☆9の評価人数が300人を超えました!
本当にありがとうございます。
これからもどうかよろしくお願いします!
【~ゲーム開発部に訪れる少し前~】
ヒマリさんと別れたワタシは、ミレニアムタワーの中で歩を進めていた。
予定通り言えば予定通り。
ワタシは当初の目的地であった、ゲーム開発部に向かっていた。勿論、アポ無しというわけではない。ちゃんとアリスちゃんから、遊びに来ないかと正式なお誘いがあった。
心なしか、ワタシの足取りは軽い。
きっとワクワクしているのだ。何せ、今からワタシが向かうのは
彼女達は、満足の出来があるまでゲームを発表しないほどのクオリティを追及する職人達。
道具にもこだわり、素材を求めてあの廃墟にまで足を運んだプロフェッショナルの集団の部活だ。
どのような人達がいるのか、ワタシは純粋に興味があり楽しみでもあった。
ただそれ以上に。
「いけない、ね」
戒めるように、自嘲するように、己のどうしようもない悪癖に呆れるように。ワタシ歩きながら、小さく呟いた。
気分が高揚しているのは、ゲーム開発部が原因だけではなかった。
もう一つの原因。
それは、リオ会長とそれ以外で争うかもしれない、とヒマリさんに言われたことにある。
最初は、心が弾まなかった。むしろ、何故なのか、という疑念が勝り、ヒマリさんの言葉を何とか受け止めるしかなかった。
しかし、考える時間が出来て、気持ちを落ち着かせるとこれだ。
ワタシは、これから訪れる闘争の気配に、気持ちが昂ぶっていた。
ワタシが耳にしたことのあるミレニアムの生徒、もしくは、聞いたことがない生徒が、この闘争に参加することだろう。もしかしたら、全く関係のない他校の生徒も参戦するかもしれない。
それは素敵だ。とても素敵だ。最高に素敵なことだ。
たくさんの人と、これから、闘えるかも知れない。
それに、忘れちゃいけないのがC&Cの存在だ。彼女達はどちらにつくのか、気になって仕方ない。
特に、ミレニアム最強であるネルちゃんは、この闘争にどう立ち回るのか。
考えれば考えるだけ、笑みが深まっていくのを自覚する。
だって、きっと、絶対に。楽しいに決まっているのだから。ミレニアム全体を巻き込んだこの闘いは、絶対に楽しいに決まっているのだから。
そこで、ふと疑問が過ぎり、立ち止まる。
「ん?」
何かが引っかかった。
闘いが起きるのはいい、何かが原因となって闘争が始まる。そこまでは良かった。
問題なのは、
リオ会長とヒマリさん。
二人は仲が良いと思う。ワタシにはわかるのです。リオ会長もヒマリさんのことは好きだし、ヒマリさんも何だかんだ言ってもリオ会長のことが好きな筈だ。
その二人が争う。
傍から見たらいつも通りで、ミレニアムの日常風景に見えるかもしれないけれど、その規模は明らかに平時とはわけが違う。
何せ、リオ会長と、それ以外とで、ミレニアムは二分されるとヒマリさんは言った。
それがどうしてなのか。どうして、リオ会長は完全に敵視されるまでに至ってしまった。
会長は言葉足らずで、敵を作りやすいことに定評がある。でも優しいし、生徒のことを思って今まで行動してきた。
その好意がわかり辛い人とは言え、今回は度が過ぎていると思う。
ヒマリさんの口ぶりは、会長側ではなく、敵対する側だった。
それを証拠に、会長側であるコンサバティブちゃんが、ヒマリさんと闘う準備をしていると言っていたから。
コンサバティブちゃんがリオ会長と敵対するわけがないことから、必然的にヒマリさんはリオ会長と敵対する側であることがわかる。
そこまで考えて、振り出しに戻る。
どうして、リオ会長とそれ以外で、ミレニアムが割れて争う事になるのかと。
「……………むぅ」
ワタシは頭が悪いなりに、立ち止まり思考を巡らせていた。
何かが引っかかっていた。
ワタシの中で、何かが腑に落ちていなかった。
ミレニアムで何があった。
ここ最近で、起きたことは何か。
それは直ぐに思いついた。
ワタシとアリウスの皆が年増と争っている時に、ミレニアムで起きていたこと。
それは────。
「アリスちゃん……?」
それしか思いつかなかった。
アリスちゃんの転入。リオ会長曰く、キヴォトスを滅ぼしてしまうかもしれない戦力を有する存在。通称『名もなき神々の王女』、それこそがアリスちゃんの正体だと会長は語る。
目覚めてしまえば、この世界が終わってしまうほどの武力を擁する存在。
それこそがアリスちゃんであるとするのなら、その対応に揉めて二人は争うまでに至ったのであれば説明が付く。
というか、それしか考え付かない。
でもそれでも、妙な話だった。
どうしてそこで、二人が争ってしまうのか。
面倒見が良いヒマリさんと、実は生徒思いのリオ会長だ。意見が衝突する事はあれど、敵対するまでには至らない筈の二人であると、ワタシは思う。
そこで、新たな疑問。
「あれ……?」
そういえば、ワタシは何も知らない。
知らないというのは、アリスちゃんへの対応策。
荒唐無稽な話だけれど、リオ会長が寝る間も惜しんで調査した結果だ。ワタシには想像を絶する内容だが、アリスちゃんにはキヴォトスを滅ぼすほどの力があると、一先ずは信じる事とする。
問題はその後だ。
それほどの力を持っていたとして、リオ会長が放置するわけがない。きっと会長は、対応策を用意してあるし、キヴォトスが滅ばないよう手を打っている筈だ。
でもワタシは、その内容を知らない。
生徒思いの会長の事だ。それは安全なものであり、
決まっているのだが────。
「だったらどうして、ヒマリさんは会長と争うんだろ……」
声にして呟き、思わずワタシは首を傾げる。
わからない。わからないことだらけだ。であるのなら────聞くしかないだろう。
ワタシはそう結論すると、端末を取り出して、モモトークを開き文字を打ち込んだ。
内容は簡単なもの。
『天童の件で話がある。これを見たら連絡が欲しい』
我ながら淡白なもの。
少しは砕けた感じでよかったかな、なんて思うけど普段の口調が口調だ。いきなり馴れ馴れしくされても、会長は困っちゃうだろう。
そう自分自身を説得し、納得させて、モモトークを送信する。
会長だって忙しい。
いつもは、直ぐに帰ってくる返信だけど、今は忙しいだろう。
ともすれば、ワタシのやることは、当初の予定通り、ワタシはゲーム開発部の部室に歩を進めて行く。
それから数分後。
ワタシは問題もなく、ゲーム開発部の部室前まで来ていた。
少しだけ緊張していた。
何せ、あの職人集団のゲーム開発部だ。
少しでも気分を害する事を言ったものなら、ワタシは強制退出を求められることだろう。
あまつさえ、お邪魔します、なんていったら最後。
邪魔をするのなら帰れ、って怒鳴られてしまうかもしれない。
「────っ!」
体がブルブル、と震える。
寒気とかじゃない。純粋に怖くて。視界が少しだけぼやけていることから、今のワタシは涙目になっているかもしれない。
だって、しょうがない。
怒鳴られて怖がらない人なんていないのです。
深呼吸。
息を吸って吐いて。それを何度か繰り返して。
「よしっ」
むん、と気合をいれる。
躊躇していると、また戸惑うに決まっている。こういうときは、勢いが大事だってアーちゃんが言っていた。
意を決して、ワタシはゲーム開発部の部室へと続くドアを軽くノックするのだった。
この度、斜ケさんよりイラストを賜りました!
Vol.3以降のオウヒございます。素モードと余モードのオウヒでございます。ロングウルフのオウヒでございます。抱えているのは兵隊人形。つまりは私です。
可愛いしカッコいいし、ギャップに悶えております。ありがとうございました!
【挿絵表示】