タグにオリキャラ入れておきますね
「なになに……喧嘩?」
「よそでやってほしいデスね……」
一触即発、といった二人の男達。
巻き込まれたセイウンスカイとエルコンドルパサーは、それをげんなりした様子で見ていた。
二人ともハンターのようだ。声を荒げた方は頭から脚まで金属の鎧に覆われている。アロイシリーズ────モンスターを狩らずとも鉱石だけで作成できる人気の防具だ。顔も鎧に覆われているが、隙間から覗く視線には明確な怒気を孕んでいた。
一方もう一人の男はハンターシリーズを着ている。頭の防具は外しているようで、黒髪金眼、肌黒の顔の顔立ちだ。優男風の顔立ちはアロイシリーズの男の怒りを受けてなお涼しげであり、それが余計にアロイシリーズの男を苛立たせているようであった。
(ハンターシリーズの人はホストでもやっていけそうな感じだな……まぁトレーナーさんの方がカッコ良いけど)
「何をそう怒ることがある? 俺は事実を指摘しただけだ。落ち度はこれから狩りで挽回できる」
「てんめぇ……言うこと欠いて俺に"落ち度"だぁ!?」
「ねぇねぇ、そんなやつほっとこうよぉ。感じ悪いしさぁ」
二人が睨み会う奥の丸テーブルからは白い防具を纏った女が甘ったるい声でアロイシリーズの男に声をかけている。ウルクシリーズ、白兎獣ウルクススの素材で作られる装備だ。防具の質からして三人の内最も実力があるであろう女は、何故かアロイシリーズの男にしだれかかっていた。
「なぜ彼女を過剰に守りたがる? 経験で言えばおまえよりも上だ。昨日のジャギィへの対処も一人で出来ていただろう。君が持ち場を離れる理由にはならないはずだ」
「え~? 私一人で戦わせるのぉ~? こわい思いしたのにぃ~」
「こう言ってるじゃないか! 好きな女を守って何が悪い!」
「セイちゃん……あれって……」
「悪い人は、どこにでもいるもんだよ。世界が違っててもね」
「ハンターとしての務めを果たす、というだけの話がここまで拗れるものなのか? ウルクススを狩れる実力があるなら、ジャギィごときで今さら尻込みしないだろう」
「この"減らず口"が……! 痛い目見ねぇと分からねぇようだなっ……!?」
「はい、そこまで~」
拳を振り上げた男は、背後からその手首を掴まれる。男の暴行を未然に止めたのはセイウンスカイだった。
「てめっ……なにすんだ!」
「あのさぁ、迷惑してるんだよね。周り見てみなよ。ここ楽しい食事の場だよ? 食器だってお店の物だし、よくそんな雑に振る舞えるね」
「それは……こいつがっ……!? クソ、手が……!」
「どっちが悪いとかどうでもいいよ。たださ、私達より先輩ならもう少しカッコ良くしてほしいね」
セイウンスカイが男の手首を離す。世界を隔てていても、人間とウマ娘の差は歴然だ。自身よりも頭三つ分小さな女の子に捻り上げられた事を、アロイシリーズの男は信じられないといった様子で鈍痛が残る自身の手首を見ていた。
「こんなとこさっさと出ようよぉ。ごはんもあんまり美味しくないしぃ」
「貴方もデスよ。わざわざ声に出して美味しくないなんて言いマス? 全然食べてないじゃないデスか。作ってくれた人に失礼デス!」
「ハァ? ……なにこいつ。つまんな……」
ウルクシリーズの女とアロイシリーズの男が立ち去る。悪目立ちしている自覚はあったようで、乱暴にゼニーが入った小袋を置くとそそくさと立ち去った。残されたのはハンターシリーズの男だけだ。
「ふ~。切り替えてさっさと食べよっか。バルバレなら香辛料が効いた料理が美味しいらしいよ」
「そうしましょう! 美味しい料理を食べて気分転換デス!」
「そこの二人、少しいいだろうか」
「あ、さっき絡まれてた人」
「済まない。今の揉め事は俺の至らなさが招いたことだ。礼とお詫びの意味も兼ねて奢らせてもらえないだろうか」
「どうします、セイちゃん?」
「いいんじゃない? 奢ってもらえるならそうしようよ」
ハンターシリーズの男は二人と同じ席に着く。ほとんど食べていなかったのだろう。持ってきた食器には、料理が手付かずのままであった。
「礼やお詫びとかって言ってたけどさ、どうせなら先輩ハンターさんからタメになる話聞きたいんだよね。私達、今日ハンターになったばかりなんだ」
「そうデスね! 食べながらでも聞きたいんデスけど……えーっとお名前は……」
「申し遅れた。俺はディゲル。大剣使いだ。君達は……」
「私はセイウンスカイだよ。弓を使うんだ」
「エルコンドルパサーです! 操虫棍を使う予定デス!」
「セイウンスカイ……? 弓使い……」
ハンターシリーズの男────ディゲルが首を傾げる。どうもセイウンスカイの名に覚えがあったらしい。
「済まない。ドスジャギィを、ダレン・モーランの角から狙撃した弓使いというのは貴方のことだろうか?」
「え、そうだけど……ありゃ、1日で広まるもんかな」
「広まるどころではない。昨日の混乱を鎮めた英雄だぞ、君は」
「えっ」
見ればそこら中の席から多数の視線がセイウンスカイを貫いている。
セイウンスカイはたった1日で時の人となっていたのだ。
「信じられないな。あの腕前で、今までハンターでなかったと?」
「まぁ色々事情があるというか……詮索しないでもらえると助かりますなぁ」
「んぐっ……ごくっ……セイちゃんったら目立ちたくないっていうのにいつもこういうことやってるんデス」
「エル、グラスに会ったら今までカウントした分お仕置きしてもらうからね」
「セイちゃん!? それは無しデスよ!」
「……仲が良いんだな、君達は」
セイウンスカイ達三人が着いているテーブルには山のように料理が並べられていた。
キャラバンの危機を救った英雄であるセイウンスカイに、数々の先輩ハンターが無遠慮なまでに料理を奢ったのだ。ディゲルに奢られるつもりが飯屋中のハンターから奢られることに便乗するエルコンドルパサーは歓喜していた。
「これから狩りに出かけるのか?」
「それは明日以降だね。今日は色々準備するつもりなんだ。まだバルバレに着いたばかりだしね」
「何より宿が決まってないんデスよ。なのにセイちゃん、嵩張る本ばかり買っちゃって……」
「エル、今のでカウント数えたからね。グラスカウント」
「グラスカウント!? なんデスかそれ!?」
「ほう。であれば俺は力になれるかもしれない」
「えっ、そうなの?」
「ああ。食事が終われば俺に着いて来てほしい。見せたい物がある」
「見せたい物……」
「奢ることで見せるつもりの礼やお詫びは他のハンターに取られたからな。……見ず知らずの男に着いて行くのが嫌なら変えるが」
「あー、その辺は大丈夫。ね、エル」
「悪い人かどうかは、ちゃんと自分達で見れてるつもりデスよ」
食事を終えディゲルの案内に従う。幾つものキャラバンが軒を連ねる事で作られる即席の路地裏を進んだ先には、少し小高い丘の上で鎮座する古めかしい竜車が三台ほど並んでいた。
「竜車? なんでこれを?」
「その内の一つを、君達にあげても良い」
「えっ、良いの!?」
「ああ。……それと、これは礼などとは関係無く俺の希望でしかないんだが、しばらく組んでくれると助かる」
「もちろんデスよ! ……けど、なんでこれを……?」
「さっきの揉め事を見ただろう。俺は商人とハンターを兼ねていてな、さっきの二人は俺が護衛として雇った二人だった。しかしあのザマだ」
ディゲルは手近な竜車の内閉じられていた幌を開ける。中にはいくつものモンスターの素材が乱雑に並べられており、鱗、角、刺、牙、皮、など、多種多様なモンスターの素材はそれだけでも財産として所有するには十分だろう。
「俺はこう見えてもハンターランク3だ。今でもハンターシリーズを着ているのは、狩ったモンスターの素材を武具の作成や強化に使うのではなく売る方へ使っているからだ。大抵の相手は大剣でどうとでもなるからな」
「へぇ、上位が見えてくるじゃん」
「いや、上位にはいかない。利益が出せなくなる」
「利益が出せない?」
「上位のモンスターを狩るには、当然武具もそれ相応に強化しなくてはならなくなる。武器はまだ妥協できるが、特に防具の強化が痛いな。防具の強化は生存性に直結するが、強力な防具ほど強化にかかる費用が高い。そういう意味もあって、俺はハンターシリーズを使い続けているんだ」
「……もしかして、ディゲルさん結構強い?」
「どうだろう。俺としてはそう言われるほどではないと思うんだがな」
「店売りの防具で利益出せるくらいに大型モンスターを狩れるなら十分誇っていい思うよ」
「そう言われると、助かる。……君達は優しいな。大抵のハンターなら、俺を見て向上心が無いと嘲るものなんだが」
竜車の中にあった荷物を整理し他の竜車へ運ぶディゲル。
セイウンスカイ達からすれば、中々類を見ない狩猟スタイルで生計を立てているように見えるのだが、当の本人はそれを自嘲している。
「ハンターやってる理由なんて人それぞれでしょ。バカにする理由なんか無いって」
「ディゲルさん、ちょっとぶっきらぼうに見えるとこありマスけど、話してみれば悪い人じゃないくらい分かりマスよ。もっと自分に自信を持ってください!」
「ありがとう。……中身は片付けた。それを使えば、宿の代わりになる。俺はこいつを牽くアプトノスを連れてくるから、その間に荷物を竜車に置くといい。夕方には戻って来られるだろう」
「ありがとう。何から何まで助かるよ」
実は買い込んだ書籍の扱いに苦慮していたセイウンスカイ。エルコンドルパサーから受けた指摘が図星だったので、適度にいじって誤魔化していたのだがこれ幸いとばかりにドカドカと下ろしていく。
「いやー、親切な人と会えて良かったよ」
「そうデスね。宿のことを心配しなくてもよくなりました!」
「片付けたら夕飯の準備をしよう。ちょっと早いけど、今から作れば帰ってくるディゲルさんにご馳走できるよ」
「おっ、料理デスか? ドンドルマ仕込みの料理を披露する時がきたみたいデスね!」
「言っとくけどなんでも香辛料ぶちまけて辛くするのは無しだからね」
「い、いやデスねぇ! そんなことするわけないじゃないデスかぁ!?」
(言わなきゃ絶対やってたなこれ)
野宿する事もあるハンター生活においては自炊能力も欠かせない。狩りに出掛ければ身は一つなのだ。お金を出して外食など都市にいるが故の贅沢である。
夕飯を作るには早い時間帯、という事で選ばれたのは長く煮込むタジン鍋であった。偶然だがこの世界にもタンジア鍋というよく似た料理があり、食材にも大きな差異は無かったため元の世界と変わらぬ感覚で調理する事が出来ていた。会心の出来映えに二人は一足先に舌鼓を打つ。しかし────
ディゲルは、夕方になっても戻ってこなかった。
「おはよ……」
「おはようございマス……」
翌朝。
この世界の朝は早い。元いた世界のように電球などの文明の灯りがある訳でもないため、基本的には日の動きで1日が決まる。日の出と共に起き、日の入りと共に寝るのが普通だ。
おおよそ5時頃だろうか。二人は竜車の中でガサゴソと緩慢な動きで起床していた。
「ディゲルさん、戻って来てないね……」
「トラブルでなければいいんデスけど……」
結局ディゲルが戻っては来なかった。心配した二人が手分けして探そうとしたのだが、夜のバルバレは昼間の活気が嘘のように消えており、皆寝静まっているため明かりも無い。探そうにもこの暗がりで見つけられるはずもなく、二人はやむ無く竜車で夜を明かしたのだ。
「もしかしたら昨日の二人組となんかあったのかな……」
「雇ってたって言ってマシタけど、クビにした訳ではなさそうデスし……」
「ギルドに行こう。あそこなら人が集まるし、何か聞けるかも」
「元々クエストを受ける予定でしたから、ちょうど良いデス」
装備に着替えてギルドに赴く。セイウンスカイはバトルシリーズにハンターボウ、エルコンドルパサーはブレイブシリーズにボーンロッドとベーシックな駆け出し装備である。
「セイちゃん、あの弓は使わないんデスか? 確か……古龍の王様から貰ったっていう……」
「あれは強過ぎて普通は使わないんだ。というか、あの弓も含めて私の能力は制限するよう先生に言われてるんだよ。ここじゃ話しづらいから、狩り場に出たら説明するね」
セイウンスカイの胸には変わらずムフェト・ジーヴァから賜ったあの弓が小石の姿でぶら下がっている。本来なら狩猟において無用なアクセサリーは事故を招くため身に付けない事が多いのだが、こればかりは事情が違った。
立派なハンターとしての装いでギルドに向かう二人。
ハンターズギルドでは朝早くにも関わらず喧騒と人でごった返していた。
やはり人口比故か、下位ハンターの数が多い。というか、上位ハンターは軒並み未知の樹海の調査に駆り出されていて下位ハンターしかいなかった。当然それを受注するギルドの窓口も混雑しており中々セイウンスカイ達に順番が回ってこない。
「困ったなぁ。これじゃあ話が聞けないよ」
「私が並んでおきマスから、セイちゃんはギルドマスターに聞いてみたらどうデスか? セイちゃんなら話を聞いてくれると思いマスよ」
「分かった。なんか良さげなクエスト探しておいてね」
「了解デス!」
列を離れギルドマスターの元へ向かうセイウンスカイ。ギルドマスターはまさに書類仕事の真っ最中といった手付きで忙しなくその手を動かしていたが、セイウンスカイを見付けると柔和な笑みで彼女を歓迎した。
「おや、セイウンスカイちゃんじゃないか。その様子は……これからクエストに出かけるところかな」
「はい。そのつもりなんですけど……ちょっと聞きたいことというか……トラブル? でいいのかな?」
「トラブル? どうしたというんだい」
「ディゲルっていうハンターをご存知ありませんか? 大剣使いで防具はハンターシリーズ、ランクは3のハンターです」
「ディゲル? それなら確か昨日……」
「だ、誰か!? 助けてくれ!」
ドタバタと人が駆ける音。
戦慄する声の主は、焦りと共にその場で崩れ落ちる。
「おい、どうしたおまえ! しっかりしろ!」
「くそ……彼女が……げふっ……まだ、俺の仲間が遺跡平原に取り残されているんだ……」
急な事態に振り返ったセイウンスカイは他のハンターに介抱されているその男に見覚えがあった。昨日ディゲルに絡んでいたあのアロイシリーズのハンターだ。綺麗な光沢に包まれていた彼の防具はあちこちが煤や灰などで黒く汚れており、一部は強烈な衝撃を受けたようで破損していた。
「遺跡平原に……知らない飛竜がいたんだ! あんなやつ見たことも聞いたこともねぇ!」
「そいつに襲われたのか?」
「ああ……急に唸るような変な声が聞こえたと思ったら、空からなんか降ってきて、爆発したんだ!」
(唸る声? 空から降ってきて爆発?)
「ねぇ、君、ちょっといいかな」
「なんっ……!? てめえは、昨日の……!」
アロイシリーズの男の前にセイウンスカイがにじり寄る。有無を言わせない彼女の迫力に、介抱していた周囲のハンターすらたじろいでいた。
「俺の仲間がとか言ってたよね。まさかディゲルさんと一緒だったりしてた?」
「……そうだよクソ! あいつが……あいつが
振る舞いに問題はあれど、彼も一人の人間だ。仲間が重傷を負い、気に入らないやつに助けられ、助けを乞い願う先ではセイウンスカイというルーキーに見下される。彼の嗚咽は悔しさに滲んでいた。
アロイシリーズの男からもたらされた未知の飛竜という情報にギルド中のハンター達は湧き立った。救出も重要だが、一番は誰がクエストに向かうかという話である。誰もが皆、未知のモンスターの狩猟に並々ならぬ情熱を見せているのだ。
そんな彼らの情熱は当然ながら受付に向かう。我先にと受付嬢に詰めかかるハンター達だが────。
「無理だよ」
セイウンスカイがぴしゃりと、そのざわめきに声を通す。不思議と彼女の一声は場を鎮ませるのに十分な圧力を孕んでいた。
「無理ってなんだよ。まだどんなモンスターか分かってねぇ。新米がでしゃばってんじゃ.……」
「ここにいる人達じゃランク、というか経験が足りてない。こいつでしょ、君が遭遇したのは」
セイウンスカイがいつの間にか手にしていたメモをアロイシリーズの男に見せる。走り書きであろうそれは、ところどころ雑ではあるものの特徴を見事に捉えたイラストが描かれている。
「そ、そいつだ……! なんでおまえ知って……!」
「爆鱗竜バゼルギウス。新大陸で発見されたモンスターだよ。積極的に他のモンスターとの戦いに乱入する《気高き非道者》。そして……」
「あのイビルジョーと同格の古龍級モンスターだ。下位ハンターしかいない今のバルバレじゃ、挑めるやつがいないんだよ」
4だからといって4のモンスターしか出さないという理屈は無い
一発ネタの「YAMA育ちのタクトちゃん」が連載できそう。「セイウンスカイとバルファルク」が完結するまで控えるべき?
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セイウンスカイとバルファルクに集中
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二作同時連載してほしい