刀剣乱舞〜時を繋ぐ音色〜   作:國光麻弥

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お待たせしました。
第五話を投稿します。


第五話

刀剣男士が次々と現代に送り込まれる中、長谷部の番がやってきた。

しかし、出発の時になっても長谷部はまだ納得していない様子である。

「仮の主などいらない。今の主で俺は十分だというのに」

 

「仕方がないじゃん、長谷部。時空間の乱れはどうしようもないことなんだから」

ですが!と長谷部はまあまあと宥めるユウマにずいっと顔を近づけて言った。

「俺が主と定めたのは貴方だけなのです。今更、仮の主のために働けなどと」

 

「わかった、なら長谷部は外そう。しばらく近侍やってないから近侍にでもやる?」

 

「分かりました、分かりましたよ!主の命とあらば参ります」

 

「それならいい、じゃあいっておいで」

 

「はっ、へし切長谷部、参ります」

こうして長谷部は2025年に向かって駆け出していった。

長谷部が着いたのは十字路のど真ん中だった。

懐にしまってある懐中時計を確認すると、時刻は7時を回ったところである。

まだ朝の為か周りにひと気は全くなかった。

「確か主に報告だったな、主、聞こえているか」

長谷部は着いて早々通信機器を使い、ユウマとコンタクトをとった。

【聞こえてるよ、長谷部】

 

「これからどうすればいいのですか?」

 

【仮の主を探してくれ、どこかにいるはずだから。皆そうしているよ】

そう言ってユウマは通信を切った。

「仮の主か、こんなに朝早くに人などいるわけがないだろうに」

はぁ、と長谷部はため息をついた。

しばらく道を歩いていると男性がこちらに向かって走ってくる。

朝から散歩をしているのだろう、しかし彼は長谷部に気がつくことなく走り去った。

どうやら長谷部が見えていないらしい。

その光景を見て、長谷部は思った。

本当に仮の主に出会えるのだろうか。俺の主はもう1人で十分だと言うのに。というのも長谷部の過去に訳がある。

織田信長の刀であったが、ある時突然、信長は黒田官兵衛に下げ渡されたと言うことがあったからだ。

これが直臣であればまだしも、官兵衛はそうではなかった。

自分から名前をつけておいて家臣に勝手に与える。

信長にとって、俺と言う存在はその程度だったと言うことなのだろう。以来、信長に対しては複雑な感情を抱えている。

「オッちゃーん」

そんなことを考えていると今度は目の前から少女が走ってきた。

どうやら何か探しているらしいが、長谷部には気がついていない。

そのまま少女はぶつかってしまった。

「あ、すみません」

「い、いや、こちらこそすまない、何を探しているんだ」

「オッちゃん、家から逃げ出したから」

少女はそう答えるとそのままかけだしていってしまった。

なんなのだ、あいつは!

人にあたっておいてそのまま駆け出していく奴があるか!

【ちょっと待った!長谷部。あの子、君に声をかけたよね、追いかけよう】

長谷部は、はっとした。

なぜ彼女は自分とぶつかって声をかけたのだろうか、それは自分が見えているからだ。認識していなければぶつかるはずもない。

長谷部は慌てて少女の後を追った。

「あ、いた!」

少女、花園たえは声をあげて何かを抱き抱えている。それは犬でも猫でもなかった。

「うさぎ、だと・・・・・・」

長谷部は驚愕した。

猫でも犬でもなくうさぎだと?

なんてものを飼育しているんだこの女。

もしかして、食事に使うのか?

「おい、それは食べるものではないのか」

長谷部は言った。

そう質問を投げかけるのも無理はない。

彼が生まれた時代にはペットとしてうさぎを飼育することはなく、もっぱら狩猟して食する対象でしかなかったからだ。まさか数百年経ってペットとして飼育されているなど思いもしないだろう。

「えっ?オッちゃんは食べ物じゃない、ペットだよ」

 

「ぺつと、だと」

長谷部は首を傾げる。

 

「うん、ペット」

 

「一体、それはなんだ?」

 

「うーん、友達、かな」

ますますわからない。なぜそんなものを飼育しているんだ。

【正確に言うと僕等が馬を飼い慣らしてるのと同じ感覚だよ】

ユウマが注釈をつけるように間に割ってはいりいでた。

 

「なるほど、時代が進めば進むほど奇妙なものを飼育しているのだな」

 

「あれどこから声が聞こえてるの?」

訝しんだ様子でたえは言った。

【あ、ここです、通信機器から】

通信機器から顔を出してユウマは言った。

「わっ、びっくりした。あれ?悠貴さん?」

 

【違うよ、えっと、これ何回目かな、僕は入船ユウマだ】

 

「他人の空似?うん、違う。多分親戚かな」

たえは訝しんだ様子で言ったが一応は納得しているようである。

【う、うん、まぁそんな感じ。ところで君は長谷部の事が視えてるんだね】

 

「うん、刀持ったコスプレイヤーだと思ってるんだけど」

 

「こすぷれ?俺は刀剣男士だ。こすぷれなどではない」

この刀も本物だ、と刀を見せる長谷部。それを見てたえはおお、と感心する。

【まぁ、しょうがないよね、この見た目じゃどう見たって普通の人には見えない】

 

「主まで一体何を・・・・・・」

長谷部ははぁとため息をつくしかなかった。

【それじゃ、たえちゃん、一から説明させてもらうね】

そう言って、彼はたえにどういうことになっているのかを説明を受ける。

「それで、長谷部さんは私の仮の主ってこと?」

ユウマからある程度の説明を受けたえは長谷部に言った。

「不本意だがな。そうだ、主が言っていたが、今、ちやつととか言うよくわからん機能を作った奴がいるらしい。それにお前も加わってくれとのことだ」

 

「チャット・・・・・・いったいなんだろ」

 

「これだ。お前も使え、花園たえ」

 

「うん、わかった」

たえは示されたアプリをダウンロードしアプリを開いてみる。

名前を入力し終えると

たえさんが新しく入室されました

と表示された。

どうやらよくあるチャットアプリらしい。

 

たえ どうも花園たえです

たえはいきなり本名を書き込んだ。

【ちょ、いきなり名乗っちゃうの?】

いきなりの発言にユウマは慌ててしまった。

ちなみにこのチャットは基本的に仮の主が通信しやすいようにとこころが黒服たちに命じて作らせたアプリで基本的には仮の主人以外の人間は入ることができない招待制チャットアプリである。チャット以外も通話や写真の送信等が可能である。しかし、いきなり本名を名乗ると悪用される危険もあるというもの。

大胆がすぎるとユウマは密かに舌を巻いた。

「え、でも、名乗っとかないとダメじゃないですか?」

 

「しかしだなこう言うのは急に名乗るものでもないだろう」

やれやれ、と呆れる長谷部を尻目にチャットにすぐ動きがあった。

 

はぐみ あれ?おたえなの?

 

こころ 本当、たえだわ!

 

ともえ 本当か?

 

ひまり ええ、どうして知り合いばかりなの?

 

たえ 良かった、知り合いじゃなかったらどうしようかと思ってた

 

【びっくりなのはこっちもだよ・・・・・・世間って狭いね・・・・・・あ、そうだ。そろそろ実は新しい刀剣男士がそちらにつく頃合いかな、長谷部、迎えに行ってあげて】

 

「はっ、主命とあれば。で、誰です?」

 

【薬研だよ。君なら気兼ねなく話せるだろうから】

 

「はっ、では行って参ります」

 

「頑張って行ってきてね」

たえは手を振っていった。

「待て、お前もいくのだぞ!花園たえ!離れていてはいつ敵に襲われるかわからんからな」

 

「えぇー」

 

【ごめんね、付き合わせるのは本当に申し訳ないんだけど】

ユウマは申し訳なさそうな声で言った。

「しょうがないか、あ、その前にオッちゃんを家に戻さないと」

そういうと彼女はまた再び駆け出していった。

「お、おい、どこへいく!」

 

「私の家。長谷部も寄って行く?」

 

「いかん、と言ってもお前が行くなら行くしかないが。手早くすませてこい」

なんという女性と出会ってしまったのだろか、長谷部は深いため息をつかしかなかった。

一方その頃、薬研は無事に2025年についていた。

「さて、ここが2025年だな。俺がまだ刀剣だった頃とは随分変わったみたいだな」

初めてみる2025年の景色を見て薬研はつぶやいた。

【そうだろうね、あれから400年は経っているから】

時間の流れというのはこうも残酷なものなのかと薬研は感じずにはいられない。

「お、主。今連絡しようと思ってたとこだ」

 

【到着できて何よりだ。今から長谷部達がそっちに向かうから少し待っていてね】

 

「噂をしていたらどうやらきたようだぜ」

そういうと、道の向こう側から走ってくる人影が見える。

 

「無事か、薬研」

 

「全然平気だぜ、長谷部。お前が迎えに来るとは信長さんの因果は切れないってことか」

チッ、としたうちをしつつ複雑な面持ちで、そうらしいなと長谷部は言った。

 

「あぁ、悪かったな」

反応を見て申し訳なさそうに薬研は言うと、続けて

「そこにいるのは、お前の仮の主だな」

と言った。

「花園たえです。どうもよろしくお願いします」

そう言ってたえは頭を下げる。

「へぇ、たえ、っていうのか。俺は薬研藤四郎、長谷部とは長い付き合いなんだ」

 

「どれぐらい?」

 

「そうだな、信長さんのところにいたところからかな」

薬研は言った。

「信長、織田信長ってこと?」とたえが言うと

「余計なことは教えるな、薬研。奴の名を聞くだけで腹立たしくなる」

と言って言葉を遮るように長谷部は言った。

 

「信長さん、嫌いなの?」

首をかしげてたえは言った。

 

「名をつけたくせに直参でもない黒田家に俺を引き渡した、奴にとって俺はそのような価値でしかなかったということだ」

 

「確かに魔王だ何だ言う人は多いな。けど、俺にとっちゃ信長さんは普通の人なんだけどな」

 

「ふうーん、人によって色々あるんだね」

 

「いや、俺達は刀剣なんだけどな」

「全くだ」

二振りは苦笑をしつつ頷いた。

今は人の形を成しているが、元は刀剣である2人からするとたえのいう2人という言葉に違和感を持ったようである。

 

【無事合流できたみたいだね、とりあえず敵の反応もないしまずは薬研の主を探しに行くとしようか】

 

「おう、そうだな」

 

「ちょっと待って。いい匂いがする」

 

「確かに何か匂うな」

「初めて嗅ぐな、この匂い」

嗅いだこともない匂いにふた振りは顔を少し顰める。

「さーやの家の近くなんだ、ここ」

 

「お前の知り合いか」

 

「うん、ちょうどパンが焼けたんだ、寄っていこうかな」

 

「待て、またお前は勝手に」

「ははっ、さしもの長谷部も振り回されているんだな」

 

「笑っている場合か、何かあったらどうする、追いかけるぞ!」

ふた振りは急いでたえの後を追った。

やまぶきベーカリーと、書いてある看板の前でたえはとまった。

まだ営業はしておらずシャッターが下りている。

「なぁ、べーかりーってのは何だ?」

薬研がたえに言った。

「え、知らないの?パン屋のことだよ」

 

「ぱん屋?何か販売でもしているのか」

薬研は言った。

「もしかして、パン見たことないの?」

 

「なんだそれは食べ物なのか?」

 

「うん、食べ物だよ、こういう奴」

そう言ってたえはスマホを取り出しパンの写真を見せた。

生まれて初めてパンを見る二振りは今見ているものが食べ物だと信じられないような眼差しで写真を見ている。

「米とはまた違うな、なんだか饅頭みてぇだな」

「こんなものが食べ物だと信じられん」

「いったい普段なに食べてるの?あ、刀だから水だけとか?」

 

「失礼な!刀ではあるが今は人としてここにある。水だけでは流石に死んでしまうだろう!」

「米や魚だな、それから野菜とか」

 

「なんだ、人と変わらないね」

二振りの話を聞いて納得するたえ。

するとベーカリーのシャッターがガラガラと音を立てて上がって中からポニーテールの女性が出てきた。この店の看板娘のさーや、こと山吹沙綾である。

二人はともに同じバンドを組むバンド仲間でもある。

「あれ、おたえどうしたの?」

 

「あ、さーや、おはよう」

 

「おはよう、おたえ。そっちの2人は?侍の格好をしているんだけど」

 

「刀剣男士。1人は私が主で、もう1人は探してるとこ、でもさーやにも見えてるからちょうどいいかも」

 

「刀剣男士?主?えっ、どういうこと?」

 

「俺は主を見つけちまったってことか………」

 

「これは拍子抜けだな」

 

「えっと、本当にどういうことなの」

 

【えっと、じゃあ詳しく説明しますね】

ここでユウマが割って入り、説明をしようとした瞬間だった。

アラームが鳴った。

 

「ねぇ、アラーム鳴ってるよ」

 

「これは確か」

 

【敵の反応だ!ここに向かってきてる!】

 

「薬研。ここを死守するぞ」

 

「あぁ、主の家を守ってやるよ、ところであんた名前は?」

薬研は沙綾に問いかける。

 

「山吹、山吹沙綾だよ」

 

「沙綾さん、あぶねぇから店の中に隠れてな」

 

「えっ、大丈夫なの君!?」

 

「俺は戦場育ちだからな。戦いには慣れてる。それから後でぱん、食いたいんだがいいかな」

 

「もちろん!あぁ、でも無理はしないでね!危ないから!」

 

「心配すんな、俺たちはそんなやわじゃない。説明は後でするが、この組紐を巻いてくれねぇか?」

 

「お前もだ、花園たえ。この組紐を巻け、説明は後で主から追ってあるだろう」

 

「分かった、巻けばいいんだね」

「うん、巻くよ」

 

2人は頷くと手首に組紐を巻いた。

組紐を巻くと組紐は消え、手の甲には紋章が浮かび上がった。それは星の紋章だった。

 

 

「来たぞ、薬研」

「短刀が2、太刀が2ってとこだな・・・」

数を確認して薬研はいう。

 

「さて、暑くなってきやがった!」

「逃しはしないぞ!時間遡行軍」

2人はかけだしていくとそのまま敵に切りかかった。薬研は短刀を飛び越えるとそのまま太刀に向かって刃を突き立て一言。

「骨まで通ったぞ」

突き立てた刃が太刀に突き刺さると再び飛び上がり、今度は短刀に切りかかる。

長谷部は太刀の攻撃を受け、払い除けるとそのまま斜めから切り裂いた。

短刀は形跡が不利と見るや、逃げて行こうとしたが、

「このまま逃すと思うなよ!」

そういって、長谷部は切り伏せた。

 

「ふぅ、終わったな」

 

「できて当然だ、他愛もなかったな」

 

「これが、刀剣男士・・・」

 

「すごい!すごいよ、2人とも。ええっと、名前聞いてなかったね」

 

「薬研、薬研藤四郎だ」

 

「それじゃ、薬研君って呼んでもいいかな?」

 

「あぁ、構わないぜ、沙綾」

 

【あ、そうだ。沙綾さん、一応このアプリ入れてくれないかな、主専用のアプリ】

 

「あたしも入ってるよ」

 

「誰がこんなアプリ作ったの、凄くない?」

 

【こころさんが率先してつくらせたんだ。黒服さん?とか言う人に言って】

 

「あはは、凄いね・・・」

 

「よしこれでひと段落したな。それじゃあ帰るぞ、花園たえ」

 

「待てよ、長谷部。沙綾のぱんってやつを食っていかないか」

 

「あ、あたしも食べたい!さーやのパンはここいらで1番美味しいんだよ」

 

「しかしだな!俺達は別にここで飯を」

 

「いいよ、大歓迎だよ!ほら、皆、上がって!」

 

沙綾はそう言って、1人と二振りを家に招き入れるのだった。




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