セイウンスカイとバルファルク   作:エドレア

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軽率にF産モンスターと戦わせていくスタイル


幻の冥雷竜

 

 

 

 

 

 

「『せりゃぁっ!』」

「ふんっ!」

 

 双剣が宙を舞い、大剣が豪快に振るわれる。

 

『私がいるのも忘れるな!』

 

 二人を援護する雷が、縦横無尽に走り回る。

 

 しかし────。

 

「『アカン……倒せる気がせえへん』」

「無尽蔵の体力なのか……?」

 

 それら全てを受けてなお、ドラギュロスは健在でいた。

 

 

 

 

 

 ポッケ村にて。

 

「おーいタキオン」

「何かな」

「ちょっと俺らで出かけねぇか?」

 

 無事に正式なハンターとして認められたウマ娘達。

 その内の二人────ジャングルポケットはアグネスタキオンと共に出かけようと声をかけていた。

 

「出かけるって、雪山にかい?」

「他にどこに行くんだよ。アテが無いじゃんか」

「カフェやダンツ君は?」

「カフェはほら、農場でコーヒー作れないか頑張ってるだろ。で、ダンツはおかみさんと一緒に家事手伝ってるじゃん」

「それで私達だけと。しかし、何をしに雪山に?」

「そりゃ素材集めだよ。鉱石とか竜骨とか、これから必要になるもんいっぱいあるだろ」

 

 ジャングルポケットが見せてきたのはクエストの依頼書だ。そこに記されているのは雪山での採取ツアーである。

 一部の狩場ではクエストを経ずともハンターが自由に出入りできる狩場があるが、基本的に狩場というのはギルドの許可があって初めて入ることが出来る管理地域であるのだ。そしてハンターの武具に使う生産素材や強化素材というのは、クエストの度に現地で集めるものである。しかし、目ぼしい依頼が無いと狩場に入ることすら出来ない訳で、それを解消するために素材ツアーと銘打ってギルドが採取用のクエストを発注してくれるのだ。

 

「大型モンスターがいない今なら集めやすいだろ。俺らだけでみんなの分を集めてこようぜ!」

「……そうだねぇ。村にいたところで特に変化があるわけでもなし、気分転換にもなりそうだ」

 

 どちらかと言えば防具の素材が欲しい────そう言うつもりのアグネスタキオンであったが、今のジャングルポケットに言うのは野暮だ。何せハンター成り立てで、見る物全てに驚きやわくわくを隠せないのだ。後で採取中に、それとなく防具の更新を匂わす程度でいいだろう。

 そう思ってアグネスタキオンはジャングルポケットと二人で雪山に出かけて行った。

 

 

 

 

 

「やっほー!!!」

 

「全く、頂上に行きたいかと言えばこれか」

 

 雪山、エリア8。

 横穴を通り抜けて行ける山頂にて、ジャングルポケットはその優れた大声を山々に震わせていた。

 

「タキオン、おまえもやってみろよ。これ気持ち良いぜ!」

「私は遠慮しておくよ。それよりも、このクシャルダオラの脱け殻の方が興味を惹くんだ」

 

 山頂より崖下ではクシャルダオラの脱け殻をアグネスタキオンが調べている。ひび割れた隙間からはフルフルベビーが顔を覗かせており、脱け殻となって尚も命の苗床となる古龍の影響力はアグネスタキオンに強い関心を抱かせた。

 

「そういうの調べて何が分かるんだ? 俺からしたらさっぱりだぜ」

「このフルフルベビーに限れば、フルフルの成長を比較的安易に観察できるね」

「簡単にってことか?」

「ああそうさ。強力な大型モンスターと言っても、結局は生物、成体に至るまでの過程がある。ただ普通はモンスターの子供なんて滅多に見れるものではないからね。こうして観察できるだけでも貴重なことなんだよ」

「ふーん……こんな気持ちの悪いチビでも大型モンスターになれるんだもんなぁ……」

「ちなみにだがフルフルベビーは珍味としても知られていてね。研究以外に食用にも……」

「うげっ。こんなの食うなんて頭イカれてるだろ」

 

 フルフルの幼体であるフルフルベビー。見た目も然ることながら、繁殖や成長過程も他の飛竜と比べて常軌を逸している。親のフルフルが麻痺させ弱らせた獲物に直接卵を産み付けるのだ。孵ったフルフルベビーはまず生きている獲物を体内から食い荒らし、そうしてある程度成長した後獲物から飛び出し地中に隠れ潜む。

 クシャルダオラの脱け殻から見つかるフルフルベビーというのは、比較的成長が進んだ成体になる前のフルフルということだ。

 

 山頂から降りてきたジャングルポケットはフルフルベビーを見て気色悪そうに顔をしかめていた。

 

「今の内に慣れておくことだよポッケ君。採取依頼の中にはこれを取ってくるものもあるはずだからねぇ」

「えぇ……こんなの採取するくらいなら普通にモンスターを狩る方がマシだぜ……」

「何匹か資料用に持って帰りたいが……あぁ分かった分かったポッケ君。そんなに嫌そうな顔をしなくても持ち帰れないさ。これは精算アイテムとしてギルドが強制的に買い取る物だからね」

「……そうじゃなかったら持ち帰ってたみたいな言い方するんじゃねぇよ」

 

 全く、油断も隙も無い────ジャングルポケットは異世界に来てもいつもの調子を崩さないアグネスタキオンに辟易した。ある意味ではウマ娘一行の中で一番この世界に詳しいのだから頼りになるはずだが、輪にかけて変人なのもアグネスタキオンなので悪癖にも一々付き合わざるを得ないのである。

 

「まぁいいや。とりあえず、やりたいことはやったし後は採取して……あん? なんだありゃ?」

「どうかしたかな」

「なんか……遠くの方で雷? みたいなのが……」

「……何?」

 

 ジャングルポケットが指差す方向へ素早く双眼鏡を向けるアグネスタキオン。そこには雪山の構外にて、雷にしてはやけに黒い光と、何かしらがそれと交えて動き回っている姿が確認できた。

 

「……緊急事態だポッケ君。今すぐ村に戻ってスタンダード氏に伝えるんだ。詳細不明のモンスターが雪山に接近しつつある、と」

「マジか。それ俺らが戦ったらヤベェやつ?」

「十中八九今の私達じゃ太刀打ちできないモンスターだよ。おそらくは古龍か、そうでなくても古龍級か。私はここに残って観察を続けるよ。スタンダード氏が来るまで偵察に努めるつもりだ」

「分かった。無茶するんじゃねぇぞ!」

 

 ウマ娘の脚力ならそう時間はかかるまい。

 身軽に崖から飛び降りていくジャングルポケットを見送りアグネスタキオンは双眼鏡を構え直す。緊急事態ではあるが、安全圏からモンスターを観察できる良い機会だ。戦っているであろう何者かに対して、罪悪感が無い訳ではないアグネスタキオンだがまだハンター始めたての自分達で対抗出来るはずがないと冷静に考える。

 

「本来なら狩場以外での狩猟はご法度なんだが、何事にも例外はあるものだからねぇ。悪いがじっくり観察させて────」

 

 改めて双眼鏡に映した視界には謎のモンスターの他に二人と1頭のモンスターの姿。

 

「────は?」

 

 招雷剣【麒麟王】────キリンの大剣を構え、キリンSシリーズに身を包むオグリキャップと────

 

 ────王牙双剣【土雷】を振り回し、ジンオウSシリーズを纏うタマモクロスがキリンの上に股がり共闘していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『もうちょい気張りや! あともうちょっとで人里の近くや!』」

『それで助けを呼ぶのか? 私のことはどう説明する!?』

「『命には代えられん! 後の事は後に任せる!』」

「厄介な動きだな……!」

 

 防戦一方の激戦が続いている。

 冥雷竜ドラギュロスは、古龍ではないにも関わらず龍属性を会得した稀なモンスターだ。通常種とされるベルキュロスが雷を放つのと同様に、大規模な龍属性を精製することができる。

 そして龍属性は、古龍に対してある種の特攻性能を持つ。ハンターの武器としては龍封力と呼ばれるそれは、二人と共闘するキリンに対しても猛威を振るっていた。

 

『ただの竜だというのに、おのれ……!』

 

 止まったら死ぬ。そういった猛攻をドラギュロスは仕掛けている。常に体から放出されている龍属性によりキリンの雷は弾かれ辺り一面にキリンを上回る龍属性の落雷を放っているのだ。勝ち目があるとすれば、肉薄し弱点を直接攻撃することだがリオスにも劣らぬ飛行力は容易に近づけさせはしない。

 

「『あぁもう! あの長いの、なんなん!?』」

 

 ドラギュロスが翼を振るう。

 ドラギュロスの翼の後方には触手のように長く伸びた指があり、その先には鉤爪があった。龍属性の落雷と、この指のおかげでドラギュロスのリーチは非常に長い。

 加えてパワーも凄まじく、ある程度の岩盤であれば鉤爪を引っかけてむりやり引き剥がすことすら出来た。こうして浮き上がったハンターを落雷で狙い撃ちする戦法をドラギュロスは持っている。

 

 とにかく、ドラギュロスは龍属性による破壊的な攻撃力と鉤爪も含めた大規模な攻撃範囲、これが目立つモンスターであった。

 

「『このっ!』」

 

 ()()()か分からない肉薄。

 僅かな隙を掻い潜って、タマモクロスがドラギュロスの真下を潜り抜ける。

 すれ違い様に何度も攻撃してはいるのだが、ドラギュロスはまるで意に介していない。腹下には幾つもの傷があるが、出血を無視している有り様だ。

 

「本当に()()()なのか……!?」

「『んなわけないやろ! この世界、不思議はあっても理不尽はあらへん! どんなモンスターも、根っこはただの生き物や!』」

『此奴の能力を暴かねばならぬということか。なんと無茶な……』

 

()()()を吐きながら暴れ回るドラギュロスの姿は痛ましいばかりである。

 何とかしてこの状況を打開しようと各々が思索するが────。

 

「『ん……? なんやあれ?』」

 

 それより早く、雪山の方からチカチカと光が点滅していた。

 

「ぐっ……あそこに人がいるのか?」

「『みたいや! 多分ウチらに気付いとる! あそこまで走るで!』」

『どうなっても知らぬからな……!』

 

 ドラギュロスの攻撃を躱しつつ、急いで雪山へ走る二人と1頭。ここにきて、ようやく見えてきた光明である。

 雪山から照らされている光はおそらく発光信号だ。残念ながらモールス信号の知識が無い彼らでは信号の内容を読み取れなかったが、こちらに対して何かしらを知らせているのは明白である。

 

 だが、光が彼らだけに見えている訳ではない。

 

「な……!?」

 

 ようやく雪山に近づけたというその時、彼らを追っていたドラギュロスが頭上を飛び越えていく。雪山へ続く道と三人の間に立ち塞がったドラギュロスはその場で帯電し、何としてでも雪山に行かせないよう周囲を焼き払った。

 

「『アカン、これじゃ近づけへん!』」

『マズいぞ。他に迂回路は無いのか!?』

 

 ドラギュロスの背後には雪山へと昇る急斜面がある。ドラギュロスによる妨害が無ければ斜面の凹凸に引っ掻けてスリンガーフックで登って行けそうなのだが、それをドラギュロスが許してくれない。

 そして迂回路を探す隙も無い。今はまだ応戦出来ているが、()()()()()()()()()()()()()()彼らではジリ貧にしかならないだろう。

 

 万事休す────かと思われたが。

 

「……タマ、光がさっきより近づいて────」

 

 オグリキャップの言葉は続かなかった。

 何故なら爆音と共に雪崩が発生し、斜面の麓にいたドラギュロスを飲み込んでしまったからだった。

 

 

 

 

 

「エリア7の残骸にタルがあってよかったよ」

 

 雪山、エリア6。

 

 エリア6は洞窟から外に続く開けた平地であり、外側には大きくカーブした急斜面がある。

 この急斜面はタマモクロス達がいるエリア外に続いており、アグネスタキオンは発光信号を出しながら道中で調合素材を集め大タル爆弾を作成、それを斜面で爆破させ雪崩を発生させたのだった。

 

「おぉーい、聞こえているかーい!」

「『その声……! あんたまさかタキオンか!? タキオンもこっちに来てたんか!』」

「その通りだとも! 私以外にも来ているんだ。積もる話があるだろうから、早くこちらへと上がってきてもらいたいねぇ!」

「『それはそうやけど……!』」

 

 タマモクロスの様子がおかしい。

 ドラギュロスは雪崩で沈黙している。明らかな満身創痍の上に、雪崩に巻き込まれているのだ。よしんば生きていたとしても、もう虫の息だろう。彼女達を阻む障害は無いはず────。

 

「『あかんわ。これでもやっぱ無理か』」

「無理? それは一体どういう……」

「アグネスタキオン、悪いことは言わないから早く逃げろ。こいつは普通のモンスターじゃない……!」

 

 下からタマモクロスとオグリキャップが上がってくる。二人が使用しているスリンガーフックを見てアグネスタキオンはハンターとしての優れた技量を感じ取った。

 キリンも共に急斜面を駆け上がって来ている。おそらくはタマモクロスがイナガミと同じように組んでいる古龍だろう。

 

 無事合流出来たはずだというのに二人から聞く台詞は焦燥が募るばかりだ。一体全体どうしたと、アグネスタキオンは下を覗こうとして────。

 

「……!」

 

 大規模な落雷。

 莫大な龍属性の雷は雪の下から発せられている。

 ドラギュロスを押し潰したはずの雪が融解を越え、瞬く間に蒸発していった。

 

「これは……!」

「『こういうことなんや、タキオン。こいつ────』」

 

「オオオォォォッッッ!!!」

 

 弾かれるように飛んだ巨体は再び眼前へとタマモクロス達の前に降り立つ。

 

「『何度倒しても、復活するんや!!!』」

 

 まるで不死鳥────。

 明らかに死に体であるはずのドラギュロスは、幾度の死すら構うまいとばかりに咆哮したのだった。

 

 

 

 

 




とあるモンハン×ウマ娘の絵師さんがいましてね。その人のイラスト見て二人に着せる武器と防具は絶対これだって決めてました。

一発ネタの「YAMA育ちのタクトちゃん」が連載できそう。「セイウンスカイとバルファルク」が完結するまで控えるべき?

  • セイウンスカイとバルファルクに集中
  • 二作同時連載してほしい
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