーム談義に没頭していたのであった。
ダイジェスト
アルバ「なんであの赤いのいんの?俺あいつに討伐依頼出されまくってんだけど俺なんかした?」
ネオユニ「多分なんかしたんでしょ(ジト目)。あと私も向こう行きたいんだけど?」※意訳
アルバ「三女神さんから連れて行けるのは一人って言われてんのよ。いや連れてくことそのものは問題無いけど世界移動なんて頻繁にやっちゃいけねぇってそれくらい俺でも分かる。倫理の問題よ」
ネオユニ(何言ってんだこいつみたいな顔)
アルバ「そりゃウマ娘みんな来てくれたら嬉しいけど管理するの俺一人よ?ワンオペなんてやりたかないよ」
ネオユニ(今まで散々一人で振り回しておいて何言ってんだこいつみたいな顔)
アルバ「まぁ行きたかったら三女神さんに言ってね。俺もう流石にやらかしたくないから……なんで無言で砲モロコシ構えて────」
一発ネタの「YAMA育ちのタクトちゃん」が連載できそう。「セイウンスカイとバルファルク」が完結するまで控えるべき?
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セイウンスカイとバルファルクに集中
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二作同時連載してほしい