嗚呼、今日も幻想を夢見て 作:G.G.メルセデス
キャラがどんどんブレる可能性があります。
なので、深く考えずに見ていただけると幸いです。
ガヤガヤと人が織りなす音が伝わってくる。
子供が走り、楽しむ音。商売のため、客を呼び込む声。様々な音によってこの人里の賑やかさは形成されているのだろう。
普段であれば煩いと感じてしまうのかもしれないが、何故かこの賑やかさが心地良くも感じる。人里の雰囲気に当てられてしまったのだろうか。
現在は妖力を消し、雰囲気を限りなく人間に寄せているため、特段変な目で見られることはない。だが、人里には偶に妖怪や妖精が屯しており、共存しているかのように思わせる。気性の穏やかな者が多いようで騒ぎにはなっていない。……何故か風見の姿が見えたのは無かったことにしよう。
人里の守護者である半獣とは面識があるため、私がここで騒ぎを起こすような性質ではないと知っているだろう。そのため、急に人里から頭突きで追い出されるなんて羽目にはならないはずだ。
目的地もなく適当に歩いているというのも側から見れば不自然であるため、近くにあった団子屋で休息をとることにする。
団子は宴会や持てなしなどでよく出されるため、頻繁に食べている。私の好物といっても過言ではないかもしれない。最近見かけるようになった洋菓子よりは和菓子のほうが舌に合うらしい。
穏やかな雰囲気を纏わせる店主に注文をする。
「店主、三色団子一つ」
「あいよ〜」
普通のやり取りだが、こういった関係は少し面白く感じる。商業としてのやり取りではなく、どこか近しさを感じさせるやり取り。
程なくして目の前に三色団子が出される。店の看板メニューらしく、店内を見渡すと同じものを食べている人間がちらほらといる。
一口かぷりと噛みついてみると、口の中に優しい甘さが溢れる。甘すぎるわけでもなく、苦すぎるわけでもない。これは人気になるわけだと納得してしまう。やはり甘味は正義なのだろうか。
もう一口、もう一口と脳が指令してくる。これだけでも人里に来た意味があるというものだ。
「美味しそうな顔して食べてくれるね!」
店主は人懐っこさそうな顔を浮かべて話しかけてくる。五十代ほどの年齢だと思われる店主は、顔にはシワがあり、肉体を見ると威圧感を感じてしまうかもしれないが、人当たりのいい人物である。
「あぁ、味わせて貰っているよ」
「それは嬉しいこった」
店内は賑わっており、人気店であることが伺えるが、この店主の人となりも影響しているのではないかと思える。観察対象までにはならないが、中々興味深い。
すると突然、声が店内に響く
「旦那〜、三色団子頂戴!」
溌剌とした元気のある声は、知らない者が聞けば元気を分けて貰えるほどた。だが、それを発している人物が誰かを知っていた場合はそうもいかない。
「「はぁ」」
店主と私の溜め息が同時にでてしまう。そして互いを労わるような目線を送る。あぁ、店主も被害者なのか。あのサボり魔に気に入られてしまうとは災難だな。
店主が嫌がる理由も推測が出来る。別にサボり魔が来ること自体はお得意さんのような存在なので問題がないのだろう。だが、その後が大変だ。彼女の上司がその場で説教を始めるため、客足に響くのだろう。
サボり魔—小野塚小町はもはや私にとっての厄神となり得る存在だ。出来れば今すぐにでもこの場を離れたいが、店主を見捨てるというのも気が引けてしまう。
「…………頑張ってくれ」
「…………有難うな」
あぁ哀れな店主にどうか救いがあらんことを。
そして、私にサボり魔が絡んでこないように、普段は一切しない神頼みをする。あぁ、神よ。昔のことは忘れて助けてくれませんか?
「おや? これはこれは……」
そんな神頼みも虚しく、サボり魔は話しかけてくる。もう金輪際神頼みなどするものか。
顔を向けてみると、嫌なほどニマニマとした笑顔であり、職業の死神が別の意味になってしまいそうなものである。
緑茶を一度口に含み、落ち着きを取り戻す。甘味をとったせいでやけに回ってしまう頭で打開策を考える。
「はぁ、邪魔だからどっかいってくれないか」
「酷いねぇ。前は私にあんなことをしたのに……」
泣き真似をし、語弊を生む言い方をするため、注目が集まってしまう。中々面倒なことをしてくれるものだ。死神ではなく小悪魔に転職したほうがいいのではないかとすら思える。
「それについては申し訳ないと思わなくはないが、いつまでも引き摺るものでもないだろう」
「いや、あんたのせいであたしの仕事が激増したんですが?」
一々反論をしてくるな。
このまま煽り続けても良かったが、周りからの視線が痛い。なんだろうか、私は別に悪いことは……今はしていないと思うのだが。
すると、会話に店主が割って入ってくる。
「あい、三色団子お待ち」
「おっ! ありがとさん」
「ほら、他のお客さん達もどんどん注文してくだせぇ」
その言葉を皮切りに注文が増えていく。比例するように私に対する視線も減っていった。驚きのまま店主を見ていくと、店主は私にウインクをして去っていく。なるほど、これが出来る男ってやつなのか。感謝しかない。
三色団子が来たことにご満悦なサボり魔を尻目に逃げてもいいが、あと一つ三色団子が残ってしまっている。これを残したまま去るというのは、私も納得しないし、恩人である店主にも申し訳ない。
団子を頬張り、緑茶で流す。これで大丈夫だ。このまま逃げるとしよう。
「なんであんたが人里にいるんだい?」
だが、サボり魔は逃がしてくれない。上司に影響を受けてか知らないが、説教臭くなっているこのサボり魔を相手にしたくない。
正直面倒だが、この質問には答えておいたほうがいいだろう。
妖怪である私がわざわざ人の姿となって人里にいるのは不思議なのだろう。いや、昔のことを思い出して、私に対して釘を刺そうとしているのかもしれない。そう思えるほど、死神が纏う雰囲気は少し鋭いものだった。
「私が人間に興味があるのは重々承知しているだろう?」
「あぁ、嫌なほどにね」
「私はただ、人間の普段の暮らしが見たかっただけだ。他意はない」
死神は睨むように一瞬みてきたが、警戒を解いたようでいつものサボり魔らしい雰囲気になる。
わたしも人里に来るのは久しぶりになるので少しでも堪能をしたい。ここでお暇させていただくことにしよう。
すると、威圧するように死神が口を開く。
「ここで何かしたら、あんたでもただじゃ済まないかも知れないよ?」
幻想郷では人里を襲うことは禁止されている。そもそも、人間が居なくなったら妖怪も消滅してしまうため、そんな馬鹿なことをする者はいない。
なにより、スキマ妖怪と博麗の巫女がそれよりも先に粛清しに来るだろう。なので、ここは軽い冗談で流す。
「その時は二次被害で死神の仕事が増えるだけだ」
軽い冗談のつもりだったが、死神は重く受け止めたらしく、こちらを注視してくる。昔みたく出来心でヤンチャをするつもりはないだが……
弁解をしても別に構わないが、このサボり魔を働かせるためにも、彼岸と一定の距離を保つためにもここらで引いておいた方がいいだろう。
「さようならサボり魔。あ、後後ろに注意しておいた方がいいぞ」
「何を言って……」
心からの忠告を最後に残しておく。背後から悍ましい雰囲気を感じたためか、サボり魔がゆっくりと振り返ると、そこには般若の顔をした閻魔がいた。
私もついでで説教されるのは勘弁願いたいので、人混みに紛れて逃げる。逃げている際にサボり魔の叫び声と、店主の嘆きが聞こえた気がするが放っておこう。
◇
時は昼時。人間の往来も増え、飲食店が繁盛していることが伺える。正直これといって食べたい物もないが、どうせ食べるのなら美味い物が食べたいと思ってしまう。
所々からいい匂いが漂ってくるため、余計に腹が減ってしまう。こういう時は妖怪の感覚の鋭敏さが鬱陶しく感じてしまう。
そこらにいる人間にお勧めの店を聞いても構わないが、自分で美味しい店を探すというのも一つの醍醐味であるため、出来るだけしたくはない。
季節の面から美味い物を考えてみよう。今は夏、暑い季節だ。
ならば特に食べたい物は冷たい方がいい。考えられるのは、冷やし中華、そうめん、ざる蕎麦などだろうか。
どうしても麺類に比重が偏ってしまうが、季節柄が現れているようで少し面白い。この中から厳選していくと、冷やし中華は野菜も多く、何処か懐かしさを感じさせるつゆが中々に美味い。そうめんは夏に合う冷たさをしており、水々しさを感じさせる。ざる蕎麦は啜る音が心地良く、アレンジもある。……中々に悩ましいものだ
どれにしようかと悩んでいると、一つの暖簾が目に入る。
『うどん』
雷に全身を打たれたかのような感覚に陥るとともに、自己嫌悪になってしまう。……どうして完全に忘れていた。
うどんは冷たくも熱くも出来る。今までは何処かでうどんは熱い物だと勝手に決めていたのかもしれない。だが、それを覆すものは確かに存在する。そう、”ざるうどん”だ
体が導かれるかのように店に向かっていく。だが、それに抵抗することはない。これはある種の贖罪のようなものだ。ざるうどんを忘れていた罪はそれほどまでに重い。
暖簾を潜り、店内に入っていく。中では打ち水などの影響によってか何処となく涼しく感じる。やはりうどんを選んだのは間違いではなかったらしい。
辺りを見渡すと、必死な顔をしてうどんを啜る人間達の姿。ずるるるという音は不快音にはならず、心地良さを感じさせる。
取り敢えず席について注文をするとしよう。
「注文はお決まりになりましたか?」
団子屋の店主とは違い、若い人間が注文を聞いてくる。容姿は店と合っており、涼やかなイメージを思い浮かばせる。
注文は店に入る前に決まっているため、時間はかけない。
「ざるうどんを一つ」
「はいっ! ざるうどん一丁!」
元気良く返事をしてくれるものだ。こうした若い青年は嫌いではない。私のような老人はこうした青年を見ると非常に嬉しくなってしまうのは何故だろうか。
すると、ガラガラと店の戸が開かれる音が聞こえてくる。緊張といった感情は読み取られず、この店の常連であることが伺える。
——こつんこつん
店を歩いている音と共に、この店どころではなく、人里にあってはいけない存在感を感じる。そう、まるで風見のような風格だ。嫌な予感がヒシヒシとしてくる。あれ、平穏に過ごしたかっただけなんだが……
隣から椅子を引く音が聞こえてくる。何故私の隣に座ってくるのだろうか……
「はいっ、お待ちどう様!」
意識を隣に割いていたせいか、ざるうどんを出されたことに気が付かなかった。ざるの上で白く存在感を放つうどんは、とても美味しそうに見える。そして、氷と合わせた際の水々しさは流石だ。
すると、隣の者が口を開く。
「きつねうどんを一つ」
「あいよっ!」
……この季節にきつねうどんを頼む人物などほぼ確定だと言っていい。面倒ごとに巻き込まれる可能性はぐっと下がってくれた。
だが、何故ここにいるのだろうか。いや、上司に買い出しに駆り出されたのだろう。なんというか、御愁傷様です。
すると、先にあちらから口を開いた。
「貴様、なぜここにいる……」
「ただの人里巡りだ」
「はぁ、これは胃薬が必要かもしれないな」
人聞きが悪いな。今の私は大人しく過ごしているだろうに。
それよりもそちらの上司の無茶苦茶さをどうにかして欲しいものだ。
「八雲の式というのも大変そうだな」
「お前が言ってくれるな」
八雲藍。あのスキマ妖怪に式にされてしまった哀れな九尾だ。
自分の立場には誇りを持っているらしいが、よくスキマ妖怪に振り回されている様子を見ている。本当になんというか……苦労人なのだろう。
だが、上司を持つというのも面白そうではある。主従関係も幻想郷にはそこそこあるため、何処かで働かせてもらってもいいかもしれない。
話す内容も特にないので、うどんをただひたすらに啜る。生姜とつゆとのコラボレーションは抜群であり、美味しいと素直に思った。
だが、何故かスキマ妖怪の式から視線を向けられる。
「……何故こっちを見てくる」
「いや、橙がざるうどんが好きだったと思ってな。きつねうどんもいいのに……」
橙というのは確かスキマ妖怪の式の式だった筈。化け猫であるため、中々愛らしい姿を見せてくれる。人間が面白いという意味で好きならば、猫は可愛いという意味で好きだ。マヨヒガにはたまに行っている。
スキマ妖怪の式にもきつねうどんが届いたようで、恍惚とした表情で食べ始める。流石に常連というだけあり、準備の手際がいい。
どうやら好きなものは最後に食べるようで、綺麗に油揚げだけを残している。その無駄な器用さには感服だ。だが、啜る際にちゅるちゅるいうのはどうにかして欲しい。どうせ啜るならずるるるだろう。
「ご馳走様でした」
食べ終わったことで席を立つ。先程からスキマ妖怪の式の近くから、スキマ妖怪の雰囲気を感じて気味が悪い。どうせスキマで覗いているのだろう。式というのはプライバシーすら守られないらしい。どうせ本人に訴えたところで『式だから大丈夫じゃない』と返されるだけだろうが。
人里でスキマ妖怪と話している様子を見られると、人間が近づかなくなる可能性が出てくるので、颯爽とうどん屋を去る。相手は腐っても賢者なので、目立つのは避けたい。
このストレスはマヨヒガで猫をもふることで解消させて貰おう。あの九尾の尻尾ももふってみたいが、そのまま尻尾で殴られそうなので、下手に頼むことは出来ない。難儀なものだ。
◇
カシャリッと機械的な音が聞こえる。
嬉々としてカメラを使う天狗、恐らく死んだ顔をしているであろう私。何故こんなことになったのかは数刻前まで遡る。
うどん屋を去った後、人里をぶらぶらと散歩をしていた。幻想郷において、一般人では人里の外に出たら間違いなく死ぬと言われるほどなので、人里は案外広い。
昼過ぎであるため、子供が遊んでいる姿を見かけたり、職場へ戻っている大人を見たりする。かくいう私は人里在住ではないので、いかんせん行くべき場所がなく、放浪としている訳である。
半獣は恐らく寺子屋で授業中であるため暇ではない。稗田は家に引きこもり。となると、知人に押しかけることは出来ないのである。更に、妖怪の姿も減っており、中々出会いがない。今出来ることとすれば、子供の遊び相手になるか、働いていない大人を観察するか、鈴奈庵で本を読むくらいである。
ふむ、暇である。孤独は昔に散々経験しているため慣れているが、娯楽がすぐ近くにあるはずなのに、暇という生き地獄は経験したことがない。
こういった時は何をするか。そう、『一人遊び』だ。
一人遊びといっても様々な種類がある。将棋などは適正が高く、一人でも案外楽しめる。だが私のような上級者になると、一人かくれんぼ、一人鬼ごっこも可能だ。中々選択肢が多く、悩ましい。知り合いを呼んでガチ鬼ごっこなどもすることも出来るが、人里が潰れる可能性が高く、その後無理矢理酒を飲まされそうなので却下としておこう。
となると、一番楽しめ馴染みが人里と馴染みがあるもの。『缶けり』だ。本来一人では出来ない遊びだが、ルールを変更することで可能とする。別に分身を作ってもいいが、気配を辿ることができるため隠れることができない。
ルールは簡単、思いっきり缶を蹴飛ばし、元の場所にまで戻る時間を競うというだけだ。実に単純明快であるためやりやすい。
缶を用意し、周囲に円を描く。勿論本気でそのまま缶を蹴ってしまうと、缶が跡形もなく無くなってしまうので、周囲に妖力を纏わせることによってクッション材料としている。
円のギリギリまで下がり、助走を付ける。一歩二歩と段々と走り出していき、全体重をのせて缶を思いっきり蹴る。そしてその勢いのまま缶を追い掛ける。
缶は一寸の光となって高速で移動していくため、見失うことがないように速度を調節しながら走っていく。途中途中での障害物も乗り越えなければならない。家の瓦を割らない程度に走り、川を跳躍することで乗り越える。速度を維持したまま判断をしていくのは案外楽しい。
缶が向かった先は妖怪の山。不法侵入をするつもりは毛頭無いが、それよりも缶蹴りの記録のほうが大事であるため無視をしていく。
—途中、厄神が注意を促してくるが無視
—途中、白狼天狗が攻撃をしてくるが無視
—途中、洩矢の二神が話かけてくるが無視
ただ只管に缶を追いかけて突っ走る。私の目的は記録更新のただ一つ。久しぶりであるため多少鈍っているが、致命的な遅れにはなっていない。行ける、そう思ってしまうくらいには好調だ。
いよいよ缶が動きを止め、私もそこに追いつく。次は折り返しであるため、最初よりもタイムを短縮する必要がある。缶に纏わせていた妖力を操ることで、缶を行きと同じ動きで巻き戻す。勿論、妖力の操作は走りながら行っている。
—途中、仙人が止まるように促してくるが無視
—途中、河童の製造品暴走に巻き込まれかけるが無視
—途中、大ムカデが話しかけてくるが無視
記録のためにも、ここで歩みを止めるわけにはいかない。友人と話すことも好きではあるが、ここまでやってしまった以上止まることはできない。更に加速を重ねていく。
だが、全速力の私にも追いつける者は存在する。
「あやややや、大妖怪様どうなされたのですか?」
この煩い鳥をはたき落とすことでさえタイムロスとなるためしたくはない。だが、鬱陶しい。幻想郷最速の異名は伊達ではないようで、私の動きにも着いてくるどころか、何処か余裕があるようにも感じられる。
途中途中でカシャカシャと音がしてくるのが煩わしい。
払いのけるため、顔を見ることなく会話を始める
「射命丸、鬱陶しいぞ」
「いや、これはスクープになる予感です! これを逃す手はないでしょう」
……なるほど。いつも新聞を読ませて貰っているが、真剣に物事をしている際は物凄く煩わしく感じてしまう。取材自体は受けたことはあるが、場合によってはここまで鬱陶しく感じるのは知らなかった。
走り続けていると、スタート地点である人里が見えてきた。射命丸は浮きながら着いてきている。人里に鳥が入ってもいいのか分からないが、害鳥であった場合はスキマ妖怪が処理をしてくれるだろう。
いよいよラストスパート。スタート地点に近づくにつれ、缶も爆発的な速度を帯びてくる。だが、負けるわけにはいかない。
スタート地点が遂に見えてくると、到着を待つようにスキマ妖怪の姿がある。暇なのか? もしかして賢者とは名ばかりではないのか? そんな疑問が出てきてしまうほど軽い雰囲気を纏っている。だが、惑わされるわけにはいかない。たった数秒でもこだわりきる。
缶がスタート地点に留まり、遂にゴールであるため、頭から突っ込む。手を全力で伸ばし、コンマ数秒でも記録をえるために出来る限りのことをする。ずさぁぁと砂の音がするが、気にはしない。
ゴール、である。やりきったという達成感がじわじわと身に帯びてくる。
「お疲れ様でしたわ」
ここぞとばかりに水を差し出してくるスキマ妖怪。
本当にこいつはなんだったんだろうか。ニコニコといい笑顔をしている。
「……私は一体何をさせられていたんでしょうか」
何処か呆然とした様子の烏。一体何と言われ、少し頭にきたが、一人遊びを知らないお子ちゃまならば仕方が無いかもしれない。たかだか千年ちょっとではまだ経験したことがないのだろうか。
フォローよりも記録の方が優先だ。太陽の位置から記録を計算していく。
何処か緊張した様子でこちらを見てくるスキマ妖怪、うだうだと記事がネタがと煩い烏。そんな風景を尻目に出た結果は……
「……記録達成ならず、か……」
膝から崩れ落ち、自分の感情が悔しさに染まっていくのがわかる。頬を涙がつたり、手を地面に着いてしまう。……人生でこんな体勢を取ったのは初めてだな〜と現実逃避をしてしまう。
スキマ妖怪も悔しげな様子であり、次こそはとリベンジを望んでいる。烏は何故か嬉々として私にかめらを向けて、カシャカシャと機械音を鳴らす。
こうして、嬉々としてかめらを使う天狗と、死んだ顔をした私という構図が完成されたのである。スキマ妖怪は境界を弄って自分が映らないようにしているらしい。
「惜しかったわね…………」
「あぁ、本当に」
私とスキマ妖怪は慰め合う。まぁスキマ妖怪が私に同情しているだけだが。やはり、長寿な者は話が合うため、こういった場面ではありがたく感じる。このスキマ妖怪も一人缶けりで苦渋を飲んだのだろう。
すると、訝しむように烏が口を開く。
「結局何をしてらしたんです? 妖怪の賢者もいるようですし、そこまで悔しがるとは……」
私とスキマ妖怪が顔を合わせる。互いに烏が言っていることが分からない。やはり、若人とは話が合わないようだ。
「何ってそりゃあ……」
「ねぇ?」
「「一人缶けり」」
は? という情け無い声が烏から出てくる。何故そんなにも憐れむような目でこちらを見てくるのだろうか。私やスキマ妖怪、へカーティアなんかはこれでよく遊んだことがあるのだが。
「ありえないですよぉ……こんなのネタにもなりませんって」
「えぇ……?」
完全に消沈し、今にも消え入りそうな烏に少し引いてしまう。スキマ妖怪も理解出来ていない様子であり、普段の胡散臭さはなく、純粋な疑問と哀れみを持って烏を見つめている。
このままでは埒が開かないため、烏に疑問を尋ねる。
「一体どうしたんだ……?」
優しく、刺激をしないように尋ねかける。
だが、烏はガバッと身を起こし、私の肩を掴んで拘束し、鬼気迫る表情になっている。正直ドン引きだ。
すると、烏が突然口を開く。
「何故か急に強力な妖力を纏った物体が飛行してきて妖怪の山は大騒ぎになり、私はネタの臭いがして走り出しましたよ! するとそこには、大妖怪様が全速力で駆けているではありませんか。もうこれはトクダネ確定ですよね!? 私も一応幻想郷最速との自負があるので大妖怪様についていきましたよ! 野を超え山を超え川を超え能力も全力で駆使して飛び続けましたよ! 途中で疲れ果てそうになりながらも妖怪の賢者が見えて更にネタの予感がするので諦めるわけにはいきません。ここで戦闘になったら面白いかもしれない。ここで蟠りがあったら面白いかもしれないと想像は膨らみます。ですが結果は何ですか!? 一人缶蹴り!? 頭可笑しくないですか!? 大妖怪様と妖怪の賢者はさもそれが当然であるかのように返答をしてきますし、私が間違っているんですか!? 『大妖怪、寂しさの余り一人缶蹴り〜妖怪の賢者も同行〜』なんて記事笑えませんよ! それどころかこれを出したら私は消されますよ!? ネタを返してくださいよ!!」
……何を言っているんだろうか。脳の容量を超える内容を言われたからか、単純に興味がないからか途中で聞くのをやめてしまった。私とスキマ妖怪は揃って哀れむような目線を烏に送る。
だが、気になる点も一つある。
「何故私の写真を嬉々として撮っていたんだ?」
「それは大妖怪様は見出しとして使いやすいからですね。後で使えるかもしれないですし撮っておいて損はないでしょう」
なるほど、何処かで使えるかもしれないか。
この烏の新聞は人間にも配られている。ならば人間がどういった内容に興味を示すのか。今の私という存在がどのように映っているのかなど気になる事柄がある。だが、この烏に借りを作るというのも癪なので頼むのはやめておこう。一々写真を撮られるのも余りいい気分ではない。
「もう要件は終わっただろう。帰ってくれ」
「え〜ケチですね」
「うるさい」
この烏は取材のこととなると案外煩い。これ以上付き纏われても面倒であるため、妖力弾を作り、烏を吹き飛ばす。
何か叫び声が聞こえた気がしたが、気にはしない。どうせ途中で流れを操って無事に妖怪の山へ戻ることができるだろう。
「……容赦ないわね」
何故かここに残っているもう一人の人物、スキマ妖怪にも妖力弾を放つが、流石にこの程度は避けられる。
「何でここに賢者ともあろうお前が残っているんだ?」
「暇だもの」
それでいいのか妖怪の賢者。こいつの式といい、何処か抜けているように感じられる。いや、有事の際にはちゃんとするのだが、こういった場面ではその面影すらない。
「この後はどうするの?」
「……そうだな、八目鰻でも食べて帰ろうかと思っている」
「あなたの同居人も心配しているかもしれないものね」
いや、あいつに限って私を心配することはないだろう。何処かで人間を貪り食っているだけだ。
スキマ妖怪は幻想郷で賢者をしているだけあり、私についての情報をかなり持っている。それ故に相手にするのがそこそこ面倒ではある。
ある時は私の性格を使い、ある時は私の同居人を使って茶化してくる事がある。賢者というストレスから逃れるため、二面性を作るのは理解できるがその矛先を私に向けるのはやめてもらいたい。
「お前といると目立ってしまう。人里ではゆっくりと過ごしたいんだ」
「はいはい。わかりました」
……なんていうんだろうか。少し上から見られているというか、母性を感じさせる物言いをしているのが腹が立つ。
スキマ妖怪はスキマを開いてその中に入っていく。不気味さを感じさせる見た目だが、もう見慣れてしまったからか、淵につけてあるリボンのほうが気になる。
「では、また今度」
「そんな機会は来ない方がいい」
そんな機会が簡単にあってたまるか。
やはり、成長というのは面白いが、方向性を間違えると面倒なことになる。スキマ妖怪でそれをひしひしと感じた。
◇
時は既に夕暮れ。
人里巡りは結果として、そこそこ幻想郷の人間のあり方について復習できたと思う。外の世界では月の民ほどではないが、技術発展によって何処か怠惰であるような印象を受ける。そのため、私は幻想郷の人間の方が面白いと感じる。
もう人間の数も減ってきており、ある程度は楽しめたため、帰ってもいいかもしれない。私の住居は人里から案外近いため、時間をかけることなく帰ることが出来るだろう。
同居人は家で寝ているか、ほっつき歩いている人間を食べているかしているであろうため、特に気にすることはない。
家への帰り道へつく。人里の外は余り整理されておらず、感覚が狂うと迷子になることもあるらしい。まぁ外に出ると妖怪に食べられるため、仕方がないともいえるだろう。整備という名目を設けても知能のない低級妖怪が襲ってくるため大した意味を持たない。
「あんた、こんな時間にどうしたんだ?」
突然背後から声を掛けられる。気配自体は感じていたが話しかけてくるとは思っていなかった。自分の実力に自信があるのかしらないが、そこそこ珍しい。振り返ると白髪で、背中に薪を背負っている少女がいた。
そして、自らの過失に気がつく。
スキマ妖怪や烏と会話をして以降、人間に寄せることを薄めていた。多少知識があるものならば、私が妖怪であることに気がつくだろう。
「ただ家に帰ろうと思っていただけだ」
「お前は妖怪だろうに...!」
私が妖怪であると分かった途端、纏う気配が濃厚になる。人里周辺なので、私が人間を襲う可能性があると思われたのだろう。人間にしては大きすぎる気配に違和感を覚えるが、博麗の巫女や安倍晴明などといったようなイレギュラーも存在するため、気にするだけ負けだと判断する。だが、戦闘になった際は一切手間取らず消すことができる。人里からは余り離れていないため、時間をかけずに終わらせる必要がある。
妖力を威嚇程度に解放すると、負けじと相手も解放してくる。やはり、人間にしては強すぎる。博麗の巫女のようなイレギュラーでもないはずだが、中々珍しい人間もいるものだ。
となると、逆に消したくはないという気持ちが芽生えてしまう。人間のなかの強者というのは近頃減ってしまった印象を受ける。時代の変化によって思考も変化しているかもしれないので、是非とも知りたいところだが……
「なんだ? やらないのか?」
「いや、少しお前に対して興味が湧いただけだ」
「はっ。舐めてると痛い目みるぞ」
相手は完全にやる気である。こちらからは手を出さずに実力を測るのもあり、ここで逃げるのもありだ。
だが、相手はスイッチが入ってしまったらしく、威圧感が膨れ上がる。選択は許されないらしい。
「時効『月のいはかさの呪い』」
いや、完全な殺し合いではなくあくまでスペルカードを使うらしい。中々に甘い人間だが、妖怪相手ならば戦略としてはあっている。
スペルカードで一方的にボコボコにして話を聞くのもありだな。
「これでもくらええぇぇ! え? あぁぁぁあぁぁぁ!!」
「は?」
だが、何者かの急速な接近を感じるとともに、相手の少女が吹き飛ばされたかなようにこちらに飛んでくる。スペルカードの一環かとも疑ったが、どうやら違うらしく、背後からの打撃を受けて吹き飛ばされた形だ。
飛ばされてきた少女を腕でとめ、新たな人物を見る。するとそこには、頭を振り上げ頭突きの体勢でこちらに向かってくる寺子屋教師がいた。
私は悟った
『あ、これは避けないほうが良いやつだ』と。
私——ミスティア・ローレライは夜雀でありながら、普段は焼き鳥撲滅を謳って八目鰻の屋台を経営しています。客層としてはやはり妖怪の方が多いですね。私自身が妖怪の本能として人間を襲ったり狂わせたりしているので、その影響もやはりあるのでしょう。
「今日も失礼するぞ」
おっと、お客さんがやって来たようです。とはいえ、常連であるため慣れているんですが。半獣でありながら人里の守護者を任されている上白沢慧音さんは藤原妹紅さんと共によく来てくれます。
おっ、やはり藤原妹紅さんと共にやってきたようですね。後ろから着いて入ってきました。何故か頭を抑えていますが……なるほど、頭突きをされたんですね。
「ここは初めてだな」
あれ? 今日は別の方も連れてやってきたようです。声は聞いたことがありませんし、一体どなたなのでしょう。
目に入ってきたのは白。そう、色だけでなく、全てが白に感じられる。アルビノであるかのような鮮やかな白に碧色の瞳であり、思わず吸い込まれそうになってしまいます。ですが、異常性を感じたのはこれからでした。
入ってきたそのお客さんは、今にも消えてしまいそうな感覚を抱かせながら、異常なほどの存在感が伝わってきます。矛盾しているとも思わせますが、私の妖怪の本能が『逃げろ!』と叫んでやみません。
「お〜いミスティア、大丈夫か?」
妹紅さんに声をかけられることによって、ギリギリ正気に戻ります。慧音さんと妹紅さんは何も感じていない様子ですが、何故なのでしょうか。
はっきり言うと、今すぐにでも逃げ出したいです。ですが、私にも店主としてのプライドがあります。今は捕食者と食料ではなく、店主とお客さんです。
「は、はい。大丈夫です」
「そうか……取り敢えず酒を三人分出してくれ」
珍しい。そう思わずにはいられません。慧音さんが最初からお酒を頼む場合は良いことがあったか、悪いことがあったかの二択です。そして、今の張り付いた笑顔と、妹紅さんの顔の引き攣りようを見ていると、悪いことであることが伺えます。
取り敢えずお酒を出すと、慧音さんは一口含み、お二人に向き合います。
明らかに機嫌が悪いですね……慧音さんはお酒を飲むと性格が変わる、というよりも普段のタガが外れます。要するに教師の生業からか説教ぽくなってしまうわけです。
「……何故、あんな所で戦おうとしていたんだ?」
エ!? 戦う!?
妹紅さんは不死身であり、まず負けることはないでしょう。ですが、相手の方から感じる異常さだと、何が起こるかわかったものではありません。もしかすると、幻想郷を巻き込んだ戦いになっていたかもしれないと思うと、背筋が凍ります。まぁ私みたいな弱小妖怪は隠れることしか出来ませんが。
「妖怪が人里付近を夜に歩いてたんだ。危険だと思うだろ?」
「それだけで戦うな!!」
慧音さんの頭突きが妹紅さんに炸裂します。ぷしゅうぅぅと頭突きで起きてはいけない音を発生しながら倒れる妹紅さんと、少し青褪めるもう一人の方。やはり、慧音さんの頭突きは威力関わらず、誰もが恐怖を覚えてしまうのでしょうか。
「お前は?」
「……強い人間はどんな思考をしているのか気になって」
「ふん!!」
またもや慧音さんの頭突きが炸裂します。お客さんは分かっていたようですが、頭突きを受け入れたようです。なんというか、覚悟が決まってましたね。
というか、人間の思考が気になって戦うとはどういうことなのでしょうか。それだけならばもっと別の方法もあったと思うのですが。やはり、強者が故に許された戦闘狂というやつなのかもしれません。
妹紅さんも疑問に思ったようで、若干涙目になりながらお客さんを睨んでいます。
「はぁ。お前のことは分かったつもりでいるが、そう簡単に戦闘をするな。実力には責任が伴うと言っていたのはお前だろう」
「……それもそうだな」
お客さんは一瞬だけ暗い表情を見せましたが、慧音さんの言葉に納得したようで少し落ち込んでいます。本当に、先程の話を聞いた限りでは責任なんか彼岸に置いてきたのではないかと思ってしまいます。
「ほら、お互いにごめんなさいは?」
「「ごめんなさい」」
……寺子屋教師の真髄を見たかのような気がします。まさか、このお客さんと妹紅さんを謝らせるとは。恐れ入りました。
先程の謝罪で騒動は終わったようで、慧音さんは八目鰻を頼んできます。そうですね、そのほうがいいです。
ですが、先程からお客さんから感じる視線は何なのでしょうか。大妖怪に見られていると思うと、体が思うように動かず窒息しているかのような錯覚に陥ってしまいます。表面上は何とか平静を保っていますが、流石にそろそろ厳しいです。
そんな時でした、お客さんの呟きが聞こえたのは……
「最近、鳥肉を食べてないな」
完全に私のことを食料として見ている。上位者による捕食というのは知っていますが、ここまで圧倒的だと私の精神が限界を迎えます。
そして、私の意識はここで途絶えました。
「ぁぅ」
何故か店主が倒れてしまったが、八目鰻は出してくれたため問題はないだろう。どうせこの半獣が何とかしてくれると私は信じている。
今、三人の間には微妙な雰囲気が漂っている。まぁ戦闘が初対面なのだ。仕方ないとも感じるし、頭突きが思ったより痛いとも感じる。痛みを無くすことも出来るが、自分への戒めとして一応残しておこう。
すると、白髪の少女が気不味そうに口を開く。
「あ〜私は藤原妹紅っていう。迷いの竹林に住んでいて普段は人間を人里に送ったりしているんだ」
……藤原妹紅? 確かどこかで聞いたことがある。
そう、あれは確か永琳から聞いた話だった筈。蓬莱の薬を飲んだ人間がいると。となるとこの少女が……
「不老不死か」
「おっ知ってるのか。そう私は不老不死なんだ」
蓬莱の薬の服用者とは滅多に会うことがない。永琳が製造を辞めたというのが主な理由であるため、知っているのは三人だけだったが、これで四人目。つまり実質的なコンプリートだ。
「一応確認しておくか」
「確認って……?」
頭に疑問符を浮かべる少女。案外鈍いのかもしれないな、不老不死の確認など一つしかないだろう。
手刀で少女の心臓を突き、続けて首を跳ね飛ばす。血が出る間もない一瞬であるため、店の迷惑にはならないだろう。
半獣が起こった出来事を理解できない様子で見てくるが、不老不死ならば別にこの程度大した害にはならないだろう。もし生身の人間だったとしたら、そこまでだったというだけだ。
すると、少女の頭が炎となって消え、体にくっ付いていく。体に空いた風穴も炎とともに塞がっており、私がした事は何も無かったかのような状態になっている。久々に見る光景だが、紛れもない不老不死の証であるため、この少女は歴とした不老不死で間違いがないようだ。
「いきなりやってくれるじゃないか」
「痛みがなかったら大丈夫だろう」
何故か怒りの表情で見てくるが、別に苦しめたわけではないため、別に大丈夫なはずだ。不老不死であろうとも痛みというのは感じる。それは過去に検証済みだ。
「はぁ、全くお前は……」
流石に私のことを分かったつもりでいると豪語した半獣は呆れているだけのようだ。それはこの少女が死ぬことはないという信頼の現れであり、私がすぐに殺すことはしないという確信でもある。半獣は教師をしているだけあって、中々観察眼が優れているらしい。
「お前たちは信頼し合っているんだな」
「「当然だ」」
さも当たり前かのように肯定の言葉が飛んでくる。中々に綺麗な関係性をしているようだ。美しいとも思うし、羨ましいとも思う。
私にはそんなもの意味がないというのに……
「……どうしたんだ? そんな顔して」
不安そうな顔をしてこちらを覗き込んでくる慧音の言葉により、正気に戻る。遂感傷してしまったようだ。
いや、そうだな。客観的に見て私は変化していっている。しかし変化の原因が悪い。
嗚呼、中々難儀なものだが、それが、私が生きていく道なのだろう。
「少し、そう少し考えすぎてしまったようだ」
代金だけ置いておいて店を去る。少し良くない気分になってしまった時は風に当たるのが一番いい。
私は擬似的な不老不死ではあるが、不滅ではない。それが”結果”に繋がる。
すると、少女もこちらを追ってくる。
「名前を聞いてなかったと思ってな」
名前か。確かに名前は余り名乗ったことはない。だが、恐らくこの関係を私は自らの望みのために利用するだろう。名乗っておくに越したことはない。
「名前、そう名前は——」
私という存在を表す名前
「——某烏有だ」