第三話を投稿いたします。
今回から基本的には大体1週に一回の投稿となります。
最後までお楽しみください。
2205年の本丸
過去に送られることになる四十六振りの刀剣のうち、一振りが選抜されてからはや三日。
先陣を切った、鯰尾藤四郎、一期一振に続き、三振り目として今度は山姥切国広が向かうことになった。
「君の番だ偽物君、せいぜい本物である俺の名を汚さないような働きをしたまえ」
山姥切長義が嫌みたらしく国広に声をかけた。
「写しは偽物じゃない」
羽織る布に手をかけ、目線を逸らし国広はいう。
「そうだぞ、長義。まんばちゃんはまんばちゃんだ」
ユウマも反論していった。
まんばちゃんというのは、ユウマがつけたあだ名である。山姥切には国広と長義の二振りいる。
彼は長義を長義、国広をまんばちゃんと呼んで区別している。
尤も、長義は自身こそが山姥切という自負を持っているから、山姥切と呼んで欲しいのだが、ユウマにとってどちらも山姥切として大切に扱いたいためである。
やれやれ、と首を横に振り長義は
「主、何度も言うが俺こそが本科の『山姥切』だ。それをゆめゆめ忘れないように」
と言った。
また、いつものことだ、とその光景を見て国広は思った。
主人はいつも自分と長義を区別したがる。
初めてこの本丸に顕現したのは山姥切は長義ではなく、国広の方だった。
そして、主は写しと贋作の違いを知っているようで、
「君は君だもの、切っても切ってなくても山姥切なのは変わらないし」
そう言って特に気にもとめていなかった。
「あぁ、分かってる。長義。でも、まんばちゃんはまんばちゃんだから。頑張ってくるんだよ、期待してるから」
写しの俺に期待だなんて、と国広は言いつつも2025年に旅立って行った。
「ここが、2025年か」
国広が着いた場所は草木が生い茂る森の中だった。
【こちら、本丸。まんばちゃん、聞こえる?】
「あぁ、聞こえてる」
国広は通信を返す。
【他の刀剣男士とは連絡は取れそうかい?】
「この端末を使えばいいんだな。説明は一通り受けてはいるが・・・」
画面に目をやるととつじょとしてビービーと音が鳴り、時間遡行軍襲来の文字が浮かんでいた。
【おっと、そこから東へ行ったとこに遡行軍がいるらしい。でも無理はしないで。まだ契約はできてないんだから】
契約がなされていない場合、本来の力の半分も出せないから用心するようにとは言われている。しかし、このまま黙って見過ごすなど刀剣男士としてはできない。
「あぁ、分かった」
国広はその場を立ち去っていった。
目的の場所に着くと大きな屋敷の前、遡行軍の姿が確認できた。
敵は三体。
大太刀、太刀、脇差だ。
周りには誰もいない、何かを探して彷徨っているように見える。
斥候か?だとしたら数が少ないのも納得がいく。
まだ、こちらに気がついていない。
仕掛けるなら今しかないが、まだ契約は済ませていない状態。力の半分も出せないだろう。
今の俺でもやれるだろうか。いや、やるしかない!
「俺は偽物なんかじゃない!」
そういうと真っ先に脇差を一太刀の元に切り捨てていく。
国広に気がついた気がついた太刀が刀を振るうがそれを悠々とかわし一刀両断する。
最後の大太刀、これがなかなか厄介な相手で何度も切りかかるが攻撃を受け止められてしまう。
ならば、と大太刀が大きく振りかぶったところを避け、空へと逃げた。
しめた、と大太刀が振りかぶろうとした隙をついてその肩になり跳躍する。
そして背後に回り込み、その首を切り捨てた。
【流石まんばちゃん、よくやってくれた】
「終わったか。写しの俺には過分すぎるな」
【そんなことないさ、君は君なんだから】
「そうよ、あなたはすごいわ!」
そこにやってきたのは金髪の少女だった。
まずい見られていたのか。
国広は咄嗟に外套で顔を隠しその場を後にしようとしたが、少女、弦巻こころは腕を掴んで離さない。
「あなたは誰なの?」
こころは言った。
「手を離せ」
ぶっきらぼうに国広は言った。
しかしそれでも彼女は離そうとしない。
仕方なく、
「俺は山姥切国広だ」
と渋々答えた。
「山姥切、国広・・・・・・とてもいい名前ね!」
こころは何の疑いもせず笑顔でそう言った。
輝いている目に国広は目を奪われた。みたもの全て、どんなものでも信じて受け入れてしまいそうな目をしている。全てを見透かしている、そんな目に彼は惹かれたのだ。とはいえ、素直にお前の目に惹かれたなどと言えるような性格ではない。
「なんだ、その目は・・・・・・俺を写しだと分かっているのか?」
「いいえ、あなたはあなたよ?ところで、どうして刀を持っているのかしら?」
「俺は人とは違う。付喪神だ」
説明したが彼女は全くと言っていいほど驚かない。
肝が据わっているというかなんというか話も信じているようである。
こんな奴を見るのは主以来だ。
「付喪神?あなた神様なのね!どこから来たの?それから何しに来たのかしら」
「俺はどう答えていいかわからん。詳しくは主に聞いてくれ」
【うん、君の質問に答えるよ。僕は彼の主で入船ユウマだ。君は】
「弦巻こころよ!こんにちは、ユウマ!」
【弦巻?えっ、嘘でしょ・・・・・・】
苗字を聞いた途端ユウマは固まってしまった。
「知っているのか、主」
【うん、有名なお家だよ、凄くね】
2205年においても弦巻家は時の政府と深いパイプを持つ立派なお家である。噂では、本来政府しか知り得ない情報を掴んでいる、政府を陰で操るのは実は鶴巻家だとか。
そのような噂が出るぐらいのお家だと聞いている。
【過去だとしても、そこのご令嬢様に出会えるとは光栄だね】
「まぁ、貴方達未来から来たのね!すごいわ、国広」
【えっ、そうやって受け入れちゃう感じなの?】
どんだけ純真無垢な子なんだろうか。
どんなことでも信じてしまう目だとは思っていたがまさか本当に信じきっているのか?
【まんばちゃん、この子は君のことが見えてるからこの子は多分】
「あぁ、分かっている。写しである俺に仮の主がこんなに簡単に見つかるとはな」
「写し?さっきから聞くけどそれは何かしら」
こころは首を傾げて言った。
【あぁ、こころちゃんにちゃんと説明しないとね。実はまんばちゃんには元になった刀があるんだ、山姥切長義っていうんだけど】
「そうなのね、でも、国広は国広よ!」
さも当然かのようにこころは答える。
【そう、まんばちゃんはまんばちゃんだよ。その認識で間違ってない。もしかして写しは贋作じゃないって知ってたかな?】
「いいえ、知らないわ。でも、国広は国広だもの。そうでしょ?」
ずいぶん鋭い子だ、とユウマは思った。
たとえ写しだとしてもそれは制作者を勝手に名乗って作った贋作とは違う。
本科をオマージュして作った全く新しい刀、それが写しというもの。とはいえ、偽物呼ばわりされてはいるが山姥切国広も刀工の国広が作った傑作なのである。
それを見抜くのはこの子はもしかしたら、本当に才能があるのかもしれないな。
【じゃあ、詳しく説明させてもらうよ、こころちゃん】
ユウマはそう言って過去に来た目的を明かすのだった。
「分かったわ!あなたは悠貴とはまた違うのね!」
一通りの説明を終えるとこころは言った。
【悠貴、それが僕のご先祖の名前なんだね】
入船悠貴か。
なかなかいい名前じゃないかとユウマは思った。
「ええ、私達を助けてくれるとっても心強い味方よ!そうだわ、今度会わせてあげるわ!」
【ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいね。それじゃ。まんばちゃんのことをよろしく頼むね】
「勿論よ、国広にはきっと私と同じで皆を笑顔にできると思うわ」
「笑顔、だと?そんなもの写しの俺には」
「必要よ!私達ハロハピの目的は世界を笑顔にすることだもの!」
「何のことだか、よく分からんが・・・・・・よろしく頼む。そうだ、これを巻いてくれないか?」
山姥切はそうこころに告げ、組紐を渡す。
「あら?これは何かしら?」
「いいから巻いてくれ、これがないと俺や主が困る」
「分かった、巻くわ!」
そう言うと何の躊躇いもなくこころは巻いた。やはり彼女は肝がすわっているとユウマは驚いた。
巻かれた組紐が消えると手の甲に紋章が現れる。
「ん?何だこれは」
紋章を見て国広は首を傾げた。
どこか、愛嬌のある熊だった。
【熊?何の紋章だこれ?】
ユウマもこの紋章は初めて見るようである。
「ミッシェルだわ!すごいわ、国広!」
なにがすごいのかわからないが、とにかく彼女にとっては大切な存在なのだろう。
写しの俺がそんな存在になれるとは思わない。
ただ、守ると決めた以上、努めていかなければならない。
私の俺にどこまで出来るかはわからないが、精一杯努めてみようと国広は誓うのだった。
というわけで第三話をお届けいたしました。
前々話、前話で触れていなかったどうして一兄と鯰尾の仮の主に一兄と鯰尾にしたか?について補足します。
ひまりは性格面で、巴は兄と姉という共通点があったため、この物語を作成する際、主になったらいいな、と思って選びました。
さて、今回の場合ですが、こころの笑顔がまんばちゃんに取って、カンフル剤になってくれると嬉しいなと思い、彼女が仮の主となりました。
未来の鶴巻家、どれだけ発展しているのか書いてる自分もわかりませんが、多分すごいことになってる気がします。
ちなみにまんばちゃんというあだ名ですが、刀剣乱舞の舞台で不動行光が彼を呼ぶ時に使用されています。自分もこれに倣い、ゲームプレイ中にそう呼んでます。
それでは、また次回お会いしましょう。
感想等、お待ちしております。