こちら、世界征服推進部ソロモンである   作:兵隊

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 今年もよろしくお願いします!
 

 ~ソロモンちゃんねる~
 
ヒヨリ「~♪」
オウヒ「……何だそれは?」
ヒヨリ「自作のラップです。えへへ、どうでしょう?」
オウヒ「え? あぁ、うん。その、宗教は自由だが、うん……」

通りすがりのミサキ(殿下が言葉を選びながら遠回しな苦情を言っている……)


第6話 ゲーム開発部よ永遠なれ

 

 

 ミレニアムの食堂にて。

 あまり人の出入りが激しくない、ミレニアムの一施設の一角にて。電動車いすに乗り、彼女は優雅に紅茶を飲んでいた。

 

 どこか絵画の一枚を切り取られたかのような仕草。

 白を基調とした服装に、肌も玉のように白く、頭髪も純白。

 どこか儚げで、この世のモノとは思えない雰囲気。触れれば壊れるような繊細さその身に漂わせていた。

 

 

「ふぅ」

 

 

 彼女は────明星ヒマリは手に持っているティーカップを、テーブルの上に置いてあったソーサーの上に置いて、一息を入れる。

 小さく、カチャ、と食器が接触する音が食堂に響いたのは、人があまりいないからだろう。比較的、人が集まりやすいのが食堂という施設の筈だが、今は喧騒とは程遠く静かなものだった。

 

 人通りが少ない時間帯だから、という理由でもない。

 もとより、ミレニアムサイエンススクールの校風からして、生徒はそこまで食事を重要と捉えてないのだ。

 栄養素はサプリで補える事が可能であるし、食事に時間を費やすくらいなら研究に時間を充てたい。

 

 そんなわけで、ミレニアムでは食堂よりも、売店の方が人通りは多いといえるだろう。

 

 何にしても、ヒマリには好都合だった。

 ヒマリは、自分が他人の注目を集める事を理解している。その原因も、絶世なる美貌、全知という学位、何よりも美少女過ぎるほどの容姿によるものだと、ヒマリはこれでもかと言うくらい理解している。

 

 故に、今の状況は好都合だった。

 何かに思考を巡らせることに、他人の眼を気にしない今の状況が、好都合であった。

 

 ヒマリの頭の中を反芻するのは、先ほどのやり取り。

 つまりは、ゲーム開発部に用事がある、と別れた一人の生徒────天上院オウヒとのやり取りだった。

 

 ヒマリは言った。

 思うがままに行動して欲しい、と。

 何事にも縛られず、振舞ってくれれば、きっと良い結末になる、と。 

 

 それは言葉というよりも、願いに満ちた言葉であったことを、彼女は自覚する。

 

 対してオウヒは少しだけ考えて。

 

 

『これから、闘いが始まる、か……』

 

 

 オウヒにとって闘争とは、あまりにも大きく、心躍る行為であることを、ヒマリは知っている。

 嬉々として、どれだけ怪我を負ったとしても、大量の血液をその身から流れようとも、彼女が満足するまで止めないし止まらない。

 

 故にこそ、戦闘卿。

 あまりにも物騒で、自身の可愛い後輩がそう呼ばれるのは若干不服であるが、的を得ているとヒマリは思う。

 

 しかし、その表情に喜びはない。

 ひたすら、納得するように、どうして戦いが起きるのか無理矢理納得するように、陰を秘めた表情でオウヒは続けて。

 

 

『貴様の見識は広く深い。余には見えないものを、貴様は視ることが出来る』

 

 

 その事実に、オウヒは不満に思う様子もなく、さも当たり前と言うかのように。

 

 

『それも当然よな。この身は、闘うだけのモノ。それ以外に要領を割けるほどの余裕も資材も、余は持ち合わせていない』

 

 

 ふぅ、と息を吐いて。

 

 

『貴様が闘いが始まると言うのだから、そうなのだろう。リオとそれ以外で争う事になるというのだから、そうなるのであろう』

 

 

 言い聞かせるように、オウヒは続けて言う。

 

 

『リオは一人ではない。トキちゃんもきっと、リオに付く。具足(コンサバティブちゃん)は言わずもがな、貴様との戦闘に備えているのだから、リオに付くだろう』

 

 

 そこで、ヒマリは口を開く。

 興味本位だったのか、はたまた戦力の分析によるものなのか。それとも、もっと個人的な理由によるもの、つまりは────オウヒが自分から離れずリオと敵対する気なのか。

 

 気になり、ヒマリは問いを投げる。

 オウヒはどうするつもりなのか、と。

 

 対するオウヒは困ったように笑みを零して。

 

 

『リオにとって、余は駒の一つなのだろう。それが、替えが効くモノなのか、重きを置く重要なモノなのか、余にはわからぬがな』

 

 

 その表情は自嘲に塗れたモノではない。むしろ、そうであることが当たり前だと信じて疑わない表情でオウヒは口を開く。

 

 

『リオは一人ではない。トキちゃんがいる、具足がいる、ネルもいる。余一人がいなくても、リオにとっては、何の支障もないだろう』

 

 

 しかし、と区切り。

 

 

『……余は知っている。何も告げられずに、急にいなくなり、取り残された者の寂しさと悲しみ。その辛さを、余は理解している』

 

 

  だから、と口にしてオウヒは告げた。

 

 

『余は、いいえ、ワタシは、きっとリオ会長と、一緒にいると思う』

 

 

 

 

 

 

 あまりにも真っ直ぐで、純粋な本心だった。

 ヒマリはやり取りを思い出して、ため息を吐く。そして、心が晴れない。何かモヤモヤとした憤りが、こびり付いている事実を自覚する。

 

 

 同時に、今後の展開を予測する。

 リオが取ろうとしている、アリスへの対抗策。その方法を、考慮して分析を始めた。

 

 恐らくだが、リオは未だに悩んでいる。

 アリスがキヴォトスを揺るがしかねない程の戦力を有していながらも、どうするか決断出来ないでいることを、ヒマリは理解している。

 

 リオほど合理主義の権化と呼べる存在はいない。

 一を切り捨てて、十が助かるのなら、彼女は迷いなく決断を下す。一切の躊躇もなく、自身すらも犠牲にしてでも、一よりも十を救う。

 

 しかし、今ではそれが揺らいでいる。

 それはきっと恐らく、何も知らないアリスという存在への後ろめたさであり、何よりも────オウヒも原因の一つなのだろう。

 

 そこで思考を切り上げて、ヒマリは笑みを零す。

 鉄のような女だと思っていたが存外。

 

 

「認めたくありませんが、あの女にも可愛い所もありますね。えぇ、認めるのは業腹ですが」

「でも私だって、寂しいんですよ、オウヒ……」

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 ゲーム開発部の部室にて。

 

 天童アリスはご機嫌だった。

 その表情は満面の笑み。どこか楽しそうに、そわそわと落ち着かない様子。

 

 時計を気にしては、直ぐに定位置の設置されているソファーに腰を下ろして、数分後には再び時計を気にしての繰り返し。

 

 奇行、とまでは行かないものの、その様子はおかしいの一言。

 

 そんなアリスを遠巻きに、様子を伺うように、観察する三人のゲーム開発部の生徒の姿。

 

 その中の、緑色を基調とした特徴的なネコミミヘッドフォンを装着した生徒────才羽ミドリがどこか不安そうな口調で問う。

 

 

「どうしちゃったの、アリスちゃん……」

 

 

 その問いに答えれる者はいない。

 

 その理由は単純にして明快。全員が全員、アリスの様子がおかしくなった理由を知らないからだ。

 BDによるセルフラーニングを終え、放課後となり部活動を始めようとした矢先にこの有様。

 文字通り、気付いた頃にはアリスの様子がおかしなことになっていた。

 

 

「ユズちゃんがいた頃には、アリスちゃんはこうなってたの?」

 

「うん。部室に入って来てから、あんな感じだよ?」

 

 

 ミドリの問いに、赤毛の生徒────花岡ユズは小さく頷いた。

 

 ユズはいつもの定位置となっている、ロッカーの中にはいなかった。

 ある意味でそれも異常事態。だがそれを指摘するほど、彼女達には余裕がないほど、アリスの様子はおかしなことになっている。

 

 アリスの行動は変わらない。

 満面の笑みでソファーに座り、楽しそうに足をプラプラさせて、時計を気にして立ち上がり、再びソファーに座る。それを何度も何度も繰り返す。

 

 正に八方塞り。

 これ以上は、本人に聞くしかないと諦めかけていたのだが。

 

 

「なるほど」

 

 

 今まで黙していたもう一人の生徒。

 ミドリと同じデザインであるが、桃色を基調としたネコミミヘッドフォンを頭に装着していた生徒────才羽モモイが声を上げた。

 

 若干サイズが合っていない、軍服風ロングコートを袖に通している彼女は、自信に満ちた表情で。

 

 

「謎は全て解けたよ!」

 

「いや、嘘でしょ」

 

 

 すかさずツッコミを入れるミドリを無視するように、得意気にモモイは続けて言う。

 

 

「アリスは時計を見ている。これが鍵であり、大事なファクターだよワトソンくん」

 

「ミドリだよ。それで?」

 

「フフッ」

 

 

 ニヤリ、と笑みを浮かべて。

 

 

「──今はまだ語るべき時ではない」

 

「やっぱり何もわかってないんじゃん」

 

「あはは……」

 

 

 モモイに対して、容赦のない事実を口にするミドリ。そしてそんな二人のやり取りを見て、ユズは乾いた笑みを漏らした。

 

 それが限界だった。

 遠巻きに見て、一挙手一投足観察していたが、何一つわからないのが現状である。

 取れる手段といえば。

 

 

「アリスー、どうしたのー?」

 

 

 本人に聞くしかない。だってしょうがない。人は楽な方を選ぶよう設計されている生き物なのだから。

 

 何も恥じることなく、堂々と前向きに、モモイはアリスに問う。

 

 対するアリスは、首を傾げて。

 

 

「どう、とは?」

 

「いや、何かずっと様子がおかしいから。ミドリが聞けってうるさくてさぁ」

 

 

 しかも、妹が原因であると理由にしておくのも忘れない。正に姉の鏡といえるだろう。

 モモイを無言で睨み付けるミドリの存在は、この際は無視することとする。

 

 アリスはこれまた、満面の笑みをモモイに向けて。

 

 

「ぱんぱかぱーん! お知らせします! 今日は特別なパーティメンバーが来ます!」

 

「特別な」

 

「パーティー」

 

「メンバー?」

 

 

 モモイ、ミドリ、ユズが呟いて、首を傾げる。

 誰だろうか、と疑問に思い、最初に頭に浮かんだのは早瀬ユウカだった。でも、どこか特別感がないし、何よりも頻繁にユウカはゲーム開発部に足を運んでいる。

 

 ともすれば誰だろうか。

 そんな事を考えていると。

 

 こんこん、と。

 ゲーム開発部のドアをノックする音が聞こえた。

 

 

「はーい!」

 

 

 アリスが元気良く、なおかつご機嫌な調子で応じる。

 

 ノックする者が誰なのかなど考えるまでもない。

 件の、特別なパーティーメンバーに他ならず、アリスの反応が物語っている。

 

 アリスの声を聞いて、ドアを開ける。

 そこには一人の生徒。ミレニアムの制服で、軍服コートを両肩に羽織るように着ている。その双眸は紅く、アリスを見ると。

 

 

「ククッ、来たぞ天童。この度のお呼ばれ、どうもありがとう」

 

「スターが来てくれて、アリスは本当に嬉しいです! ゲームをしましょう!」

 

「いきなりであるな。とりあえず、これはお土産である。後でみんなで食べよう」

 

 

 スターと呼ばれたアリスの待ち人は、ここが職人集団ゲーム開発部のアトリエかぁ、と物珍しそうに辺りを見渡す。

 

 職人集団ISなに? といった疑問がミドリの頭に過ぎるが今は無視することとする。

 予期せぬ邂逅。予想なんて持っての外。あの奇作『王様カノジョ』の元ネタがやってきたのだ。誰よりも早期的に、混乱から再起動したミドリは振り返り。

 

 

「お姉────」

 

 

 モモイの方へと見る。

 真っ直ぐに、頬を紅潮して、ジッとスターと呼ばれた生徒────天上院オウヒへと視線が注がれていた。

 

 しかし、それだけ。

 声一つ上げず、微動だにしない姉を見て、ミドリは再び混乱していると。

 

 

「うん」

 

 

 ユズがモモイに近付いて、目の前で手を振って、脇腹を軽く触れて、手首の脈を測って一言。

 

 

「死んでる……」

 

 

 







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