翌日。物音が大きくて、なんだかいつもよりも早く目覚めた。時刻は5時50分。いつも6時半に起きる私にとっては2度寝するほどの時間じゃないなー。と思い、布団から出た。
寝室の扉を開け、いつも通りたきなと千束に声を掛ける。
―――はず……だった。
「たきな?」
たきなは慌ただしい様子で、どこかに電話を掛けている。そして千束の姿は見当たらない。
普段なら、コンビニにでも行ったのかと思うところだけどただならぬ様子から非常事態なんだと分かった。
たきなが電話をしている間、私はすぐに出られるようにリコリス制服に着替える。
たきながスマホの通話終了ボタンを押したのを見届けて、私はたきなに尋ねた。
「ね、ねぇ……たきな、何が……あったの?」
「……菫。昨夜以降千束を見ましたか?」
たきなは、いつもの冷静さを少し欠いているようで質問に質問を返してきた。
「今日は見てない……けど、あの……何かあったんだよね?」
「千束が……行方不明なんです。」
「……え。」
「初めはコンビニでも行ったのかと思ったんです。ですが、スマホに連絡ひとつ無くて置き手紙の類いも無かったのでおかしいと気づきました。」
千束は何も言わずに出かけるような人では無い。確かに妙だと思う。じゃあどうして?
「それで、先程調べると何者かがここに侵入していました。」
「え?でも……どうして三人とも気づかなかったのかな……?」
「それはわかりません。菫、DAに行きましょう。」
「わ、分かった。」
――――――――――――――――――――――――――――
「おはよー千束センパーイ。」
「……ん?」
見知らぬ声に私、千束は目覚めた。目を開けると、いつもの私の部屋じゃなかった。それに加え、目の前の少女は……
「えっ?ちょ……柚子ちゃんだよね?」
ココ最近の事件の容疑者、菫の妹の柚子ちゃんだった。それだけで十分ヤバイと分かってしまった。
「たきなと菫は?」
いつもより低い声を発した。あの二人は無事なの?
「心配しなくても二人ともぐっすり眠ってますよ。そろそろ目覚めると思いますけど。ペットボトルに混ぜ込んだ睡眠薬は効いたでしょ?」
昨日の夜やけに眠いと思ったら柚子ちゃんの仕業だったなんて。うちに侵入されても警報システムが鳴らなかった訳じゃなくて、私たちが深く眠りすぎて気づかなかっただけって訳かぁ。
いやいや!納得してる場合じゃない!
「こんなとこに私を閉じ込めて拘束して、どうするの?私を痛めつけても何もなんないよ?」
「君らは脅しに使うだけだよ?それなら強い奴の方がいいでしょ。」
柚子ちゃんは敬語を外して話すと、すごい顔で私を見た。数ヶ月前に対決した、真島の顔が私の脳内にチラついたような気がするのは多分気の所為だよね?
「え、ちょい待て。君らって何?まさかほかのリコリスの子達にも同じ事……!」
「いや?今からもう一人にもやるだけ。」
パッと部屋のあかりが灯る。どうやら廃倉庫らしき場所に連れてこられたみたい。
さっきより明瞭になった視界の隅に、青みがかった銀にピンクのインナーカラーの髪が見えた。
えっと、確か綿城犀羅ちゃん……。
「え?犀羅ちゃん!?」
「そのうるさい奴は……錦木?こんな最悪な再会ある?普通?」
うるさいって言われちゃったよー。そこが良いとこなんじゃないの〜!?なんかジト目で見られてんですけどー……。
「先輩方、なんか楽しそうだけどさ?今から地獄を見てもらうんだから。その余裕がいつまで続くかな?」
柚子ちゃんはサバイバルナイフを持ち、不気味な笑みを浮かべていた。