「まぁたここに来ることになるなんてね〜……。」
私たち三人は、一昨日来たばかりのDAの施設に来ていた。昨日、任務の時に話していた「楠木さんを問い詰める」を本当にやることになった。
千束はファーストリコリスだからその権限で教えて貰えるかもしれない、との事だ。
それに、リコリス全体に何か(昨日の銃のトラップのような)が起こっているなら、いずれか私たちにも情報が来るはず。
指定された部屋で私たちは雑談をしながら待っていた。しばらくすると部屋のドアが開き、いつもの仏頂面の楠木さんが入室して来る。
……仏頂面なんて本人の前では決して言わないけども。
「楠木さ〜ん。時間過ぎてるんですけどー?」
「呼び出したのはお前達だろう。」
「そーゆー問題じゃないんだけどまぁいいか〜。」
「千束も時々遅れてきてますからね?」
「うっ……。いやぁ……それは悪かったな〜って思ってるよ?」
千束の言葉にたきなはしばらく呆れていたけど、時間の無駄だと思ったんだろう。楠木さんに、本題に入るよう促した。
「楠木さん、単刀直入に聞きますけど〜?この一連の出来事の犯人、だいたい分かってるんだよね?」
「何故そう思った?」
「え〜……。だってDAだよ?そんくらいちょーっと調べたら分かるんじゃないの〜?」
千束の言葉に私は確かに……と納得する。
「……そうだな。犯人は大方目星がついている。」
「!司令!その犯人は誰なんですか!?」
「結論から言うと、犯人はリコリスの可能性が高い。」
「え。ちょっ……まじで?」
「えっ……嘘……。」
リコリスの仕業……だったの?
「そして、犯人の可能性が高いのはこの二人だ。」
「……え……。なずなと……柚子?」
「なずなって子は知らないけど、柚子って……菫の妹の!?」
「ああ。この二人について軽く説明する。」
(三上なずな)
15歳。セカンドリコリス。
菫同様に、今回京都から派遣された。菫とペアだったことがある。
(安藤柚子)
10歳。セカンドリコリス。
彼女も京都から派遣された。菫の実妹。幼いながらも昨年セカンドリコリスに昇格。
「二人とも、菫の関係者なんですね。」
「……うん。でも……なずなちゃんは……多分私の事嫌いだと思う。」
記憶の中の彼女は、いつも私への当たりが厳しかった。
よく「情けない」「足手まとい」「偽善者」など言われていた。
「でさぁ、その二人は今どこにいんの?」
「千束、何をするつもりなんですか?」
「尾行でもしよっかな〜って。」
「えっ……尾行?」
「……確かに、しておいて損は無いですね。」
「それなら……犀羅が尾行とか……隠密行動得意だよ。」
「えっ!?そ〜なの?じゃあ、犀羅ちゃん呼びに行く?菫なら、連絡先分かるよね?」
「……うん。」
「てことで〜、私たちは行くんで〜!楠木さん情報提供どうも〜。あ。犀羅ちゃん以外にはこの事言わないからご安心くださーい。」
決めたらすぐに行動する千束は、真っ先に部屋を出ようと、ドアノブに手を掛ける。その時。
パッと照明が消え、部屋は一瞬にして暗闇に包まれる。
「えっ?あれ、私なんか押した?」
「いえ、おそらくこれは……。」
「またやられたか!」
「……え、楠木さん、また……って?」
「この微妙な嫌がらせのようなものがここ数日で多発している。十中八九、例の犯人の仕業だろう。」
確かに、千束の銃も仕掛けがされていた。あの後確かめたら、たきなの銃にも同様の仕掛けがあった。……えっ?
"私"以外に……?
ぞわりと背筋に悪寒が走ったような気がした。どうしても認めたくなくて、私の脳はこの結論を拒絶する。……ダメ……今逃げたら余計に状況が悪化するだけ。私は必死に考えた。
何故このタイミングで仕掛けが作動した?そもそも、嫌がらせの目的は?銃の仕掛けはともかく、照明を消したくらいじゃ、本当に嫌がらせにしかならない。
そこまで考えた所で、ふと気づいた。
タイミングが良すぎる。帰ろうとした瞬間に電気を消すなんて。……まるでここから出したく無いかのように。
もしかして……
「……足止め」
「え?菫?」
「楠木さん!柚子は今DA内にいますか!?」
その言葉に楠木さんは一瞬目を見開いたが、私の思考に呼応したかのように、柚子の位置を確認する。
前回までの仕掛けの全てがフェイクのようなものだったとしたら。この仕掛けの目的は、誰にも気づかれずに逃げ切る事だ。
「―っ!やられたか……!」
逃走した事で、犯人はほぼ確定した。
安藤柚子。私の妹だ。