生還を望む竜殺しの冒険譚 作:瑠衣
「あっジーク、お待たせしました………。遅れてしまって申し訳ありません。」
「いや、大丈夫だ。俺も今来たところだからな。」
噴水広場。バベルが見上げられオラリオでも絶景の光景を見ることが出来る
片やシンプルな柄のないシャツにベストを羽織り、その腰には剣帯だけを吊り下げられておりいつもだったら下げられている相棒たちも今日は出番がないとして、自身の部屋で留守を任せている。
片や髪を束ね普段とは違う緑を基調とした裾に向かってゆるやかな広がりを持たせたスカートに、エルフらしく肌を見せずゆったりとした柔らかい素材の襯衣を来たジークと年齢が近い女性………同ファミリアのLv.3冒険者レフィーヤ・ウィリディスだ。
彼ら彼女らがどうしてこんな風に蜜月を楽しむ恋人同士のようにファミリアの
最近、リヴェリアと目が合わないことが多い。稽古中でも迷宮攻略中でもそちらに視線を向けると、どうしてか顔ごと逸らしそそくさと場から去ってしまうことが多くなっていた。正式にランクアップを公表した後からという事は、あの十八階層までの決死行()が原因と考えられる。
決して表には出さないように自分では心掛けているつもりのようだが、明らかに動揺が見え据えており、ファミリアの団員は勿論の事、いつも周りに控えているエルフたちも「リヴェリア様の挙動が最近おかしい」「何かお悩み事があるのでしょうか………」等などと不審がられている。
「ジーク、君は何か心当たりはないかい?」
わざわざ、ジークの部屋にまでやってきたフィンが相談しに来たところで、ジークも事ようやく事態を理解した。この前の迷宮攻略で無理やり十八階層にまで連れて行ったことをまだ気にしているのだろう。あの時は確かに大変だったという記憶はあるが、後のステイタス更新でそれなりにステイタスが上がったことでジークは満足していた。
そういえば、その時のステイタスをリヴェリアには伝えるのを忘れていたような気がする。ロキからは「一応リヴェリアにも報告しとくんやで~」と命を受けていた事をすっかり忘れていた。
それを伝えると、フィンは一つ提案を提示した。
ランクアップの際、様々な知識を教えてくれたリヴェリアに対して、何か贈り物を贈ってみては?と。彼女とのいざこざの解消するには絶好のチャンスなんじゃないかな?と語るフィンの言葉に、「あぁ、なるほど」と自身のの中でストンと、その考えを呑み込んだ。
そうと決まれば話は早い。
まずは、事前の下調べだ。一体リヴェリアは何が好きで、何が嫌いなのか。ロキ・ファミリアの団員にはハイエルフであるリヴェリアを慕ってか、または女神ロキの好色癖が出ているのかエルフの女性が多く所属している。彼女たちは普段付き人のように傍に控えており、食事の席では周りを囲い込み、野蛮な冒険者から彼女を守っている。
ファミリアの幹部を除けば、彼女たちがファミリアの中で最もリヴェリアに近い。
「───────と、いう事で好みや苦手なものを聞きたいんだが、大丈夫だろうか?」
「……………ずいぶんと、いきなりですね。貴方は……。」
まず話を聞きに向かったのはファミリアの団員がよく利用している談話室の一つ。そしてその場に集まっている冒険者の一団───より正確に言えば、第二級冒険者の集まりにいる彼女………Lv.4でありファミリアのエルフの中でも年長者で信頼され、神々に【
彼女はこのロキ・ファミリアの中でもエルフの纏め役とされており、リヴェリアからも信頼されている。だからこそ、レフィーヤよりもまずは彼女に相談するのがいいと感じていたのだ。
ジークの問いにアリシアは一度溜息をつくと、持っていたティーカップを机に置いた。
「あのですね………そもそも私は貴方と初対面なのですが?」
「?あぁ、それはすまない。先達に対して無礼な態度を取った。改めて名乗らせてくれ。」
そういうと、ジークは数歩身を引き、右手を胸に左手を後ろに回して頭を下げる。その騎士然とした仕草にその場に集まっていたラウルやアナキティといったファミリア二軍のメンバーは驚いたように目を丸くした。
その姿が慣れを感じさせない………不格好な仕草だったからではない。余りにもその姿が堂に入っていたから。もし彼の腰に剣が差してあれば、より"らしい"と感じる事だろう。ジークの容姿も相まってか、姫に傅く騎士の姿を幻視させる。目の前でそれを見せつけられたアリシアも先ほどとは違い感嘆の息を零す。
エルフは何よりも貞潔と潔癖を尊ぶ。今のジークはそれを体現していた。
「俺はジーク。ジーク・ニ―ヴェルン。前回の
先日行われた
「………すみません。まさかそこまで畏まられると思いませんでした。頭を上げてください。」
申し訳ないように声を発したアリシアの言葉に、ジークは面を上げる。
改めて、その場でリヴェリアに対する相談を持ち掛ける。アリシアも最近のリヴェリアの事は気にしておりどうしたものかと思案していた。というより今集まっているメンバーの話のタネがまさにそれだった。
「そういうことだったんだ………あのリヴェリアがあんなに挙動不審になってるところ見るの新鮮だったけど、流石にね………。」
「んー、それで贈り物っすか………いいんじゃないっすかね!?リヴェリアさんも喜ぶと思うっすよ!」
【
そしてその二人につられて集まっていた他の団員もそれぞれに意見を出し始めた。
「女性に贈り物をするんだから………やっぱりアクセサリー?」
「いやいや、流石にそれは重くない?無難にハンカチとか………あ、後はお菓子とか!」
「食べ物系だと苦手なものが入ってると不味くない?」
「なら、ドライフラワーとか?」
「最近出来た小物を扱ってるとこが割と評判いいらしいぞ。」
「ふむふむ、アクセサリーに、小物に…………ドライフラワー?というのもあるのか………。」
様々な意見の一つ一つを羊皮紙に纏めていく。初めて聞くものもあり自分の見識がまだまだなのだと、再認識される。中にはその個人が望んでいるような希望もあったが、まぁそれは追々相談料として彼ら彼女らに送ることに決め、最後にもう一度アリシアに意見を求める。
彼女はジークが纏めた羊皮紙を覗き込んで数瞬悩んだ後、いくつかリヴェリアが好みそうなものをピックしていく。同じエルフとしての感性を持っているアリシアが頼もしく感じつつ、そちらに視線を落とすと、「アクセサリー」のところに二重丸が付けられており、彼女はこういう華美なものが好みなのかと聞くと
「そういうことではありませんが………女性としてはこういう物を異性に送られるというのは少し憧れがあるのでは、と………。あっ!あくまでも私の個人的な考えですので!」
「あ、あぁ、わかっている………参考にはさせてもらう。」
少し赤らんだ頬とほんの少し荒げた声に気圧されつつも、彼女の言う事だと「アクセサリー」を第一候補とし、他の物も順々に第二第三と候補に入れていく。
「でも、贈り物で一番大切なのはあくまでも「感謝する気持ち」ですから。それに貴方が贈るのであれば、リヴェリア様も余程の物でなければそこまで嫌がることはないと思いますよ。」
最後にそう話してくれたアリシアや、他の団員に感謝しつつ、その場を後にした。
「そういえば、候補をまだ聞いてませんでしたけど、どんなものがあるんですか?」
そして時間は戻り、現在。
万が一にもリヴェリアに見つからないように、本拠地である「黄昏の館」ではなく敢えて外での待ち合わせを行ったジークとレフィーヤ。噴水広場から歩いていき、そのままメインストリートを通り抜け商業区の方に向かっていく。
このオラリオは迷宮を中心とする魔石製品による「経済都市」と冒険者の拠点としての云わば「城塞都市」の側面が存在しており、このオラリオに来てしまえば下界において生活に困ることはない。行商といった多くの商人も多く立ち寄り商いをする影響もあってか、おおよその事が都市内で完結することが可能になっている。
その中でも商業に重点を置いた区画。それが今二人が向かっている「商業区」だ。
「ファミリアの面々には色々聞いてみたんだが………少々候補が多くて………。」
これなんだが……と差し出した羊皮紙をレフィーヤに見せる。第一から第三までの候補をざっと見通して、自身の知識の中にある近くの店舗を視線だけで探す。ジーク自身はオラリオに来て日が浅く、強制的な休日もあって街を歩いたことはあったが、そこまで詳しく知っているわけでもない。
今回、レフィーヤを頼ったのはそんな自身へのアドバイザーとして、現物を見てリヴェリアが喜びそうな物の判定をしてもらうために呼んだのだが、どうにもいつものローブの
そんなレフィーヤの心情はジークに誘われたということもあり、平静を装っているものの割とピンチになっていた。
「(……………この人、まったく意識してないんですけどっ!?エルフを買い物に誘っておいて、そのエルフがこうして着飾って誘いに乗ったんですけどっ!?何か一言くらい言ってくれてもいいじゃないですかっ!?)」
年頃の少女が同じく年頃の男子に遊びに誘われたのだ。同室のルームメイト(彼女自身「そういうのじゃないと思うんだけどなぁ」とのことだったが、それはそれとして楽しんでいた)にあれこれと相談しながら服装を決め、いざ参らんと挑んだ今日この日だった。
確かにジークからは「リヴェリアに贈り物をしたいから付き合ってほしい」と言われただけであり、結局のところレフィーヤの思い違いということなのだが、ヒューマン換算でもエルフ換算でもまだまだ若い彼女に勘違いするなという方が酷な話というものだろう。
無論、全てにおいてレフィーヤが悪いわけでもない。こういう時、大抵の場合矢面に立たされるのは、男性側であるジークなのだ。
「?レフィーヤ、どうした。何か変だったか?」
「い、いえっ!大丈夫です!それよりもこの近くだとあのお店が近いですねそうですね!行きましょう!いや行きますよっ!」
「ちょっ、レフィーヤ!?」
ジークの腕を引き、ちょうど近くにあった店の扉を破壊する勢いで入店する。
入った店の名前は「黒森人の貯蔵庫」というオラリオでもよくあるエルフ御用達の店の一つだ。店内は仄かに心地よさを感じる暖色の照明に、エルフが好む深緑の色合いが全体に広がっており、森の静けさと暖かさがを感じさせる店内だ。
並んでいる品物はどれもあまりオラリオでは見ないものであり、レフィーヤが言うには店主であるエルフの商人が各地の森で仕入れてきた逸品だったり、掘り出し物などを置いているらしい。中には呪いが込められたアイテムや、用途不明のよくわからないものまで揃えているとのことなので、注意が必要ということらしい。
そしてレフィーヤにとって何よりも気を付けなければいけないのは、ここの店主はオラリオでも珍しい「
「………白の王族の跡取りか。随分と乱暴に入ってきたが………ヒューマンなんぞ連れて何の用だ。」
いきなりの棘のある言葉に、しまったと一歩引いてしまうレフィーヤ。ここの店主はにしては黒妖精にしてはレフィーヤやリヴェリアといった「
「え、えっと、今日はリヴェリア様に贈り物をと思いまして………」
「………私の店には、あの行き遅れお転婆王女に贈れるようなものを置いている記憶はないが………それでもいいのなら見ていくがいい。」
そう言って直ぐに店の奥に引っ込んでしまい、店主の姿が完全に見えなくなったことで肩の力が抜ける。状況に全く着いていけなかったジークはそんな彼女の姿を呆然と見ている事しか出来ていなかった。
一問一答質問コーナー
Q.漆黒のインファント・ドラゴンを倒した分のステータス成長がないように思うのは気のせいでしょうか?倒す前のステータスからLV2へランクアップしているような………
A.はいっ、申し訳ございませんっっっっっ!かんっぜんにミスでした!滅茶苦茶忘れてました。
最初はこの感想を見て少しステイタスを上げようかなぁとも思ってたんですけど、ふと今考えていた設定に組み込めそうだったのでこのままでいきます。
行き当たりばったりですみません………………。
引き続き感想や質問(答えられる範囲で)、誤字報告をくれると作者のモチベが上がりますのでよろしくお願いします。もちろん批判も大歓迎でございます。
はい、掟破りの火曜日投稿。そしてお久しぶりでございます。現在就職活動中の作者です………これを書いている時は決まっているといいなぁ………と不安に思いながらも生活しております。
こんな時こそ!皆様との交流が楽しみですのでどうか!どうか!色々感想くれると嬉しいです!
話の流れは速い方がいい?それとも遅い方がいい?
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早い方がいい
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遅い方がいい
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てめぇが勝手に決めろ