私たちは千束の提案でカラオケボックスに来ていた。
「場所変えるで普通カラオケ来るか?」
「確かにそうですね。」
「だって、ここなら部屋防音だから会話聞かれにくいし、歌いたかったら歌えるし〜!」
「歌いたいなら付き合わなくも無いですが……。」
「やった〜!」
「いやいや、こっちは暇じゃないんだからさっさと本題に入って。歌いたいならそこの三人で勝手にやっとけば?」
「感じ悪いなぁ……。わかったよ〜本題入るから〜。」
「なずなちゃんさ、この二人知ってるよね?」
千束は例のサードリコリス達の動画を見せた。そこにはなずなの姿もある。そう。この動画が最後の接触の一場面だ。
「そんなまどろっこしくしなくても、アタシが柚子の協力者かどうか知りたいんだろ?」
数秒の静寂が流れた後、たきなが口を開いた。
「この動画に映っている以上、下手な言い逃れは考えない方がいいですからね。」
「言われなくても分かってるし、そんなつもりないんだけどなー?」
「まあ結論言うと、共犯してるつもりは無い。」
「"つもり"とは?随分とはっきりしない言い方なんですね。」
「別に柚子の事なんざ知らないって事。まともに会話した事無いし、あいつが何してようが興味もない。」
「その割には怪しい事が多いんですね。そもそも、今日なんで一人だったんですか?」
「もう一人の奴は別任務に来てたリコリスと帰って行った。」
「単独行動は控えるように通達があったでしょう?」
「この短時間くらいどうにでもなる。アタシもそんな弱くないし。」
「ではあの(動画の)リコリスに声を掛けた理由は?」
「呼び出しだな。」
「呼び出し?何の?」
珍しくあまり話さない様子だった千束が会話に参加した。あまり話さなかった訳はおそらく手元の小型タブレットだろう。歌う曲でも入れていたんだと思う。
「人に頼まれて。なんのために呼び出したかったのかは分からないし、どーでもいいけど。」
それって、頼んだ人っていうのが柚子なんじゃ……。
「では安藤柚子の事はほとんど知らないと?」
「そーだよ。けどヤバいこと考えてそうではあるんだよなぁ。」
「ねー?役立たずの菫?」
「な、何……?」
私はビクッと肩を震わせた。声も少し震えたかもしれない。
「コイツは任務行ってもビクビクしてばっかりで役に立たないし、それどころか他の奴の足引っ張ってその所為で何人も死んでるし。」
そんなの分かってるよ。私だって。みんなの足を引っ張ってばかりだっていう事。
私は何もいい返せずに俯いた。
その時、テーブルに勢いよく手を付く音が聞こえ、私は顔を上げる。千束が静かな怒りに燃えているように感じた。
「黙って聞いてれば、菫の事好き放題言って。君はそんな事しか言えないの?」
「いや、事実を言っただけなんだけど?笑」
なずなちゃんは尚も調子を変えることも無く返答する。
「それが事実だったとしても、菫は菫で誰も傷つけない方法を考えて、今、菫は足手まといなんかじゃない。」
「人の悪口ばかり言うあなたの方が醜くて愚かですよ。」
見れば、たきなも怒っているようだった。
「問題児連中に言われたく無いな。命令違反の井ノ上サン?」
「たきなのことも菫のことも悪く言わないで。」
「どーでもいい。用も済んだしアタシはもう帰るから。」
なずなちゃんは乱暴にドアを開閉し、去っていった。