セイウンスカイとバルファルク   作:エドレア

81 / 102
皆様、日頃からご愛読頂きまして誠にありがとうございます。
前回はキングにも色々動きがありましたよ、という回でした。
セイちゃんも色々めんどくさいことになります


レーダー戦

 

 

 

 

 

 一ヶ月後。

 バルバレ、遺跡平原にて。

 

「いや~、なんとかなりましたね、セイちゃん!」

「事前情報通りのやつで良かったよ。これがイャンガルルガとか、ガララアジャラみたいな頭の良いやつだとこんなに上手くいかないからね」

 

 彼女達の目の前には、横たわるティガレックスの姿がある。

 ところどころ傷付いているが死んではいない。ティガレックス特有の、すぴすぴとした寝息が辺りに響いていた。

 

 

 

 

 

 エルコンドルパサーがチコ村へ出張し、ガノトトスとガララアジャラの狩猟を終えて早一ヶ月。

 新たにパーティに加入したリボンを加えて、セイウンスカイ一味はハンターとしてクエストをこなす日々を過ごしていた。

 エルコンドルパサーはガノトトスの一戦で自身の火力の低さを痛感し、武器強化のための素材集めに奔走する事となる。自前の武器を持つセイウンスカイも、建前として武器強化はやらないと訝しまられるのでハンターボウの強化のため遺跡平原の採取ツアーをはしごしていたりとそれぞれが奔走している。

 その甲斐実ってか、遺跡平原にティガレックスの出現が確認された際には武具の強化が間に合っていた。

 そしてセイウンスカイが目論んでいた通り、セイウンスカイ一味はティガレックスの捕獲を敢行したのであった。

 

「……結局、ティガレックスを捕まえてどうするんデスか? その辺あんまり聞いてないような……」

「あー、ごめん。私の能力の話になるからさ、他人がいると説明しづらいんだ。リボンはエルから私のこと、聞いてるんだよね?」

「はいですニャ。とっても不思議な力を持つ方だと聞いておりますのニャ」

「……不思議っていうか、モンスターの成り損ないなんじゃないかニャァ……」

「サシミ?」

「いやーご主人は大変素晴らしい力をお持ちだニャ! 何があってもご主人さえいれば安泰ニャねー!!!」

 

 安っぽいご機嫌取りに終始するサシミ。

 サシミはこういうところがあった。出会いこそセイウンスカイの脅しがあっただろうが、それとは別に失言が多いのである。おそらくは才能の振り分けを手先の器用さに全振りしているのだろう。デリカシーという概念を、母親の子宮に忘れてきたんだとセイウンスカイは愚痴っていた。

 

「はぁ……それはともかく、まぁ見ててよ」

「おっ、何かやるんでデスね」

 

 セイウンスカイが昏睡しているティガレックスの顔を撫でる。

 ティガレックスを探りながら、セイウンスカイは説明を続けた。

 

「私の力……"龍呼びの声"っていうんだけど、戦いに使うだけじゃなくて古龍の痕跡があれば、そこから過去の記憶を辿ることも出来るんだよね」

「……? ティガレックスは飛竜種デスよ?」

「私が追いたいのはシャガルマガラの方。聞いてるでしょ、二体のシャガルマガラがいるって」

「それはそうデスけど……それとティガレックスとの間になんの関係が?」

「生物濃縮って聞いたことあるかな」

「生物濃縮……あー、なんか授業でやってたような……えっと、良くない化学物質を川とかに捨てちゃダメなんでしたよね?」

「断片的だね……その説明も間違いじゃないけど本質じゃないかな」

 

 生物濃縮とは、特定の化学物質が生態系の食う・食われるの関係においてより上位の生物に蓄積されてしまう現象である。

 被食者生物がそうした化学物質を内包した際、一個体ごとの含有量は少なくとも上位の捕食者はそれを繰り返し食べてしまうため、結果的に上位の捕食者ほど化学物質の汚染に晒されてしまうのだ。現代世界においては、前世紀で社会問題として取り上げられるほどの話題にもなった。

 

「私が知りたいのは、狂竜症ウィルスの動向なんだ。ティガレックスは獲物を選ばないし、獲物さえいれば環境だって選ばない。ティガレックスが食べてきた獲物の中には当然狂竜症ウィルスを持ったやつもいる。狂竜症を発症しているモンスターの中で、比較的ティガレックスが多いのはそういう理由なんだよね」

「狂竜症ウィルスも生物濃縮されるものなんデス?」

「ウィルスと化学物質じゃ一概に比較しづらいけど、食べて体内に蓄積するっていう意味じゃ同じだよ。そして何より、狂竜症は古龍であるシャガルマガラの力に他ならない」

「あ……!」

 

 エルコンドルパサーも得心したのだろう。

 極端に減っている狂竜症に感染したモンスター。しかしティガレックスであれば狂竜症を保菌している獲物も分け隔てなく捕食している。例え発症していなくても何らかの形で体内に痕跡があるはずなのだ。

 

「狂竜症の大元が古龍なら、私の能力で追えるんだ。ティガレックスならどこで何を食べて感染したとか、ね」

「なるほど……ティガレックスなら他のモンスターと比べて狂竜症ウィルスもいっぱい持ってるはずデスもんね。より多い方が、セイちゃんにとって調べやすいってことデスか」

「そゆこと~」

「なに言ってるのかさっぱりだニャ……」

「右に同じくですニャ。まだまだ勉強が足りてませんニャ」

「あははは。私は特殊だから、無理についてこなくたっていいよ。無闇にバラしたりしなきゃいいだけだから」

「……ご主人、それでなぁにが分かったのかニャ? もったいぶるのはご主人の悪い癖ニャよ」

「サシミ君、そろそろ懲りた方がいいんじゃニャいかな……」

 

 モンスターの生態に興味の無いサシミからすれば眠くなる内容なのだろう。さっさと結論を話せと雇用関係にあるまじき態度で続きを促している。ある意味こういう図太さは土壇場で思わぬ力を発揮するので、セイウンスカイとしては個性だと前向きに捉える事にしている。大丈夫、度が過ぎればその度に締め上げるだけで良いのだ。

 

「私が一番知りたかったのは二つ。どこで感染したか、そして何より()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんだ。後者が一番重要だった。感染経路は概ね予想通りだったしね」

「感染した場所っていうのは、やっぱり未知の樹海デスかね?」

「その通り。そして活性化についてだけど、狂竜症ウィルスについて限るならどれだけ病状が進んでるかなんだ。ほら、狂竜症ウィルスはゴア・マガラを生むための繁殖だって説明したでしょ?」

「そうデスね。でも最近は狂竜化したモンスターがいない……」

「今探ってはっきり分かったよ。このティガレックスには発症するのに十分な狂竜症ウィルスを持っている」

「え? でも……」

「発症してない理由は単純。()()()()()()()()()()()()()()()()。あくまで私の能力ありきだけど、仮説が証明されたよ。────シャガルマガラは本当に繁殖する気が無い」

「そんな……」

 

 絶句するエルコンドルパサー。

 繁殖は、生物として第一原則と言っても良い本能である。

 あらゆる生物史において、様々な繁殖方法が生きるために本能のみで模索されていった。最初は細胞同士の結合、そこから雌雄という概念が生まれ、細胞が生物としての形を得ると遺伝子による優劣が生態として多様化していく事となる。単純な遺伝子では生き残れないからと、遺伝子はますます多様化を進め進化し、今日(こんにち)においては多種多様な生物、生態系を形成するに至ったのだ。

 

「どうしてシャガルマガラが繁殖をやめたのかまでは分からない。流石に聞かないと分からないからね」

「シャガルマガラが繁殖をやめたとして、それってどういう問題があるんデスか?」

「えーっとね、これもまだ仮説なんだけど……多分、シャガルマガラは擬似的に生態系をリセットする役割を持ってるのかもしれない」

「生態系をリセット?」

「結構ビックリするかもしれないけど、実は生物史って何度も繁栄と絶滅を繰り返してるんだ。こっちの歴史は知らないけど、私達の世界じゃ五回も生物の大量絶滅が起きてる。隕石で恐竜が滅んだ話は有名だよね。あれもその一つだよ」

「話が壮大になってきたニャァ……寝てて良いかニャ?」

「好きにしなよ……話を戻して、シャガルマガラは天空山を中心にそれを再現する役割なのかもしれない。大量絶滅といってもみんな完全に死ぬ訳じゃない。生き延びた僅かな種類からまた繁栄の芽が芽生える。繁栄と絶滅は表裏一体なんだ」

「でも二体のシャガルマガラは……」

「直近で考えられる影響は生物の飽和だね。元々バルバレ管轄地域の生態系は非常に豊かで、仮説を当て嵌めていいなら狂竜症で一度数を減らさないと正常な生態系にならないのかも。ハンターがモンスターを狩ってはいるけど、それはあくまで人間が関わる範囲でしかないから……」

 

 ティガレックスの首もとを撫でながら懸念について考えていくセイウンスカイ。

 シャガルマガラの繁殖は豊か生態系に依存しているという説をセイウンスカイは打ち出しているが、逆に生態系が狂竜症に適応してしまっているとしたら話が違ってくる。一見壮大なようでいて、個々それぞれの生態を紐解くと生態系のバランスというのは薄氷のような危うさで保っているのだ。特に、一個体で環境に甚大な影響を与える古龍を大元にするなら尚更である。

 

「モンスターの大移動もからくりが見えてきたよ。本来なら狂竜症で死ぬはずだった個体も今は生きてしまっているから、数が増えてきてるんだ。それで縄張りの取り合いになってあちこち混乱が広がり出してる。下位モンスターばかりなのも、上位の強力なモンスターに押し出された余剰みたいなものだと思う。今はまだなんとかなってるけど、その内ハンターの手が足りなくなるよ」

「それって、かなりマズいんじゃ……」

「うん、かなりマズい。このままいくとハンターの手からあぶれたモンスターが人里を襲撃したりとか、そういう二次被害も起きやすくなる。そうなる前に止めないといけない」

「やっぱり、シャガルマガラを狩るんデスか?」

「そうなるかなぁ……どういうつもりでシャガルマガラが繁殖をやめたのかだけが分からないんだよね。私なら話を聞けるから、なるべく事情を聞いてあげて────」

 

 ハッと、何かに気付くセイウンスカイ。遅れて言葉が止まる。

 

「セイちゃん? どうしま……」

「ティガレックスから離れて!!!」

 

 昏睡していたはずのティガレックスが大きく爆ぜたのは、その直後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『────"私"』

『"私"よ、あの龍は気配に反してひどく小さい体のようだ』

 

 遺跡平原フィールド外、近傍の森林にて。

 未知の樹海にいるとされた二体のシャガルマガラは、そこから大きく外れて遺跡平原の近くに身を潜めていた。

 

『攻撃は、当たっている』

『分かる。"私"の触覚は確かにそれを捉えている』

 

 ティガレックスは突如として体の内側から大きく爆発した。それも、狂竜症特有の紫紺の爆発である。それを仕掛けた下手人こそ、この二体のシャガルマガラに他ならない。

 狂竜症ウィルスの散布は繁殖が目的とされているが、より即物的な効果もある。視覚が利かないゴア・マガラのための感知と攻撃だ。視覚を手に入れ成体となったシャガルマガラでもその効果は変わらずむしろより洗練されている。

 二体のシャガルマガラは、かつて襲撃してきたバゼルギウスから気配を辿り、自分達のウィルスを内包したティガレックスが丁度良く気配の近くにいたため、警告の意味も込めてティガレックスを爆発物扱いしたのだ。

 

『だが、動きが見えない』

『この程度で死ぬ気配ではない。さて、どう出るか……!?』

 

 轟音。

 鳴り響く龍雷と共に、二体の間に矢が突き刺さっている。

 莫大な龍属性が込められており、それだけで矢の射ち手がどのような意図を持って放ったのか、察するには十分だった。

 

『────よくもやってくれたね。そっちがその気なら私も容赦しないよ』

 

 二体のシャガルマガラは理解した。

 セイウンスカイVS二体のシャガルマガラ。

 互いの顔も見えない攻防が、静かに幕を開けた。

 

 

 

 

「……三人とも、大丈夫?」

「一番近かったのはセイちゃんデスよ……よく無事でしたね」

「相変わらずご主人は人間やめてるニャ……」

「あわわ……盾になれなかったことが悔しいですニャ……」

 

 無惨にも四散したティガレックス。

 紫紺の爆発が彼女達を襲ったが、セイウンスカイが咄嗟に龍属性を放った事で被害が抑えられたのだ。

 爆発が直撃したのはセイウンスカイ一人だったが、セイウンスカイ当人は全く意に介さずピンピンしていた。

 

「私もびっくりしたけど、なんか私には狂竜症が効かないみたい。ほら」

「うわぁ……」

 

 爆発によりばらまかれた狂竜症ウィルスがセイウンスカイを浸蝕しようとしていたが、右腕から溢れる龍気がそれを灼く。

 元々狂竜症ウィルスは他の古龍種で確認される事は無かった。シャガルマガラ以外の古龍種には狂竜症が通じない可能性が考えられていたのだが、図らずも自身がそれに一石を投じる確証を成した事にセイウンスカイは微妙な面持ちでいた。

 

「……私から離れてくれるかな。たぶん向こうは私しか感知できてない。近くにいると巻き込んじゃう」

 

 言葉通り、セイウンスカイの周囲を紫紺の鱗粉が漂っている。それが輝きだしたかと思えば、またセイウンスカイを狙って弾けていた。

 

「一発カウンターで射ちこんでやったからね。今頃あっちは混乱してるよ。広域探知はあいつらだけの専売特許じゃないっての」

「セイちゃん、場所分かってるんデスか!?」

「うん。いつもなら難しい距離だけど、今はあっちから居場所さらけ出してくれてるからね、感知は簡単だよ」

 

 絶えずセイウンスカイを狙う狂竜の爆雷。

 それを話しながら、埃でも払うような動作でセイウンスカイはいなしている。

 絶句する三人だったがそれに構わずセイウンスカイは話し続けた。

 

「三人とも、ギルドに連絡して応援呼べないか聞いてくれないかな。今のままだと千日手でね……!」

「わ、分かりました!」

 

 古龍に奇襲されながら、それにあっさり対応し反撃までしてみせるセイウンスカイ。

 次元の違う戦闘に自分達の出る幕は無いとエルコンドルパサーらは引き下がった。

 

 

 

 

 

『厄介な』

『どうやって"私"の居場所を掴んでいる?』

 

 一方で二体のシャガルマガラは射ちこまれる矢を何とか躱しつつも迎撃を行っていた。

 ティガレックスが孕んでいたウィルスを基に攻撃したシャガルマガラだったが反撃は想定外だった。そもそも二体のシャガルマガラは目も音も届かない森林から攻撃している。仮に嗅覚で追える範囲だったとしても地形が邪魔して臭いが届くはずも無い。なぜ自分達の居場所がバレているのか、分からないのだ。

 

『臆病者の間抜けさん。いつまで隠れてるつもり?』

 

『攻撃に思念を込められるのか。一々煽ってくるとは品が無い』

『煽りに乗ってはいけない。それはやつの思う壺だ』

 

 実のところ、セイウンスカイは狂竜の気配を頼りに"龍呼びの声"で逆探知しているだけである。

 攻撃を止めて、大人しく離れていればまだ隠れられたのだが、古龍として圧倒的強者である彼らに攻撃から逃げるという判断は考慮の内に無かった。

 

『こちらの攻撃は届いているはずだ。それなのに、なぜ』

『あちらの攻撃も不可解だ。少なくとも吐息(ブレス)の類いではない』

 

 ここに来て、未だシャガルマガラ側はセイウンスカイが人間である事に思い至っていなかった。

 セイウンスカイは千日手と称したが状況としてはシャガルマガラの方が不利である。肉弾戦ならまだ勝ち目があったのだが、単なる属性攻撃の応酬ならそれを自前の龍属性でセイウンスカイは打ち消せてしまうのだ。反対に赤龍の弓から放たれる高濃度の龍属性の矢はシャガルマガラに確実な傷を負わせられる。

 小手調べのつもりがとんだやぶ蛇を踏んだ事に、シャガルマガラ二体は後悔していた。

 とはいえ、シャガルマガラ側も無策ではない。

 

『投射物を撃ち落とせないか』

『撃ち落とすのは無理だが、軌道は変えられる。"私"ごとに分担すれば良い』

 

(おや……? 矢の迎撃に切り替えたのか。二体いるなら攻撃役と防御役に別れた方が効率良いよね)

 

 狂竜による爆雷が、セイウンスカイだけでなく矢にも向けられるようになる。

 逆探知しているといっても、セイウンスカイとシャガルマガラの間には軽く数km以上の距離がある。簡単に捕捉されないようお互い移動と攻撃を同時に行っているが、ウィルスの触覚でほぼ誤差無く捕捉出来ているシャガルマガラと違って、セイウンスカイはシャガルマガラの気配ありきの逆探知だ。探知の精度という意味ではシャガルマガラの方が上回っていた。

 

(んー、芸が無いけどこれしかないかなぁ。力業は好みじゃないんだけどね)

 

『!? 投射物の質量が増した……!』

『まだ本気ではなかったと……!?』

 

 シャガルマガラが対策するようにセイウンスカイも対策したが、その方法はあまりにもシンプルである。

 ただ矢に込める龍属性を増やしただけ。矢にも狂竜の爆雷が降るならそれも払ってしまおうという魂胆であった。

 当然矢の威力も飛躍的に上がっており、何とか躱したシャガルマガラのすぐそばには幾つもの小さなクレーターが発生していた。こんな攻撃、数度当たるだけでも致命傷になりかねないとシャガルマガラは戦慄する。

 

『"私"。これ以上は分が悪い。ここで傷を負いたくはない』

『もっともだ。気配は覚えた。後は別の機会にでも再戦すれば良い……っ!?』

 

『誰が逃すと思ってんの? せめて顔くらい見せてほしいんだけど?』

 

 煽るような口振りとは裏腹にセイウンスカイは焦っていた。

 二体のシャガルマガラがここでようやく退く判断に至ったのだが、それと比例して急速に逆探知出来ていたシャガルマガラの気配が薄れていたからである。捕捉できているうちに最低でも一度は有効打を入れたかったのだ。

 

(奇襲しておいてそっちから退くとか、何様のつもりなんだ)

 

 セイウンスカイは苛立っていた。

 出来れば穏便に会って話し合いで済ませられるよう段取りを組むつもりだったのだ。元の世界なら人間の都合を押し付けられるがこの世界ではそれは難しい。ハンターズギルドが掲げる自然との調和に則るつもりでいたセイウンスカイからすれば出鼻を挫かれたも同然である。

 

(人間の都合なんて知ったこっちゃないっていうのがそっちの言い分だろうけど、それならそれでこっちも相応の振る舞いをするだけなんだよ)

 

 セイウンスカイは過負荷(オーバーフロー)を覚悟で"龍呼びの声"による感知を更に広げていく。感覚拡張、既に退く体勢に入っていたシャガルマガラ二体の気配を余さず捉えるようその目は縦長に引き絞られていった。

 

 峻険な山岳地帯────岩肌に貼り付くクンチュウとアルセルタス。

 どこまでも続く草原────アプトノスを追いかけるジャギィの群れ。

 僅かに残る人類の遺構────遊び場として、躍動するケチャワチャ。

 

 様々な景色が、本来の視覚を越えてセイウンスカイに映し出されていく。

 そして────

 

 

 

「『────見えた』」

 

 

 

『『!?』』

 

 巨大な気配を、シャガルマガラは能力ではなく本能で察知する。

 

『まずい、はや────』

 

 続く言葉を彼らは持たない。

 

 赤い龍。

 

 幻であれ、()の龍からの一瞥は、黙するのに充分である。

 

「『これが、私のとっておき────』」

 

 

 

龍星一矢

 

 

 

 雫のような輝きは、再び流星を描いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひどいなこれは……」

 

 少しして。

 

 シャガルマガラがいたとされるフィールド外に、二人の男が訪れていた。

 

「師匠、このような事態は……」

「前例が無い。しかし、それが足踏みする理由にはならない」

 

 二人は、シャガルマガラを調査しに来た学者とそれを護衛するハンターという体で来ている。だが双剣のハンターはともかく、もう一人は学者と言われなければ分からない姿だった。茶色のコートにリオレウスの翼膜で作られた傘、何より、左の頬に走る傷を誤魔化すのは難しい。

 

「セイウンスカイ、という子だったかな。ひどく優秀だと聞いている」

「少なくとも、ギルドマスターの見立ては確かと聞いています」

 

 セイウンスカイはここにはいない。

 最後の大技を放った直後、流石に疲労が祟って着弾を観測せずにその場で倒れこんでいた。エルコンドルパサー達が応援を呼んでいなければモンスターに襲われてもおかしくない状態である。外傷こそ無かったものの、慌てたエルコンドルパサーが拠点である竜車に搬送し甲斐甲斐しく介抱していた。

 

 コートの男が()()()()()()()に構わず足を進める。

 

「話を聞かなくてはならないな。腑に落ちない点が多すぎる」

 

 二人の男────筆頭ハンターであるジュリアスとその師匠であるカンベイは、焦土と化した森林の一角を険しい様子で見つめているのだった。

 

 

 

 

 





セイちゃんが最後になにやったかというとfateの赤い外套のアーチャーのカラドボルグみたいなもんです。詳しくはUBWを見て下さい。7月に崩壊:スターレイルともコラボするかオヌヌメだよ!(唐突な宣伝)

一発ネタの「YAMA育ちのタクトちゃん」が連載できそう。「セイウンスカイとバルファルク」が完結するまで控えるべき?

  • セイウンスカイとバルファルクに集中
  • 二作同時連載してほしい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。