実装から数日遅れてトゥナとミツネの縄張り争い知ったんですが下馬評覆してのトゥナの横綱勝負、シビレましたね……
「最悪、の一歩手前と言ったところか」
遺跡平原、エリア6にて。
アギトを背負うディゲルは鳴り響く爆音を避ける事に精一杯であった。
空を舞うのは、飛竜として見るに大柄な体格。それが緩慢な動作で体を揺らしながら飛んでいる。その度に爆発物がところ構わず落ちてくるものだから始末に終えない。
ディゲルはちらりと横目で奥を見る。エリア10、野良アイルー達の棲み家になっているそこにはウルクシリーズの女の姿があった。ただし意識は無い。突然の爆音と、意識の無い重傷の人間が運び込まれた事に棲み家のアイルー達はパニックになっていた。
「ぐっ……!」
飛竜がディゲルの方へ空から突っ込んでいく。直線的な軌道そのものは回避に困らないが、回避した先で爆発が起きディゲルは爆風の煽りを受けてしまう。
飛竜────爆鱗竜バゼルギウスは、膝を着くディゲルを相手に勝ち誇った顔でブレスを溜めていた。
「イビルジョーと同格だとぉ!? デマ言ってんじゃねぇだろうなぁ!?」
「確かだよ。そもそも空から爆発物をばらまいてくる飛竜ってだけで特定は可能だよ。他にそんな飛竜いないから」
「せ、セイちゃん……」
いきり立つ他のハンターをセイウンスカイが冷静に諭す。まだクエストにも行っていないルーキーが悪目立ちしている事にエルコンドルパサーは慌てていた。
「セイウンスカイちゃん。新大陸の知識があるようだが、イビルジョーと同格というのは君の知見かい? その扱いも」
「はい。新大陸の古龍調査団によって詳細な生態が調べられています。イビルジョーに食いつかれた際、自身の身体能力で抗い最後には腹部の爆鱗で弾き飛ばしたという記録があります。ほとんどのモンスターが敵対を避けるイビルジョーに対して自ら挑む獰猛さもあり、危険度の高さからイビルジョー同様上位からの受注制限となっているんです」
「ふむ……」
ギルドマスターがセイウンスカイに詳細を求める。セイウンスカイの説明に熟慮するその姿に、いつもの好好爺らしさは見られない。一地域を取り纏める長として、彼は冷静な判断を下していた。
「バゼルギウスに対抗できるような上位ハンターは未知の樹海の調査に出向いていてね。呼び戻すのに時間がかかるというのはここの誰もが知ることだろう。しかし野放しにする訳にもいかない」
「でしたら……」
「セイウンスカイちゃん、君の知識を見込んだ特殊なクエストを発行する」
「特殊なクエスト……ですか?」
「うむ。君自身が解説してくれた通り。今のバルバレではバゼルギウスを狩猟するのは難しい。しかし、狩猟できないまでも二人のハンターを救出し、バゼルギウスを押し留めることは出来る」
「まさか……」
「今ここで最もバゼルギウスを知っているのは君だ。ハンターとしてではなく、
遺跡平原、エリア10。
『この人間、起きないニャ……』
『外の様子はどうかニャ?』
『ダメっぽいニャ。ずっとドカンバゴンボカンしてるニャ』
『あのハンターがいるせいニャ。逃げようとしても飛んできた爆弾に道を塞がれてドカンだニャ』
『いっそ死んでもらった方があいつも興味失うはずだニャァ……』
『縁起でもないことを言うもんじゃないニャ。あたしらがここで暮らしていけるのはハンターさんのおかげニャよ?』
アイルー達は横たわるウルクシリーズの女────サリナの手当てをしながら外の様子を窺っていた。
アイルー達は別に心からの善意でサリナの手当てをしている訳ではない。あわよくば助けた報酬をもらえればという打算的な心算からだ。治療も適切ではなく、調合もろくに行わない野良アイルー達の手では、患部に目一杯薬草を敷き詰めるぐらいしか出来ていなかった。
サリナの容態は芳しくない。一応、アイルー達の治療行為に無駄な訳ではなく薬草は確かに効果を発揮していたが、深刻なのは脇腹からの出血であった。肉が大きく削げるほどの出血は内臓にも耐え難い苦痛を与えていた。
『ここで待つことしかできないのかニャ? このままじゃボクらも外に出られないニャ』
『さっき逃げていったハンターがいたはずニャよ。そいつが助けを呼んでくれればいいニャ』
『その前にあのハンターが死にそうだニャ。ブレスを避けたつもりみたいニャけど、足が焦げてるニャ。あれじゃ長く持たないニャ』
『ああもう、じれったいニャ!』
一人のアイルーが苛立つ声を挙げる。なんと彼は爆撃が降り注ぐエリア6へと向かおうとしていた。
『ナニやってるニャ!? 外の様子分かってるのかニャ!?』
『分かってるつもりニャ! その人間起きないし、どうせ死ぬならまだ元気なあの人間を助けた方がハンターからの覚えも良くなるってもんニャ』
『おまえ……そういうところ、こんな時でも相変わらずなのニャ……』
『窮地にこそ活路ありだニャ! 大丈夫、無策じゃないニャよ!』
『一人でやってくれニャー。死んだら骨は拾ってやるニャよー』
白いアメショーのアイルーが意気軒昂でいる。どうやらこのアイルーは日頃から欲深い様子を見せているようで、他のアイルーは我関せずとばかりに放っている。
適当な木の棒に、何かしらを包んだ風呂敷をくくりつけて白いアメショーは集落から出ていった。
「クエストについて、もう一度確認するよ」
「ああ。戦闘は厳禁。最優先は救出って話だろ」
「閃光玉は調合分含めて持ってきた。ありったけをぶつけてやるぜ」
「全部セイちゃんの指示に従いマス! よろしく頼みましたよ!」
ベースキャンプにてセイウンスカイはエルコンドルパサーの他に、レックスシリーズとスキュラシリーズの先輩ハンターとブリーフィングを行っていた。
「閃光玉は確かに有効だけど、一部は目が眩んでも構わず飛行を続ける個体がいるんだよ。あんまり多用し過ぎると目が慣れて有効じゃ無くなる」
「状況次第で俺が笛を吹こう。大丈夫だ、モンスターの注意を惹くのには慣れている」
「ハハハ、俺の盾が唸るぜ……と言いたいところだが、ガードはまずいんだろ?」
「一発二発なら耐えられるかもだけど、相手は一二発じゃ済まない数の爆鱗をばらまくんだ。基本は回避に徹してとにかく散開しよう。的を絞らせないことが重要だよ」
「罠も調合分持ってきてある。閃光玉と罠を交互に使い回せばそこそこ抑えられるはずだ」
レックスシリーズの男はランス使いであり、背負っているのはレッドテイルというリオレウスのランスだ。スキュラシリーズのハンターは狩猟笛、ウォードラムというババコンガの狩猟笛を担いでいる。
この二人はクエストそのものが初めてというセイウンスカイとエルコンドルパサーに対して自ら手を挙げたハンターだ。血気に逸るハンター達の中で比較的落ち着きを保っており、二人を新米だと見下す態度も無い。クエストに連れていくメンバーは依頼が発行されたセイウンスカイに選ぶ裁量があったため、この布陣となった。
ベースキャンプからエリア6までの最短ルートは、1→3→8→6の順だ。相応に走る事となる。セイウンスカイは人間とウマ娘の差異を忘れかけているエルコンドルパサーに小声で注意していた。
「エル、早く助けたいからって本気で走っちゃダメだよ。二人が追い付けなくなる」
「え、でも……」
「今はチームワークが重要なんだ。それに、モンスターへの対処は二人の方がきっと上手いよ。今は息を合わせてね、エル」
「……分かりました!」
こういった際のエルコンドルパサーは、普段のうっかり癖が嘘のように聞き分けが良い。普段からそうしてくれと、同室の
並んで走る四人。エリア6に近付くに連れて爆音が響いてくる。アロイシリーズの男の話が確かなら、まだディゲルが戦っているはずだ。
(いざとなったら、龍属性の解放も視野に……)
四人がエリア6に入るタイミングとほぼ同時。
白いアメショーのアイルーが、ディゲルに気を取られ無防備なバゼルギウスの横っ面に風呂敷を解き放つ。
『喰らえ、【超】閃光音爆ペイントけむりこやし玉ニャァァァ!!!』
閃光────音────何よりも、激臭。
エリア6は、人もモンスターも区別無く一瞬で大混乱に陥った。
「いったい……なにが……?」
満身創痍のディゲルは突然の事態に一時意識を失っていた。
痛む体を無理やり起こし周囲を見渡すが、こやし玉特有の臭いとペイントボールの刺激臭がけむり玉と混ざっており視覚と嗅覚が最悪だ。おかげで先ほどまで戦っていたバゼルギウスの姿すら見えないでいた。
「あれは……セイウンスカイ……だったか? 救援が来てくれたはずだが……」
「……ゲルさん。……ディゲルさんったら」
「君は……エルコンドルパサー?」
「覚えていてくれて何よりデス。状況は混乱してマスけど、バゼルギウスの攻撃が止まってるみたいなので今の内に逃げましょう」
「そうしたいのは山々だが、連れを一人残しているんだ。エリア10に昨日君達が見たウルクシリーズの女がいるはずだ」
「サリナさんデスね。彼氏さんからも話がありました。そっちはセイちゃんが向かってマス」
「良かった。それなら俺も心置きなく……」
『ギニャァァァ!? ぼ、棒が鱗に引っ掛かって……うおおお飛ぶなおまえぇぇぇ!?』
「なんだあれは。アイルー?」
「ありゃりゃ、棒が鱗に引っ掛かってるみたいデス」
投げ物を徹底的に混ぜた風呂敷を直接バゼルギウスへぶつけたのだろう。バゼルギウスも悶絶しており戦闘どころではなくなっていた。体に染み付いた臭いを落とすために、バゼルギウスは撤退を選んだようだ。しかし今回の混乱の元凶であるアイルーがそれに巻き込まれてしまっていた。
「サリナさん見つけたよ。今先輩達と応急処置施してきた。危ない状態だったけど、今からバルバレに搬送すれば助かるみた……なんだあれ」
「セイウンスカイか。おそらくこの状況を生み出したアイルーだろう。何のつもりかは知らないが、結果的に助かっている。恩人ではあるだろう」
「セイちゃんどうします? あのアイルー、ほっといたらバゼルギウスに殺されマスよ」
「……見捨てるのは寝覚めが悪くなるよねぇ」
「セイウンスカイちゃん、こっちの準備は大丈夫だぜ」
「臭いがひどいなぁ。帰ったら消散剤作らないと……」
エリア10に続く穴の奥からレックスシリーズの男がサリナを担いで来ている。狩場における傷病者の搬送は危険が伴う専門作業だ。スキュラシリーズの男がその補佐として付いていた。
「ネコタクはどれくらいで来てくれるって?」
「早けりゃ5分もかからん。下手に動かすと傷に響くからな。餅は餅屋、こういうのは専門家に任せるもんさ」
「……いや、それどころではなさそうだぞ」
セイウンスカイがどうバゼルギウスを追いかけようか思案していた時だった。バゼルギウスの気配は消えたが、それとは違う気配が彼らの周囲を取り囲む。
けむりが晴れればそこには、夥しい数のジャギィが群れを成していた。
「こいつら……! あの時の!」
「臭いに惹かれちまったんだろうよ。たく、こっちは怪我人連れてるってぇのに」
「……こいつらは元々俺達の獲物だった。本当なら増えすぎたジャギィ達を討伐するためのクエストだったんだが、ハトラ────アロイを着たあいつだな。あいつが勝手に俺をクエストに入れていたんだ」
「ディゲルさんはわざわざそれに付き合ったの?」
「こいつらの振る舞いは知っているだろう。このまま行けば、そう遠くない内にどこかで命を落とす。ジャギィの群れへの対処だって儘ならなかった。君達があのアイルーを助けようとしているのと同じ理屈だ。……済まない、君達の竜車へアプトノスを連れてくる約束を守れていなかった」
「……お人好しなんだから」
ジャギィの群れはジリジリと詰めて来る。平時ならともかく今は怪我人を抱えている状態だ。サリナを抱えるレックスシリーズの男はスキュラシリーズの男と目を合わせる。スキュラシリーズの男が懐に閃光玉を準備していた。
「この数、まともに相手してられねぇ。合図したら俺が閃光玉をぶん投げる。それでベースキャンプまで走り抜けるぞ」
「私は……」
「いいっていいって。多分、セイウンスカイちゃんには秘密があるんだろ。俺達がいない方が動きやすいんじゃないか?」
「え……」
「俺たちゃ、これでも人を見る目には自信があるんだ。ずっと俺達を気にかけてただろ? あんたは根っからの良い子ちゃんだよ」
「セイちゃん、私達は大丈夫デス! 心強い先輩方もいるので!」
「あのアイルーを助けに行くんだろう? やったことに疑義はあるが、礼も言わずに去るのは俺の信条に反する。どうか助けてやってくれ」
「みんな……」
セイウンスカイが何かを抱えている事に気付いていたのだろう。事情を知っているエルコンドルパサーも含めて、四人が一様にセイウンスカイを鼓舞する。
一瞬涙を流しかけたセイウンスカイだが、感涙するのは後だ。一刻も早くサリナをバルバレに搬送しなくてはならない。かぶりを振って気を取り直したセイウンスカイはスキュラシリーズの男に視線を送った。スキュラシリーズのそれに頷く。
直後に閃光が弾け、四人はベースキャンプへ、セイウンスカイはエリア4へと走っていった。
『ニャァ……やっと降りられ……ひぃっ』
エリア4。
急峻な地形が多い遺跡平原の中で特に高低差があるとされるエリアだ。小川による地形への浸食で渓谷のような地形となっており川の両端からは橋のように伸びた岩もある。坂に気を取られがちなエリアとなるため、ハンターからは戦闘に適さないエリアとして評価が低い場所だった。
バゼルギウスは飛んだ勢いのまま小川の中へ豪快に突っ込み飛沫を上げて水を浴びる。その衝撃で白いアメショーのアイルーが振り落とされたが、自身の狩りに乱入した不埒者をバゼルギウスは忘れていない。先ほどの獲物よりも幾分小さいが、苛立ちの解消にはなるだろうとバゼルギウスは上体を大きく上に掲げた。爆鱗を撒き散らしながら敵に体当たりをするバゼルギウス特有の構えだ。恐怖に固まり動けないでいるアイルーには成す術が無かった。
思わず目を瞑り最期の時を待つアイルー。せめて痛くないように死にたいと願い────。
「グオゥッ!?」
聞こえてきたのは巨体がぶつかる音でも爆発音でもない。バゼルギウスの悲鳴が、アイルーから遠ざかって聞こえている。
「ニャァ……?」
不思議に思ったアイルーが目を開く。そこにはどんな素材かも分からない弓を構える一人の
(これはあくまでも救出任務。討伐も捕獲も、する言い訳が無い!)
「そんなちっこいやつに手を出して満足してるの? おまえの相手は私だよ」
「グルルル……」
仲間からの激励を受け心は熱く滾っているセイウンスカイだが、頭は冷静だった。いくら将来有望と見られていても、下位ハンターが上位モンスター、それも古龍と並ぶ危険性があるモンスターの狩猟など納得できる理由が作れない。
(必要なのは────撃退! こいつにここから逃げようと思わせないといけない!)
「オオオッ!」
新たな敵を見つけたバゼルギウスの決断は早い。唸り声を挙げながらセイウンスカイに突進していく。もちろん周囲には爆鱗を撒き散らしており、横に回避しても爆鱗の影響下からは逃れられない────はずだった。
「おまえの弱点、知ってるんだよ」
「グォ!?」
「
「オォン!!!」
セイウンスカイは回避していた。────バゼルギウスの背中に、である。バゼルギウスの突進に合わせ、ウマ娘特有の脚力で飛び乗ったのだ。
ラージャン、イビルジョー、そしてバゼルギウス。古龍でないにも関わらずそれと同格とされる古龍級モンスターだが、バゼルギウスは古龍級である事の理由に他2種と比べて大きな差があった。即ち、戦闘能力が古龍級なのか、環境に与える被害規模が古龍級なのか、である。他2種が前者であるのに対し(後者も重複している)、バゼルギウスは常に放出される爆鱗が問題視されていた。他2種が古龍と縄張り争いを繰り広げる報告についても、バゼルギウスにはそのような報告は無い。
────爆鱗さえ無ければ、バゼルギウスの脅威はそこまででもないとセイウンスカイは解釈したのだ。
「暴れたって無駄だよ。今からひどい目に遭わせるからね」
「グォッ……? ……ォォォオオオ!?!?!?」
バゼルギウスの背に乗ったセイウンスカイは右手から莫大な龍属性を放出する。そのままバゼルギウスの体を右手で掴むと、バゼルギウスの体から龍属性のけむりが漏れだし苦しみ始めた。
(先生から課せられた制限は三つ。普段は使わないこと、使うにしてもその使用は最小限に留めること、そして何よりも他人に見られないこと)
セイウンスカイが持つ"龍呼びの声"としての能力はこの世界でも異質だ。加えて古龍は鋭敏に他者の龍属性を感じとる。通常の大型モンスターを蹴散らす分には苦労しないが、下手な使用は余計な古龍を呼び寄せる事態を招いてしまう。それ故、元の世界では不足無く振るっていたその力を制限する必要があったのだ。
「グォ……グギャァァァッ!!!」
「しつこいな、このっ……!」
セイウンスカイからの龍属性に苦しむバゼルギウスは暴れまわる事しかできなかった。爆鱗を除くと、バゼルギウスの武器と言えるのは体当たりか射程が短いブレスしかない。そこら中に体をぶつけてセイウンスカイを落とそうとするバゼルギウスだが、セイウンスカイも根性を見せる。
「さて、そろそろかなっ……うぉっと」
「グ、グォ、ォォォ……」
やがて、何かの限界に達したのかバゼルギウスの体がゆっくりと倒れこむ。それに合わせてセイウンスカイも降り、未だ放心する白いアメショーのアイルーの元へ駆け寄った。
「君、大丈夫? 共通語分かるかな?」
「だ、大丈夫ニャ。たまにハンターさんとお話するから人間の言葉は分かるニャ。……後ろのモンスターは死んだのかニャ?」
「いや、死んではいないよ」
「ニャッ!? そ、それって……」
「見てれば分かるよ」
力尽きたかのように見えたバゼルギウスだが再びその体を起こす。セイウンスカイとアイルー、双方を見てすぐに攻撃しようとし────異変に気付く。
いつもなら、バゼルギウスの意のままに放たれるはずの爆鱗が、全くその反応を見せなくなっていた。爆鱗は生えているのに、いくら体を振り回そうとも全く飛び散らないでいる。
「グォウ!? グォァ、グギャァ!?」
「初めてでしょ、それ。
「グゥ……」
セイウンスカイの言葉がバゼルギウスに通じている訳ではないが、右手からちりちりと空気を焼く龍属性を見せつけられる事でセイウンスカイの意図を理解したらしい。バゼルギウスがセイウンスカイを相手に後ずさる。
バゼルギウスも自身の武器が爆鱗である事を理解しているのだろう。そしてそれが封じられる事となれば死活問題だ。
悔しそうに一声挙げたバゼルギウスは飛び去り、遺跡平原から出て行った。
「逃げたのかニャ……?」
「そうだね。バゼルギウスはプライドの高いモンスターだから、下手に戦うと逆に戦意を煽りかねなかったんだ。上手くいってよかったよ」
「それはよかったニャァ……これで一件落着……」
「なんて言うとでも思ったかな」
「ギニャ!?」
バゼルギウスが飛び去りようやく脅威が消えたところで、セイウンスカイはアイルーの首根っこをひっ掴んでいた。
「な、何のつもりニャ!?」
「何のつもりかだって? それはこっちが聞きたいよ。バゼルギウスにぶつけたあれ、なに?」
「あれは……狩場に落ちてたりたまにハンターさんからもらったやつをてきとーにまぜこぜしたヒミツへいき……」
「そういう調合の仕方ダメなんだよ。調合一つでもちゃんとルールが決まってて、人や環境に配慮するよう考えて作るんだ。モンスターを倒したいからって、ニトロダケやバクレツアロワナを好きなだけタルに詰めちゃいけないのとおんなじなんだよ」
「厳しいのニャ……」
厳密に言えばこれ一つで罰せられる訳ではない。しかしギルドから見る環境に配慮しない不良ハンターへの目は厳しくなる。そういったハンターが成り上がれるはず無いのだ。
今回はハンターでもない野良アイルーの仕業という事で、特にお咎めは無いだろう。しかし、落とし物や貰い物だけでこれだけの物が作れるアイルーをセイウンスカイは放ってはおかなかった。
「ところでだけど、私の右腕、分かる?」
「右腕……? って、ニャァ!?」
「見ての通り、私は龍属性が生身で使えるんだ。本来ならモンスターか武器でしか使えないはずの物なんだけどね」
「それはスゴいニャ……けどなんでそれをオイラに?」
「それはだね────これを見た目撃者を、消さなきゃならないからだよ」
「ひいっ……」
ちりちりと、肘の辺りからゆっくりと龍属性を腕に纏うセイウンスカイ。それは少しずつアイルーの元へ近付いていく。
「お、お助けを! どうか、どうか内密にしますから……!」
「こんなの普通じゃないって分かるでしょ。秘密なんだよこれ。さぁて、どうしよっかな~」
「後生ニャ、後生だニャ! どうか御慈悲を……!」
「そういえば……あ、これは完全な独り言なんだけどね、オトモアイルーを探してるんだ。狩りだけじゃなくて、住み込みで家事も手伝ってくれる、と~っても働き者なアイルーがいたら助かるなぁって」
「やります! オイラめちゃくちゃ働きます! 沢山働くから、どうか殺さないで~」
「……交渉成立ってことでいいね?」
手を離しその場で倒れるアイルー。怪我は無いようだが、精神的な疲労があるのだろう。虚ろな目でセイウンスカイを見ている。もちろんセイウンスカイにアイルーを始末する気など毛頭無い。ただ久しぶりに、少しばかりのいたずら心を覗かせただけだった。
「じゃあ帰ろうか。君のじゃなく、新しい我が家にね」
「とんでもない人間に捕まったニャ……」
意気揚々と歩くセイウンスカイとは対称的に、トボトボと歩くアイルー。彼の苦難はこれからである。
思わぬ戦利品が手に入った事に満足したセイウンスカイであった。
Tips:2ndG以前のこやし玉はけむり玉と使い方が一緒
一発ネタの「YAMA育ちのタクトちゃん」が連載できそう。「セイウンスカイとバルファルク」が完結するまで控えるべき?
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セイウンスカイとバルファルクに集中
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二作同時連載してほしい