生還を望む竜殺しの冒険譚 作:瑠衣
とある女神は天を貫く塔にて、微笑む。その部屋には彼女とその眷属たる
どんな表情をしていても、絵になる彼女がその顔を微笑ませれば神々であろうと恍惚とした表情で「魅了」されることだろう。それだけ彼女は美しかった。最近は退屈で退屈で、今にもため息をついてしまうだろうとしていた彼女は、今では何か面白いものを見つけた子どものように楽しそうにしている。
その理由は、最近対抗派閥である【ロキ・ファミリア】に入団した
少年は、あの年齢で
──────だが、とそこで思考を止める。
こんな
猪人の武人は自身の主神を注視しようと視線を向けると美神は表情を変えずに、何か自身のなかで問答している眷属の事を珍しそうに見詰めていた。視線が重なり少しだけ気まずい空気が流れる。
「………何でしょうか、フレイヤ様。」
「─────貴方のそんな風な顔を見るの、随分と久しぶりね。」
自分はどんな顔をしていたのだろうか?神に不敬を感じさせてしまっただろうか?と不安に思うオッタルをみて、可笑しそうに笑う美の神…【フレイヤ・ファミリア】主神フレイヤは椅子から立ち上がり、窓に近づいて眼下の街を見下ろす。
あそこまで歪になった下界の魂を、フレイヤは見たことがなかった。
明らかに混じっている。それも一つじゃない。複数のモノが彼の魂に良い方向に嚙み合ってしまっている。あんな状態では、そもそも息を吸うことも、立っていることも、座っていることも、
────────────彼は、笑っていた。
道化のように、栄光を謳う英雄のように、笑っていた。
だからこそ彼女は微笑む。彼に向けて神の愛の一欠けらを分け与えよう。
「オッタル、用意をしておいて。然るべき時に彼に会いに行くわ。」
次の日、ジークはリヴェリアに呼び出されていた。昨日の今日で少し顔を合わせずらかったがこうして呼び出されてしまっては行くしか選択肢はない。昨夜ロキには「怖い」と言われてしまい、その理由を考えていたジークだったが、全くもって身に覚えがない。
これまでもただ強くなるために、生きるために行動してきた。オラリオに来たのも、理由は覚えていないが、ジーク自身が生きるためにここに来るしかないと感じたから村を飛び出したのだ。そうした行動を他人に何と言われようとも変えるつもりはないが、彼女たちは「ファミリア」、家族だ。家族であるならば他人ではない。心配をかけるようであれば謝るし道を変えなければならないだろう。
リヴェリアに言われていた場所に着くと、そこにいたのはリヴェリアレフィーヤの他にもう一つの人影を確認した。その金の髪は見たものを魅了させ、一部の女神も羨む美貌を持つ少女、「アイズ・ヴァレンシュタイン」。まさか彼女が一緒にいるとは聞いていなかったジークはほんの少し、顔を顰める。
あの歓迎会の際に、確かに己の中に感じたアイズ・ヴァレンシュタインとの【縁】
それが一体どんなものかを自分の中で確信するまで、彼女との接触はなるべく控えていたかった。まさかこんなにも早く再会することになるとは思っても見なかった。
「来たかジーク、今日の訓練の前に………昨日は済まなかったな。我ながら冷静さを欠いていた。」
「あ、あぁ、それは良いんだが………何故ここにアイズもいるんだ?」
見るからに張り切っている様子のアイズに、若干引きながらも魔法に対しての叱責を受けると思っていたジークはリヴェリアに向けて問を投げかける。そんな彼にエルフの女王はファミリアの団員ですら見たことがないような良い顔で答えた。
「謝りはしたが、今回の一件で私もようやく判断することが出来た。ジークお前はダンジョンでモンスターと相対している時、必ず死角を取って攻撃を仕掛けていたな。」
「?あぁ、その通りだが………。」
ダンジョンでの立ち回りは彼のダンジョン外での生活に直結している。
確かにこれまではその戦法でも対処することが出来た。ステイタスが合わさったことでジーク自身の「技術」も育ち始めてきた。だがこのオラリオでジークが望むように生きていくためには大前提として必要なものが、彼には欠けている。
「確かに、今のダンジョンの階層ではその方法も通じる。だがそもそも私達は
もし彼がランクアップ、上位の
だからこそ、少し手荒だが経験を積ませることにしたのだ。
「これから一週間ダンジョンに入っていない間は、ここにいるアイズと剣の稽古をしてもらう。ダンジョン内では、最早止めはしない。魔法もなんでも使うことを許可する代わりに、ダンジョン五階層に進出する。」
ステイタスの事を考えれば、既にGの値に至っている物もある以上五階層進出は理にかなっている。上級冒険者の付き添いもあれば、「新米殺し」とも言われているモンスター【ウォーシャドウ】も油断してはいけないが、対処することは出来るだろう。
だが、問題はそこではない。
「………俺は、死ぬのか?」
「何を言っているんだお前は…‥アイズたっての希望もあって「手加減を出来るように」するための訓練でもある。Lv.5の冒険者としてはレフィーヤと共に下の者たちを指導することも覚える必要があるとフィンも私も感じていたところなのだ。」
アイズは「聞いてないっ!?」といったような表情を見せる。彼女は確かにジークに対して色々したいっ!とリヴェリアに対して話していたが、今朝突然「アイズ、着いてこい」と言われてそこにジークが現れたことでその願いを叶えてくれたのかと、アイズの中の小さな
だが待っていたのは、リヴェリアによる「訓練」という言葉。思い出されるは過去の己に降りかかったあの地獄の日々が蘇ってくる。ガクガクと震え始める足をレフィーヤに心配されながらも、なんとか持ちこたえるアイズ。
「?ひとまず今日は私とレフィーヤは見守るだけで、訓練の仕方はアイズ。お前が主導でやってみろ。」
「………うん、わかった。」
リヴェリア達はそう言って少し離れたところにある机と椅子に座っていく。そこには幾つもの本が積み重なっており、見学だけだと思っていたレフィーヤもこれには少なからずショックを受けていた。
そして数日間、ジークはアイズとの剣の鍛錬を開始することになった。だが、それは鍛錬という体を成すには明らかに間違っているものであり、ジークが予見していた「いやな予感」が的中することになった。最初に行うことになったのは素振り。鍛錬でいえば至って普通のものだったが唯一違ったのは………。
「ふっ─────!」
「っ!?」
縦に剣を振り下ろす周りで、風切り音を鳴らしながら通り過ぎる鞘の入った刃。それを振るっている
「………あっ」
アイズの言葉と共に顎に剣閃が打ち込まれ、気を失う。これで都度五度目ともなるが、気を失わせる程度で済んでいるという事はアイズの手加減がしっかりと出来ているということなのだろう。目を覚まして、彼女の謝罪を受け止めるジーク。これも既に五度目なのだが妙に嬉しそうにしているのは気のせいではないのだろう。
目覚めるたびの光景が、アイズの膝枕の上なのは何か理由があるのだろうか?と疑問に思うジークだったが、これはリヴェリアに「気を失ったらこうしてやれ」と言われて彼女自身も満更でもなかったようで、先ほどからギリギリを狙って「そろそろいいかな…?」といった所でジークの意識を奪っているのだ。
その事実を知りえないジークは、これも何かしら、例えば休息には膝枕をすると回復するのが早いのだろうと少し無理やり理解した。
「えっと………大丈夫?ジーク。」
「……すまない、また気を失った。まだまだ鍛錬が足りないな。」
「っ!う、ううん。ジークは頑張っていると思うよ。吃驚するぐらい早く、強くなってると思う。」
ここまで剣を振っているジークを見て、自身の幼少期と比べると格段に速い速度でステイタスを上昇させているのは感じている。現に日々のステイタス更新では総合値500オーバーという破格の数字を刻み続けている。それに元来の習熟の速さが嚙み合ったことで数刻前の彼とは比べ物にならないほど、正確に剣を振るっていた。
その姿にアイズは、何処かで見たことあるような既視感を覚える。それが一体どこで見たのか思い出せないが、ジークの剣は何か
それを無言で受け止めるジーク。第三者から見れば仲の良い姉弟か、恋仲に見えアイズを知る多くの冒険者が見れば血涙を流すことだろう(現にレフィーヤは悔し涙を流して、リヴェリアに怒られていた。)
「休憩もできた、続けよう。」
「………あっ、待って、そろそろ別のことをしよっか。」
そういうとアイズは愛剣でもある「デスペレート」を先ほどと同じように鞘に納めた状態でジークの前に立ち、構えを取った。その瞬間、彼女の「冒険者」としての殺気が顕在化した。全身が生命の危機を感じて思わず、剣を抜き一気に跳躍してアイズから離れる。
ただ、鞘に納めた状態で剣を構えただけ。そう、それだけのはずなのにこの圧力。モンスターとはまた違う「人の殺気」。特有の天然さで忘れそうになるが、彼女はこのオラリオでも有数のヒューマンの剣士であり、それはつまり女性の冒険者のなかでは彼女がもっとも接近戦が強いということになる。
「(侮っていたわけじゃなかった、実力はこの身をもって知っていたつもり………いや事実「つもり」だっただけなのだろう。彼女の事をどこか軽く考えていたのだろう。)」
彼女とは一度もダンジョンに潜ったことはなかったが、幼い頃その苛烈さで「人形姫」「戦姫」と呼ばれていたらしい(後者は未だに呼び続けているものがいるようだが)。
「うん…その反応は凄く良いと思う。その感覚は忘れないで。今から戦いあう中でジークならより多くのことを吸収できると思う。」
「………戦いあうって、俺達がか?レベルの差で勝負にならないと思うが………。」
「うん、
アイズ自身もこの模擬戦では、勝負にならないことは理解している。だが自身よりも大きい力を持つ相手との経験はいずれジークのステイタスとは違った「技術」となって残り続ける。アイズはその「技術」を自身を見て学ぶことができると確信しているのだろう。
多少アイズの事を理解してきたジークですら、彼女の口下手さにほんの少しだけ溜息が出そうになる。
「じゃあ………やろっか。」
「わかった。」
思ったことをおくびにも出さずに、ジークはアイズに剣を向けるものの、動けない。モンスターと戦うとき、まずは死角を探す。そこからどう攻めるのか、どう相手を崩すかと思考を回すのだがそもそも剣を構えたアイズにそんな隙が存在していない。
観察を止めずに、じりじりと距離を詰めていく。接近しようにもこれ以上は彼女の間合いで、詰めた瞬間にその剣が先ほどと同じように顎を打ち抜くのだろう。その恐怖が足を竦ませる。どんなに打ち込まれ続けても、どうにも痛みにはなれない。それは人間の潜在的恐怖なのだろう。
「っ、あぁぁぁ!?」
声を出して、恐怖を振り切る。これ以上の恐怖を
一問一答質問コーナー
Q.こういう魔法は自爆するのか…。
A.最初の魔法は「不意の発動」+「魔法の標的を定めていなかった」ということもあり暴発しました。ベルくんのファイアボルトもあれ、標的とか目標定めてなかったら手焼けてたんじゃね?と考えていました。
ちなみにジークくんの怪我の深度はダイス振って決めました。一番重い怪我の場合だったら前回の話は、アイズ視点の話になっていたところです。
誤字報告をしてくださった「キングサリ」様「人見知り(極)」様、ありがとうございました。
引き続き感想や質問(答えられる範囲で)、誤字報告をくれると作者のモチベが上がりますのでよろしくお願いします。もちろん批判も大歓迎でございます。
戦闘描写、むっっっっっっっず………誰か書き方教えてくれ………
あっ、それともしかしたら来週はお休みするかもです。
話の流れは速い方がいい?それとも遅い方がいい?
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早い方がいい
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遅い方がいい
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てめぇが勝手に決めろ