セイウンスカイとバルファルク   作:エドレア

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皆様、日頃よりご愛読頂きまして誠にありがとうございます。
言い訳にもなりませんがリアルが忙しすぎて……年度末とかいう概念滅べ()

また、アンケートへのご解答誠にありがとうございます。今回の結果を反映しまして【セイウンスカイとバルファルク】の連載に集中していきます。【YAMA育ちのタクトちゃん】につきましてはしばらくお待ち頂けると幸いです。

今回がセイウンスカイ三年目シナリオ最後となります。


暮れの中山

 

 

 

 

 

 

 12月末。

 

《年の瀬が近付いてきました、暮れの中山です。今日ここに例年大きな賑わいを見せる有マ記念ですが、例年を越える盛況を泊しているようです!》

《なんたってあのモンジューが来てくれましたからね! 起爆剤になったか、世代を越えて優駿達が集っています!》

 

 芝 2500m 場:良 天候:晴れ

 

「言われてるねぇ」

「止してくれ、そんな大層なものじゃないだろう」

「そりゃそうだ。私らはただ競いに来たんだから」

「ナリタブライアン先輩……」

 

 有マ記念。

 年末一番の大レースとあって常に人気を誇るこのレースだが、モンジューが日本に転籍し、有マ記念への意欲を見せた事で日本でも人気が急増した。更には、それに触発されて各方面から猛者が出揃いつつあった。

 今回出走するメンバーは以下の通りである。

 

 セイウンスカイ

 スペシャルウィーク

 キングヘイロー

 ツルマルツヨシ

 エルコンドルパサー

 グラスワンダー

 トウカイテイオー

 メジロマックイーン

 ナイスネイチャ

 マチカネタンホイザ

 ライスシャワー

 ビワハヤヒデ

 エアグルーヴ

 バブルガムフェロー

 ナリタブライアン

 

 そしてここにモンジューが入るとあって日本のみならず、海外からもファンが駆けつけ世界的にも大変注目されたレースになっていた。

 

「まさかナリタブライアン先輩まで来るなんて……」

「欧州の雄と競える機会はそう無いからな。姉貴も気張っている。せいぜい楽しませてくれよ……!」

「こらこら、そう威嚇するな。うちの妹が済まない。これだけの面子を前に興奮しているようでな……」

「気にするな、これくらい可愛いものさ。それに……貴方だって滾っていることだろう?」

「ふふふ、やはり誤魔化せないか。妹もいるし、私と三冠を分けあった友人達も応援に来てくれている。無様な姿は見せられないよ」

 

 熱狂的な注目。

 黄金世代が全員集結している上に、三冠ウマ娘ナリタブライアンを始めどこもかしこも伝説をその身に刻んだ群雄ばかりなのだ。一体誰が勝つというのか、甲乙付け難い。

 モンジューはどのウマ娘からも警戒されていたが、このような場で一個人を警戒するというのは正直意味が薄かった。誰かに重点を置いてしまえば、別の誰かが抜け駆けする。各々が互いを意識しており、発走前の緊張感は最大限に高まっていた。

 

「こんなにも早く貴方と競い合えるなんて思ってなかったわ」

「キングヘイロー、君とだけはまだ共に走っていなかったな。……その末脚、不屈の王が如何なるものか、示してくれるんだろう?」

「当然! 最後に勝つのは、いつだってこのキングなのよ!」

「キングはいつも通りだね。……あ~こんなに強い人いっぱいいるし私は程々でいいかな~」

『セイウンスカイ、舐めた走りをすれば異世界行きは無しだと言われていなかったか?』

『冗談だよ、じょーだん。……うわ、全員ひどい目で私のこと見てる……』

『そりゃそうだろう。宝塚を忘れたのか?』

『いいや? いやでもさ、言ってみるだけタダじゃん』

『全く貴様というやつは……』

 

 キングヘイローを見ながらセイウンスカイもまた相変わらずであった。ピリピリとした緊張感の中でバルファルクと雑談できる程度には平常である。

 バルファルクはセイウンスカイの態度に呆れていたが、指摘するのも今更だと諦めていた。なんだかんだ言って付き合いは短くない。本人は頑として認めないが、こうした精神的な図太さがセイウンスカイの長所である。

 

(思えばレースで調子を崩したのは後にも先にもダービーだけだったな。あれもレースというよりは龍属性の扱いに問題があっただけだ。レース単体で見れば、セイウンスカイは存外にしぶといのだろうよ)

 

 セイウンスカイのレースを思い起こしていたバルファルクは彼女の走ってきた道のりを評価していた。

 レースはナマモノ、誰が勝つか分からないが、勝てなければそれ相応にメンタルが傷付く。セイウンスカイとて常勝とは行かなかったが、セイウンスカイの強みはそうした負けに一々囚われていない事だ。気にしていたのはダービーくらいで、後は負けたところで次に切り替えられる強靭なメンタルの持ち主である。

 

『そらさっさと行ってこい。今更になってゲートが怖くなったか?』

『バカ言うんじゃないよ。ま、これが今年最後だし、次いつ走るかわかんないからね。やる気出していくよ』

『ああ。最後くらい飾ってこい』

 

 意気揚々とゲートに入るセイウンスカイ。

 戻ってくればまた走るつもりでいるのだが、しばらくは見れない姿である。

 

 貴方の夢、私の夢が叶うのか。

 どこかで聞いた事があるフレーズと共にゲートは快音を響かせた。

 

 

 

 

 

「テイオー! もう一度奇跡を見せてくれ!」

「ブライアン! 三冠の意地見せろ!」

「ハヤヒデぇぇぇ!!! ハヤヒデ頑張れぇぇぇ!!!」

「声でかすぎ……」

「モンジュー! リベンジしてくれ!!!」

 

(みんなの声が、聞こえる)

 

 順当な逃げ────策も何も無く、ただ普通の逃げを選んだセイウンスカイは"龍呼びの声"でレース場全てを俯瞰していた。

 セイウンスカイに作戦らしい作戦は無かった。あるとすれば、かつて皐月賞でやったように能力を使ってライバルの位置を把握する事ぐらいである。そしてセイウンスカイは、ここぞとばかりに過負荷を恐れず"龍呼びの声"をフルパワーで使用した。

 

「夢を見せてくれよ、マックイーン!」

「トウカイテイオーにリベンジしてくれビワハヤヒデ!」

「エアグルーヴとバブルガムフェロー!? どっちを応援すればいいの!?」

「愛してるよマチタンマチタンマチタンマチタン……」

「お馴染み三着なんて言わないでくれぇー!」

「ライスちゃん! 貴方はヒールじゃなくてヒーローよ!!!」

 

(なんか応援じゃないの混じってない?)

 

 セイウンスカイが普通の逃げを選んだのには理由がある。

 一度は暴発した"龍呼びの声"の力、それが今どの程度使えるのか()()の中で知りたかったからだ。

 実戦とは特別な隠喩ではない。昨年、ダービーの折に暴発した"龍呼びの声"だが、訓練を重ねているとはいえ広域の探索は抑えて使用する傾向があった。龍属性を放出して拳に纏うなど攻撃的な運用は進んでいたが、改めて練度が高まった今ならどの程度範囲を広げられるのか、それを試したかったのだ。古龍相手だと意識を広げるまでもなく相手の気配の方が強かったので古龍大戦ではわざわざ意識して使う程ではなかった。

 

 レースを実戦とした理由は単純だ。赤衣の男からどれだけ教導を受けても実戦経験は積めない。命のやり取りとまでは行かないが、ひりついた感覚に勝ち負けを意識せざるを得ない状況は実戦を想起するのに相応しい環境と言えた。

 

 そうして、セイウンスカイの感知能力は単に位置の把握だけでなく鋭敏となった感覚でどれほどの声、いや想いがウマ娘達に降り注いでいるかを聞こえるまでになった。

 

(おっと、余所見してる場合じゃないや)

 

 レースはまだ序盤、ホームストレッチで歓声を浴びていたセイウンスカイは第1コーナーでレースを意識に戻した。

 セイウンスカイを先頭に、集団が比較的前に詰めている。前残りしやすい中山レース場では後方のウマ娘が不利になりやすい。当代きってのトリックスター、セイウンスカイが逃げているのだ。集団がセイウンスカイに引っ張られる形になるのは自然な事だった。

 

(さてさて~? みんなの位置は概ね予想通りかな~。みんな私を差し切るつもりでいるんだねぇ)

 

 先行のウマ娘達は競り合いが激しい。

 セイウンスカイより後方6バ身、ツルマルツヨシとエルコンドルパサーが先陣に着いている。それを外から見るようにエアグルーヴとバブルガムフェローが様子を伺っていた。トウカイテイオーとメジロマックイーンはそれらより下がり内を走っている。そしてメジロマックイーンをマークするようにライスシャワーがその後方にいた。

 

(ビワハヤヒデ先輩は先行かと思ったけど差し? 微妙な位置取りだけど妹さんを気にしてるのかな?)

 

 先行かと思われたビワハヤヒデは予想を覆し集団後方に位置している。ちょうど先行と差しの間のような位置だ。黄金世代を含めた差しの面々はその後ろから別の集団を形成している。構図としては、ビワハヤヒデを境に先行と差しに別れているような状態だ。

 そしてビワハヤヒデが警戒しているであろうナリタブライアンは集団最後尾で密かに熱を溜めていた。

 

(セイウンスカイは普通の逃げ、何か仕掛けがあるようでも無し……! 実力で勝負する気なら実力で捩じ伏せる……!)

 

 餓狼、とも称されるナリタブライアンの獰猛な気骨は周囲に伝播する。まるで狼が獲物を追いたてるかのように。

 しかしここに集う猛者達がそれに臆する事は無い。ナリタブライアンより前、黄金世代一角であるスペシャルウィークとグラスワンダーは後方の圧力を感じながらも冷静に前を見据えていた。

 

(ブライアン先輩の気配、凄い……だけど……!)

(私達だって、相応に走ってきたんだ!)

 

 第1コーナーを越えて第2コーナー、曲がりながらスペシャルウィークとグラスワンダーの二人より前にいるナイスネイチャも冷静だ。口ではセイウンスカイのようにやる気の無さを言いながら、その実勝利への執念は凄まじいものだ。内よりやや外に傾きながら外差しを狙っている。

 

(少し前寄りに詰めて……そうするとマチタンを押す感じになるか……いや、この際だから風除けにしちゃおう)

 

(ネイチャ先輩はそのつもりなのね。なら……)

 

 一方でキングヘイローはナイスネイチャの動きを警戒している。

 第2コーナーを曲がりながらキングヘイローはちらりと後ろを見た。ナイスネイチャよりも前、マチカネタンホイザの外に着いているが、少し速度を落としつつもより外に位置を取ろうとしている。

 キングヘイローとナイスネイチャ、共に外差しを狙っており進路が被る事を嫌ったキングヘイローが先に位置取りした格好だ。思っていたよりも早い対策に歯噛みしたのかナイスネイチャの表情が苦しくなる。しかし経験で言えばナイスネイチャの方が上。気を取り直したナイスネイチャはそのまま外に移動しマチカネタンホイザではなくキングヘイローをマークし始めた。

 

(みんな動きバチバチじゃん)

 

 セイウンスカイはこの時自覚していなかったが、それはそれは良い笑顔を浮かべていた。第2コーナーを曲がった直後の中盤だったためにその表情を目視出来たのはバルファルクただ一頭だけなのだが、バルファルク曰く『俺達(古龍)のような笑み』だったと言わしめている。

 "彼ら"のような笑みとは詰まるところ、笑顔が持つ生物としての本来の意味────牙を見せ、獰猛に敵を威嚇する示威行為の事だ。龍属性を見せずとも体の内からそれを滾らせ笑っているセイウンスカイの姿は、バルファルクから見ても人のそれを逸脱していた。

 

(青雲龍セイウンスカイ……安直だな。もっと捻った異名の方が……ん?)

 

『ふふっ……あははは……』

 

『どうしたセイウンスカイ? レース中は話さないと……』

 

『あっははははは!!!』

 

『……? セイウンスカイ? どうしたんだ。俺の声が聞こえていないのか……?』

 

『あーもう、モンジューもいてさ、スペちゃん達もいてさ、先輩方も凄くてさ……それでみんなバチバチとか最高じゃん』

 

『セイウンスカイ? おい、セイウンスカイ!?』

 

『色々考えてたけど────』

 

『龍属性が昂り過ぎて思考が垂れ流しになっているのか! まずい、このままではまた暴発して……』

『あー、聞こえてる。昂ってるのは否定しないよ。バルファルクのおかげで気付けたしね』

『聞こえているのならさっさと返事をしろ! こちらの肝を冷やす気か!?』

『ごめんごめん。でもさ、このまま行くよ。暴発なんかしない。むしろもっと使う』

『なんだと……?』

 

『色々考えてたけど、やっぱ好きに走るのが一番だよね。うん、作戦とかどうでもよくなっちゃった』

 

 

 

 

 

 

 第2コーナーを回った中盤の直線。

 第3コーナーまでそう近くは無いが、セイウンスカイの様子が変化した。

 それまで我慢していたものを、解放するかのようにセイウンスカイの気配はより濃密になっていく。

 

(セイちゃん!? この気配は……)

『色々考えてたけど、やっぱ好きに走るのが一番だよね。うん、作戦とかどうでもよくなっちゃった』

(……!?)

 

 セイウンスカイの思念。

 本人は知ってか知らずか、それが共に走るウマ娘達にも漏れていた。

 

「そういうことか……!」

 

 最後尾で最も全体を俯瞰出来ていたナリタブライアンが気付く。だが、それより早く反射神経で足を早めたのは黄金世代達だった。

 

(セイちゃん/スカイさん────)

 

 こうなった時のセイウンスカイを良く知っているのはやはり同期の仲間達だ。だからこそ、今のセイウンスカイが()()()()では最も絶好調にあるという事を理屈ではなくその気配で感じ取っている。

 

(────暴走するつもりだ!!!)

 

 セイウンスカイが速度を大幅に早める。何もかもがどうでもよくなった逃げ────ジャパンカップで作戦として用いた大逃げではなく思いつきで始めた単なる暴走だ。4、5バ身程度だった後続との差がぐんぐんと広がりあっという間に第3コーナーへと差し掛かる。

 

「あっははははは!!!!!!」

 

「抜け駆け……させてたまるかぁぁぁ!!!」

「セイちゃん! そういうのズルいデスよ!!!」

 

 セイウンスカイの意図、いや意図も何もあったものではないがセイウンスカイの暴走にツルマルツヨシとエルコンドルパサーが乗る。どう考えても無謀だが、しかしセイウンスカイは東京2400mを大逃げで走りきった実績がある。

 もう様子見の時間ではなかった。

 

「はははっ、やはり君はそういうやつだ!」

「全く、一々場を崩してくれる……!」

「マジか、流石にふざけてるなぁ!」

 

 モンジューが歓喜の声を挙げ、エアグルーヴが状況に嘆息し、バブルガムフェローが茶化す。

 先行の最前列にいたツルマルツヨシとエルコンドルパサーがセイウンスカイを追いかけ始めた事で連鎖的に集団が動く。セイウンスカイ一人が暴走するならまだ様子見出来ただろうが、そうでないのなら話は違う。一拍遅れたが、モンジュー、エアグルーヴ、バブルガムフェローの三人もスパートを開始した。

 

 後方ではスペシャルウィークとグラスワンダーが気迫の籠ったスパートを開始しており、それが先行の中で比較的差しと近い位置にいたトウカイテイオー、メジロマックイーン、ライスシャワーを押し上げている。大逃げに一度負けた事のあるライスシャワーはマーク先を間違えたかと、柄にも無く心の中で舌打ちした。

 

「なんでみんなあれに着いて行こうとするの!? どう見ても無茶だよあれ!?」

「その無茶を、セイちゃんは押し通してきたんです!」

「セイウンスカイさんならではと言ったところでしょうが……!」

「ワケワカンナイヨ-!?」

 

 ライスシャワーはTM二人を越えて外に出ようとしたがその進路は後ろから虎視眈々とナイスネイチャとキングヘイローが狙っている。

 

(((ここは……競り負けた方が負ける!)))

 

 特に言葉を交わす事も無く三人の思考は一致する。

 ナイスネイチャ、キングヘイロー、ライスシャワーはもつれ込むように怒涛のスパートを大外から開始した。

 

「えっ……? えぇ!?」

 

 残ったのは戦況の急変に一番ついていけていないマチカネタンホイザと。

 

「姉貴、分かってるじゃないか」

「ああ、ここからが私達の勝負だ……!」

 

 敢えてセイウンスカイの暴走に乗らず、後方から足を溜め続けていたナリタブライアンと、相対的に後ろに下がったビワハヤヒデがタイミングを合わせてラストスパートを図っていた。

 

 

 

 

 

《セイウンスカイの急な大逃げ! 既に第4コーナーに差し掛かっていますが……!》

《後続も負けじと詰めています。セイウンスカイのおかげで一気にレースは進んでいますよ!》

 

「『あっははははははははははははは!!!!!!!』」

 

 セイウンスカイは龍属性を余人に見せなかった。傍目には急な加速をしただけに見える。しかしバルファルクとタマモクロスには見えていた。

 

「『あれ制御っちゅうか……なんやあれ……』」

『俺も分からん。ただ、暴走ではなく意図的に龍属性を振りかざしているようにも見える。本人が暴発しないと言っている以上見守るしかない』

 

 セイウンスカイの蹄鉄が大地を穿つ度に、一般人には見えない程度の龍属性が迸る。一歩一歩、踏みしめるごとに水面を打つ水面のように。

 セイウンスカイの瞳も龍を思わせる縦長に変化しているが色が変わる事は無かった。少なくとも制御は出来ているらしい。しかしその瞳からも龍属性がちらりと溢れており暴走する有り様もあって、その様子は軌跡のように尾を引いていた。

 

「随分と……楽しそうだね、セイちゃんっ!」

「『うん! 今すっごく楽しい!』」

「リベンジさせてもらいマスよ、セイちゃん!」

 

 しかし、その独走を許すまじとツルマルツヨシとエルコンドルパサーがコーナーの中にも関わらずセイウンスカイと並びかけてくる。

 だが────。

 

「リベンジは、私のセリフだ!」

「っ!?」

 

 モンジューが猛然と追い上げる。

 既に大外から、エルコンドルパサーより前に出ようとしていた。

 

《さぁ最終直線、ゴールまで残り310mしかありません!!! 先頭はセイウンスカイ! しかし後続との差は僅か!》

《後続が団子になっています。まだ勝負は分かりませんよ!》

 

 出走している全メンバーがセイウンスカイの後ろに集結している。最早作戦も駆け引きも無く、各々が全力でターフを駆けていく。

 

《先頭はセイウンスカイ、先頭はセイウンスカイだが……!》

 

《外から、モンジュー、モンジューが来た! そして、そして……!》

 

《大外キングヘイロー!? 物凄い足だ! 内をついてスペシャル、グラスワンダーも来た! ツルマルと、エルコンドルパサーも踏ん張っている!》

 

《これだ! これが黄金世代だ! モンジューと黄金世代が横一直線!!! 誰もが一歩も譲らない!!!》

 

《七人揃ってゴールイン!!! 一体誰が勝ったんだぁぁぁ!?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ……ふふふふふふ……」

「セイちゃん、一人で笑ってるのは流石に引くよ?」

「ごめんごめん、そんなに辛辣にならないでよ。ただ凄く楽しくてさ」

「うん、伝わってきたよ、セイちゃんの気持ち。なんか、作戦とかどうでもよくなったって聞こえた気がしたけど……」

「あ、マジ? あれ、もしかしたら出力次第で古龍以外にもテレパシーできるのかな……? よくよく考えたらタマモ先輩とやってるか」

「君の最後のレースだというのに能力の考察か? 随分と呑気なものだな」

 

 セイウンスカイはターフに寝っ転がっていた。

 別に疲れたり、怪我をした訳ではない。ただどうしようもなく、この青い空を眺めたくなったからだ。そんなセイウンスカイの様子を、スペシャルウィークとモンジューが呆れている。

 

「セイちゃん、掲示板出てますけど……」

「んー? 知ってるよ。ていうか私の能力知ってるでしょ。誰が勝ったかくらい分かるって」

「えっとセイちゃん……その……」

「いやぁ、勝つより気持ち良さを優先して勝てる訳ないよね。────おめでと、グラスちゃん。これで私に勝ってないのはエルだけになったね」

「ケェッ!?」

 

 一着、グラスワンダー。

 二着、セイウンスカイ。

 

 セイウンスカイを除いた誰もが精根尽き果てているだろうに、皆その顔は一様に晴れやかな笑顔であった。

 

 

 

 

 





次回 エピローグ&プロローグ

一発ネタの「YAMA育ちのタクトちゃん」が連載できそう。「セイウンスカイとバルファルク」が完結するまで控えるべき?

  • セイウンスカイとバルファルクに集中
  • 二作同時連載してほしい
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