豪鬼イベめちゃくちゃ笑いました。何で特に説明も無くストリートファイターのキャラがおんねん(そしてなぜかボコボコにされる自キャラ)
ちなみに今回の話は心に少年JU◯Pを込めています
「者共、出会え出会え! 曲者を引っ捕らえ────」
「ごめんなさい! 後でいくらでも怒られますから!」
アヤ国本島、その朝廷付近にて。
(緊急事態なんだ。アヤ国の人には悪いけど一々許可は取ってられない!)
セイウンスカイもキングヘイロー達と同様山頂を目指していたが、潜入などというまどろっこしい事は全く考えていなかった。有事のため仕方ないと割りきり、障害となり得る全ての人間を走りながら龍雷片っ端に気絶させて回っていたのだ。
地図があるキングヘイロー達とは違い、山頂に続く一本道がどこにあるか分かっていなかったセイウンスカイは本島中を駆け回り、とんでもない人数を結果的に気絶させていた。
「そこの曲者、待ちなさい! ここから先は百竜様が住まう神聖な領域、部外者が立ち入る余地は────」
「偉そうな人ごめんなさい! 神聖とか今は言ってられないので!」
「あれ絶対この国の王様とかじゃないかニャ……」
「そういうのも今は後回し!」
知らずの内にアヤ国主上すらも気絶させているセイウンスカイ。無理矢理朝廷へと押し入ったセイウンスカイは継続して龍雷を放っておりアヤ国の政治機能を完全に麻痺させていた。
そうして何もかも薙ぎ倒す勢いでやってきたセイウンスカイは偶然にも居合わせたキングヘイロー、ツルマルツヨシ、第三王女の三人と合流できたのだった。
「キング……久しぶりだね。ツルちゃんも元気そうで良かった」
「本当にね。こんな時じゃ無ければもっと喜べたでしょうに……」
「私は強走薬に頼りきりなんだけどね……」
「それで、そっちは……」
「お主がセイウンスカイとやらか!」
噂に聞くセイウンスカイの登場に気分が上がる第三王女。未だセイウンスカイからはちりちりと龍雷が迸っていたがそれにも構わず突貫しようとしたため慌ててキングヘイローが第三王女を抱き上げた。
「何をするかキングヘイロー! こやつがお主の言うセイウンスカイなのじゃろう! なぜ邪魔をする!」
「失礼は承知でございます、殿下。しばしお待ちを。……スカイさん、この方は西シュレイド王国の第三王女殿下よ。龍属性を引っ込めて貰えるとありがたいのだけど……」
「あ、偉い人なんだ。悪いけど今それは無理かな。これ山頂の古龍へのメッセージも兼ねてるから。……なんでそんな偉い人がここにいるの?」
「よくぞ聞いてくれた! わらわには城の兵士らを撒くための隠遁の心得があってだな、それはもうわらわの積み重ねた努力が……」
「あ、そういうのはいいです。話長くなりそうなんで」
「えっ」
「スカイさん……」
第三王女が自らの武勇伝を語ろうとして、それを遠慮無くぶった切るセイウンスカイ。元の世界で総理に啖呵をきったり、古龍の王から直々に弓を下賜されるなど、所謂"偉い人"達との関わりは比較的豊富なのだ。それに比べればお姫様とはいえまだ幼い少女の自慢話など全く眼中に無かった。
「キング達も山頂を目指してるってことでいいんだよね?」
「ええ。私達に課せられた任務はスカイさんと合流して山頂の古龍について調べることよ。平和的に解決できるならそれが一番だし、そうでないなら何らかの武力行使をしなくてはならないの」
「武力行使っていうのは巨龍砲のこと? 持ってきてるって聞いたけど」
「そうなんだよ。あの古龍から船へ雷が放たれて……被害は大したことが無かったけど、会長がめちゃくちゃ怒ってるんだ。古龍への報復は已む無しって……」
「おおい、待て!? わらわを置いて話を進めるな!」
「置くも何も、王女様に何が出来るんですか」
「な……」
流石に王女への無礼が過ぎるんじゃないかと声を挙げようとしたキングヘイローだったが、冷徹に王女を見るセイウンスカイの目に躊躇した。セイウンスカイのこの目をキングヘイローは知っている。レース前、昼行灯を気取りながら勝利の一本釣りを引っかけようかと画策している時の顔だ。
「貴方がどれだけ偉いか知りませんけどね、相手は古龍です。古龍が何なのか分かってます?」
「貴様何を言い出すかと思えば! 王女たるわらわを前になんという言い草じゃ……!」
「関係無いです。貴方が王女だろうが王様だろうが何だろうが、そんなこと古龍は知ったこっちゃない。古龍は文字通りの天変地異なんですよ。兵器一つでどうにかなる相手じゃない。貴方が山頂に行ってどうなると思います?」
「せ、セイちゃん、言い過ぎじゃ……」
「死にますよ。貴方が王族だとか、そんなもの関係無しに」
「死っ……!?」
あっけらかんと王女を突き放すセイウンスカイ。
セイウンスカイの厳しい言葉に第三王女は目が点になっていた。
「大方キングが護衛か何かだと思いますけど、正直ここにいる面子じゃ誰でも戦力外です。最低でも上位ハンターがいないと話にならない」
「っ……な、なら船にG級のレドゥアンがいるから……」
「それはなりません、殿下。シェンガオレンを抑える役割があるはずです」
「それこそ巨龍砲でどうにかすれば良いだろう!」
「どうにかならない。兵器一つで超大型モンスターは倒せない。だから
「兵器でどうにかなる世界なら、この世界はとっくのとうに人間が覇権を握ってるんだよ。どうにかなってないからこの程度の文明なんだ」
ちりちりと、空気を焼く龍属性の圧力は健在だ。第三王女を前に、セイウンスカイは気絶させないまでも明らかな威圧を込めて第三王女を諭していた。
「けど、手ぶらじゃ帰れないよ。会長からは古龍の詳細を調べてこいって言われてるんだから」
「一応船にはエルを向かわせてる。ルドルフさんは凄く頭がキレるしカリスマもあるから人を率いるのに向いているけど、前提が間違ってるからやらかしてるんだ。いくら優れた計算機でも、入力した数字そのものが間違ってたら正しい答えにならないでしょ。同じ話なんだ」
「前提? スカイさん、貴方は一体何を掴んで────」
キングヘイローが言葉を続けようとした時だった。
セイウンスカイとそれ以外を分けるように雷が降り注ぐ。
「あー、やだやだ。こんなところで長話してるもんだから、向こうさんが痺れ切らしちゃった」
三人が雷が当たらないよう、龍雷でそれを相殺するセイウンスカイ。古龍の攻撃を蚊でも払うかのような仕草で防ぐセイウンスカイに三人は絶句していた。
「お、お主……一体何者なのだ……」
「悪いけど、話は後でね。古龍の詳細なら私が持ち帰るからさ。三人はとにかくここから逃げてよ。多分、めちゃくちゃ
「私が何者かって? それは勿論────」
「……ご主人、あれで良かったのかニャ?」
「あれって?」
「あの別れ方ニャ。久しぶりに会った友達もいたのにあんな別れ方じゃ寂しいニャ」
「仕方ないよ。ツルちゃんとお姫様は非戦闘員だし、キングだって厳密にはまだハンターじゃないんだ」
山道を駆け登るセイウンスカイ。
その背に捕まっているオトモのサシミは、気を使って黙っていた先ほどのやり取りに物申している。
「ご主人が強いことは分かってるニャ。でもこれから会う古龍はご主人でどうにかなる相手なのかニャ? やっぱり仲間は必要だとオイラは思うのニャ」
「サシミらしくないね。でも、これは私なりのけじめなんだ」
「けじめ?」
「古龍と話せる、ってこと。他のハンターからすれば古龍だってただのモンスターだけど、私は彼らの
「それは……仕方のないことじゃ……」
「サシミ、君は
「……!」
息を飲むサシミ。セイウンスカイの言わんとする事がどういう意味か、彼女の決意をサシミだけが理解してしまう。
「そうだよ。
「で、でも! 話せるなら平和的にって……!」
「出来ない」
サシミは平和的に話し合うように訴えたがセイウンスカイはそれを冷酷に切って捨てる。
セイウンスカイとて最初はそのつもりだったのだ。しかし、アヤ国へ入った時からセイウンスカイには嫌な予感がずっと感じられていた。そして山道────山頂に近づく度に、緑が豊かになっていく様子を見てその予感は確信に変わっていった。
「地脈を利用した
幾つもの鳥居が連なるそこを潜り抜ける。
鳥居より先、元は噴火口であっただろう頂上の盆地には玉座の如き一枚岩に座す一体の古龍。
『また私を殺しに来たか、人間』
「『うん。私は、今から貴方を殺すよ』」
互いに迸る雷と龍雷。
その一言だけを交わして、セイウンスカイとナルハタタヒメは激突した。
「っ……団長殿、わざわざすみません」
「おまえさんも無茶するなぁ。マガイマガドの特殊個体なんざ生身で相手にできるもんじゃないだろうに」
砂浜ではマガイマガドを討伐したヤエノムテキが、北島から戻ってきた団長から回復薬を受け取って傷を癒していた。
「まさかセイウンスカイさんが来ていたとは……」
「話を聞く限り、ヤエノちゃんも同郷だろう? どうする、アヤ国から抜けるのに絶好のチャンスだとは思うが」
「それは勿論なのですが、お世話になった方々への挨拶を済ませていません。何より……」
「シャガルマガラか。子供たちを助けてくれたんだってなぁ。セイウンスカイがいれば、何を思ってるか聞けるんだろうが」
子供たちに味方してくれたとはいえ、未だ意思の疎通が難しいモンスターなのだ。何かの間違いで暴れだすような事があってはならない。もしそのような事があれば自分が制圧しなくてはいけないのだとヤエノムテキは責任感を抱いていた。
「そう気負うもんじゃない。ヤエノちゃんがいなくても、多分大丈夫だろう。セイウンスカイから、話を聞いた限りではな」
「……正直に言えば、私はまだ信用しきれていません。彼女ほど古龍と親しくなったことはないので」
「いやいや、普通ならそうさ。というか古龍と親しくなれる、なんて方がおかしい。ヤエノちゃんの感覚は真っ当だよ」
「……まぁ、あの様子なら確かに油断しても仕方がないかもしれませんが」
シャガルマガラ達はいつもと同じように子供たちに囲まれていた。いつもと違うのは遊ばれているのではなく、薬草や包帯をなどを使って彼らがシャガルマガラ達の治療に専念していた事だった。
「シャガ君、大丈夫? 火傷って痛いよね……」
「うわぁ、ここざっくりいってるよ! ええっと、こんな時は薬草を塗り込んで……」
「塗ったら包帯でまきまきぐるぐるだよ~。じっとしててね~」
「団長殿、子供たちのあれは貴方が教えたのですか?」
「ああ。教えたっていうもんじゃないが、ほら、子供って外で遊んでると生傷が絶えないだろう。ここじゃ薬草の使い方も満足に知らなかったようだから、簡単なものをちょいとな」
「あれが簡単なもの……?」
「シャガルマガラに使ってるのは彼らが自分たちなりに改良したアレンジってところだろうな。いやほんと、子供の成長には驚かされるな。概ね間違っちゃいないんだから」
二体のシャガルマガラは黙って治療を受けていた。
ようやく傷が治ってきたかと思えばまた重傷である。人間の手を借りない事には満足な回復が出来ないだろうと彼らも理解している。
しかし彼らはその鋭敏な感覚で、二つの巨大な気配が対峙した事を感知した。それに驚いて顔を上げる。
彼らの視線は本島の頂上に向いていた。
「シャガルマガラの様子が……」
「ああ、どうやらセイウンスカイと山頂の古龍が戦いを始めたらしい、俺達も急がなくちゃいかん。ヤエノちゃんよ、まだ無理をさせるようで悪いが動けるか?」
「もちろんです。この程度、芝に足を取られるよりなお軽い」
「そいつは良い。俺達の船────イサナ船を動かしたくてな。流石に俺と相棒の二人だけじゃ船は動かせん。人手が要るんだ」
「それならなおのことお任せを。力仕事なら何にでもお役に立ってみせましょう」
我らの団も、いよいよ大詰め。
かつてバルバレ周辺を泳ぎ回った大魚が、再びその姿を見せようとしていた。
「……お主ら、ちょいと着いて参れ」
「あの……殿下……?」
「静かにせい。セイウンスカイが大半を寝かせたようじゃが、まだ起きてる者もおるかもしれんだろう」
セイウンスカイから酷薄にも戦力外だと言われた三人は、仕方無く帰途に着いているところであった。
しかし第三王女が何か思い付いたらしい。板張りの城の中から出ていくのではなく、何かを探すようにあちらこちら部屋を覗き回っていた。
「えっと、お姫様、一体何を……?」
「お主ら、そもそも我々西シュレイドがアヤ国に来た目的がなんじゃったか、覚えておるか?」
「ええっと、確か失われた昔の歴史だったような……?」
「旧シュレイド時代との交流の歴史があるかどうかという話だったでしょう」
「そうじゃ。それが一番重要なのじゃから、極論言えば歴史書さえあれば国交はいらぬのだ」
「殿下、まさか……」
キングヘイローが青ざめる。
やはりだが第三王女は中々ぶっとんだ思考をしている。要するに、朝廷が麻痺している間に関わりがありそうな歴史書を見つけて
「殿下、流石にそれは許されません! 栄えある西シュレイド王族が窃盗に手を染めるなどと……!」
「窃盗とは人聞きが悪いのう。良いかキングヘイロー、これはの、重要史書の
「ほ、保護?」
「見てみるがよい。城の大半は皆気絶し、もし城に何かあってもそれを守る者がおらん。そして近くではセイウンスカイと古龍が人知を越えた戦いを繰り広げておる。下手をすれば大事な史書が、
「えぇ……なんだその暴論……」
「そんな無理筋が通るわけ……」
「勘違いしておるようだが、まだ依然として我ら西シュレイドの方が物理的な立場が上なのだぞ? 我らにはあの砲艦がある。モンスター相手では役不足やもしれぬが、アヤ国を脅すには十分よ。事態が収まった後で、そういえば、と史書を返してやれば良いのだ。さすれば向こうも流石に頑迷ではおるまいて」
「……」
「キング、大丈夫? 元気ドリンコあるけど飲む?」
「頂くわ……」
本当に変な方向にばかり思い切りが良すぎる第三王女である。
古龍をセイウンスカイに任せざるを得なくなった今、転んでもただで起き上がるつもりはないのだろう。
キングヘイローは第三王女のあまりの傑物っぷりに天を仰ぐしかなかった。
「ほれ、そうと分かればお主らも手伝えい! 最古の国じゃ、探すべき歴史書はたんまりあるぞ!」
確かに手ぶらでは帰れないと言ったはずなのだが。
雷が鳴り響く外を背景に、微妙な面持ちで第三王女を手伝うキングヘイローとツルマルツヨシなのであった。
『
「『ふんっ!』」
雨の如く降り注ぐ雷、それをはね除ける龍雷。
アヤ国頂上は、史上最も苛烈な決戦が繰り広げられていた。
『
蛇の如くうねる雷が四方八方、セイウンスカイに襲いかかる。
「『……らぁっ!』」
なるべく避けつつ当たりそうなものだけ右手の龍雷でかき消すセイウンスカイ。お返しとばかりに龍雷の矢を放つが、意図的に浮かせられた大岩によってそれは阻まれた。
「『往生際が悪いね!!! 私が知ってる王様は、自分で自分の命に
『どこの龍か知らんが自ら死するとは理解できんな。なるほど、貴様の弓はそれの遺骸か』
「『違う、譲ってもらったんだ。……そりゃ普通なら王様の方が人間に優し過ぎたんだろうけどさぁ……!』」
右手を大きく振りかぶるセイウンスカイ。戦闘が始まってから本命の攻撃とは別に小規模な雷が機先を制してセイウンスカイに放たれるのだ。おかげで思ったように動けておらず、苦し紛れに矢を放っても予測されたそれは容易に防がれてしまっていた。
「『古龍らしくない戦い方だね! そんなに
『腹立たしいことにな。さっさと殺されてくれれば良いものを……!?』
「『龍閃!』」
右手から勢いを付けて放たれた龍雷はセイウンスカイの頭上を覆い、次々と展開されていた雷雲をかき消していく。
古龍らしく自身の雷で環境を支配していたナルハタタヒメは一瞬にしてその優位が崩れた事に驚愕していた。
『デタラメな!』
「『こっちからしたらそっちがデタラメだよ!』」
「あっちが何言ってんのか知らニャいけどご主人が一番デタラメしてるニャ!」
背中でセイウンスカイの背に掴まるばかりのサシミが文句混じりの悲鳴を挙げる。
邪魔な雷が無くなった隙にこれでもかと龍雷の矢を連射するセイウンスカイ。それをナルハタタヒメは岩で防御しつつ失った雷雲を再び展開させようとしたが、隙間から何本か通してしまい決して軽くはない傷を負ってしまった。
『小癪な……!』
「『環境利用ばっかりか。やっぱり傷は癒えてないみたいだね』」
『癒えるものか。《黒龍》から受けた傷、地脈を握ってなお私を焼き続ける……!』
天高く飛ぶナルハタタヒメ。咆哮と同時にセイウンスカイの周囲から大岩が殺到する。雷では防がれると見て岩での物理攻撃に切り替えたのだ。
『余裕のつもりか? 汝の龍気、威力はあっても質量は無かろう。雷は打ち消せても岩は消せまい!』
「『こっちの弱点分かってんじゃん!』」
属性攻撃には滅法強いセイウンスカイだが、逆に単純な物理攻撃には弱い。龍雷には攻撃の威力を上げたり、属性を弾く効果があっても防具のように物体的には纏えないのだ。
何とか走り回り岩と岩の隙間を抜けるセイウンスカイ。その間にナルハタタヒメは雷雲の展開を済ませる。
再び空は雷雲に覆われたが、その密度は先程より増していた。
『
「『っ……!? 火花……!?』」
雷雲から雷が放たれるが、それらはセイウンスカイではなくフィールド外周へと降り注がれる。そうして上がった火花から、セイウンスカイを囲むように炎の波が押し寄せていた。
「『そうだ、ここは火山。火種の硫黄には困らな……!?』」
龍雷でそれを打ち消そうとしたセイウンスカイを覆う影。
大岩がセイウンスカイを押し潰そうと落下している。
急いで岩から離れようと、龍雷で打ち消しつつ炎に突っ込んだセイウンスカイだったが、それを予見していたナルハタタヒメの尾に痛烈に打ち払われた。
「『ぐぁっ!?』」
「ご主人、大丈夫かニャ!?」
「『……サシミ、回復薬を私にかけて。今自分でアイテム使ってる余裕なんて無いんだ』」
「そんなの見れば分かるニャ!」
アイテムの使用はサシミに任せるセイウンスカイ。サシミのおかげで一々手を止めずにアイテムが使えるのは大きな利点だった。
セイウンスカイが負傷した様子を見て好機と捉えたナルハタタヒメ。雷はより苛烈になっていく。
『さぁいつまで耐えていられる?
ほんの少し、宙で雷が瞬く。
一発一発は小さなそれは、やがてセイウンスカイの周囲を囲み夥しいほどの火花がセイウンスカイへと襲いかかった。龍雷で払うセイウンスカイだが、まるで小鳥の大群のように向かってくるそれらは幾ら消せどもアリのように湧いてくる。
『まだまだ続くぞ!
そうして、セイウンスカイが火花の対処に手間取っている隙を狙って更なる雷が襲いかかった。先程のように地を這うそれは、数が一本に減った代わりにより太く巨大な雷へと変貌していた。
走りながら火花を打ち消しつつ地を這う雷から逃れるセイウンスカイ。しかしその行く手には大岩が浮かんでいる。
『これで仕舞いだ!
周囲を囲む火花、蛇の如くうねる雷、直上から降る大岩。
三つの攻撃に晒されたセイウンスカイはまさに絶体絶命のピンチ────。
『ん?』
スルッと。
いつの間にかナルハタタヒメのすぐそばに、
『これはなん────』
「『こんな早くに、
『な……!』
翡翠の糸が伸びた先。
セイウンスカイがナルハタタヒメの顔のすぐそばにまで翔んできている。
よく見ると翡翠の糸の先には小さな虫が飛んでおり、それが何であるかナルハタタヒメはよく知っていた。
『そうか、
「『さっきの一撃、百倍にして返してやるよ!!!』」
セイウンスカイが全力で右手に龍雷を込めていく。その様子にこれはマズいと慌てて後退するナルハタタヒメだったが遅かった。
オストガロアの脳天を、アン・イシュワルダの慈眼殻を破壊した一撃が今振り下ろされる。
「『龍 星 拳!!!』」
『グォッ……!?』
拳はナルハタタヒメの左頬にめり込み、勢いのままナルハタタヒメを墜落させたのだった。
「ふむ、平和的解決は叶わなかったか……」
アヤ国沿岸部、東の沖にて。
双眼鏡で山頂の様子を確認するシンボリルドルフは激闘の様子を見て少し落胆していた。
「巨龍砲の準備はどうだ?」
「はっ。いつでも使用可能です」
「山頂を射程圏内へ。何があっても即応できるよう艦を進めろ」
蒸気が唸りを上げ、黒煙がアヤ国の空を汚していく。
人類の活動は、往々にして自然への害になり得るのだとシンボリルドルフは分かっていて満足していた。これは文明社会でしか得られない光景だからである。
「シンボリルドルフ、まだキングヘイロー達が戻っていないわ。まさかもう始めるつもりなの?」
「いいえ、心配には及びませんよ殿下。ただ何があっても良いように動いているだけです。彼女達の献身を無駄にするつもりはありません」
「……それはいいが……第三王女様がお嬢ちゃん達に着いて行ってるってのは本当なのかね? 俺としてはそっちがヤバい気がするんだが……」
「あの子なら大丈夫よ、昔から脱走癖はあったもの。一個師団を総動員してなおも出し抜いた実績があの子の自慢よ。心配するだけ無駄だわ」
「心配の方向が間違ってませんかね、王女様よ……」
聞きたくもない第三王女の武勇伝に辟易するレドゥアン。だが彼の苦労はこれからだった。
「報告! 海中にて動きあり! シェンガオレンがアヤ国本島へ進行している模様!」
「なんだと?」
「このまま行けばあと一時間ほどでアヤ国へと上陸します!」
焦りが隠せぬ観測員から飛び込む凶報。
しかしレドゥアンの顔色が変わる事は無く。
「レドゥアン殿」
「分かってるさ。……さぁて、一仕事してくるかねぇ」
あくまで自然体まま、レドゥアンは己の盾斧を担ぎ直す。
シェンガオレン上陸まであと一時間。
アヤ国における戦線は、ナルハタタヒメとシェンガオレンという二つに二極化されようとしていた。
第三王女を書いてくの楽しいんですよね。元は単なるクエスト依頼主なのにテキストだけでキャラ立ち過ぎててなんかもう勝手に動いてる
一発ネタの「YAMA育ちのタクトちゃん」が連載できそう。「セイウンスカイとバルファルク」が完結するまで控えるべき?
-
セイウンスカイとバルファルクに集中
-
二作同時連載してほしい