第八話が完成しましたので投稿します。
2205年のとある本丸。
次なる刀剣男士が過去へと向かおうとしている。
「さて、次は不動の番だね」
ユウマがそういうと短刀の不動行光が進み出てきた。
「あぁ、ちゃちゃっと帰ってくるぜ。うるさい長谷部に会う前にな」
「ここに本人がいないからってそう言うこと言わないの」
「へーきへーき。どうせ今は聞こえてないんだし」
調子に乗るとすぐこれだ。
今、長谷部は2025年にいるからと羽を伸ばしっぱなしで甘酒をこれでもかと飲んでいたことをユウマは思い出した。
「あぁ、君が好きな甘酒もしばらく飲めないからね、我慢してね」
再三釘を打ってはいたが、最後の最後にもう一度釘を打つようにユウマは言った。
「分かってるって。酒が飲めないのは辛いがせっかく主の任務だからな。ダメ刀の俺でも役立てるってとこ見せてやる。それじゃあ行ってくるぜ!」
「大丈夫かなぁ」
釘は打ったが、ユウマはそれでも内心心配だった。
不動が到着するタイミングで長谷部や信長に縁のある刀達に知らせておこう、と思い早速通信を試みる。
【不動行光がそろそろそちらに着くはずだから。迎えにいってあげてね】
ユウマは手始めに長谷部に伝えた。
長谷部がたえとであって1週間が経った頃であった。この一週間、ウサギの世話から倉練と散々付き合わされ疲弊していたがそれでも主の命とあっては必死に任務をこなしていた。
ちなみに薬研も含め、彼の存在はまだバンドのメンバーに知らされていない。
かえって危険に晒してしまうだろうからと言う全員の判断である。
「はぁ、そう言えば奴も呼ばれていたんだったな」
「どうかしたの」
ため息をつく長谷部を見てたえが言った。
「不動行光のことだ。信長に愛された刀などと言う面倒な奴だ」
「あー、新しく来る人は信長さんの刀なんだ。いっぱい持ってるんだね信長さんって」
「俺を含め奴に縁のある刀がこの時代に四振りも揃うとはな、なんの因果だ、全く」
「すごい偶然だね」
「偶然で済まされるのなら良いのだが・・・・・・」
長谷部ははぁとため息をつくのだった。
その頃、不動行光はというとようやく2025年に到着していた。
「よっと、ここが2025年かぁ」
町並みを見て少し感慨に耽ってはいたが、ハッと思い出して
「おっと、主に報告報告っと」
通信機器を使いユウマに連絡を取る。
「主、ついたぜ」
【無事に着いたみたいだね、不動。さて、体調とか大丈夫?】
「平気平気。でも、2025年って俺達の世界とは随分違うんだな。何せ、でっかい建物が多いんだからな、びるって言うんだろ、アレ」
【そりゃそうでしょ。まだ陸地での都市開発が行われてる真っ最中なんだから】
2205年時間遡行軍との戦いが開始されてはいるが人類は既に地球のみならず、近隣の様々な惑星へと進出している。また地上だけでなく空や地下などにも生活の場を広げている。
しかし刀剣達にとって見慣れた街並みというのはまだ刀であった頃の街並みなのだ。
2025年ではそのような街並みはほんの少しだけ残っていたり、再現されてはいるがその数は決して多くはない。
「あ、悪い悪い、そんなことしてる場合じゃなかったな。えっと、主探しだっけか」
【そうそう。まずは頑張ってね】
そうして不動行光は町へと向かうのだった。
その頃、町には長谷部の他に薬研藤四郎、宗三左文字の三振りが仮の主と共に不動行光の到着を待っていた。
【不動はもう到着してる。こちらにまっすぐ向かってくると思うから」
「了解したぜ、主。さぁて、あいつを迎えに行くとしよう」
薬研が言った。
「しかし、主も人が悪いですね・・・・・・我々にわざわざ行かせるなんて」
宗三が言った。
ここにいる三振りは元は信長にあった刀剣だ。わざわざこの三振りに頼んだのは気心が知れた者ならば受け入れてくれるだろうというユウマの気遣いからだ。
「信長さんとの因縁がある俺達に迎えに行かせたいのだろうな」
「そっか、みんな信長の元にあった刀だもんね」
沙綾は言った。
「あの、信長さんってそんなに怖い人だったんですか」
おどおどしながらもましろが三振りに聞くと
「え?俺にとっちゃ普通の人だったぜ」
「奴を好きな奴などおらん」
「魔王だったと思いますよ、ええ、本当に」
三者三様の答えが返ってきたので問いを出した余計困惑した。
結局信長という人はどんな人なのかは余計もやの中になってしまった。
それでもましろはまだ魔王というイメージが残ったままである。
「・・・・・・なんだか怖そうな人だったんですね」
「まぁ、そういうイメージを持たれてるよな」
薬研が言うと、
「間違い無いですね」
宗三も相槌を打って言う。
「話をするのはそこまでだ、奴が来たぞ」
長谷部が通りの向こうを指差すと向こう側から走ってこちらに向かってくる男が見える。
男には誰も気がついていないので刀剣男士のようだ。
「待っていたぞ、不動行光」
「げっ、長谷部・・・・・・」
顔を見た途端急に不動は顔を曇らせる。
どうしてこいつがここにいるんだ!
同じ信長の刀でも薬研や宗三はともかくこいつとだけは絶対に会いたくなかった。
「この子が不動君?」
たえが聞くと、
「そうだ。不動行光。俺と同じあの信長の元にあった刀だ」
苦虫を潰したような顔をして長谷部は言った。
「そんな嫌そうな顔して言いやがって」
そんな長谷部の態度に不動が文句を言った。
「まぁまぁ、長谷部。せっかくまた会えたんだ、そんな顔しなくてもいいじゃねぇか」
薬研に言われチッ、と軽く舌打ちをすると長谷部は
「主の命があるのだろう、さっさと探しに行くぞ、仮の主を」
と言った。
「わかってるって」
そう言って四振りと3人は主を探すために歩き出すのだった。
町の中を進んでいくと先ほどのビル群からうって代わり低い街並みが見えて来る。
「しかし、ここいらの風景はさっきまでと違うみたいだな」
「下町という奴だそうだ。昔からの街並みが残っているそうだぞ」
「おっ、ありゃなんだ!」
突然、不動が指を刺して言った。
その先には朝日湯と書かれた看板があった。どうやら銭湯らしい。
「なぁ、ひとっ風呂浴びてくか?」
そう言うと不動は真っ先に駆け出していってしまった。
「寄り道するな!それに誰がお前の代金を払うのだ!」
長谷部が注意したが、
「まぁまぁ、いいじゃねぇか。風呂に入って心穏やかにして主を探すのも」
「うん、この銭湯のお湯はいいよ、効能が効いている」
薬研とたえがそういうので長谷部ははぁとため息をつき、銭湯に入っていくのだった。
「こんにちは!」
不動が暖簾をくぐり扉をガラガラと開けると、はーいと奥から声が聞こえメガネをかけた少女が出てきた。どうやらここの従業員らしい。
「風呂入りに来たんだ、いくらだ」
「えっと、あの、ちょっと待ってくださいね」
料金表を取り出そうとしたタイミングでまずたえが入ってきた。
「あ、ロック、いたんだ」
「たえさん、沙綾さん!それにましろさんも!
ようこそ、後ろの方々も知り合いの方ですか」
ロックと呼ばれた少女はそう言って、刀剣男士達をまじまじと見る。
刀を刺していて、服装もなんだかコスプレイヤーのような集団にしか見えない。
そういえば、
「うん、まぁ、そんな感じかな」
苦笑いをしながら答える沙綾。
「皆さん、この方とは知り合いなのですか」
宗三が尋ねた。
「うん、朝日六花、岐阜から上京して親戚のこの銭湯で暮らしてるの」
「岐阜って・・・お前、美濃の生まれか!」
突然ぐっと顔を近づけて不動が言った。
岐阜という地名をつけたのは実は信長である。
その由来はというと稲葉山城と呼ばれていた城を岐阜城と名を改めたことが県名の由来だ。
「へっ?」
突然の剣幕に驚く六花は驚いた。
出身を聞かれただけでここまで顔を近づけてくるとは思わなかったからだ。
「美濃か。あの人な生まれに近いな」
と薬研がまず言うと
「そうですか、貴方、もしかして、あの魔王に縁があるのですね」
と、宗三もいった。続いて長谷部も若干嫌な顔をして
「奴に縁があるとはとんだ奇遇だな」
と言った。
「えっえっ、何のことですか」
「ほら、織田信長!織田信長だよ!」
不動は何度もその場で跳ねながら言った。
「織田、信長??」
ピンと来ていない六花の反応を見てすかさずユウマが
【失礼、解説させてもらうよ。皆、信長の元にあった刀なのさ】
と言った。
「あれ、入船さん!?どうしたんですか」
ユウマを顔を見て六花は言ったが、えーこれ何度目かな、と何度も聞いたそのやりとりに若干呆れつつ、
【失礼。僕はその入船の直系の子孫、入船ユウマだ。そんなに顔似てるのか、会ってみたいな】
と言った。
「うん、すっごく似てる」
たえが言うと、沙綾も
「声もそっくりだよね『はいはい、ルーキーの入船ですよー』って言うし」
と頷きながら答える。
「うん。そんな感じです」と六花。
【そうか、そんなに似てるのか、僕のご先祖様。どこに行ったら会えるんだい?】
「ライブハウスですよ、でも最近体調がすぐれないとかで休んでますね・・・・・・」
【そっかー、そいつは残念だな。あぁ、それよりもだ、六花ちゃん、君がそこにいる子達が視えるってことは君も特別な人間だね】
「と、特別な人間!」
六花は素っ頓狂な声をあげていった。
「なぁ、主!俺、こいつを仮の主人にする!」
「待て、不動行光!まだ説明も何も」
長谷部が止めに入ったが、不動は懐から組紐を取り出して六花の手首に巻いてしまった。巻かれた組紐はすぐに消え去り、手首には紋章が浮かび上がっている。
浮かび上がった紋章はヘッドフォンだった。
「あれ、また違う紋章だね」
「ヘッドフォン。これチュチュのやつにそっくりだ」
「あー言われてみれば」
3人は納得しているが
「貴様という奴は!」
非常事態ならいざ知らず、平時に主の許可なしに勝手に契約を結ぶだなんて信じられない。
長谷部の怒りは収まらなかった。
「だってこいつ、信長公とも関わり深そうだし!
これから、よろしくな」
「ど、どうしましょう」
六花は困惑した。
いきなり自分が特別な人間だと言われただけでなく、目の前に現れた男に仮の主になってくれ、といい、さらにいきなり手首に組紐を巻かれ、何やら怪しげな紋章まで浮かび上がる始末。
【不動さぁ、落ち着いてる時ぐらい説明させて欲しかったな。説明するからちょっと待ってて】
ところが、突然ビービーと音が鳴った。
「音が鳴ったってことは」
沙綾が言うと、はっとして即座に薬研が通信機の画面を見やる。
「時間遡行軍襲来」
の文字が見えた。
薬研がドアを外を見ると時間遡行軍がそばまでやってきていた。
この数は10数体、これまでにない大軍である。
「こりゃ大軍だな」
薬研がそうつぶやくとふっと、不動が笑って
「薬研、数なんか関係ないぜ!ようは全員倒しりゃいいんだろ!」
と言う。すると長谷部も
「奇遇だな、お前と意見が合うなんてな」
と言った。敵が来たのなら倒すしかあるまい。それにここには四振りも揃っている。負ける道理があるだろうか?
「皆、答えは一致したようですね」
宗三の言葉に四振りは頷き、刀を抜いて外へと出ていこうとする。
「皆を頼む」
長谷部はたえにいった。
「うん、長谷部も頑張ってね」
しかし六花はまだ不安だった。
「そんな心配そうな顔をするなって、六花。ちゃちゃっと終わらせてくるからよ!さぁ、道を開けろ!」
不動と言葉を合図に四振りは刀を抜いて飛び出して行った。
お前が勝手に仕切るな!と隣にいた長谷部は小言を言ったが、不動は聞こえないふりをした。
相手もこちらに気がついたのだろう、まっすぐこちらに向かってくる。
先陣を切る長谷部が太刀の遡行軍の攻撃を受け止めると即座に切り伏せ、さらにその背後にいた短刀に刀を浴びせた。
続いて不動は槍の攻撃を交わし、空中で一回転すると、槍の首を掻き切って見せそのまま大軍の中に1人入ってしまった。
あの馬鹿・・・一人で突っ込みすぎだ!
「宗三!」
「ええ、わかりました」
長谷部の指示に従い、宗三が即座に不動の助けに入る。
敵の攻撃を交わしつつ、彼の背後に回った。
「1人で突っ込まないでください、これは団体戦なんですから。主人ならこう言いますよ、『ちーむわーく』、だと」
そう、注意しながらも宗三は背後にいた打刀と短刀を切り捨てる。背後からは大太刀が迫っていたが、それに気づいた不動が宗三の肩を借りて飛びついて首を掻き切ってみせた。
「平気だよ、宗三!長谷部のやつ、心配性なんだなぁ、よっと!」
不満を言いつつも、左足で迫ってきた太刀を蹴り飛ばす。そうして、倒れた相手の首にそのまま短刀を突き刺した。
その一方で薬研はと言うと、自身に打刀の攻撃を2度、3度交わすとそのまま飛び上がり頭に蹴りを浴びせそのまま倒すと喉を掻き切った。
そうして、さらに飛び上がって脇差の顔にぶすりと刀を突き刺しゆっくりと引き抜く。
「骨が塚まで通ったな」
「はぁっ!」
最後に長谷部が打刀と脇差に一太刀を浴びせ、周りから遡行軍はいなくなった。
撃ち漏らした敵はおらず、あたりには遡行軍の残骸が残っていたが、それもすぐに消えてしまった。
【時間遡行軍の気配は消えたみたいだ。よくやってくれた】
「よっしゃ!やったぜ!」
しかし不動が喜びも束の間、彼の頭に長谷部の拳骨が飛んだ。
「いてっ、なにすんだよ!」
「1人で突っ込むな、馬鹿が!敵の練度が低かったから良かったものを!主、こいつに誉などやらないでいただきたい」
【不動、チームワークが大切なんだよ、今のは長谷部の指示に従わないと】
「どうせあの子にいいところを見せようとしていたのだろうよ、次からは気をつけろよ」
薬研も不動の行動に苦言を呈した。
「へいへい」
不動は両手を頭に抱え適当に答えた。
「まったくおまえと言う奴は・・・」
こいつ、やはり反省していないな、と長谷部は思った。
「ねぇ、終わった?」
銭湯の入り口が開き、沙綾達四人は恐る恐るのそのそと出てきた。
「あぁ、もう平気だぜ。沙綾」
薬研は優しく言った。
「あの、すごい音がしてましたけど、大丈夫なんですか」
「平気平気、俺達刀剣男士はああ言うのを倒すのが仕事、なんだからよ」
不動はふふーんと、見栄を張っていった。
「ええ、加えて今はあなた方の命を守ることも使命です」
宗三は言った。
かっこいい、と六花は心のうちでそう思った。
【さて、六花ちゃん】
「は、はい!」
【なし崩しになってしまったけどこいつと君は契約を結んでしまったんだ。契約を取り消すってことはちょっとできなくてね】
「あっ、あの!私、不動さんの主、やります!」
「本当にいいのか、こんな死にたがりがしっかり守れるとは思えないがな」
「いちいちおまえは細けぇな、長谷部。ちゃんと六花のことは守ってやるよ」
「はい、よろしくお願いします!不動さん!」
六花はそう言うと不動と握手を交わした。
「あっ、そうだ。六花、ひとっ風呂入ってもいいか?」
「はい、もちろん。皆さんもどうぞ!」
「いや、俺は別に」
「いいじゃねぇか、長谷部。ひとっ風呂浴びてサッパリしようぜ」
「ですね」
宗三と薬研はそういうと無理やり長谷部を風呂場まで連れていくのだった。
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