更新遅れまして大変申し訳ありません。暑さと忙しさに襲われるとマジで書く時間消えますね。自分の中で完結までの流れはある話なのでちゃんと連載していく所存です。重ね重ね大変失礼しました
それはそれとして砲モロコシ復活ってマ?(今更)
今は昔、シュレイドより
一体の古龍が傷付き生死の境を彷徨っていた。
『……なんなのだ、あの戦火は』
古龍────ナルハタタヒメは自らが巻き込まれた争いに行き場の無い憤りを隠せなかった。
『なぜ、我が夫は死ななければならなかったのだ?』
『なぜ、私は子を孕み、育むことすら許されないのだ?』
答えは無い。
かつて現大陸にて、何の変哲も無い自分達の生態を営んでいただけのナルハタタヒメに分かるはずが無いのだ。
無論、ナルハタタヒメ、イブシマキヒコ両名もその活動により生態系へ甚大な影響を与える古龍ではあるが、それは古龍としてごく当たり前の行いであり人間に対する悪意など持っていなかった。
『東へ。……もっと東へ。奴等の戦火が及ばぬその果てへ』
尋常ではない火傷を全身に負ったナルハタタヒメにとって、移動することすらやっとだった。かろうじて浮くだけの力はあるが、その高度は低く尻尾は地面を引き摺ってしまっている。
『《黒龍》とはなんだ? なぜあれは、
人間と古龍が争っていたとして、古龍側が徒党を組む訳ではない。
生態も含め独立意識が強い古龍にとって、他の古龍というのはまた違う敵でしかないのだ。ナルハタタヒメとイブシマキヒコのような対となる雌雄であれば話は別だが、基本的に古龍同士というのは相容れない。
古龍同士を繋ぐ
『……ほとほと尽きぬ欲望だな。あれは互いに殺しきるまで止まらんだろう』
ちらりと西を見るナルハタタヒメ。
命からがら逃げて来たナルハタタヒメにとって、人間と《黒龍》の争いほど恐ろしいものはなかった。双方共に
ナルハタタヒメの視線の先に広がる西の風景というのは、煌々と燃え盛る様子が地を埋め尽くす勢いで広がり続ける惨状でしかなかった。
『ああそうだ。海へ、海を越えれば火が追ってくることもあるまい』
火から逃げる。
体を這いずる暑苦しさを少しでも癒そうと川に身を沈め、流れに任せて下っていく。
『ただもう苦痛を味わうことのない安住の地へ……私が欲しいのは、安らぎだけだ』
求めていたのはそれだけだった。
なのに。
────わぁっ!? 大変、大怪我してるじゃない! 大丈夫、あたしが必ず助けるからね!
流れ着いたその先で、奇特な人間と
『尽きぬ戦火に一体どう復讐すれば良いというのか。貴様が私を排したとして、ここは一体どうなる?』
激戦は再開されていた。
シェンガオレンの砲撃が止んだ時点でセイウンスカイもナルハタタヒメもお互いの攻撃をぶつけ合う。
雷と龍気、それぞれが弾け衝撃で空を晴らした。
「『貴方がいなくなったら? それなら単純、ここに私達ハンターが入るだけさ。君達に襲われても、大丈夫なようにね』」
『我ら龍を相手にするならばそれで良いだろう。だが、あれは?』
ナルハタタヒメがどうしても許したくない存在、それは黒煙をたなびかせる装甲艦である。
巨龍砲の威力もさることながら、空気を汚していく大量の黒煙は彼女が忌避する"火"の概念を殊更に思い起こさせていた。
『多くの人間は愚かだ。際限無く、己の利ばかり求めて争い合う。それが龍であっても、同じ人間であっても変わりないのだ』
「『……千年前、シュレイドで何があったか知らない?』」
『知らん。知りたくもない。分かっているのはただ奴等が争いを繰り返していたということだけだ。そして"火"が潰えたはずのこの時代に、再び戦火を呼ぶ気配をあれから感じる』
「『あれはこっちで説得する。あれ作った人、私の知り合いなんだ。また同じ過ちを、繰り返しちゃいけない』」
『同じ過ち、だと?』
雷が弾ける。
紫電が何本も地面を走り、セイウンスカイに襲いかかる。
龍属性で弾くセイウンスカイだが、雷に紛れて少なくない石礫も飛んできており細かい傷を全身に負った。
「『ぐぅっ!?』」
『
「『……はぁ、はぁ……それでも、話ができるならそれに越したことは無いんだ』」
龍属性を拳に溜めるセイウンスカイ。それを見て、あからさまに距離を取るナルハタタヒメ。
これまでの攻防でお互いの手の内は出し尽くされている。セイウンスカイが放つ龍拳はもう二度と、ナルハタタヒメに喰らってはならないと警戒させる代物だった。
────そういう警戒の裏をかくのがセイウンスカイの持ち味だ。
「『せやぁっ!』」
『む、姿を隠したつもりか? 愚かな……』
ナルハタタヒメではなく地面に向かって拳を振るうセイウンスカイ。衝撃で土煙が舞い、彼女の姿を覆い隠す。
しかし土煙の範囲は限定的だ。土煙の外からセイウンスカイがいるであろう場所を覆うように雷と石礫が展開される。
そのまま放てばセイウンスカイを圧殺できるだろう。そしてそれから逃れるために、セイウンスカイは走るか翔虫で飛び出してくるはずだ。そこを狙い撃ちにしてやればいい。
果たして、セイウンスカイの選択は────。
『翔虫か。虚を突いたつもりだろうがっ……!?』
土煙から飛び出して来る影。そこに事前に待機させていた石礫をぶつけるナルハタタヒメだったが、影の正体は幾重にも束ねられた矢であった。
『バカな……!? 気配は確かに……!』
「『古龍あるあるなんだよね。戦う時、龍属性の気配を一番頼りにしてるって。それってさ、裏を返せば
束ねられた矢の影に控えていたセイウンスカイ。
セイウンスカイの言うように、これは古龍側の認知を逆手に取った作戦であった。土煙で姿を隠し、そこから
予期しないセイウンスカイの挙動に対処が遅れたナルハタタヒメはセイウンスカイの接近を許してしまう。右手に莫大な龍属性が込められているのを見て再びあの拳かと身構えたナルハタタヒメであったが、ナルハタタヒメを襲ったのは衝撃ではなくかつての戦火を想起させる"熱"であった。
「『やっぱりさ、属性使いたがる相手にはこれなんだよ』」
ナルハタタヒメの頭を龍属性を込めたまま右手で掴むセイウンスカイ。
これはいつぞやに、バゼルギウスを無力化した大技────。
『しまっ……』
「『
『オオオッッッ!?』
再び焼かれていくナルハタタヒメの古傷。
ナルハタタヒメの絶叫と共に、赤い閃光がアヤ国の空を貫いたのだった。
「……まさか君からそのような話を聞かされるとはね」
「本気デス。会長さんは一度止まってセイちゃんの話を聞くべきデス」
東方派遣艦隊旗艦。
巨龍砲、そのすぐそば。
戦勝の気配はどこへやら、対峙するシンボリルドルフとエルコンドルパサーはまさに一触即発といった様相を呈していた。
無事シェンガオレンの討伐に成功した四人のハンター達。
ただ、エルコンドルパサーにとってはこれは目的ではなかった。たまたま目指す目標のすぐそばでシェンガオレンがアヤ国に侵攻しようとしていたから、それを防ごうとしただけだ。
エルコンドルパサーの目的は、明らかに戦争の意識が感じられる兵器をシンボリルドルフが作り出している事にあった。
エルコンドルパサーは戦勝の余韻に浸る事も無く、操虫棍と翔虫を駆使してシンボリルドルフがいる装甲艦へと飛び乗りすぐさまシンボリルドルフへと詰問していたのだ。
「どういう意図でこれを作ったか? それはもちろん、モンスター達に対抗するためだ」
「……過去にこの世界の人達がそれで滅んでいたとしてもデスか?」
「興味深い話だが、それが止まる理由になりはしないよ。君だって実感しただろう。この世界は我々がいた元の世界と比べて文明レベルが低い。国家の規模が分かりやすいかな。辛うじて主権国家と呼べる国家は西シュレイドくらいで、それ以外は規模があっても精々古代ギリシャレベルの
「会長さん。嘘じゃないのは分かりマスけどそれが理由の全てじゃないでしょう」
「……随分と察しが良い。私としてこれらは
「目的?」
「あの
いつに無く険しい顔をするシンボリルドルフ。
本来シンボリルドルフは人前でこんな顔を晒さない。常に泰然自若としており余裕のある姿を見せてこそ、《皇帝》と呼ばれるに値すると彼女は考えているのだ。
人払いを済ませているのもあるが、それだけ余裕が無い事の証左でもある。その余裕をシンボリルドルフから奪う存在────それが、あの日現れた黒龍ミラボレアスであった。
「
「……それは」
「ああ、分かるよ。私もね、この世界が歪な歴史を歩んでいることに気付いているんだ。しかしたった六年間では、詳細な考察ができるほど調べられなかった」
「あれはセイちゃんが何とかするって……」
「あの日、何とか出来なかっただろう」
「……っ」
「あの日、この世界へと旅に行くのはセイウンスカイ一人だけだった。しかし現実として私達はここにいる。何故か? それはあの黒い龍に襲われて、ここに逃げざるを得なかったからだ」
セイウンスカイ出立の日、シンボリルドルフはツルマルツヨシを抱えてセイウンスカイを見送ろうとしていた。しかし予想外に迫り来る火を前に、彼女は何も出来なかった。
「誰がどういうつもりで私達をこの世界に送ったから不明だが、おそらくセイウンスカイが懇意にしている古龍の仕業だろう。あの炎から逃れるにはあれしかなかったんだ」
「それは……仕方ないんじゃ……」
「そう、仕方ない。それは断言できる。では────
────
怒り。
ナルハタタヒメの攻撃だけではない。
シンボリルドルフから高鳴る
「君達は、旅立つセイウンスカイに代わって世界に覇を唱える黄金世代だ。あのアクシデントさえ無ければ、今頃君達は数々のレースで比類無き功績を打ち立てているはずだった」
「会長さん……もしかして、ツルちゃんのこと……」
「私一人だけが飛ばされた方が良かった。だが、ツルマルツヨシは私の手の内にいた。私が、連れてきてしまったんだ」
「そんなことアリマセン! あれは完全な事故で……!」
「なら君はどうなんだ。この世界に、君は納得しているのか」
冷たく、しかし確かに滾る憤怒。
何も変わっていなかった。
シンボリルドルフはあのトレセン学園生徒会長シンボリルドルフのままだったのだ。おおらかで、時には厳しく、でもやっぱり少しお茶目な生徒会長。
ウマ娘の幸福を真に願うシンボリルドルフにとって、レースが無い世界はあり得ざる事だったのだ。
感情を押し殺したシンボリルドルフの問いかけに、目を伏せるエルコンドルパサー。
しかしそれは、エルコンドルパサーが答え持っていないからではなかった。
「……会長さんのお怒りはごもっともだと思いマス。私だって最初、この世界に来た時はどうしてって混乱してましたから」
「それなら……」
「でも」
伏せられていた顔を上げる。
そこに不安げな少女の顔は無い。
今シンボリルドルフと対峙しているのは、矜持を掲げる一人のハンターだ。
「ドンドルマで不安になりながらハンターを学びました。キングにも出会えて私が一人じゃないっていうのも分かりました。何より、セイちゃんと出会えて共に過ごせていマス。気付けば、こうやって世界に溶け込んでいる」
「生態系の一部になる。それがこの世界に生きるハンターです。だから────生態系を乱す存在を私達は見逃さない」
「……」
許さない、ではなく、見逃さない。
食う、食われるが基本の生態系に許しなど存在しないのだ。
人間も世界の一部でしかない。元の世界でも地震や台風、火山などの天災は同じようにあるが、人類に出来るのはそれらに対処する事だけだ。
既存の環境を都合良く変える事など誰にも出来やしない。
シンボリルドルフが挑もうとした境地とはまさにそこなのだ。エルコンドルパサーはシンボリルドルフに「おまえがやろうとしていることは無理難題だ」と突きつけているのである。
エルコンドルパサーは何を言われようとも退かない。それを理解したシンボリルドルフは一息ついた。
「……私が些か急進的であったことは認めよう。だがこの世界はモンスターの力が強すぎる。対抗できる手段は幾らあっても良いはずだ」
「そのための私達デス。何も会長さんが全部間違ってる訳じゃアリマセン。私達と一緒に歩調を合わせて欲しいんデス」
「レースが無いこの世界に君は適応出来ているのか……いや、適応出来ていないのが私だけなのか」
ウマ娘にとってレースで競い合い、勝利する事は至上の幸福である。そう信じて疑わないシンボリルドルフにとって、レースが無くとも自己を確立しているエルコンドルパサーの言葉は認め難かった。
「ならこっちでも、そのレースというのを催せば良いんじゃないかしら」
第三者の声。
シンボリルドルフでもエルコンドルパサーでもないその声は、この艦で最も貴き血統から発せられたものである。
「……殿下」
「ごめんなさい、盗み聞きをする趣味は無いのだけど、どうしても無視出来なかったわ」
「お姫様!? えっと、この話は……」
「そう取り繕わないで。貴方達が難しい状況にあるというのは予想していたの。その過酷さが、想定したものよりずっと違っていたのは予想外だったけれどね」
茶目っ気たっぷりに笑う第一王女。
第三王女とは全く似つかない性格だというのに、やはりその顔はどことなく同じものを感じさせる。
絶対的なカリスマを以て人を従わせるシンボリルドルフとは違う在り方であった。
「私達もね、決して打算や利益を求めていない訳じゃない。けれど、やっぱり今の貴方は危ういのよシンボリルドルフ」
「殿下の御手を煩わせるようなことでは」
「なら他の人から聞くだけよ。ね、エルコンドルパサー?」
「え!? ええっとぉ……」
「それに、セイウンスカイだったかしら? 貴方達が全幅の信頼を置く彼女にも話を聞いてみたいわ。古龍と相対するだけでも危険なのに、単独で相手取れるなんて並みの実力じゃない。きっと彼女が貴方達の中核なのでしょう?」
「……それは、まぁそうなんデスけど……」
第一王女の提案であるレースの開催というのは一定の理があった。古来、ウマ娘のレースというのは元を辿ると王侯貴族によって行われる天覧試合である。ウマ娘という種族に理解が無くとも、王家の後ろ楯があれば異なる世界でも同様の開催はできるだろう。レース場となる開けた場所の選定、工事や興行としての運営など問題は山積みだが、シンボリルドルフにしてみればそちらの方が本来の得意分野である。将来的にはURAを背負って立つ若き未来のホープなのだ。
「シンボリルドルフ、貴方の懸念は当然かもしれない。けれど、ここは私達の世界よ。私達の問題は、私達が解決する。それが通すべき筋じゃないかしら」
「……そう言われてしまえば、返す言葉を私は持ちません」
厳しい顔を崩して一息吐くシンボリルドルフ。
彼女自信、焦っていた自覚はある。
トレセンにいた頃は隠しているつもりでもシンボリルドルフの様子を親しい友人達が気にかけてくれていたが、今はいない。
そして今、シンボリルドルフはそうしたらしくもない幼いひねくれっぷりを第一王女に指摘されてしまっている。
「シンボリルドルフ───長いからルドルフでいいわね。貴方、思慮深い癖して向こう見ずなところもあるでしょう。そういうところ、まるで獅子みたい」
「む、それは聞き捨てなりません。それを言ってしまえばお一人でアヤ国の船へ乗り込む第一王女殿下も向こう見ずでは済まされないのでは?」
「私はいいのよ。だって偉いのだし」
「偉いのならなおさらでは? 供も付けずに外交に臨むなど……」
「覚悟が伝わるでしょう?」
「それなら他にやり方が……」
(なにやってるんデスかこの人たち)
エルコンドルパサーがいる前でくどくどと不毛な言い争いに終始する第一王女とシンボリルドルフ。
先ほどまでの張り詰めた雰囲気はどこへやら、そこには同年代の少女らしい姦しさに満ちている。
(なぁんだ。焦ってただけなんデスね。第一王女様がいれば安心デス)
暖かい目で二人を見るエルコンドルパサーの表情は穏やかだ。
これならセイウンスカイに話を繋いでも問題無いだろう────。
『オオオオオオッッッ!?!?!?』
「!!!」
響き渡るナルハタタヒメの絶叫。
相好を崩していたエルコンドルパサーだが、それだけにナルハタタヒメの絶叫は耳に刺さった。見れば二人も険しい顔を山頂に向けている。
「まだ、戦いの最中にいたのを忘れていたわね」
「殿下、巨龍砲の砲弾は3発しか持ってきていません。既に砦蟹に対し2発使用しています。あと1発、放てば戦況がどうであれ一時撤退するつもりです」
「それは仕方ないけど……妹は……いや、考えるだけ無駄ね。どうせなんだかんだ生き延びてる子だし」
「そこは心配するところでは?」
「今まで散々心配してその全てが徒労に終わった子よ?」
第三王女については全く心配いらないらしい。キングヘイローとツルマルツヨシもいるのだから、行方不明にもならないだろう。第一王女の心配事というのは第三王女の無事というより、アヤ国に対して何かやらかしていないかという事ぐらいだった。
戦いは佳境を迎えている。
山頂から放たれる光は稲光より、赤黒い閃光が高らかに輝いていた。
ARK、モンハン、崩スタ、アークナイツ……やりたいゲームが増えてくよ……
一発ネタの「YAMA育ちのタクトちゃん」が連載できそう。「セイウンスカイとバルファルク」が完結するまで控えるべき?
-
セイウンスカイとバルファルクに集中
-
二作同時連載してほしい