セイウンスカイとバルファルク   作:エドレア

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皆様、日頃よりご愛読頂きまして誠にありがとうございます。
前回より日数が空いてしまったのは申し訳ないです。

感想欄で好きなクエスト名語りしてくれて凄い嬉しい……なんなら思い出とか語ってくれてええんやで……



大敵への挑戦

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらぁぁぁ!!!」

「やぁぁぁぁ!!!」

 

 怒涛の猛攻。

 一度崩れ落ちたシェンガオレンに対し、二人のハンター────エルコンドルパサーとレドゥアンは鬼気迫る勢いで武器を振るっていた。

 

「エルコンドルパサー、気を付けろ! そろそろ動くぞ!」

「分かってマス!」

 

 シェンガオレンがダウンから復帰する。目に見えて分かる変化は少ないがダウンする前より忙しなく動くようになっていた。単なる行動速度の向上────ラオシャンロンとも共通するシェンガオレンの怒り状態である。

 

 シェンガオレンが向きを変える。普段はゆっくりしているが、巨体故の歩幅で動けばそれなりに早いのだ。向きを変える事で進行を再開するかのように思われたシェンガオレンであったが、シェンガオレンが向き直ったのはなんと二人のハンターに対してだった。

 

「野郎、俺達を完全に敵視したな……!」

「大丈夫デス。ノロマな攻撃になんて、当たりません!」

 

 長大な剛爪が振るわれる。一撃で山肌すら削る威力だがわざわざそんな攻撃を喰らうはずもない。

 

「やぁっ!」

 

 操虫棍の本領発揮である。モンスターそのものを足場とし、跳び廻ることでモンスターを撹乱するのだ。

 鬱陶しそうに前脚を振り回すシェンガオレンだが、エルコンドルパサーに当たる事は無かった。

 

「おいおい、足元がお留守だぜ?」

 

 シェンガオレンがエルコンドルパサーに気を取られている間にレドゥアンが元の色に戻った脚を攻撃していく。エルコンドルパサーを追って不規則に揺れる脚だがそこはベテラン、チャージアックス特有のガードポイントでしっかり足踏みを防いでいた。

 

 二人は気付いていないがシェンガオレンが小物であるハンターに気を向けるのはかなり珍しい事だった。基本的にシェンガオレンは自らを邪魔する構造物に対して攻撃を仕掛ける事が多い。対して巨体故に他の小さな生物へ関心を払う事はまず無いのだが、今回のシェンガオレンは明らかにエルコンドルパサーを狙って攻撃している。弱点となるヤド内部への攻撃が、シェンガオレンに脅威だと理解させたのだ。

 

 アヤ国への進行はこれで抑えられたが、文字通り水際での防衛戦である。シェンガオレンを撃退、ないし討伐できるまで状況が好転したとは言えなかった。

 

「この……やっぱり硬いデスね!」

「エルコンドルパサー、無理しなくていい! そいつの周りでうろちょろしてりゃいいんだ!」

 

 エルコンドルパサー自身の問題もある。柔らかいヤド内部への攻撃は良かったが、シェンガオレンに対して武器の性能が足りていないのだ。ボーンロッドからボーングレイプに強化しているものの、所詮は下位武器である。今はまだシェンガオレンが冷静さを失っているが、ヤドを閉じてしまえばエルコンドルパサーの攻撃は届かない。その事にシェンガオレンが気付いてしまえば止めようが無くなってしまうのだ。

 

「巨龍砲ってまだ撃てマスか!?」

「撃てるようになったら船から信号弾が上がる! それまでの辛抱だ!」

「……持久戦デスね!」

 

 火力不足は如何んともし難い。

 一縷の望みを懸けて巨龍砲を願ったエルコンドルパサーだが、既に一度巨龍砲は放たれているのだ。巨龍砲の威力は凄まじいものの、連続した発射は出来ず再度砲撃するには冷却などの手間がかかる。

 巨龍砲が撃てるようになるまで、シェンガオレンをここに留めておかなくてはいけなかった。

 

「ほらほら! 私はこっちデスよ!」

 

 しきりにシェンガオレンの頭部で跳ね回るエルコンドルパサー。なるべくシェンガオレンの視界に入るよう立ち回っている。重要なのはシェンガオレンの爪が届く範囲で動く事だった。届かないと分かると諦めて進行するかもしれないが、届く内はまだ爪を振り回す猶予がある。

 これは防衛戦なのだ。ハンター達が手傷を負う事よりも、島への進行を許してはならないのだ。

 

「ちくしょう、そろそろ爆破の通りが悪くなってきたな……!」

 

 徐々にだが状況が悪化してくる。

 爆破属性は毒や麻痺、睡眠などと同じく状態以上の一種だ。同じ状態異常による攻撃を続けていくとモンスター側が耐性を獲得し、より状態異常を起こしづらくなる。ハンターなら常識と言える知識であり、爆破属性も理屈は変わらない。

 困ったのはシェンガオレンの長大な体力だった。繰り返し状態異常に罹る事で耐性を獲得するため、理屈の上ではシェンガオレンのような超大型モンスターは状態異常に強いのだ。中には状態異常そのものを受け付けない種もいる。

 破岩盾斧イフルゼントなら爆破属性に頼らなくても自前の性能で大概のモンスターと戦えるが、この状況では焼け石に水でしかなかった。

 

 そして恐れていた事が起きてしまう。

 

「マズい、シェンガオレンが……!」

「こっちデス! こっちを見なさい!」

 

 シェンガオレンが島の方へ向き直り進行を再開してしまった。一通りエルコンドルパサーに踊らされていたが、時が経ち頭が冷えたのだろう。当初の目的を思い出したらしい。

 また準備砲撃などやっていてはヤドを狙われる。それなら単純に進めばいいのだ。シェンガオレンからすれば当然の理屈だった。

 

「巨龍砲は!?」

「クソ、まだだ。何としても止めねぇと……!」

「間に合わない……私、住民の皆さんを避難させてきマス!」

「この状況じゃ四の五の言ってられねぇか。一旦諦めて住民を優先して────」

 

 いよいよ海沿いの町へ差し掛かろうとしたその時。

 

「……? ……!? ……!?!?!?」

 

「あれ? シェンガオレンが止まった……?」

「止まったというか……なんかヤドを揺らしてやがるぞ。なんだ?」

 

 すわ、町を踏み潰さんというところでシェンガオレンが歩みを止める。しきりにヤドを揺らしており、随分と不快げにヤドを振り回している。ヤドが気になって仕方がないという様子である。

 

「そういえばリボンは……?」

「リボンってのはあんたのオトモアイルーか? そういや見かけてねぇような……」

 

「ここですニャ! ここ、ここ!」

 

 シェンガオレンから響く声。

 会敵してからこれまでどこにも姿が無かったリボンの声がシェンガオレンから聞こえている。

 二人が目を凝らしてよく見れば────。

 

「えっ……えええ!? リボン、なんでそんなところに!?」

「はっはっは! こいつは驚いたぜ、最高のファインプレーじゃねぇか!」

 

 シェンガオレンが背負うラオシャンロンの頭骨、その窪んだ眼窩からリボンが顔を覗かせているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉぉぉ……凄いの、砦蟹とはかくも巨大であったか」

「殿下、あまり余所見はされませんように。ただでさえ多くの書物を背負っているのですから……」

「こういう力仕事は私達に任せればいいのに……」

 

 アヤ国主殿。

 その城からいそいそと出てくるのは第三王女、キングヘイロー、ツルマルツヨシの三人である。

 三人は適当な布を風呂敷にし、それを背負って保護という名の窃盗を働いていた。風呂敷もこれまたこてこてな唐草模様であり、誰がどう見てもその姿は泥棒に違いなかった。

 

「このような書物はあればあるだけ良いのだ。せっかくわらわが動けるというのに、使える手を放っておく理由は無かろう?」

「……第三王女様って、なんか色んな意味でお姫様らしくないですよね」

「ツヨシさん、流石にそれは無礼よ……その……殿下には王族としての格というか、その、カリスマというか……ともかく余人には分からない何かがきっとある……のよ」

「うむ、キングヘイローよ。無理をせずともわらわ自身の評価はわらわ一番がよく分かっているつもりだぞ。お主が気にすることではないのだ。逆にそういうフォローの方が辛いんだよね

「……殿下?」

 

 城下町からも海岸線の様子は見えている。

 戦っているハンターの姿までは分からないが、流石に巨大なシェンガオレンは嫌でも目に付く。戒厳令が敷かれているためほとんどの住民は家に籠っていたが、それでも鳴り響く戦闘音に一部の住民は窓から防衛戦の様子を眺めていた。

 

「困ったのう。砲艦が援護をしておるようだが、あれでは船に戻れまい」

「信号弾や狼煙を上げれば気付いてくれると思いますけど……」

「たわけ。今優先するべきは砦蟹の撃退であろう。わらわが見える位置でそのようなことをしてみよ。わらわと砦蟹どちらを優先するべきか、混乱するであろうが」

「殿下、ルドルフさんならそうした統制を欠かすことは無いかと。とはいえ、御身の安全は確保されるべきかと愚考します」

「シンボリルドルフめの采配は見事じゃが、要らぬ懸念を与える必要は無いと言うておるのじゃ。あやつめ、不遜にも王家の意向すら必要次第で潰しかねん。あやつはともかく、配下の水夫供は王家を無視するという愚挙に耐えられるかの?」

「それは……」

「何を急いているかは知らぬが、こちらにも言い分はあるのだ。あやつの欠点は一人としての有能が過ぎるところよ。何でもかんでも自分本位で進めた方が良いと思っておる。なまじそれが出来る手腕があるところが性質(たち)の悪いところよな」

「会長の、欠点……」

 

 第三王女はシンボリルドルフが抱える危うさを言い当てていた。シンボリルドルフは確かに人の上に立つ者として有能であるが、それに独善的な考えを持つきらいがある。自分本位で進めがちなのも()()()能力を持つ自分が引っ張らねばという責任感から来るものだ。責任感と言えば聞こえは良いが、それはこの世界の人間を信用していない事と同義である。

 元の世界のシンボリルドルフであれば、エアグルーヴやナリタブライアンなどの生徒会、シリウスシンボリやメジロラモーヌといった古馴染、ミスターシービーやカツラギエース、あるいはマルゼンスキー同輩達と親交が深かった。気兼ね無く話せる仲間が今のシンボリルドルフにはいないのだ。同じトレセン生であるツルマルツヨシにしても、自分を慕う後輩という位置付けでありシンボリルドルフが弱みを晒す相手ではない。

 シンボリルドルフは、この世界に来てから一度足りとも気を抜いていないのだ。

 

「何というか、抜き身の刃のようなものじゃのう、あれは。手折ってしまってはあやつの能力に翳りが出よう。何とか収まるべき鞘に収まってもらいたいものじゃ」

「殿下のご慧眼、恐れ入ります。シンボリルドルフさんも、決して無理をしているつもりは無いのでしょうが……」

「……そういえば、会長の考えをちゃんと聞いたことが無いかも。なんであんなに技術開発をしたがるんだろ……?」

「そういうのも含めてな、腹を割って話せる友でもおれば良いのだがの。わらわを見倣ってほしいものじゃ。わらわは常に裏表無く話しておるからのう!」

「……殿下。シンボリルドルフさんへの御言葉で話題を変えられているようですが、殿下の御身が第一という話は終わっておりませんよ?」

「抜け目が無いのう、キングヘイロー。お主も肩肘張り過ぎじゃ。誰も見ておらなんだ、もう少し態度を崩して良いのだぞ?」

「殿下の安全が確保されるなら、私も多少は肩の荷が下ろせるかと」

「つれないのう。ツルマルツヨシ、キングヘイローはいつもこうなのか? 同郷のお主なら分かるであろう」

「えっと、お姫様。私達ってまだアヤ国に不法侵入してるんですよ? 下手すると敵国扱いになるかもしれないのに気を抜くのはちょっと……」

「それもそうじゃったな。ふむ、どこか適当な場所にでも身を寄せられれば良いのだが……はて?」

「あれは……」

 

 避難できるような場所が無いか一通り辺りを見回す第三王女一行。しかし避難より先に見つけたのは空中を走る一隻の船。

 

「なんと……飛行船かの!? しかも撃龍槍があるではないか!?」

「飛行する撃龍船ですって!? 一体どこの誰が……」

「なにあれ、赤いクジラ!?」

 

 轟音。

 飛行する撃龍船────"我らの団"・イサナ船は速度を維持したままシェンガオレンへ突っ込み、その剛槍をシェンガオレンへ突き立てたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡る。

 

 あわや町への進撃かと思われたシェンガオレンだが、それどころではなくなっていた。

 

「うニャニャ~、私に出来るのはこれぐらいでありますのニャ~」

「リボン!?」

「リボンって言ったな、おまえが一番の大金星だ! そのままヤドの中で暴れてろ!」

 

 ヤドを必死に振り回すシェンガオレン。その目的はヤド内部に侵入したリボンを追い出したいがためであった。

 エルコンドルパサーと共に対シェンガオレン戦へ駆けつけたリボンであったがこれまで姿が見えなかった。理由は単純でヤドが閉じられる前に、アイルー特有の矮躯を活かしてヤドの中に潜んでいたからである。しかもそのまま暴れるのではなく、シェンガオレンが進行を再開したのを見計らってヤドを攻撃するという地頭の良さも発揮していた。

 

「あのクソ親父の言うこともたまには役立ちますニャね! 街や砦を守る防衛戦はどれだけモンスターを足止めできるかに成否がかかっておりますのニャ! これぐらいで足止め出来るなら安いもんですニャ~!」

 

 ヤドを振り回す過程で徐々に町から海岸へと後退するシェンガオレン。ヤドを開いて酸を放てばリボンを滅する事が出来るのだが、しかしそれをしてしまえば最後、無防備な弱点にエルコンドルパサーの一撃が刺さるのだ。学習しているシェンガオレンは、ひたすらヤドを振り回して運良くリボンが落ちてくれるのを願うしか無かった。

 

「まだ気を緩めるなよ。良い展開だが、こういう時に油断するとしくじるんだ」

「は、はい! えっと……」

「そういえば名乗ってなかったな。俺はレドゥアン、こんなんでもG級ハンターだ。今じゃどこぞの王女様のお付きにされてる不幸者だよ」

「G級……! こんなところでお会いできるなんて……」

「あんたのオトモ、良い仲間じゃねぇか。セイウンスカイといい、こういうルーキーがいてくれると先達として鼻が高いってもんだぜ」

「はい! みんな心強い私の仲間デス!」

 

 リボンはよく耐えている。

 振り回されるヤドの中ではまるでミキサーのように四方八方揺れ動いているのだが、自慢の頑強さはこんなところでも役に立つのだろう。逆に振り回す度にヤドの中が傷付く有り様であった。

 

「リボンのやつは最高だが、決め手には欠けるな。エルコンドルパサー、俺達でこのまま削るぞ。次の巨龍砲で仕留められるように……」

「それは良いんですけど……飛行船がこっちに飛んで来てませんか?」

「ん?」

 

 リボンの活躍に心踊らされる二人だったが、そこに更なる援軍が駆けつける。

 

「はっはっは! 天気は快晴、風はそこそこ、絶好の旅日和といったところだな!」

「団長殿、船首に立たないで下さい! このまま突っ込みますよ!」

 

 呆気に取られるエルコンドルパサーとレドゥアンをよそに、突如現れたイサナ船は風の如く空を駆け抜ける。

 まるでクジラが獲物に噛みつくかのように、イサナ船は真正面からシェンガオレンの頭へ撃龍槍をぶち当てたのだ。

 

「撃龍船!? どこから……」

「"我らの団"! "我らの団"デス! 団長さんが助けに来てくれました!」

 

 巨龍砲より以前から超大型モンスターに対して使われてきた守りの勇、その面目躍如である。

 やはり撃龍槍の威力は絶大で、堅牢さを誇るシェンガオレンの甲殻を完全に抉り取っていた。

 

「よう、エルコンドルパサー! 遅れてしまって済まないな。そっちはドンドルマのハンターだな? 俺達は"我らの団"。アヤ国の緊急事態に、加勢しに来た!」

「ヤエノムテキです。私も微力なら助太刀致します!」

 

 イサナ船から勢い良く飛び降りるのはヤエノムテキである。怨嗟響めくマガイマガドとの一戦を経てもなお、その機動力に劣りは無い。イサナ船からシェンガオレンに飛び移ったヤエノムテキは、穿龍棍の特徴であるリーチによる肉質変化を駆使して硬いはずのラオシャンロンの頭骨に亀裂を入れていた。

 

「何なのですニャ!? ヤドが割れてきておりますのニャ!」

「あ、アイルー!? なんて可愛……ごほん、そこのオトモアイルーさん、危ないのでヤドから出てきて下さい。このまま押しきります!」

 

 割れ始めた隙間からリボンが見えてくるようになったため慌ててリボンを優先するヤエノムテキ。もうヤドに攻撃するどころではないため、リボンも一旦地上へと退避した。

 撃龍槍が直撃したシェンガオレンはこの間何も出来ずに地面に這いつくばるしかなかった。

 

 装甲艦からの巨龍砲と続く砲撃による援護。

 レドゥアンの奮闘。

 エルコンドルパサーの参陣。

 リボン、乾坤一擲のヤドへの奇襲。

 "我らの団"・イサナ船からの撃龍槍。

 ヤエノムテキによる穿龍棍、金剛八重垣神流。

 これらを受けてシェンガオレンは満身創痍になりつつあった。

 

 だが、それでも。

 

「……!」

 

「皆さん離れて下さい! シェンガオレンはまだ動きマス!」

「全員気を引き締めろ! ここからが総仕上げだ!」

 

 ギリギリと、甲殻種特有の擦りきれるような声と共にシェンガオレンが立ち上がる。

 

「おっと、やっこさんこっちを狙ってくるか!」

 

 立ち上がったシェンガオレンが最初に狙ったのはイサナ船である。船という最も分かりやすい障害だ。

 何とかシェンガオレンから離れ逃げるイサナ船だが、飛行船であるからして、急な動きには対応しづらい。シェンガオレンは長い爪を存分に振り回し、まずはイサナ船を墜とそうと試みるが────。

 

『むん!』

『せやぁっ!』

 

「!?!?!?」

 

「あれは……シャガルマガラ!? 私達が追ってたモンスターです!」

「はぁ!?」

 

 突如現れた二体のシャガルマガラ。"我らの団"とヤエノムテキの手で保護されていた個体である。

 彼らはイサナ船を狙うシェンガオレンの長爪に突貫し、イサナ船に当たらないよう弾いていた。

 

「悪い、ありがとな! おまえらが味方で助かったよ!」

『これがそちらへの返礼の一つとなれば良いのだが』

『この程度ではまだ足りぬだろう。ここにいる皆を守護せねば』

 

「団長さーん! そのシャガルマガラ、大丈夫なんデスかー!?」

「大丈夫だ! こいつらはうちが面倒見てたやつでな! さっきもマガイマカドから子供達を守ってくれたのさ! 今は信じてくれて構わないぞ!」

「……どうなってんだ? 古龍がなんでこっちの味方しやがる?」

「多分セイちゃんの影響かもしれませんが……ともかく一旦シャガルマガラは放っておきましょう!」

「そうですニャ。ここまで来れば討伐まであともう一息ですニャ!」

「私が正面から引き付けます! 皆さんは側面から回って下さい!」

「全く元気なルーキー達だな。こっちはもういい歳だってのによ……!」

 

 レドゥアン、エルコンドルパサー、リボン、そしてヤエノムテキ。

 図らずも四人のハンターがこの場に集ったのだ。各々、初対面もありながら全員が全力で躍動する。

 連携などありはしない。即席で組み上げられたパーティだ。レドゥアンは変わらず脚を斬り刻み、異なる武器なれどエルコンドルパサーとヤエノムテキは共に宙を舞う。そしてリボンはここぞとばかりにシェンガオレンへよじ登りその複眼をポカポカ叩いて嫌がらせに終始していた。

 

(全く不思議な狩りだぜ。一人でやらなきゃいけねぇと思ってたが、いつの間にか四人フルメンバーじゃねぇか!)

 

 レドゥアンはチラリと他のメンバーを横目で見ながら称賛していた。

 G級にまで至ったレドゥアンであるが、若いとは言えずそろそろ初老に差し掛かる年齢である。体が資本であるハンターであれば、そろそろ引退を考え始める時期であった。

 全体的な母数は多いハンターだが大半は下位ハンターであり、そこから才能の芽が伸びる事は多くない。慢性的な人手不足が叫ばれるハンターであるが、より正しく言えば有事に対応出来る実力者が少ないというのが現状なのだ。レドゥアンもこの問題は認識しており、訓練所への出資など後進に向けた支援をハンター業の隙間を縫って行っている。そんな彼からすれば、彼女達の躍進は眩いほどの輝きを放っていた。

 

(こんなどことも知れねぇ辺境で死なす命じゃねぇ。こいつらは必ず生きて帰す……!)

「エルコンドルパサー、ヤエノムテキ! もう少し下がった位置取りをしろ! 興奮に身を任せるなよ、いつでも逃げられるようにしておくんだ!」

「はい!」

「了解デス!」

「斬れ味にも注意しろよ。砥石が必要なら必ず言え。おまえらが砥石を使う隙くらいは俺がいくらでもカバーしてやるからな!」

「老練なるご指導、誠に代え難いものがありますね……!」

 

 自ら戦いつつも彼女達に激を飛ばすレドゥアン。この場における最年長はレドゥアンだ。些か突っ込みがちな若いハンターへの教導役として、レドゥアンはその辣腕を振るいつつあった。

 シェンガオレンもいよいよ命の危機とあって進行ではなくハンター達の排除へ完全にシフトしている。しかしレドゥアンによる檄のおかげで徐々にお互いを意識し出したパーティの前には心許なく。

 

 気付けば装甲艦から、巨龍砲装填を告げる赤い信号弾が上がっていた。

 

「……! 総員、退避だ! 巨龍砲に巻き込まれるなよ!」

 

 二度目の巨龍砲。

 

 全体を見計らっていたレドゥアンが退避を告げる。

 

 装甲艦から再び描かれた弧は寸分違わずシェンガオレンに滅龍の息吹を浴びせたのだった。

 

 

 

 

 

「凄まじい威力……!」

「初めて見ましたけど、物凄く派手デスね……」

 

 シェンガオレンは前のめりに倒れていた。

 ヤエノムテキのおかげで脆くなっていたラオシャンロンの頭骨は上顎より上の部分が完全に吹き飛び、身を守るヤドとしての機能を喪失している。

 二度の巨龍砲と撃龍槍、そしてハンター達の奮闘もあればこその結果だった。

 

「ふ~、一時はどうなるかと思いましたよ~。リボンのおかげデスね~」

「私はなんてこともありませんのニャ。皆さんとの奮闘の賜物ですニャ」

「エルコンドルパサーさん、でしたでしょうか? 面と向かって対面するのはこれが初めてかもしれませんね。改めまして、ヤエノムテキです」

「ヤエノムテキ先輩、初めまして。こんなところでトレセンの仲間と出会えるなんて、ハッピーデス! 終わったら一緒に────」

 

「おまえら、気を抜くにはまだ早いぞ」

 

 レドゥアンからぴしゃりと投げつけられる警戒の声。

 

 軋む音と共に、シェンガオレンが立ち上がろうとしていた。

 

「な……!? まだ動くというのか!?」

「もう虫の息だ。一気に畳み掛けるぞ!」

 

 レドゥアンの言う通りだった。ハンター達の攻撃により甲殻のあちこちは傷付き、大木のような脚も罅が入って心許なく揺れている。開戦前の壮健な様子はどこにもない。

 シェンガオレンは海中に引き返そうとしているが、討伐まで後一息といったところだろう。ここで見逃す訳が無かった。

 

「ヤドが吹き飛んでるんだ。お嬢ちゃん達二人ならあそこを攻撃して終わりだろ。最後はおまえらが決めちまいな」

「承知しました。ではシェンガオレンに引導を……」

「待って下さい、その必要は無いかもしれません」

「ん? そりゃどういうつもりだ。撃退したところであいつはまた戻ってくるかもしれねぇんだぞ?」

「そうじゃないデス。あのシェンガオレンは、もう……」

 

 ここでエルコンドルパサーだけが気付いたのは才覚があるからであろうか。

 シェンガオレンが痛む体を引きずって、やっと海岸と海の境にまで歩を進める。

 そこから海中に潜ればいいものをなぜか中々動かない。

 

「限界なんデスよね。もう……」

 

 そのままゆっくり、シェンガオレンは脚を伸ばして座り込むように体を沈める。動かないのではない。もう()()()()()()()()()()()()()

 最期に故郷である海を眺めたかっただけなのだろう。砦の如き巨体は二度と鳴動せず。

 

 激戦の果ては穏やかに。

 アヤ国事変・対砦蟹本島防衛戦は、静かな結末を迎える事となったのであった。

 

 

 

 

 




最近一人称視点に挑戦しようかとは思っているのですが、個人的に苦手な分野なんですよね

一発ネタの「YAMA育ちのタクトちゃん」が連載できそう。「セイウンスカイとバルファルク」が完結するまで控えるべき?

  • セイウンスカイとバルファルクに集中
  • 二作同時連載してほしい
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