拙作のタキオンはこういう立ち回りになります。
「何度でも復活……?」
信じられない光景を目の当たりにするアグネスタキオン。
しかし、アグネスタキオン当人は困惑しながらも冷静に暴れるドラギュロスの様子を観察していた。
「『タキオン、あんた多分ハンター始めたてやろ! あんたじゃかなわんから早よう逃げ!』」
「いや……」
タマモクロスの言うことも分かる。
彼らからすれば、おそらくアグネスタキオンは足手纏いなのだ。
「このっ……! いい加減、大人しくしろ!」
『往生際が悪すぎる! 昨今の竜とはかようなまでに強力なのか!?』
右翼を広げるように叩きつけるドラギュロス。直後に右翼から龍属性が放出されドラギュロスの右前方を焼き払った。間一髪跳んで躱したオグリキャップとキリンだが、その先にも龍属性の落雷が待ち代えており付け入る隙を与えない。
「なるほど、攻撃の一つ一つは大振りなのか。だが、その隙を潰すように落雷を放っている、と」
「『考察してる場合ちゃうねん!? 下手したら巻き込まれて死にかねないんやぞ!?』」
「それは百も承知しているさ。しかし……」
最後方に陣取るアグネスタキオンはタマモクロスが接近した僅かな時間に回復薬など一部のアイテムの譲渡に成功していた。アグネスタキオンの役目はここで終わりのはずだが、退くことなく観察を続けている。
「『あんなぁ、はっきり言うと邪魔なんや! アイテムくれたんは助かる! でも、生き死にがかかっとる場にいつもの研究持ち込む場合やないやろ!』」
「────復活のロジック、それを攻略できると言ったら?」
「『なに?』」
「当たり前の話をしよう。死んで甦る生き物なんて、そうそう有り得たりしないんだよ」
タマモクロスの怒号すら意に介していないアグネスタキオン。彼女にはドラギュロスの復活がどのようにして行われているか、ある種の推測があった。
「タマモクロス。無茶を言っているのは分かる。だが……もう一度、あれを討伐してくれないか?」
「『……5回を越えた先からもう数えてないんやぞ』」
「先ほど発光信号を出した時、ポッケ村に救援を呼びに行かせてある。ポッケ村には大陸でも有数のG級ハンターがいるから、それまで辛抱してほしい」
「『そのG級ハンターと一緒に討伐しろっちゅうことかいな』」
「可能であれば、G 級ハンターが来る前にお願いしたい」
「『ホンマに無茶を言う……!』」
既に物資が尽きていたタマモクロスにとって、僅かな携帯食料ですらも貴重品なのだ。一口齧ると鬼人化し、飛ぶような勢いでドラギュロスに突貫する。ちょうどオグリキャップとキリンが撹乱していたところであり、対応が遅れたドラギュロスはタマモクロスの猛攻をモロに喰らってしまっていた。
「『そらそらそらぁ! 引導を渡してやるさかい、さっさと成仏せえぇっ!!!』」
「グギャァァァッ!!!」
鬼人状態、鬼人強化状態を使いこなすタマモクロスの姿をドラギュロスは捉えられないでいる。時にはスリンガーフックを上手く使い、ドラギュロスの体を縦横無尽に切り刻むのだ。合わせて、オグリキャップとキリンもタマモクロスの邪魔にならないような位置取りで果敢に攻め続ける。
ドラギュロスはタマモクロスを捉えようと必死になるあまり、オグリキャップやキリンからの攻撃も浴びてしまっていた。
「優れたチームワークだ。少なくとも、私達よりはずっと長くこの世界にいたのだろうねぇ」
オグリキャップがどっしりと構え、タマモクロスが遊撃し、キリンがそれを援護する。熟達した連携は否応なしに彼らが過ごしてきた年月を感じさせた。
「『タキオン、あともうちょいや! そろそろまた倒れるはず!』」
「……!」
タマモクロスが言い終わるよりも早かった。一瞬、龍属性の落雷が止んだかと思えば収束し、地に倒れ伏していく。何もしなければ再び甦るであろうそれに、アグネスタキオンは全く臆さず近づいていった。
「『タキオン、危な……!』」
「分かっている、確かな確証がほしいんだ。そうすれば討伐の目処が付く!」
『この人間は何をやっておるのだ? 早々に逃げてしまえば良いものを……』
ドラギュロスが再度復活するまで10秒も無い。僅かな時間にアグネスタキオンが触れたのは胴体────心臓があるとされる、胸の辺りだ。
(この音は……!)
「『タキオン! もう復活するで!』」
「分かっているさ! 予想とは少し異なるが今ので十分な知見は得られた! すぐに戻っ────」
「ガァァァッッッ!!!」
アグネスタキオンの予測より、数瞬早かった。
退避を始めていたアグネスタキオンだったが、復活する際に炸裂する落雷の煽りを受けて吹き飛んでいく。
「『タキオン!?』
直撃ではないとはいえ龍属性の一撃である。
防寒着に簡素な鎧を付け足した程度のマフモフシリーズは完全に焼け爛れてしまっていた。
「ぐぅっ……!?」
「アグネスタキオン、無理はするな!」
「無理なんかじゃないさ……! おかげで、攻略の糸口は掴めた……!」
「『しっかりしいや! あんた、ここで倒れたら針千本飲ますで!』」
辛うじて肌が焼けるまでには至っていなかったが、衝撃は耐え難い鈍痛を生んでいる。急いで回復薬Gを飲み干したアグネスタキオンだったが、眼前にはドラギュロスが飛んできていた。
「オオオッ!!!」
「『あかん、タキオン!』」
翼を大きく振り上げるドラギュロス。長大な翼と龍属性で一挙に押し潰すつもりだ。各々が止めようと走るが間に合わない。
(マズいな……ネコタクが間に合ってくれると助かるんだが……!)
しかし。
"
「うォらっ!!!」
「ガギャア!?」
相殺。
振り上げられた翼が弾かれ、不恰好に吹き飛ばされるドラギュロス。それを成したのは、ドラギュロスより遥かに体格が劣るはずのただの人間。
「無茶すんなって言われなかったか?」
「時には無茶を押さなくてはならない研究もあるのだよ」
ガジル・スタンダード────ティガレックスの時と同じく助けに入った彼を相手に、アグネスタキオンはいつもの調子で返答するのだった。
「減らず口を叩ける程度には元気じゃねぇか」
「グゥゥゥ……」
自身を吹き飛ばしたガジルを相手にドラギュロスは低く唸っていた。
今でこそ狂ったように暴れているが、元来ドラギュロスの知能はモンスター全体でも上位に入る。オグリキャップと同じ武器を使いながら、それよりも軽やかに動いてみせるガジルを見てドラギュロスは警戒を高めていた。
「前とは違う装備じゃないか」
「古龍かもって聞いてきたからな。古龍じゃなかったが、装備に間違いは無ぇみてぇだ」
ガジルの装備は以前のレイアシリーズなどではない。
【金色・真】────古龍級モンスターの先駆けとして謳われるラージャンの剛角を惜し気も無く5本も使用した袴。
【角王剣アーティラート】────砂漠の暴君ディアブロス、その通常種と亜種の角をふんだんに使用し鍛え上げた名剣。
自身が持ち得る最高峰の装備をガジルは纏っていた。
「気を付けたまえ。どうやら特殊なモンスターのようでね、倒しても復活する。ただ復活のからくりは分かっているから、それを何とかする道具を作ってくるよ。私は撤退するからそれまで凌いでほしい」
「へぇ……そりゃ狩りがいあるってもんだ」
アグネスタキオンから信じ難い話を聞かされてもバカにすることはなく、むしろ面白いとばかりに笑みを深めるガジル。強大なモンスターと幾度となく渡りあってきたのだ。この程度がどうした、と言わんばかりの態度であった。
「『え、えーっと、あんたが助っ人のG級ハンターかいな?』」
「おう、そうだぜ。……あ、キリンもいるじゃねぇか。二頭クエストとは聞いてねぇぞ?」
「待ってくれ、そのキリンは……信じられないかもしれないがタマと意志疎通が出来るんだ。み、味方だから攻撃しないでほしい!」
『……こうなると言っただろうに』
「モンスターが味方ぁ? よく分かんねぇが……アグネスタキオン、こいつらの言ってることはどうだ?」
「事実だよ。荒唐無稽に聞こえるだろうが、そこのタマモクロス……そこの彼女は古龍に限って対話が出来るんだ。かなり込み入った事情があってね。出来れば内密にしてくれると助かる」
「はぁー、何から何まで面白いなおまえら! じっくり話を聞きてぇところだが────」
「とりあえず、こいつをぶっ倒してからだ!」
「ガァァァ!?」
不意を突くつもりで静かに龍属性を溜めていたドラギュロスだったが、それに気付かぬガジルではない。
一息に距離を詰めると地面から掬い上げるようにまず一閃。顔面を大きく斬られたドラギュロスはたたらを踏んで後退したが、ガジルは更に胴体へと追撃を仕掛ける。
これ以上喰らっては堪らないと龍属性を放電し反撃するドラギュロスだが────。
「
「ギャアアアッッッ!?」
大剣を盾に散らされる龍属性を無理やり突破するガジル。そのまま袈裟懸けに胴体を斬ると再びドラギュロスは倒れてしまった。
「……」(゜ロ゜)
「…………」( ゚Å゚;)
「『………………はぁ?』」( ゚д゚)?
『……もうそやつ一人で良いのではないかな』(^_^;)
「ほら、一回討伐したぞ! ここからまた復活すんの?」
「……えっとまぁ……そう、なんだ、が……」
倒れてすぐドラギュロスの体が明滅する。またもや復活となるがガジルは笑みを崩していない。龍雷がドラギュロスより発せられるが、涼しい顔でガジルは龍属性の余波を受け流していた。
「私と同じように龍属性を受けてその程度で済むのか。龍耐性が高いからなんだろうが……」
「つべこべ言ってないで村に戻りな。おまえがなんか作らないとこいつは死なないんだろ?」
このままガジルに任せていると平気で二、三十回は討伐しそうである。流石にそれはドラギュロスが哀れなのでアグネスタキオンは急いでポッケ村に戻るのだった。
「で、この状況はどういうことかな」
一時間後。
アグネスタキオンがシュガーライツと紆余曲折揉めつつ作成したアイテムを手に戻ってみれば。
「おう、思ったより早かったじゃねぇか」
ビクビクと恐怖に震えるドラギュロスの背に跨がるガジルが満面の笑みでアグネスタキオンを出迎えた。
「タマモクロスからあらかた話は聞いたぞ。異世界とか普通は信じねぇけど、目の前で古龍が大人しくしてるんだから信じない訳にはいかねぇよなぁ。他の古龍の話も聞いてみたいぜ」
「私が気になるのはそのモンスターの上に乗っている経緯なんだが……」
「『最初は普通に戦ってたんや。けどこいつ、段々逃げたがるようになってしもうて……』」
「逃がして放置すると他に被害が出かねないから、スリンガーでぶっとばしたりして足止めをしたんだ。それをガジルさんが討伐し続けたから……」
『最早生き地獄よなぁ。早ように介錯すべきだろうよ』
ドラギュロスはガジルに対して完全に怯えてしまっていた。逃げることも叶わず、然りとてガジルを倒せるはずも無く、打つ手が無いと悟ったドラギュロスは命乞いのような姿勢で踞ることしか出来なかったのだ。
「博士の車椅子から増幅回路を持ってきたんだが……」
「ぞうふくかいろ? なんだそりゃ」
「あー……私達の世界では電気……雷が生活で欠かせない動力になっていてね。これは少ない電気をより大きな電気に変換して使い勝手を良くするものなんだ」
「ほーん。そいつを使うとこいつが死ぬのか?」
「そのモンスターの復活のからくりは電気ショックによる心臓マッサージだ。早い話、電気の力で止まった心臓を無理やり動かしているんだ。普通の生き物なら何回も成功しないだろうが、自前で莫大なエネルギーを生み出しているこのモンスターは電気ショックに耐性があるんだろう。増幅回路は、その電気ショックの威力を耐性を超えて引き上げるのに使うんだよ」
「んーそうか。けどなぁ……」
話の半分も理解していなさそうなガジルはドラギュロスを見下ろした。その視線で更に震えるドラギュロス。ガジルの気分次第で己の処遇が決まるのだと、ドラギュロスは理屈ではなく本能で理解していた。
「捕獲するのもありだろうと思ってよ」
「……その心は?」
「飼ってみてぇつったらビビる?」
「……君、私よりもモンスターの危険性が分かっているはずじゃなかったのか」
「いやぁ、こいつらの話聞いてさ。俺もモンスターと仲良く出来ねぇかなと思ったんだよ。けど俺はモンスターの言葉なんて分かんねぇからよ、そうすると後は調教とかになるだろ。どっかの地方じゃ捕獲したモンスターをペットにして戦わせるって聞くし有り得ねぇ話じゃねぇだろうと思ってなぁ」
G級ハンターともなると胆力もG級になるのだろうか。
アグネスタキオンは思わず天を仰いだ。
言っていることはぶっとんでいるのだが、未だモンスターの名も知らず、龍属性を放つということ以外ろくなことを知らないのだ。まずはギルドに問い合わせる必要があるし、結果としてもし未知のモンスターだとしたら捕獲する意味合いも出てきてしまう。
本来なら管理能力があるかどうか問われるのだが、圧倒的な実力が証明している。大陸に名を轟かす英雄だけあって実績も折り紙付きだ。ギルドの重鎮も無下に断り辛いだろう。
「……せめて奥様の許可を得てからにするべきだと思うよ」
「おお、そりゃそうだな。よしっ、行くぞギャー助!」
「ギャァ……」
「『……ハンターとしての腕は良くても、名付けのセンスはダメみたいやなぁ』」
「そうなのか? 分かりやすくて良い名前だと思ったんだが」
「『あんたも同程度かい』」
『名付けは人間の風習よな。"イカズチ"などと勝手に呼びおってからに。貴様も貴様で安直ではないか』
「『"イカズチ"は別にええんや。分かりやすさとかっこよさがちゃんとあるんよ』」
『人間からどう見られるかなどどうでもよいわ』
締まりの無い収拾である。
緊迫感があった最初の頃とは打って変わって牧歌的な雰囲気となっている。
(まぁこれもこれでいいか)
ポッケ村への帰途に着く一団。こういった纏まりの無さにアグネスタキオンはかつてチーム:ドラコを想い起こしていた。
(本当はどうしても討伐したかったんだがね。出来れば解剖したかった)
アグネスタキオンはちらりと後ろを振り返る。視線の先は覇気もなく引っ張られるドラギュロスの情けない姿────正確には、
(どうしてこの世界に
何度でも繰り返す復活のからくり────その真相を、誰にも話すことなく胸にしまい込んだアグネスタキオンはいつもの笑みを浮かべて共にポッケ村へと帰るのであった。
なお。
「ダメに決まってるでしょ! 何考えてんのアンタは!」
「はぁい……」
龍雷すら退ける英雄でも、妻からの雷には勝てるはずがないのである。
2ndG大剣最強テンプレ装備、抜刀アーティが懐かしすぎますね。ラオートと並んでめちゃくちゃお世話になりました
今回のドラギュロスですがゲーム的表現をすると、倒しても条件を満たさなければHP10%で復活するギミックボス的な仕様。HP10%がキモで、相応の火力があればいくら復活されても瞬殺できる訳です。
一発ネタの「YAMA育ちのタクトちゃん」が連載できそう。「セイウンスカイとバルファルク」が完結するまで控えるべき?
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セイウンスカイとバルファルクに集中
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二作同時連載してほしい