セイウンスカイとバルファルク   作:エドレア

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皆様、日々ご愛読頂きまして誠にありがとうございます。

第三王女家出のやらかし
・宝石が欲しいので火山に堀りに行く(ショウグンギザミとグラビモスがいる)
・チャチャブーを見に森丘に行く(イャンクック亜種もいる)
・真の女王の座をかけてリオレイアに挑みに行く(???)
・外套とお揃いの手袋が欲しいのでラージャンを捕まえに行く(!?)

これ全部公式という狂気


Match-UP 怨嗟響めくマガイマガドVS【四白流星の襲】ヤエノムテキ

 

 

 

 

 

 

 音が爆ぜる。大気が弾ける。

 

 空には二つの影が、風すら置き去りにする速さで交差し合う。

 

「舐めるなよ、空中戦を得手としているのは貴様だけではないぞ」

「グゥォォォ!!!」

 

 古龍すらも下しかける怨嗟響めくマガイマガドを相手に、ヤエノムテキは互角以上に立ち回っていた。

 

 

 

 

 

「ヤエノムテキに握らせるなら、これだろう。こいつの方が君の動きに合ってるさ」

 

 トレセン学園にいたころ、それほどセイウンスカイと親交がある訳ではなかったヤエノムテキにとってモンスターと戦うというのは遠い話だった。

 しかし異世界に飛ばされ状況が一変した。アヤ国は人間相手の鎖国を保ってはいるが、モンスターが鎖国に従ってくれる訳が無い。飛竜や海竜など、海を渡ってくるモンスターはいくらでもいる訳で、そうしたモンスターの対処にヤエノムテキは適任だった。

 さてモンスターと戦う上で、即物的に重要なのは武器である。ヤエノムテキは祖父に学んだ金剛八重垣流を修めてはいるものの、それらは人を相手にする事が前提の技だ。仕方なく太刀や弓など比較的心得がありそうな武器を試したものの、彼女としてはしっくり来ない。

 悩む彼女に光明を差し込んだのは、同じく異邦人である"我らの団"であった。聞けばヤエノムテキが来る前に、"空飛ぶ魚"でやって来ていたらしい。夜にこっそり空から侵入したようで、同じ理由で彼らは島津家に重用されていた。少し剛毅が過ぎる団長とは反りが合わない事が多かったのだが、相方である竜人族の加工屋は寡黙ながらも実直な性格である事もあってヤエノムテキが異世界で最初に気を許した友であった。

 

「穿龍棍。こいつは、メゼポルタってところで使われてる武器でな。行ってみたんだが中々の魔境だった! 流石に手に負えないと、バモート鋼だけ貰ってきたのさ!」

「……無茶振りに付き合わされる身にもなってほしいんだがな」

 

 武器の作成にインスピレーションが欲しかった加工屋はしばらくその辣腕を振るっていなかったのだが、ヤエノムテキの悩みに応える形で再び彼の窯に火が灯った。

 

 他のどの武器にもない、拳を振るう事を前提とした武器はヤエノムテキにこれ以上無く適合した。

 それからしばらく、彼女は動きの邪魔になるからと防具も付けずに、武器と生身の一本でモンスターを狩り続けている。

 

 

 

 

 

「ヤエノお姉ちゃん、すごい……」

『あの人間……ただならぬ気配を感じていたが、まさかあそこまで強かったとは……』

 

 砂浜では怒涛の空中戦が繰り広げられていた。

 内部機構であるパイルの動作を利用して、ヤエノムテキが空中に飛び上がる。それを狙って爆走するマガイマガドは突進しつつ、彼女の近くで爆発した。

 だがヤエノムテキには傷一つ付いていない。爆発を利用して後ろに跳んでいる。攻撃が不発だった事に苛立つマガイマガドは追撃で腕刃を振り抜くが、それも受け流したヤエノムテキはその場で縦に一回転、マガイマガドの頭上────残った右角へ穿龍棍の連撃を見舞った。

 

「グガァァァ!!!」

「随分と"角"に執着しているな。そんなに大事なら兜でも被ればいいだろう」

 

 残った片角こそ最後の誇りなのだ。両角共に折れるというのはマガイマガドにとって死よりも辛い苦痛である。

 セイウンスカイよりもヤエノムテキに怨みの矛先を変えたマガイマガドは地上に降り立ち尻尾に鬼火を溜める。近接攻撃がいなされるなら遠距離から仕留めて仕舞えばいい────高濃度に圧縮された鬼火は、龍属性を尻尾に纏わせ槍の如き一撃をもたらした。

 

「芸が無い」

 

 極速で放たれる鬼火螺旋突きを躱しつつ接近するヤエノムテキ。

 しかし攻撃の射程ならマガイマガドに利があるのだ。ヤエノムテキの接近を嫌ったマガイマガドは龍怨螺旋突きに派生し両者の間を爆破した。

 爆煙により両者が隠れる形となる。

 しめた、とマガイマガドは煙の奥にいるであろうヤエノムテキを狙ってもう一度尻尾による突きを繰り出す。攻撃を悟らせないため尻尾に何も纏っていなかったが、突きにより煙が晴れたそこにヤエノムテキはいなかった。

 

「グゥオ!?」

「芸が無いと言っただろう。目の前ことしか、貴様は見えていない」

「グガ……!」

 

 煙で身を隠していたのはヤエノムテキも同じだった。

 ヤエノムテキがいたのは空中である。反射的に顔を上げたマガイマガドだったが、そこで太陽を背にしたヤエノムテキを見てしまう。

 

「目の前ことばかり、だから一番見るべきものを見逃すんだ」

 

 龍気穿撃。

 

 日の光に怯んだマガイマガドに、穿龍棍の大技が炸裂した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして!? どうして変な方向にばかり思い切りがいいのよ!?」

 

 潜入作戦にも関わらず、堪らず悲鳴を挙げているキングヘイロー。ツルマルツヨシは茫然としている。

 

「ほれ、これが見敵必殺というやつじゃ。潜入には必須の技能じゃぞ?」

 

 キングヘイローが悲鳴を挙げている原因────わがままな第三王女は、足元で気絶しているアヤ国衛兵の頭へ誇らしげに片足を乗せていた。

 

 

 

 

「全く、潜入ならわらわの十八番じゃろうに」

「どこの世界に潜入が十八番の王女様がいらっしゃるんですか」

「ここにおるじゃろ?」

「だからといって本当に着いて来ます……!?」

「しーっ。キングちゃん、静かにしてないと見つかっちゃうよ」

「そうじゃぞ。潜入にはまず冷静であることが大事じゃからなぁ」

「動揺の原因が殿下なんですよ……」

 

 いつもの礼節ある振る舞いすら忘れかけて状況に慟哭するキングヘイロー。ツルマルツヨシは呆れる他無かった。

 何とかアヤ国側にバレる事無く上陸出来た二人は地図を頼りに本島にある火山の中腹────あからさまに王様でもいそうな城らしきものに向かおうとしていた。重要なのは山頂から攻撃してきた古龍と思われるモンスターの詳細を調べる事であって別にアヤ国政府に何か訴える必要は無いのだが、困った事に山頂へ続く道があるのはこの城の裏手にしか無かった。他に繋がる道も見当たらず、山そのものも大変急峻な地形のため道を無視するのも難しい。仕方がないのでなるべくバレずに進もうとしたところだったのだ。

 

「ツルマルツヨシとやら、地図を見せい。わらわが先導してやるぞ」

「は、はい! これが地図で……え?」

「殿下……!?」

「なんじゃ、イャンクックが音爆弾(ハトが豆鉄砲)でも喰らったような顔をして。事態は深刻なのじゃから、そのように呆けておる暇は無いぞ」

 

 なぜか当たり前のようにいた第三王女により任務の難易度は激高する。聞けば自分の得意な事だというのに呼ばれすらしなかった事が気に食わなかったようだ。帰すにも状況としては厳しく、キングヘイローとツルマルツヨシは第三王女を無事に装甲艦にまで帰還させるという任務も達成しなくてはならなくなった。

 

 不幸中の幸いと言っていいのか、キングヘイローとしては全く喜べない事に、第三王女は本人が豪語する通り潜入の心得があった。キングヘイローとツルマルツヨシではせいぜい物陰に隠れる事くらいしか思いつかなかったのだが、第三王女は人の視野に聡く城の近くまで近付いたところで巧みに衛兵の隙間をくぐり抜けたのである。時には真後ろを、時には側面をこれでもかという距離にまで接近しておいてまるで気配を悟らせないのは正しく第三王女の才能であった。

 

「噂に聞く伝説の傭兵*1もあんな感じなのかしら……」

「後ろをついて行けばいいだけの話だから思ってたより全然苦労しないね……」

 

 本来なら第三王女に代わって矢面に立たなくてはならないのがキングヘイローの立場だが、水を得た魚のように上機嫌で潜入をこなしていく第三王女を止められるはずがない。むしろ今回に限ってはこの方が進めているまであるのだ。

 キングヘイローは何か事故が起きませんようにと、ただただ内心祈るばかりである。しかし、そんな彼女の祈りを撃ち砕くかのようについに衛兵の目が盗めぬところまで来てしまった。城の裏手、山頂へと続く門には二人の衛兵が警備しており死角など見当たらなかったからだ。

 

「えっと……王女様、ここからどうするんですか?」

「ふむ、ここはちょいと工夫がいるのう。キングヘイロー、けむり玉は持っておるか?」

「はい。……けむり玉で身を隠して通るのですか?」

「当たらずとも遠からずじゃな。一つあればよい。なぁに、お主らは見ておればよいぞ」

 

 そう言って、キングヘイローから受け取ったけむり玉を門のど真ん中に投げる第三王女。衛兵は驚いた様子だが、何と第三王女は衛兵がいる煙幕の中へ突っ込んでいく。

 ドカッ、バキッ、などと明らかに隠れただけでは出ない音が響き嫌な予感がしたキングヘイローは煙が晴れた様子を見て、冒頭の悲鳴を挙げてしまった。

 

 

 

 

 

「ボコボコにしてしまうのはやり過ぎでは……?」

「何を言う。意識があったら応援を呼ばれるじゃろうが。後はこやつらを適当なところに縛って口も塞いでしまえばよい。門から出た裏手がよいな。しばらく見つからなければ、それだけわらわ達も気付かれないであろう」

「……」

 

 キングヘイローは言葉すら無く天を仰ぐばかりであった。なぜ守られ傅かれる立場であるはずの王女が、含蓄ある潜入の心得が語れるのか考えたくなかったからだ。

 

「キングヘイロー、紐はあるか? ツタの葉でもよい。体と口を縛ってしまえば隠密は続けられるぞ」

「……ええ、分かりましたわ……こんなのお転婆どころかただの破天荒よ……

「元気が無いのう。後は山道だけなのじゃから、そこまで気を張らなくともよいぞ?」

「あははは……キングちゃん、この人いっつもこんな感じなんだね……

「今回は輪にかけてひどい方よ……。第一王女様になんて言えばいいか……」

 

「こんなところか。しかしこやつらは骨が無いのう。うちの兵士どもならもう少し粘ってくれるんじゃが……む?」

 

 傍から見たらやっている事は完全に犯罪である。

 

 衛兵達を縛り上げていよいよ山頂に向かおうとしていた三人だが、しかしキングヘイローとツルマルツヨシは忘れていた。第三王女以上に理不尽を撒き散らす存在を。

 

「雷の音? でも空は晴れてる……」

「ややっ、まさかまたあのモンスターか? 急ぎ山頂に向かわねば……」

「待って下さい、音がどんどんこちらに近付いているような────」

 

「すみません! 急いでるから通して下さい!!!」

 

「スカイさ……!?」

 

 異音と共に三人の元へやってきたのは、潜入など知ったことかとばかりに龍雷を振り撒き疾走するセイウンスカイだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり倒れないか」

「……」

 

 同じ頃、砂浜で。

 怨嗟響めくマガイマガドとヤエノムテキの戦いは佳境を迎えていた。

 

 龍気穿撃により全身から龍気が弾けたマガイマガド。龍気による傷は深刻で特に尻尾からの出血が止まらなくなっていた。

 しかしそれでも、マガイマガドの戦意に陰りは無かった。

 

「グゥッ……オオオ!!!」

 

 全身から滾らせるのは紫炎ではなく血のように赤黒い炎。二極鬼火状態と呼ばれる境地へとマガイマガドは達する。

 もうなりふり構っていられなくなったのだろう。最早セイウンスカイの事など忘れてヤエノムテキの撃滅しか考えていなかった。

 

「グゥオッ」

「……! 早い!」

 

 マガイマガドが跳躍する。その速度はこれまでより格段に早い。

 ヤエノムテキに跳びかかるのではなく、腕刃から移動しつつ飛ぶ斬撃を放つマガイマガド。周囲を高速で周回する事で死角を潰し全方位からの攻撃を可能にしていた。

 

(逃れるには空中に飛び上がるしかない……)

 

 これはある種の誘いだろう。追い詰められた事で頭が冷えたのか、最初より頭がキレる戦法だ。無理に地上で回避に徹しても度重なる斬撃により躱しきるよりも疲弊する方が先だろう。

 

「肉を切らせて、骨を断つとは言うが……!」

「グガッ!」

 

 マガイマガドの誘いも承知で空中に飛び上がるヤエノムテキ。そこを待ってましたとばかりにマガイマガドも飛び上がる。全身に血炎を纏ったマガイマガドとヤエノムテキが交差し次の瞬間には両者共に大きく弾き飛ばされていた。

 

「……(あばら)がいったか」

 

 初めての負傷である。空中で横に動くよりも先にヤエノムテキの腹に腕刃が叩き込まれ、それと合わせるように残っていたマガイマガドの右角をヤエノムテキは右の一振で完全に破壊した。

 

「オオオッ……グォアアア!!!」

「そうやって激昂していろ。その方がやりやす……!?」

「ガァッ!」

「怒りで我を忘れたか!」

 

 右角がへし折られた事で、マガイマガドは完全に理性が喪失した。ヤエノムテキから反撃を受ける事すら厭わず遮二無二に突撃していく。

 どうやらヤエノムテキに噛みつきたいらしい。防具が無いヤエノムテキでは一噛みであの世行きだろう。どうやら先程の攻撃でヤエノムテキ自身に防御力が無い事を悟ったようだった。

 

「ヤエノお姉ちゃん……怪我が……」

『あの人間、まさかあの柔肌のままなのか?』

『あれではあと一撃耐えられるか怪しいぞ』

 

 遠くからはヤエノムテキを心配する声が聞こえる。

 分かっていたつもりで受けた攻撃だが、それでも腕刃の一撃は袈裟懸けに刻まれているのだ。後で回復薬をしこたま飲むくらいでしかこの傷は癒せないだろう。

 気付けば、シャガルマガラ達が子供達を守るように並んでいる。マガイマガドの猛攻を躱しながら、ヤエノムテキはトレセン学園で見たような風景に思わず笑みを溢し────そして気合いを入れ直した。

 

(彼らが、子供達が見てくれている。ここで無様を晒す訳にはいかない!)

 

 マガイマガドの有り様は惨々たる様子だ。

 主武装の一つである尻尾は出血が止まっておらず、先端部は壊死し始めていた。マガイマガドを象徴する両角も折れて物寂しくなっており、子供達が落武者と称した印象はよりおどろおどろしいものへと様相を変えている。

 例えヤエノムテキを殺したとしても、彼の怨みの炎は決して消えやしないだろう。

 

 マガイマガドの戦意は未だ衰えない。マガイマガドの傷は主に頭部と尻尾に集中しており四肢は無事だった。傷は深いが動くのに支障は無いのだ。

 

「意志が折れないのなら、その四肢を手折るまで」

 

 噛みつく事ばかりで足元が疎かなマガイマガド。隙を突いてまずは右の腕刃を破壊する。

 

「オオッ!?」

「まずは一つ」

 

 我を忘れてるとはいえ、流石の痛みに大きく仰け反るマガイマガド。それも利用して今度は左の腕刃もヤエノムテキはへし折ってしまう。堪らず、マガイマガドは大きくダウンした。

 

「次いで二つ」

 

 地に伏せ、身動きが取れないマガイマガド。

 それに口元の血を拭いながら近付くヤエノムテキ。何を思ったか、彼女は武器である穿龍棍を右腕から外していた。

 

「……この技は文字通りの禁じ手。鍛練を重ね、モンスターを狩り続けている内に得た()()()()()()()()()()ための技だ。私は、これを祖父に誇れない。……金剛八重垣流の技ではない、殺すためだけの技だからだ」

 

 この期に及んでマガイマガドの宿望瞳からは怨念だけが感じられていた。絶対に、この怨みを忘れてなるものかという執念だけが彼の原動力である。

 それを前にヤエノムテキは憤る事は無く、むしろ穏やかですらあった。

 

「怨むなとは言わない。……せめて、成仏はしてくれ」

 

「精魂を 果たして募る 怨念ぞ 燃ゆる後には うつろなりけり」

 

 そっと、手の平をマガイマガドの頭に乗せる。

 それだけだった。

 マガイマガドに触れるヤエノムテキには怨みも含め一切の激情は無く。

 気付けば、マガイマガドの代わりに辞世の句を詠う。

 

 暗頸

 

 締めの三つ目。

 武術の極地から放たれる衝撃は、マガイマガドの脳を完全に粉砕したのだった。

 

 アヤ国事変・南島浜辺の戦い。

 勝者、ヤエノムテキ────。

 

 

 

 

 

*1
CV.大塚◯夫「待たせたな」




拳児を昔読んでたな~って思い出しましてね?

一発ネタの「YAMA育ちのタクトちゃん」が連載できそう。「セイウンスカイとバルファルク」が完結するまで控えるべき?

  • セイウンスカイとバルファルクに集中
  • 二作同時連載してほしい
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