銃声の後、二人の間に沈黙が漂う。観客のリコリス達は逆にざわざわと話し始める。
「フ、フキさん……えっと、これって……」
「引き分け……だな。」
こ、こんな事あるんだ……。双方、紙一重の戦いだったなぁ。あ。たきなと千束はどうなったのかな?
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おいおい……なんだこいつら。なんかすっごい連携取れてるんだが。それと……
バン!
錦木は銃声の前に動き出し、素早く弾丸を避けた。これはペイント弾とはいえ、銃弾避けるとかどうなってるんだ?
それから何度か隙を見て攻撃をしてみたが、一向に当たる気配がしない。これは普通にやってもダメだな。一か八か賭けてみるか。
そう判断した私は、二人の死角に回り込む。井ノ上がすぐに気づいて撃とうとして私に銃を向ける。
私は素早く切り返し、間一髪で回避する。いくら射撃が上手いたきなでも、予想外の動きをした相手は捉えきれなかった。とりあえず第一関門クリア。さらに難しいのはここからだ。
私は引き金に指を掛け、すぐに引けるようにしながらたきなに照準を合わせる。これは時間勝負。多少ズレてもどこかに当てられればいい。
私は菫と会ってからずっと思ってた。
天才って奴は確実に存在するんだなと。
正直言うと羨ましかったのかもしれない。私はリコリスの中では別に弱い方では無い。射撃精度も、運動能力もそこそこある。だけど、突出した特技なんてなかった。
それでも、人の意識の外を突くことは得意な方だと思ってた。
だけど、菫はわずか三日で私を超えてきた。あの子は人の感情に敏感だった。それを上手く活かしたんだ。
なんで人が撃てないあいつがこんなに出来てしまうんだ、と思ったのは一度や二度じゃない。
さらに、菫は戦闘記録、映像から相手の傾向を把握し、拳銃無しでターゲットを制圧出来るようになってしまった。
菫のことだ。私がお前に嫉妬していた事にも気づいていたんだろう?その上であんなに優しいのか。
羨ましいな……すべてが。
だから今だけでも、挑戦させてくれ。お前の技を少し借りるぞ。
井ノ上が引き金に手を掛ける前。私は弾を放った。
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「あれは……菫の……。」
犀羅さんは今までで1番真剣な顔をしていた。何があったのかは分からない。でも。私も負ける訳にはいきませんので。
私は銃の引き金を引く。千束は私の動作を見たのか、私を見守っているようで。
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やっぱり及ばなかった。この二人にも、菫にも。私にはあの一瞬で狙いは定められず、弾は井ノ上の横をかすって行った。
やっぱり、私は私って事だな。でも今気づいたこともあるんだ。
あたし、って呼び方を変えたのも、以前よりも少し表情が柔らかくなった気がするのも、その感情のせいなのか。
私は、顔に着いたペイント弾の青を手の甲で拭い、無言で立ち去った。錦木が何か言いたげな顔をしていたけど、無視してそのまま歩いていく。
嫉妬の中にあったのは憧れ。