セイウンスカイとバルファルク   作:エドレア

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Next year for the New world
エピローグ&プロローグ


 

 

 

 

 

 

「さて……持ってく物はこのくらいか……」

「セイちゃん、忘れ物とか無い?」

「大丈夫、先生が全部用意してくれてたから」

 

 ゆく年くる年、明ける空。

 彼方から初日の出の兆しが見えている。

 

「セイちゃんとも、しばらくお別れですね」

「セイちゃ~ん、勝ち逃げはズルいデスよ~」

「それはそれ。レースってそういうものだから」

 

 元旦。

 この日を指定してセイウンスカイは旅立つつもりでいた。朝早い時間ではあるが、初日の出にあやかって出立したいというのも悪くはない。

 まだ寝ている人達にもなるべく迷惑にならないように、という意味でも早朝の旅立ちであったのだがターフにはセイウンスカイを見送りに多くのウマ娘達が集まっていた。

 

「体は鍛え続けるんだろう? こっちに戻ってきた時に、パフォーマンスを落とさないようにな」

「当然! ていうか、怠けてるとまたキングにどやされるからね」

「当たり前じゃない。また醜態見せるようなら、ただじゃおかないわよ!」

「ふふ。意気軒昂、素晴らしいものだ。その調子なら、向こうの世界でも上手くやっていけるだろう」

「……うーん。むにゃむにゃ……」

「あの、ルドルフさん? お見送りは嬉しいんですけど、ツルちゃんをおんぶしてるのは……?」

「ああ、彼女も君を見送りたいと息巻いていたらしいんだが、眠気には勝てないようでね。無理に起こすと体調に響くし、かといってこのまま一人部屋に帰してやるのも仲間外れで可哀想だ」

「ああ、それでわざわざ……」

「それで、どう旅立つのかな? 君のチームメイトが何かの準備をしているようだが」

 

 シンボリルドルフが視線で促した方向にはアグネスタキオンとネオユニヴァースが怪しげな金属製の丸い台座をあちらこちら弄っている。更にはその様子を車椅子に乗った見知らぬウマ娘────シュガーライツが監督していた。

 

「異世界とか聞いただけでも眉唾物だろうに、なんでこんなのを制御する座標測定までやらなくちゃいけないんだ……」

「"アルバトリオン"……操作が"雑"。『目印が必要』」

「機械工学は専門でなくてね。私がやれなくもないが、専門家がいるならそれに越したことは無いだろう? 何、素材にアルバトリオンの鱗を混ぜているから目印の役割は果たしてくれるさ」

「どこからツッコめばいいんだ……」

 

「……えぇっと、あの台座にワームホールを発生させて、そこに飛び込む手筈となってます」

「異世界のドラゴンの力を借りるようだが、確実なのかな?」

「そこは、まぁ。あれ自体はただのでっかい目印で特に大きな力は無いんです。ワームホールはネオユニさんとアルバトリオンを詰めればいいんで」

「……流石としか言えないな」

 

 シュガーライツはこの件と本来全く関係無かったのだが、機械工学が専門という事でアグネスタキオンから白羽の矢が立った。────否、強制的に突き立てられたとも言う。

 どう考えても非科学的、ファンタジー満載の古龍案件である。シュガーライツはアグネスタキオンから時空座標を表示できる機械の作成を頼まれたのだが普通に断ろうとした(そんなのできるか!)。しかしアグネスタキオンのバックは政府であり、そしてアグネスタキオンもこれまでの実績で人には言えない額のポケットマネーを稼いでいた。結果、権力と金というどうしようもない双方に殴られたシュガーライツはトレセン学園での開発と資金提供を受けて今に至っている。

 実際にターフで日の目を見るまで、セイウンスカイはシュガーライツの事も、その苦境も全く知らなかった。

 

「『いよいよだな』」

「『そうだね。君の縄張りにあの台座置いてるけどいいのかな?』」

「『別に、どうでもいいさ。何なら帰ってくるセイウンスカイを一番に出迎えられるだろ』」

「『またそういうこと言う……んっ』」

 

 眩しい光がセイウンスカイの視界を遮る。日が昇り始めたらしい。淡く霞んでいた空が、徐々に青く染まっていく。

 

「なぁタキオン、これオレ達が行けたりしねぇの?」

「ネオユニヴァース曰く移動には制限があるようでねぇ。私も行きたかったんだが、行けるのはスカイ君一人だけだそうだ」

「私達が行ったってしょうがないよ。ポッケちゃんは行ってどうするつもりだったの?」

「そりゃおまえ、でっかいモンスター狩りまくるんだよ! 強いやつぶっ倒せばカッケェじゃん!」

「……ポッケさん、無差別にモンスターを殺傷する世界ではありませんよ。自然との調和を目指している世界です」

 

 アグネスタキオンと同期であるマンハッタンカフェ、ジャングルポケット、ダンツフレームも来ている。彼女らはセイウンスカイの見送りというより、アグネスタキオンのための集いだろう。

 

「向こうの世界はネコが料理してくれるそうだな。ネコキッチン……いつかこの世界もネコが料理してくれないだろうか」

「『ほんっとオグリは食い気ばかりやなぁ。ネコやのうて、アイルーや、アイルー。ネコとは違う人類なんやぞ』」

『むむむ。ネコが料理か……我も料理の一つでも覚えてみるべきか……?』

「『イナガミはそれ以上文明に被る余地無いでしょ』」

「そうだよ。イナガミおじさんはいつも食べてばっかりだよ? やっぱり太ってきてるって」

「アステラはバランス良く色んな物を食べるものね。好き嫌いが無いのは嬉しいわ」

「えへへ……」

「『……貴様はいい加減ダイエットを始めるべきだぞ』」

『だいえっと~? 我ヒトの言葉分からんな~』

「『イナガミはいっぺん締め上げた方がええかもなぁ……』」

 

 他のチーム:ドラコのメンバーも当然来ているし、タマモクロスとコンビで名高いオグリキャップ、トレセンドラゴンズのイナガミ、アステラもいる。

 

 遠目からだが普段セイウンスカイと関わりの無いウマ娘達も見に来ている。見送りというより、異世界に行くという物珍しさが人を呼んでいるのだ。日が昇ったからか、その人数は増えていくばかりである。

 

「『いやこれ更に人増えそうだな……』」

「『増えすぎると迷惑だ。さっさと行ってしまえ。おい、アグネスタキオン!』」

「聞こえているさ! あと5分ばかり待ってくれたまえ!」

「タキオンちゃん、手伝えることある? 人手が要るなら手伝うよ?」

「それには及ばないさ。これは専門知識が前提の代物だからね」

 

「『あと5分かー』」

 

 なんとも無しに空を見上げるセイウンスカイ。

 あくまで初日の出と人間が有り難がっているだけで、日の出そのものは普通と変わらない。とはいえそこは人としての(さが)だ。こちらの太陽もしばらくは見納めである。

 

(ん?)

 

 一瞬、空に黒点が瞬く。

 ただ本当に一瞬だった。龍属性の火花にも見えたが他の誰も黒点に言及しない。セイウンスカイは何かの見間違えかと気を取り直した。

 

「準備OKだ! あとはネオユニヴァース次第だよ!」

「"Now Loading"……」

 

 ネオユニヴァースが台座の上でいつものように両手を掲げて交信している。シュールな絵面だが、彼女の奇行は今に始まった事ではない。

 

(ここから先は未知の世界だ。私の力がどれだけ通じるか────)

 

 新たな大望を胸に意気込むセイウンスカイ。

 しかし。

 異変は唐突に訪れる。

 

『……! ……!!!』

 

「『あれ? なんか揉めてる……?』」

 

 ネオユニヴァースの上に小さなワームホールが見える。だが、届かない高さな上に、人が入るには狭すぎる。

 またアルバトリオンがやらかしたのだろう。そう思ってセイウンスカイは穴に近づき────。

 

『……ろ……! げろ!』

『え? 何言ってるのか聞こえな』

 

『逃げろセイウンスカイ!!!』

 

 アルバトリオンのの声だったか。

 突如として大きくなった穴はアルバトリオンでもない、知らぬ古龍がアギトを覗かせている。

 

「……え?」

 

【劫火】

 

 そのアギトから、全てを焼き尽くす炎が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ぐぅっ……うぉぉぉぉぉぉぉぉ……!』」

「『バルファルク!?』」

 

 火炎がセイウンスカイを焼く事は無く。

 セイウンスカイの目の前には見慣れた黒い姿がその体を焦がしている。

 

「『何して────』」

「『俺が凌いでる間に何とか逃げろ!』」

 

 数瞬、動きが遅れたセイウンスカイのためにバルファルクが盾となっていた。

 槍翼の噴出口から龍属性を放って火炎を相殺しているが、優勢とは言い難い。相殺しきれなかった分の火炎は確実にバルファルクを焼いている。

 

「『逃げろって言ったって……』」

 

 セイウンスカイが辺りを見回す。

 気持ちの良い初日の出が差していたターフは、一瞬にして地獄絵図と化していた。扇状に火炎が放たれているためバルファルクの横から火炎が漏れているのだ。

 バルファルクはセイウンスカイ一人を守るのに精一杯だった。

 

「『そうだ! みんな……は……』」

 

 火炎の隙間から青い一筋の光線が伸びる。

 それは謎の古龍の頭部に届き、爆ぜてそのアギトを仰け反らせる事に成功していた。

 

「はぁ……はぁ……」

「アステラ!? 無理をしないで!?」

「無理なんかじゃないよ……今までお母さんに守って貰ってたんだ……今度は……僕が母さんを守る番……だから……」

「アステラ!」

 

 アステラによるブレスだった。アステラもバルファルクと同じく身を呈してアドマイヤベガを庇ったのだろう。左半身を盾にしたようで惨たらしい火傷を負っている。負傷が祟ったか、地面に崩れ落ちてしまっていた。

 

「『見事だアステラ。クソ、こいつまだ……』」

『下がれバルファルク! 我が退ける!』

 

 イナガミが尻尾をターフに突き刺しその本領を発揮する。

 イナガミの背後には即席で作り上げた木々による防波堤ならぬ防火堤が編まれており、セイウンスカイを見送りに来ていた多くの見物客を守る事に成功していた。火炎は今も木々を炭化させているが、その度にイナガミが新たな木々を成長させ拮抗させている。

 イナガミの能力により伸びた木々は、その喉元を縛らんと謎の古龍へ伸びる。それを察知してか、謎の古龍は木々を焼く事に気を取られていた。

 

「『セイウンスカイ、イナガミが凌いでくれている。今の内に……』」

「『い……いない……』」

「『いない? 何を言って……』」

「『いないんだ! エルもスペちゃんも、私の友達みんな……! グラスちゃん! ツルちゃん! キング! ねぇ、お願いだから誰か返事してよ!』」

「『……クソが。なんてことだ……』」

 

 想像したくもない。

 きっと、火炎に巻き込まれる前に逃げたのだ。そうに決まっている。まさか、劫火に呑まれたなどと────。

 

『悪いお二人さん! 俺のミスだ! どっかでこいつを引き込んじまった!』

「『貴様は……アルバトリオンとやらか!? なぜこんな事になっている!?』」

『分からん! どこかで俺の穴を見たのかもしれねぇが……!』

 

 いよいよイナガミの木々だけでは抑えが効かなくなったというところに謎の古龍の背後からアルバトリオンが抑えにかかる。互いに争っているようで、僅かに覗く隙間からアルバトリオンが戦っているようだが謎の古龍はアルバトリオンすらもその火炎だけで焼いていた。

 

『セイウンスカイ、聞こえてるよな! 絶望するのはまだ早ぇぞ! ()()()()()()の炎に巻き込まれそうだったやつは全員俺が()()()の世界に飛ばした! 本来ならおまえ一人の予定だが緊急措置だ! 三女神さんには後で謝っておく!』

「『……え?』」

『早くこっちに来い! 穴が閉じないと、俺はフルパワーで戦えねぇえ!』

「『それが……そいつが……』」

 

 

 

 

黒龍ミラボレアス

 

 

 

 

 

 セイウンスカイはミラボレアスからの敵意を感じていた。

 それだけだった。会話する意思も無い。怒りや憎悪、その他一切の余計な感情は無い。

 純粋なまでの()()()()しか、ミラボレアスには無かった。

 

「『……! アルバトリオン! みんなそっちの世界で生きてるってことだよね!? 私達の世界じゃなく!』」

『そうだ! 本来ならおまえらの世界のどこかに避難させるべきだったんだろうが、座標を教えてくれるネオユニヴァースもこっちに飛ばしたもんだから宛先が分からん! ……うぉっ、こいつ炎活性の俺すら焼けるのか!? 早くしてくれセイウンスカイ! このままじゃ、長くは持たねぇ!』

 

 セイウンスカイとバルファルクは互いに目を合わせて頷く。

 穴は時折火炎が漏れているが、それだけでタイミングを見計らえば何とか入れそうだ。

 後は────。

 

「『……アヤベさん! アステラと一緒に来て貰えませんか!』」

「!? 何を言って……」

『セイウンスカイ!? 長くは持たねぇって……』

「『アステラの特性を考えると、私達の世界でその大火傷治せるか分からない! 地脈がある場所に連れて行きたいんだ! こっちじゃ地脈が何なのか分かってない!』」

「……アステラのためなら!」

「『アルバトリオン聞こえてる!? アステラとアヤベさんも行かせてあげて!』」

『ぐっふぇ!? 聞こえてるよ! 今俺殴られてんだけど!?』

 

 穴から何とか顔を覗かせたアルバトリオンはアステラとアドマイヤベガを視認しその空間に穴を作る。その間にもミラボレアスのブレスを喰らっているようだったが何とか耐えている様子であった。

 

『俺だって禁忌じゃい! そこいらのモンスターと一緒にしてくれるなよ!!!』

「『アヤベさん! アステラ! どこに行けるか分からないけど、向こうの世界で落ち会おう!』」

「ええ! だから、スカイさん! 貴方も……」

「『セイウンスカイ! 後は俺が何とかする! 早く飛び込め!!!』」

 

 アドマイヤベガの言葉は続かなかった。アステラと共に穴に呑まれて消えていく。

 

『後もう大丈夫だよな!? あぎっ、俺に絡み付いてくるんじゃねぇ、こなくそ!』

「『こいつ、セイウンスカイの妨害でもしたいのか!? 穴の前に陣取るつもりか!』」

『ぐっ……我の力では限界が……』

 

「はぁぁぁっ!!!」

 

「『先生!?』」

 

 またも穴から顔を出したミラボレアスに一人の人間が挑みかかる。手にした得物は数多の龍を相手に戦ってきた封龍剣【絶一門】。

 赤衣の男────ジョン・アーサーが決死の援護でミラボレアスに立ち向かう。

 

「セイウンスカイ! アルバトリオンに伝えろ! 私ごとミラボレアスを転移させろと!」

「『それじゃ……』」

「行けと言っているんだ! 今、最後に残った希望は君だ!」

「『……っ!』」

 

「行けぇぇぇ!!!」

 

 セイウンスカイは脇目も振らず走り出す。

 ジョン・アーサーがミラボレアスの顔面に片手剣を突き刺してくれている。この瞬間しかなかった。

 

「『アルバトリオン、先生を頼んだ!』」

『合点承知ぃ!』

 

 刹那。

 穴に入る間際ミラボレアスと視線が交錯する。

 恐ろしい眼であった。ともすれば、宝石と見紛う美しさだというのに恐怖を憶えるしかない。それでもセイウンスカイは臆せず異世界へ飛んでいく。

 

(みんながどこに行ったのか。トレセン学園は無事なのか。なにより……どうしてミラボレアスは襲ってきたのか)

 

 様々な想いが去来する。

 全ての答えは異世界に。

 

(旅をするんだ。その果てに、何が待つか────)

 

 絶望に、挫ける事は無く。

 

 こうして、セイウンスカイの冒険は始まった!!! 

 

 

 

 

 

セイウンスカイとバルファルク 第一部・完

第二部へ続く

 

 

 

 

 




みなさん、色々と言いたい事はあるでしょうがご唱和下さい


ようこそ!モンスターハンターの世界へ!

一発ネタの「YAMA育ちのタクトちゃん」が連載できそう。「セイウンスカイとバルファルク」が完結するまで控えるべき?

  • セイウンスカイとバルファルクに集中
  • 二作同時連載してほしい
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