セイウンスカイとバルファルク   作:エドレア

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皆様、日頃よりご愛読頂きまして誠にありがとうございます。
別に書いてるウマ娘二次創作にドハマリしておりました……ARKもそうだしウマ娘も温泉たのちぃ(語彙力)

シングレオグリ引いたはいいけど三回連続でクラシック前にお出かけが発生しないのは何なんですかね()


ポッケ村

 

 

 

 

 ポッケ村、その邸宅にて。

 

「俺はこれ! 大剣にする!」

「危ないからここで振り回すんじゃねぇぞ。やるんなら訓練所でな」

 

 まるで誕生日プレゼントを貰った子供のように、目を輝かせて大剣を掲げるジャングルポケット。

 助けて貰ったガジルの家で、ウマ娘一行は改めて、この異世界に降り立った事実を噛みしめていた。

 

 

 

 

 

 ポッケ村。

 フラヒヤ山脈の懐に抱かれたこの村は、寒さ厳しい辺境にありながらも大自然の恩恵を十全に受けている。

 かつては良質な鉱脈がありマカライト鉱石の採掘で財を成していた。現在では鉱脈が途絶えており、最盛期は過ぎているものの辺境という特性からモンスターの脅威に晒されがちであるため、腕利きのハンターが富と名誉を欲してこの地にやってくる。ハンターが雪山へ挑む拠点として、ポッケ村は新たな地位を築き上げている最中であった。

 

 さて、そんな村もつい十数年前は寂れていた。鉱脈は絶えて久しく、僅かな湯治客を相手にする以外は日々の生活に勤しむばかり。そこに加えて強力なモンスター────ティガレックスの出現が相次いでおりこのままでは村が緩やかに滅び去るのも時間の問題、という有り様であった。

 

 しかし、英雄は到来する。

 

 初めはただの少年だった。先代の村付きハンターの元で、少年は成長し、ドスギアノスを、ドドブランゴを、フルフルを、そしてティガレックスを狩っていく。

 やがて村も飛び越え────飛竜の王を、砦に迫る巨大龍も、黒炎に座す覇者も、極天の白き神すらも征してのけた。

 

 現代に生きる伝説の一角。

 ガジル・スタンダードは今日(こんにち)において、その名を大陸中に轟かせている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやはや、実に幸先が良い」

 

 アグネスタキオンは独りごちる。

 助けられて幾数日、見慣れぬ一団ということでウマ娘一行はガジルの家に引き取られていた。

 村一番、どころか大陸全体でも5本の指に入るガジルの家は広い。元々は先代の家だったそうだが、代替わりして受け取った家に改築を重ねたらしい。オトモアイルーや炊事場など、色々な理由はあるが一番は所帯を持ったのが理由だった。

 

 ガジルが村に来て17年である。それだけあれば少年が青年に、そして結婚し子を成すのも十分な年月と言えた。

 

「ポッケ君。ハンターを志すのは良いが、ハンターはいたずらに武器を振り回してなれるものではないよ。覚えておかなくてはいけない知識……座学も重要だからねぇ」

「げっ……こっちでも勉強しなきゃいけねぇのかよ」

「はは、勉強は苦手か小娘。焦ることはねぇさ。ゆっくり覚えていきな」

 

 ガジルの家の大広間で意気込むジャングルポケットに、アグネスタキオンが珍しく現実的な意見で水を差す。ガジルとしては若いハンターが増えることに賛成を唱えることはあっても反対する理由は無いので苦笑混じりに励ましてやっていた。いつでもどこでも、ハンターは人手不足である。最強の一人として名高いガジルであれ、身は一つなのだ。

 

「ジャングルポケットって言ったか。そっちはともかく……あんたは何者だ? 編纂者みたいな態度だよなぁ」

「私はアグネスタキオン……まぁ、似たような者だと思ってくれていいよ。モンスターは、どれも研究しがいのある対象だからねぇ」

「そうか。だが編纂者兼ハンターってのは聞いたことがねぇな。どっちも本当にやるつもりなのか?」

「私の知識はただ集積していくだけのものではないよ。それらは実践で振るわれてこそ価値がある。机上だけの知識に甘んじるつもりはないんだよ」

 

 赤衣の男────王立書士隊隊長であるジョン・アーサーから学んでいるアグネスタキオンは、この世界全体で見ても上澄みと呼べるだけの知識を有している。

 アグネスタキオンとしてもあの謎の黒龍を暴きたくて仕方がないのだ。何故、あれは虚空から現れたのか。何故、あれはあの場にいた皆を襲おうとしたのか────。

 

(全く、らしくない)

 

 一度とはいえ死の恐怖に晒されたことを思い出したアグネスタキオンは僅かに身を震わせた。気丈に振る舞っているが、ジャングルポケットも同じような光景を見ている。彼女だけでなく、マンハッタンカフェやダンツフレーム、シュガーライツも。

 一瞬の邂逅とはいえ、あれだけのエネルギーを炎という形で一度に出力出来る生物など尋常ではない。アグネスタキオンは、科学者という側面から黒龍を解明することに尽力する所存であった。

 

「そういえば、あいつらはどうしたんだ?」

「カフェ達のことかい? カフェは博士が工房に行きたがっていたからそちらへ、ダンツ君は奥方と息子君と共に買い出しだよ。一気に五人も増えたからねぇ。勿論、タダ飯食らいでいるつもりはないだろう?」

「あったり前だ! さっさとデカいモンスターを狩って、一旗揚げてやるさ!」

「おうおう。若いと夢がデカくて良いねぇ。それぐらい活きがよくなきゃ、教えがいもねぇが……他の嬢ちゃん達にも、本当にハンターになるか聞いといてくれよな」

 

 

 

 

 

「へぇ……これがこの世界の工房か……」

 

 しげしげと工房を見るシュガーライツ。その車椅子を押すのはマンハッタンカフェである。

 技術者として異世界の技術に興味を持ったシュガーライツはガジルの伝で、無理を言って工房を覗かせてもらっていたのだ。

 

「みょうちきりんな椅子だなぁ。車椅子だっけか? こんなので走れるとこ無いだろ」

「前いたところはどこもかしこも整地されていてね。これで行くのに不便はしなかったんだ」

 

 当たり前だが、見知らぬ異邦人に門外不出の職人技をタダで見せられる訳が無い。シュガーライツは己の車椅子を武器に自らの技術も提供するという誓約の元、こうして工房の職人から話を聞くことが出来ているのだ。

 やはり技術者同士、畑は違えど互いに向ける熱量は同質のものがあるらしい。ポッケ村の職人とシュガーライツが話に花を咲かせている中、マンハッタンカフェはまるでネコのように何もない虚空をじっと見続けていた。

 

 ────ココハ、イナイ

 

 ────ケレド、シタカラハ、オソロシイ、ケハイヲ、カンジル

 

(警戒は怠らないに越したことはない、ということ)

 

 誰にも分からない程度に頷くマンハッタンカフェ。

 余人から見れば何もないように見えるその宙に、彼女の"オトモダチ"がいる。オカルト的な悪意には敏感な彼女達はここがまだ見ぬ土地ということもあって、そうした存在がいないか索敵していたのだ。

 幸いにも脅威となりうるものは一つを除いていない。その一つも、強大な気配を感じているだけで特段に敵意や悪意を向けてこないことからマンハッタンカフェは人知れず一息ついていた。

 

「電動? 電動っつうのはあれか? モンスターみたいに電気を使うってぇのか?」

「ああそうだ。こうしたモーターの多くは電力をエネルギー源としていて……」

 

(話が長くなりそう……。博士には悪いけど、内容が専門的で私では話に加われそうにない……)

 

「あ、カフェちゃん。こっちにいたんだ」

「ダンツさん……あ、フラウさん達と一緒だったんですね」

「ごめんなさいね。この子が行くって聞かないから……」

 

 カウンター越しにマンハッタンカフェへ呼び掛けたのはダンツフレームである。

 ダンツフレームはガジルの妻であるフラウとその息子と共に今後増えるであろうエンゲル係数を試算していた。幸いにもガジルは大陸でも随一と言っても過言ではないほどの財産を築いている。本来ならこのような片田舎にいるべきではないと声をかけた者もいたほどだが、ガジルは家族のため、村のためとあらゆる誘いを固辞していた。

 

「こら、アグニ! いつになったらお姉さん達に挨拶するの!」

「あはは。大丈夫ですよ、フラウさん。この年頃の男の子は気にすること多いでしょうし、ね?」

「……っ!?」

 

 アグニ────スタンダード夫妻の一人息子である彼は前屈みに視線を合わせてきたダンツフレームに驚きフラウの影に隠れてしまう。

 今までいなかった年上のお姉さんである。誰が見ても、綺麗なお姉さんに照れてるだろうという微笑ましい光景だった。

 

(ダンツさんのあれは男の子に毒でしょう)

 

 驚異(胸囲)の格差────自身の胸に手を当ててため息をつくマンハッタンカフェ。

 なおマンハッタンカフェ自身も、アグニの緊張を解そうとその独特な声音で耳元に囁き驚かせていたりするのだが、本人に悪意は全く無い。

 ウマ娘五人、全く意図しない形で青少年の純朴に多大な影響を与えているが現状だった。

 

「アグニ君っておいくつ?」

「七歳よ。全く、この子ったら本当はしょうもないやんちゃ坊主なのに皆さんが来てから急にしおらしくなっちゃって……」

「すみません、なるべく早く出ていくようにしますから……」

「あら、それは別にいいのよ。見栄張って無駄に広い家だもの。お手伝いのアイルーはいるけど使いもしない部屋があるくらいなら皆さんに使ってほしいわ」

「何から何まで、ありがとうございます」

「それにね、早く出ていくって言っても宛は無いでしょう? 根なし草ならハンターじゃないと隣町に行くのすら難しいわよ」

 

 フラウの言葉に嘘は無い。

 現代日本と違い、道は竜車で地ならしされた程度で整備はされておらず、町や村を出ればモンスターが跋扈する世界だ。行商も来るには来るが、彼らは彼らなりにモンスターとの接触を回避する道を知っていたり閃光玉等で逃げおおせる術を持っていたりする。しかしそれとて万全ではない。この世界に来たばかりのウマ娘一味が、何の準備も無しに村を離れるのはただの自殺行為でしかないのだ。

 アグネスタキオンの方針により、セイウンスカイを探すというのが当面の指針となっている。ハンターを目指していた彼女を追うには、同じようにハンターになるのが手っ取り早い。シュガーライツを除く四人は、丁度一つのパーティを組むのに適した人数だということもあって、ガジルからはハンターになることを強く推されていた。

 

「ハンターかぁ……私に出来るかな。今まで戦ったことなんて無いし……」

「大丈夫ですよ、ダンツさん。ガジルさんが教えてくれるそうですし、大概はタキオンさんとポッケさんに任せればなんとかなりますから」

「……弱っちぃやつにできる訳ないだろ」

「……アグニさん、それポッケさんの前で言わないで下さいね? 小声のつもりでしょうが私達には聞こえてしまいますよ」

「……知らねーよ、バーカ!」

「こら、アグニ! 待ちなさい! ……ごめんなさい、あんなこと言いだすなんて……」

 

 その場から走り去るアグニ。フラウは自分の教育が悪かったのかと自責の念に駆られてしまう。

 無理もない、とマンハッタンカフェは心中で呟いた。ポッケ村に来て僅か数日、たったそれだけでもアグニが父親であるガジルの背に憧れているのは誰が見ても分かりやすい。アグニは未だ十歳にもならない子供である。流石にガジルとてそんな子供にハンターとしての教導を行う気にはなれない。

 

(息子なのに、それを差し置かれるのは面白くないんでしょうね)

 

 マンハッタンカフェは、分かりやすい少年のひねくれっぷりにため息をつくしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜。

 

「……」

 

 スタンダード邸の中でこっそり動く小さな影。

 

 アグニは木で出来た練習用の片手剣を手に、小さな反抗心を滾らせていた。

 

(何がウマ娘だ。そんなの見たことも聞いたことも無いのに。父ちゃんも母ちゃんもあんな得体の知れない奴らを信じるなんてどうかしてる)

 

 ここ数日、アグニの機嫌は悪かった。父が助けてきたはいいが、行く宛が無いからここに置いてくれという。

 何の装備も無しに狩り場を彷徨く阿呆など捨て置けば良いのだ。そんなことより息子である自分の方が大事なんじゃないかと。

 

(あの白衣のやつ、難しいこと言って父ちゃんと話してるけど俺には分かるぞ。あることないこと言って、()()ってのを企んでるんだ)

 

 最近の都市部では言葉巧みに話を進め、金品を騙し取る詐偽なる被害があるのだという。馴染みの行商人から苦労話を聞いていたアグニは、ウマ娘一味もきっとその類いだろうと勝手な当たりを付けていた。

 勿論ウマ娘達にそんな意識は微塵も無い。都会への憧れと、気をそぞろにさせる原因を排除したい幼稚な男らしさが合致した結果がこの行動力だった。

 

(白衣の女……あいつ、こんな夜遅くに起きてたりするんだよな。きっと悪企みしてるに違いない。そこをとっちめれば父ちゃんも母ちゃんも俺の言うことを聞くだろ)

 

 抜き足差し足忍び足。

 木造家屋は普通に歩くと軋む音が響きやすい。昼間に聴覚が鋭いとわざわざ教えてくれたのだ。無駄に雑音を起こす訳にはいかなかった。

 

 窓から覗く僅かな月明かりを頼りにウマ娘達に割り当てられた部屋に向かうアグニ。夜目が特別利く訳ではないが、慣れた家の中なら灯りを持たずとも十分である。

 そう考えて木剣以外は何も持ってきてはいなかったのだが────。

 

(誰か……いる?)

 

 アグニが進む廊下の先に立つ姿がある。暗がりで人相は全く分からないが、頭のウマミミからウマ娘の内の誰かだろうとアグニは直感で考えた。

 

(クソっ! 俺のことバレてたのか!?)

 

 力だけは強いようなので、奇襲で先手を潰すつもりのアグニであったがこうなっては奇襲どころではない。

 先手必勝とばかりに剣を振り上げ突貫する。しかし、それは黒い影を相手に空しく宙を切るだけだった。

 

(あれ!? 確かに当てたはず……!?)

 

ネェ……

 

「ひっ……」

 

 じっとりと、背後から絡み付く声。

 

コンナ、ヨルニ……

 

「こ、こっち来んな!」

 

 その声音は、まるでこの世の者ではないかのようなおどろおどろらしさを含んでいる。

 

ヒトリデ、デアルイチャ……

 

 闇雲に剣を振り回すアグニであったが、そのどれもが空振りに終わる。一体何だとパニックなって逃げ出したアグニであったが、その逃げた先で────。

 

アブナイヨ……? 

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

 壁からヌルっと、先回りするかのように現れた黒い影。

 あまりに非現実的な光景に、恐怖心が最高潮に達してしまったアグニはそのまま気絶してしまう。

 

 ア……コワガラセチャッタ……

 ……ヘヤニツレテアゲマショウ……

 

 後に佇むのは呆然とした姿。

 親切心から忠告しにきたマンハッタンカフェの"オトモダチ"はいそいそと気絶したアグニを担ぎ上げ彼の部屋へと連れていくのだった。

 

 

 

 

 




新時代組の中でショタへクリティカルするのはこの二人かなって()

一発ネタの「YAMA育ちのタクトちゃん」が連載できそう。「セイウンスカイとバルファルク」が完結するまで控えるべき?

  • セイウンスカイとバルファルクに集中
  • 二作同時連載してほしい
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