生還を望む竜殺しの冒険譚   作:瑠衣

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第二十話

あの後、リヴェリアの暴走?でダンジョンに潜りランクアップ後の「調整」を行うことになったジークだったが、その実態は極東でいうところの「掛かり稽古」のような様相を見せていた。

 

彼女に向かって剣を構えながら突っ込み、杖で吹き飛ばされる。それをただひたすらに繰り返す。

 

何故かは知らないが後から合流してきたレフィーヤも参戦し、妖精の魔法と只人の剣戟を避けつつ、杖で殴り飛ばしてくるリヴェリアはもはや二人の目には怪物(モンスター)よりも恐ろしいものに見えた。到達階層も増やすことになり、ランクアップ後初のダンジョンアタックは最初の死線(ファーストライン)である中層を駆け抜け、迷宮の楽園(アンダーリゾート)と冒険者の間で呼ばれている十八階層まで足を運ぶことになった。

 

レベル2となり、向上したステイタスと【生還願望(イノセント・サバイブ)】が掛け合わさったことで何とか中層を攻略していたが、十八階層についたときには既に息も絶え絶え、限界寸前であり、それに加えてリヴェリアが振るった杖が綺麗に顎に入ったことで、ジークの意識はそこで途絶えた。

 

「………その、すまなかった。ジーク。」

 

目を覚ました後、顔を青ざめながら自身の行った行為に頭を抱えているリヴェリアに謝罪をしたことで、ようやくジークのランクアップにおける騒動は幕を下ろした。

 

 

 


 

 

 

前代未聞の「一ヶ月」でのランクアップは、瞬く間にオラリオ中に広まることになった。

 

現在判明している最速記録は同ファミリアである「剣姫」アイズ・ヴァレンシュタインが保持していた「一年」であり、それを大幅に更新したジークの記録は到底信じられるものではなかった。ある冒険者は「上級冒険者のお零れを掬っただけ」や「神の力を使った反則」とまで噂されることになった。

 

当然神々もロキに対して疑いの目を向け始めた時、ちょうど良い頃合いと言わんばかりにある集会が開催される時期になっていた。

 

 

「ほんま、ちょうどええタイミングで神会(デナトゥス)が開きよったなぁ。」

 

三ヶ月に一度、都市中央の摩天楼(バベル)で開催される神々の定例会議。それこそが神会(デナトゥス)。原則神でなければ出席することは許されていないこの会議で決まったことはオラリオ全体で流布されることになり、どんな法よりも優先される。さらには上級冒険者への「二つ名」の命名式もこの場で行われる。

 

子ども達の間では神々から授かる名誉ある称号と考えられているため、上級冒険者になるということはそれだけでも栄誉なことなのである。

 

参加できる神は「上級冒険者」が自身の眷属に存在している神のみであり、神会(デナトゥス)に参加できるという事自体が有力ファミリアの証ともいえる。勿論オラリオの中でも一二を争うほどの有力ファミリアの主神であるロキもこの会議には常連であり、幾度も進行役を務めている。

 

そして今回の進行役は、少し癖のある神になっていた。

 

「それじゃあ、集まったことだ第ン千回目神会(デナトゥス)を開催するぞー!司会進行役はこの俺ヘルメスが務めさせて貰う!盛り上がっていこうぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

「「「「「イエェェェェェェェェェェェェェェェイ!!!!!!!!!!!!」」」」」

 

「うわっ、うるっさ………なんでアイツあんなにテンション高いねん………。」

 

余りのテンションの高さに頭を痛めるロキにすぐそばに座っていた女神が反応した。

燃えるような赤い髪に、右目を眼帯で隠した男装の麗人ならぬ麗神。この場に集う神々の中でもニ大派閥(ロキとフレイヤ)に並んでオラリオで名を馳せているファミリアの主神

 

「貴女の所の新人の噂を聞いたらしいのよ。一ヶ月でのランクアップはそれだけ私たちの中でも話題になったってことなのよ。」

 

「おぉ~ファイたんやん~。お久やなぁ。」

 

ファイたんと呼ばれた彼女は「たんは辞めて」と一言言った後、それを言ったところでロキが聞くと耳を持たないことを知っているため、そのまま話を続けようとする。

 

彼女の名は「ヘファイストス」鍛冶師(スミス)系ファミリアであり、世界的にも名を馳せている高級ブランド「Hφαιστοs」の終身永世社長(グランド・マスター・オーナー)

神の力なくともその()()だけでおよそ下界の子ども達には再現することが出来ない業物を鍛つことが出来るとされる「神匠」であり、彼女の眷属も鍛冶に特化したステイタスやアビリティを獲得している。

 

「それで?確かジークだったかしら?貴女の所の新人、凄いことやらかしたわね。ランクアップ前にも上層で色々と無茶してたらしいじゃない。」

 

「やっぱ、噂の出所はソレやなぁ。ジークたんの望みもあったんやけど、流石に今回はリヴェリアに怒られてもうたわ………。」

 

「あの子、確か数年前「剣姫」も面倒見てたわよね?そういうの得意そうには見えなかったけど………。」

 

「うぐっ!そ、ソンナコトナイデー」

 

痛いところを突かれたように、顔をしかめるロキの様相をみてあぁと察するヘファイストス。一時期冒険者になったばかりの「剣姫」に「九魔姫(ナインヘル)」が指導していたと話題になっていた。エルフの中でも神聖視されているハイエルフが何処ぞの知れない小娘を教育しているとなれば神々や民衆は勿論のこと、何よりもエルフが注目していた。

 

当時のファミリアの内情を知っているロキとしては()()と面倒事が重なってしまった時期でもある。

 

「まぁ、そのことはええんや!それよりどしたんやファイたん。ジブンからウチに話しかけてくるなんて珍しいやんか。」

 

「そうね、実はちょっと貴女相手に言伝があるのよ。」

 

言伝?あのヘファイストスが自分に?と知らぬ間に何かしてしまったのかと内心ビクビクと震えていると、ヘファイストスは懐から一通の手紙のようなものを取り出して、そのままロキに向けて差し出した。押されているエンブレムは彼女のものとは違う「三本の金槌と火箸」だ。このエンブレムが示す神格を探すが、この場にはいないことに些か疑問を覚える。

 

「そういや、今日はなんで来とらんのやゴブニュの奴。確かランクアップしたんやろあの子?」

 

「ゴブニュは『グランド・デイ』の準備でウラノスに呼び出されてるらしいわ………それで?なんでちょっと面白くなさそうなのよ貴女。」

 

怪訝な表情のヘファイストスがそういうと、ロキはまるで駄々を捏ねる子どもの様に机に脚を乗せて、喚き散らした。

 

「─────だってなぁ!?あの子頑固すぎるんや!?一体どれだけウチとウチの子ども達………主にアイズたんとティオナが叱られたか!それに今回でレベル6やろ!?鍛冶師でなんでそんなにレベル上げれんねん!」

 

オラリオでも有数の実力を持つ規格外の位階にまた一人足を踏み入れた。ダンジョン攻略の最前線であるこの都市でもレベル6というのは数えるほどしか存在しておらず、その面子も二大ファミリアと言われている道化(ロキ)美神(フレイヤ)の眷属にしか存在していなかった。

 

だが今回、ゴブニュの眷属からレベル6が出たことでその流れも大きく変わることになった。

 

「ウチの椿も今回のことで「先を越されたっあの老人めっ!」って自分の武器担いでダンジョンに向かっていったわ………大神(ゼウス)女神(ヘラ)時代の()()()()のあの子相手はちょっとね………。」

 

鍛冶師は基本的に最前線には立たない。冒険者の様に戦闘力を求められることがなくほとんどの鍛冶師がLv.2や3という高くても第二級に届くか届かないかでいるが、その中でも「椿」とヘファイストスに呼ばれた女性と今回の「老人」と呼ばれた男性は異常と言える存在だった。

 

そんなことを話しているうちにも神会(デナトゥス)が進んでいく。その様相は下界の子ども達が想像しているようなものではなく、もっと雑多なものだ。

 

曰く「最近ノートが夜にテンション上がってギルドに検挙されたらしい」曰く「アレスがまたオラリオに向けて攻めてくるみたい」曰く「ウラノスがあの三女神をオラリオに迎え入れようとしてるけどどうなんだ?」等など………

 

正直に言ってただの雑談会場となっている場だったが、そこで進行役であるヘルメスが一度仕切り直すように一拍を置き、会場全体を見渡す様に視線を巡らせた。一瞬ロキと視線が合った気がしたが、すぐさま他の神々に向けて話を再開した。

 

「(………なんや?今の)」

 

「さぁーて、盛り上がってきたところでそろそろ皆お待ちかねの「命名式」に移ろうじゃないか!」

 

一層盛り上がりを見せる神々を前に、ロキは先程の視線に込められたヘルメスの意味に引っ掛かりを覚えた。

 

だがそれよりもまずは()()だ。ヘファイストスから渡された神ゴブニュが自身に向けた言伝………というよりも手紙の内容が問題だ。あそこのファミリアにも正直()()()()()()()がある。向こうはどう思っているのかわからないが、ロキのファミリアはあの男に救われている。

 

この中身がどういう内容であれ、この時期に送ってきたという事は主神か団長がジークに興味を示したのだろう。

 

「(あんの老神か、それともあの頑固刀馬鹿か………さて、どっちや………?)」

 

封を開ける。中に入っていたのは重さから何となくわかってはいたが一枚の羊皮紙と薄く伸ばされた刀身の欠片が入っていた。羊皮紙にはただ一言「都合の合う時間に工房に来い」と書かれていた。この文字の筆跡はゴブニュのではなく団長の()のものだろう。

 

何処となく「苛立ち」を感じさせる文体に少しだけ苦笑を覚える。これは相当に相手はお冠の様子だ。いったいジークの何が彼の琴線に触れたのかはわからないがまず間違いなくお説教コースになるのは確定かと感じてしまい、この後に控えている面倒に頭を悩ませる。

 

「じゃあ、シヴの所のクリスちゃんは「美摩女」と書いて【ビューティー・ウィッチ】で~。」

 

「ちょっとまってぇぇぇぇぇぇぇ!?まだウチの子そんな歳じゃないんですけど!?!?!?」

 

「まだ十代だったろあの子。」「誰だこれ提案したの」「モージの奴がさっきこそっとヘルメスに伝えてたぞ。」「性格わりぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

こうして命名式では神々の様々な渾名が付けられており下界の子どもたちにとっては素晴らしいもいのと感じるものも神々にとっては滅茶苦茶恥ずかしい厨二センス爆発の名前となってしまっている。やはり神の思考はまだ下界には早いという事なのだろう。

 

そんなわけで、神は自身の眷属のために少しでも「無難な名前」を勝ち取るために必死になる。

 

「それじゃあ次は………おっと、これはビッグネームだ。ロキの所の「ジーク・二―ヴェルン」だ」

 

自身の名前が出たことで一回思考を辞め意気揚々と立ち上がる。その瞬間ロキに向けて神々の視線が一斉に集まる。その視線に込められているのは疑念と警戒の感情だった。

 

 

「(まっ、そりゃこんな感じになるわなぁ。)」

 

元々都市最大派閥の一角を担うファミリア。それもランクアップの最速記録を持っているファミリアから新たに記録更新を為したのだ。それも前回の記録を大幅に更新した「一ヶ月」という大記録。当然ながら不正………より正確に言えば下界では禁止されている「神の力(アルカナム)」を使用しているのでは?と問題に上げられるのはと懸念はしていた。

 

アイズの頃ですら、周りが「人形姫」と呼ばれるほどに周囲に認知され、そのモンスターへの苛烈さから「一年」という短い期間でも疑われることはなかった。

 

だが今回ばかりは話が違う。ジークの成長速度は【生還願望(イノセント・サバイブ)】という成長促進のスキルがあったからこその結果だ。眷属のステイタス情報は基本的にはギルドを通じて公開される。その内容は主にランクアップ前の最終ステイタスがメインであり、スキルや発現している魔法は公開されない。

 

だからこそ、他の神々は()()にこそあのロキがひた隠しにしたがっている「秘密」が存在している。娯楽好きの神々がいかにしてそれを引き出そうと画策しているものの、誰もそれを口に出さない。

 

それは何故か?最初にロキに対して問いを投げかけられるような神格はこの場においては一柱のみ

 

 

「ロキ?少し聞きたいのだけれど─────────いいかしら?」

 

 

「おう、なんやねん──────────フレイヤ」

 

 

もう一つの都市最大派閥を率いる美の神は、久方ぶりに参加した神の集会場にて口を開いた。誰もがフレイヤがロキに向けて言葉を発する、その瞬間を待っていた。お互いにダンジョン攻略の最前線を走り続けているファミリアの眷属を持つ主神の二人。

 

ロキを相手に正面から事を構えることができるとすれば、このオラリオでは秩序を維持するガネーシャかギルドを統括するウラノス。そして女神フレイヤぐらいだろう。先に名を挙げた神物は共にオラリオの秩序を維持する側のものとしての側面が強いため、純粋な戦力として勝負が出来るのはフレイヤのみだ。

 

「この子の記録、間違いではないのよね?貴女が私たちの知らない方法で神の力(アルカナム)を使って、彼を弄繰り回したの?」

 

過去、神の力(アルカナム)を使って眷属である子どものステイタスを引き上げる方法が模索されていた。当然神々が決めた下界のルールで「神の力を使う事」は禁じられていたものの、そのルールを掻い潜って行おうとする神もいたのだ。

 

だが、どれもこれも失敗に終わった。というよりも、天上の神々がそれを見過ごすわけがなかった。神々が敷いたその絶対の規則は、どんな神も破ることは出来なかった。

 

「──────アホ言うてるんちゃうぞ色ボケ。全部あの子の頑張りの………【冒険】の結果や。それに対していちゃもんつけてんとちゃうぞゴラ。周りのお前らも、コソコソ言っとらんで堂々と前に出て言うて来い。話はそれからや。」

 

その堂々たる振る舞いに、他の神々は狼狽える。あのロキが真正面から神会(デナトゥス)で喧嘩を売ってくるのは稀だ。自分の子ども達に変な「二つ名」を与えようとした時ですら恫喝するまでに留めておくことがほとんどだが、今回ばかりはその「遊び」すらない。

 

だが、それを以てしても目の前に提示された記録は神々が完全に信用することが出来ていなかった。正確には「天界のトリックスター」である彼女の言葉を信じるためには()()()()どうしても足りない。

 

ヘファイストスでも、ガネーシャでも、フレイヤでも駄目だ。ロキの派閥と近しい場所にいる彼ら彼女らではこの場を乗り切ることが出来ても、その先がない。

 

 

 

「「「神ロキの言葉、信用に値すると我等【運命】を司る三女神が保証しましょう」」」

 

 

 

だからこそ、彼女ら三柱はこの場に集っていた。




一問一答質問コーナー

Q.うおおお!すまないさんが出てる!

A.ジーク君を導く立場にあるのだとしたら、まず間違いなく彼でしょう。なんで彼が出てきたのかはまぁ追々語るとしましょう。

引き続き感想や質問(答えられる範囲で)、誤字報告をくれると作者のモチベが上がりますのでよろしくお願いします。もちろん批判も大歓迎でございます。


はいということで第二章での重要キーパーソン「三女神」が登場です。
ここから先は少しだけオリジナル展開?まぁ元々ベルくんが居ない時点でという話ですが、始まります。これで原作でこの神たち出てきちゃったらどうしようかなぁと………。こえぇぇぇぇぇぇ!

話の流れは速い方がいい?それとも遅い方がいい?

  • 早い方がいい
  • 遅い方がいい
  • てめぇが勝手に決めろ
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