――――――約四年前――――――
私が初めて人を撃った日。その後の事。
ガシャンッ
私が銃を落とした音を聞き、当時の相棒であった少女が私の方を見る。
「ちょっと何やってるの!?私1人じゃ捌ききれないんだけど!」
そんな彼女の声なんて、私には届かなかった。恐怖やら罪悪感やらで、とうとう耐え切れなくなった私は膝から崩れ落ちる。
何度も繰り返し響く銃声に紛れて1人の荒い呼吸音がしていた。それが自分のものだと自覚するほど、さらに悪化しているような気がしていた。
結局、私はおそらくそのまま意識を失った。
意識が落ちる前に朧気に聞こえたのは、あの少女の悲鳴。そして、見覚えの無い青みがかった銀髪を見た気がした。
どこかぼんやりとした私の意識が浮上してくる。目を開けると、白い天井が広がっていた。
私はガバリと起き上がると、引き出しに書類を収めている山岸先生と目が合った。
「あら。目覚めた?」
なんで私……ああ……気失ってたのかな。
状況を理解した私が部屋を軽く見渡した。隅の方に腕を組んで立っている少女がいた。私の視線に気づいているのかいないのか分からないが、よそを向いていた。
「犀羅、菫が起きたわよ。」
「知ってるんすけど。」
山岸先生の言葉にその子は無表情で返答する。
その子、犀羅さんは私を見据えると、無表情のままツカツカと私のいるベットの側まで歩いてきた。
「今、動ける?動けるんなら着いてきて欲しいんだけど。」
一応私の体調を聞いてるつもりかもしれないけど、無表情でこの言い方をされても断れるわけが無い。まあ、私も今はもう大丈夫だし、ちょっと歩くくらいなんとも無いだろう。
「わ、分かりました……」
私が同意を示すと、すぐにドアに向かって歩いていった。
私が連れていかれた場所は、まさかの私の自室だった。
犀羅さんは何も言わず私の部屋のドアをピッキングでこじ開けた。……本人がいる前でやらないで欲しいんだけど……。特に悪びれる様子もなく私の部屋に侵入すると、壁に寄りかかりながら私に再び話しかける。
「さっきの戦いの一部始終は見た。あたしに聞きたいことはなんかある?」
聞きたいことなど山ほどある。だけど、1番聞くべきは……
「……私が気絶した後、どうなりましたか……?」
「どう、とは?……ああ、あんたの相棒は―――――」
―――死んだよ
私は目を見開いた。そしてその目から自然と涙が溢れてくる。どうしよう……私の……せい……だよね……。ギュッとスカートの裾を握りしめる。
犀羅さんは表情ひとつ変えることなく続けた。
「とゆー事で、今日から私があんたの相棒。あたし身長低いけど、歳は一応あんたの一個上だから。」
……なんで?……一緒に居たって、また巻き込むだけ。それならもう1人にさせてよ。
「……お断りします。」 「は?」
犀羅さんが私を睨んだ。だけど私は構わず続ける。
「上官の皆さんにも伝えてきます。私は1人で―――――」
「人が撃てないお前が1人でどうするつもり?何?死にたいわけ?」
私は否定も肯定もせず黙り込む。
はぁぁぁ……と、犀羅さんはわざとらしく大きなため息をつく。
「あのさ。本当にお前が死にたいってんなら止めないけどさ、お前自身がちゃんとその原因を把握してんの?」
「……」
……確かにそう。私は多分ちゃんとは分かってない。
「……それがわかったところで何ですか?もう私は人が殺せない事、それは私自身が1番分かってます!」
「はぁ?誰も殺せって言ってないけど?」
「え?」
「知るべきことはいくらでもあるな。手始めに明日、二人で任務片付ける。とは言っても、お前の仕事はない。」
私の仕事はないって……?
「とにかく明日あたしが言う通りに動け。安心しろ。"お前には"人を殺させることはしない。」
その言葉を最後に犀羅さんは私の部屋から出ていった。