こちら、世界征服推進部ソロモンである   作:兵隊

111 / 113
 ~ソロモンちゃんねる~

オウヒ「メークインって可愛いよね~」
アル「えぇ、あのふさふさ具合が良いわよね、メークイン」
オウヒ「うんうん、高貴さがあるよね。アーちゃん似合いそう!」
アル「そ、そうかしら。……アウトローっぽい?」
オウヒ「うん! アーちゃん、カッコいいよっ!」
アル「……飼ってみようかしら、メークイン」

ムツキ(二人はそれで通じているけど、メインクーンなんだよねそれ。メークインはふさふさでもないし、猫ですらないんだよね。……まぁいいか!)




第14話 君が光に変えて行く

 

 

 そうして、私達はヒーちゃん達の下へ駆けた。

 依頼を迅速にこなして、後始末をカヨコちゃんとハルカちゃんに任せて、私達は一目散にミレニアムへと走る。

 

 アルちゃんと、ヒーちゃんどうしたんだろ、と話したかった。

 状況を整理し、何が起きたのか分析し、己を落ち着かせるべきだったのだろう。

 

 でもそんな理性は蒸発していた。

 だって、ヒーちゃんは泣いていたから。

 長い付き合いだし、小さい頃から知っていた。ヒーちゃんが直ぐ泣いてしまうような子だって事も知っていたけど、助けて欲しいと言われたことは数えるくらいしかない。

 

 そんな彼女が助けを求めて来たのだ。

 冷静でなんていられない。居ても経っても居られない。一秒でも早く、ヒーちゃんに会って、安心させてあげたかった。

 

 それはアルちゃんは同じ気持ちだったのだろう。

 私達は煤だらけ。衣服も汚れていたし、銃だって置いてきた。アルちゃんに至っては、いつも肩で羽織っていたコートも置いてきていた。

 

 息が切れる。

 汗が出る。

 それでも私達は走り続ける。

 

 やっとの思いで、ヒーちゃんがいるミレニアム自治区の公園に辿り着いた時には、日は既に傾いていた。

 帰宅するサラリーマン、学校での活動を終わり帰路に着く学生、これから夜の仕事へ向かうための大人達。

 

 色んな人達とすれ違って、私達はやっと辿り着いた。

 

 ヒーちゃんは、いた。

 ベンチに腰掛けて、力なく項垂れて、華奢な両肩は今も震えている。

 

 顔上げる。

 ヒーちゃんと私達の眼が合う。

 

 

「アーちゃん、ムーちゃん、ワタシ……ワタシ……」

 

 

 ずっと泣いていたのだろう。

 その目は充血して真っ赤になっているし、今も嗚咽を漏らしている。

 

 どう言葉にしていいかわからない様子のヒーちゃんを、駆け寄って私達は強く抱しめる。

 

 

「私達が来たから、安心しなさいオウヒ」

 

「うん、大丈夫。もう大丈夫だよ、ヒーちゃん」

 

 

 私達の言葉に安心してくれたのか、ヒーちゃんは抱しめ返してくれて。

 

 

「うん、うんっ……!」

 

 

 ヒーちゃんは声を殺して泣く。

 アルちゃんは背中をポンポンと叩き、私は壊れも物を扱うようにヒーちゃんの頭を撫でる。

 

 

 

 

 それから数分後。

 落ち着いたヒーちゃんの両隣に私は座る。

 

 ヒーちゃんは、今の自分の置かれている状況を話してくれた。 

 ポツリポツリ、と。今まで何があったのか、どんな人達と関わりを持つようになったのか、そして────これから何が起きようとしているのか。

 

 正直な話、私には眉唾も良いところだった。

 一人の生徒のせいで、キヴォトスが滅ぶといわれても信じれるわけがない。それはつまり、私達の最強の幼馴染であるヒーちゃんでもどうしようもない、ということになるからだ。

 

 私達のヒーちゃんが負けるわけがない。

 でも、ヒーちゃん本人が一人の生徒が原因でキヴォトスが滅ぶかもしれない、と信じている。

 

 それだけの説得力があったということだろう。

 

 

「リオ会長はね優しくてね、ワタシもずっとお世話になっている凄い人なんだ。カイザーと揉めたときも、庇ってくれたってトキちゃんが言ってたから」

 

 

 そういいながら、ヒーちゃんは両手を握り締めて。

 

 

「でもね、アリスちゃんも良い娘なんだよ。ゲームが大好きで、部活の皆と楽しく過ごしてて、ミレニアムの生徒になれて良かった、って言ってくれたんだ」

 

 

 一緒にゲームをして楽しかったんだよ、とヒーちゃんは笑っていた。

 でもその笑顔は悲しいもので、心から笑っているそれではない。

 

 

「二人共、本当に凄く優しくて、良い人達なんだよ。だから、ワタシはどうすればいいのか、わからなくなっちゃった……」

 

「わからなくなったって……?」

 

 

 私の問いに、ヒーちゃんは頷いて。

 

 

「リオ会長の言っていたことは、正しいのだと思う。寝る間も惜しんで、ずっと考えて、その結果がアリスちゃんのヘイローを破壊するしかない、ってなったんだと思うんだ」

 

 

 でも、とヒーちゃんは呟いて。

 

 

「リオ会長がやろうとしていることは酷い事だけど、ワタシはあの人から離れる事なんて出来ない。何もいわずに去られる辛さを、知っているから」

 

 

 ヒーちゃんはそういうと、困ったように悲しそうに続けて。

 

 

「だけど、アリスちゃんのヘイローを破壊するのもやだ。例えそれしか方法がなくても、絶対にそんなことしたくない」

 

 

 ヒーちゃんは明確に、拒否していた。

 だがそうして、最初に戻ってしまった。アリスちゃんという生徒のヘイローを破壊したくない、だがミレニアムの生徒会長の下を離れるのもしたくない。

 つまりは、堂々巡り。ヒーちゃんは答えのない自問自答を繰り返していた。

 

 どちらも見捨てたくないし、どちらも切り捨てることなんてしたくない。

 なんともヒーちゃんらしい。自分のことは直ぐに犠牲にするくせに、いざ他人となると選べないとか、本当にヒーちゃんらしい優しい悩みだった。

 

 泣いていたから、どんな深刻な悩みだと思ったのに。

 

 思わず私は笑みを零す。

 安堵したのか、実に気の抜けた笑い声だった。

 

 

「ぷっ、はは……」

 

「えっ、ムーちゃん?」

 

「ごめんごめん。なんかヒーちゃんらしいといえばらしい悩みで……」

 

 

 ヒーちゃんは要領が得ないと言わんばかりに、ポカンと私の方へと視線を向けていた。

 

 対して、今まで黙って聴いていたアルちゃんは、腕を組み不思議そうに首を傾げて。

 

 

「……どうしてオウヒは悩んでいるの?」

 

「えっ?」

 

 

 ヒーちゃんはアルちゃんへと視線を向ける。

 アルちゃんは本当に何でもないと言わんばかりな口調で。

 

 

「あんたは難しく考えすぎなのよ。もっとシンプルに考えなさい」

 

「シンプル、ってどういう意味アーちゃん?」

 

「そのままの意味よ。既に答えは出ているもの」

 

 

 アルちゃんは立ち上がり、居丈高に胸を張り、ヒーちゃんの目の前に立ち上がり。

 

 

「どちらか選べないのなら、────()()()()()()()()()()()じゃない!」

 

 

 まるではっぱをかけるように、自信満々にヒーちゃんに言い放つ。

 

 私が笑ったのもそれだ。

 だって、ヒーちゃんは既に自分の中で答えを出していたから。

 どっちも選べないと。どっちも大切だから、見捨てたり切り捨てる事なんてしたくないと。

 

 だったら答えは既に出している。

 それが無意識であれ、本人が気付けなかったモノであれ、アルちゃんの言うとおり、もっと単純でシンプルに考えるべきだった。

 

 どちらも選べないのなら、どっちも選んでしまえばいいのだから。

 

 

「アルちゃんの言うとおりだよ、ヒーちゃん」

 

「ムーちゃん……」

 

 

 私も立ち上がって、ヒーちゃんの正面に立つ。

 自信がなさそうに、まだ弱々しいけれど、その瞳には光が確かに宿っている。

 

 いつもの私達の最強のヒーちゃんに戻りつつある事実に、私は笑みを益々深めて。

 

 

「やりたいようにやってみようよ。いつだって、そうしてきたでしょ私達」

 

 

 小さい頃からずっとそうだった。

 アルちゃんはカッコいいからという理由でアウトローを目指してきたし、ヒーちゃんは闘う事が大好きで来る者拒まずで闘い続けてきた。私はそんな二人を見てて楽しくて嬉しかった。

 

 いつだって、私達はやりたいことをやって来た。

 誰に止められようとも、白い目で見られようとも、陰で何を言われようとも、そうやって生きて来た。

 

 今回も同じだ。

 どちらかを選ぶしかないなんて、ありきたりな結末は、私達には関係ない。

 

 やりたいようにやる。

 それこそが。

 

 

「ヒーちゃんはね、ヒーちゃんのやりたいようにやっていいんだよ」

 

「えぇ、その通りよ。オウヒが止まらずにやり切ったら、きっとより良い結末に繋がる筈だから」

 

「でも、暴走は駄目だよ~。テンパって明後日の方向へ突っ走ると、アルちゃんみたくなるから」

 

「ちょっと、ムツキ! どういう意味よっ!」

 

「そういう意味だよ。まっ、それはそれで楽しそうだけどね。今度は私達も一緒だし」

 

 

 くふふ、と笑みを零す私に、アルちゃんは詰め寄るように異議を唱える。

 まるでいつものやり取り。沈んでいた気分を晴れやかなモノへと変えていくのを感じる。

 

 現に。

 

 

「ふふっ、えへへ……」

 

 

 ふにゃ、とヒーちゃんは笑みを浮かべた。

 今度こそ安心するように、人懐っこい柔らかく笑って。

 

 

「ありがとう、アーちゃんムーちゃん。二人が来てくれて、本当に良かった……」

 

「くふふ~、どういたしまして」

 

「駆けつけるのなんて、当たり前じゃない。オウヒは私達の大事な幼馴染なんだから」

 

 

 私達は笑い合う。

 いつものように、幸せそうに、楽しそうに笑い合った。

 

 でもそれも束の間。

 

 

「……ん?」

 

 

 ぽん、と何かの通知音が鳴り響いた。

 それはヒーちゃんからであり、端末を取り出して確認する。

 

 ヒーちゃんの表情は固くなった。

 今の話から察するとそれは。

 

 

「……コンサバティブちゃんからだ」

 

「コンサバティブちゃんって、あの生首の?」

 

 

 私の問いに、ヒーちゃんはうん、と頷いた。

 すかさずに私は問いを投げる。

 

 

「何て来たの?」

 

 

 私の問いに、ヒーちゃんは固い表所のまま、難しい声色で。

 

 

「アリスちゃんが……」

 

 

 そこで言葉が切れる。

 でもそれだけで充分だった。話を聞いていた私達は、それだけで充分すぎた。ミレニアムで何かが起きた。それに件のアリスちゃんという生徒も関わっているのだろう。

 

 ヒーちゃんは立ち上がる。

 でもその表情に迷いはなかった。ひたすら前を見て、ヒーちゃんが望む未来を見据えて、力強い表情のまま。

 

 

「ワタシ、頑張ってみる。今度こそ、誰も不幸にならないよう、頑張ってみるね」

 

 

 ヒーちゃんはそういうと、私達に背を向けた。

 それが少しだけ寂しくて、少しだけ遠くなった幼馴染の背を見て。

 

「ヒーちゃん」

「オウヒ」

 

 私達は声をかける。

 

 

『いってらっしゃい』

 

 

 ヒーちゃんは立ち止まり、花が咲いたように笑って。

 

 

「────うん、行ってくるね!」

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、私達はヒーちゃんを見送った。 

 駆けるその後姿はとても頼もしく、最初に目にした儚げで弱々しいヒーちゃんはいなかった。

 

 目標に向かって邁進する主人公のよう。

 今のヒーちゃんは、何があっても走ることをやめないだろう。自分が目指すハッピーエンドを叶えるまで進み続ける。そんな力強さが今のヒーちゃんにはあった。

 

 その姿が何よりも誇らしく、自慢に思う。

 でも同時に、寂しくもあるんだ。私達の後ろをついて歩いていたあの子が、今はこうして私達を追い越し、進もうとしている。誰に言われたわけでもない、自分の意思で、ヒーちゃんは進む。

 

 それが誇らしく、寂しくもある。

 小さい頃は、いつも自信なさそうにしていたのに。

 

 

「……ヒーちゃん、強くなったね」

 

 

 自然と、意図せずに、私は呟いていた。

 

 傍から聞いたら、ただの思ったことを口にしただけに聞こえるそれに、アルちゃんは耳聡く反応してくれた。

 

 

「えぇ、そうね」

 

 

 私と同じように、遠くなるヒーちゃんの背中を見ながら、片手で私の頭を撫でながら、アルちゃんは事実だけを口にする。

 

 

「でも、私達の大切な幼馴染であることは変わりないわ」

 

 

 その口調は優しかった。

 諭すように、言い聞かせるように、寂しさを埋めるように、アルちゃんは呟く。

 

 きっとそれは、アルちゃん自身に向けてのものであり、私に贈るものでもあったのだろう。

 

 まるで見透かされているようで、恥ずかしいけど、相手がアルちゃんだったし良しとしよう。

 

 うん、そうだよね。

 アルちゃんも寂しいよね。でもそれ以上に、今のヒーちゃんの姿が見れたことが何よりも嬉しいし、誇らしく思う。

 

 どうだ、見たか。

 私達の幼馴染はこれだけ優しくて、欲張りで、諦めが悪くて、何もかもを見捨てられない、凄い娘なんだよ、って大きな声で自慢したくなる。

 

 気分が高揚するのを自覚する。

 それも仕方ない。大切な人が頑張る姿を見て、気持ちを抑えられる人なんていないでしょ。

 

 私だって何かをしてあげたい。

 そんな気持ちになるのは、仕方のないことだと思う。

 

 

「それで、どうしよっか?」

 

「決まってるじゃない」

 

 

 それはアルちゃんも同じのようで、にやり、と。いつものような、不敵に笑みを浮かべて。

 

 

「私達は私達で、好きにやるわよ」

 

「それが、私達。だもんね?」

 

 

 きっと、私も同じように笑っていることだろう。

 ニヤリ、とアルちゃんは笑みを浮かべて。私はいつものように、くふふ、と笑みを零す。

 

 でも問題が一つ。

 

 

「でも、好きにやる、って言ったけどさ」

 

「なによ?」

 

「今の私達じゃ、何も出来なくない?」

 

 

 アルちゃんも自覚があるのか、浮かべていた笑みのまま、ピタリと停止する。

 

 そう。

 私達はここまで来るのに無茶をした。

 ヒーちゃんを最優先に動いた。受けていた依頼も、即時かつ即断で、即座に即刻に終わらせてきた。

 そのために、あらゆる手を尽くしつくした。弾薬が尽きようとも、爆発物の材料をケチる事もしないで、それこそ今後の生活するに辺り、支障をきたす事になろうとも、私達は全力で一つの依頼をこなして、ヒーちゃんの下へとやって来た。

 

 つまり、今の私達は貧困の極み。

 銃はあるのに、撃つための弾がない。起爆スイッチは持っているのに、肝心の爆発物がない。

 そんな状態の私達に、一体何が出来るのだろうか。

 

 それでもアルちゃんはたくましかった。

 フン、と大きく胸を張って、恥じる事もなく堂々と。

 

 

「弾がないなら、銃で殴ればいいじゃない!」

 

「みんながみんな、ハルカちゃんと同じ事出来るとは思わないほうがいいと思うよ~?」

 

 

 アレは見事なフルスイングだったな、と。

 ここにはいない、ハルカちゃんを思い出して私は呟いた。

 

 自分で言っておきながら確かに、と納得してしまったのか。

 アルちゃんは言葉に詰ると、腕を組みうんうん唸り始めた。

 

 悩んだところで、無駄だろう。

 だって、ないものはない。無から有を生み出すことが出来ないのと同じように、ないところから、何かを出す事なんて出来ないのだから。

 

 だからこそ、あるところから出すしかない。

 そういう意味では、私には考えがあった。

 

 

「アルちゃん、私に考えがあるんだよね」

 

「えっ、本当!?」

 

 

 それを早く言ってよ、と眼を輝かせて言うアルちゃんとは対照的に、私の笑みは引き攣ったそれだ。

 本当に嫌そうに。顔に出るくらい露骨に。頼ることなんて本当はしたくないけど。お願いするくらいなら、自分の舌を切るくらい嫌だけど。背に腹は変えられない。

 

 ヒーちゃんのためだ。

 私の下らないプライドなんて、瑣末な事だ。

 

 

「ムツキ?」

 

 

 アルちゃんはいまいち、要領を得ないようで首を傾げる。

 なんでそんな顔しているんだろう、と不思議そうに私の顔を覗き込んでいる、もう一人の幼馴染に苦笑を浮かべて。

 

 

「私達って、すっっっごく貧乏だよね?」

 

「えぇ、素寒貧ね」

 

「お金もないよね?」

 

「もちろん」

 

 

 うん、と。

 自信満々に頷くアルちゃんに向かって、開き直るように私はニッコリと笑って。

 

 

「それじゃあさ、あるところから出してもらうしかないよね。弾代と、装備のお金」

 

「それもそうだけど、私達にそんなスポンサーいないじゃない」

 

「いないからさ、こっちから声をかけるしかないよね。お金持ちに」

 

「だから、そんな人いるわけが─────」

 

 

 そこまで言うと、アルちゃんは動きを止めて、眼を見開いて、目を泳がせて、右往左往をして、漸く私に向き直り。

 

 

「マジで?」

 

「マジで♪」

 

 

 心当たりがあるのか、冷や汗を流し百面相をするアルちゃんを見て、私は満面の笑みを浮かべる。きっと、私達は共通の人物を思い浮かべているに違いない。

 追撃の手は緩めない。間髪いれずに、私はアルちゃんに催促する。

 

 

「ほらほら~、早く連絡してよアルちゃん~」

 

「な、なんで私なのよ。ムツキが電話してよ!」

 

「無理だよ~♪ ムツキちゃん、()()()と連絡先交換してないもーん。むしろ、どうしてアルちゃんは連絡先を交換してるのさ?」

 

「なにか、その、流れで……」

 

 

 そういうと、アルちゃんは自分の端末を取り出して、難しい顔で睨めっこを始める。

 

 そんなアルちゃんを視界に収めつつ、理由になってない返答に、私は浅くため息を吐いた。

 人が良いと言うか、何と言うか。

 

あっちからは、私達は不倶戴天の敵って認識されているのに、どうして警戒心もなく近付いちゃうのかな。

 

 アルちゃんにとっては「私達もオウヒが大好きよ。仲間ねっ!」的な感じだったのだろう。

 ある意味で素直だし、ある意味で警戒心がない。

 

 とはいえ、あそこまで露骨に嫌ってくれるのは、逆に清々しいのかもしれない。

 陰であることないことを言われるよりかは、100万倍もマシだろう。

 

 そういう意味では、アルちゃんも、()()()()()も似た者同士。

 自分の心に正直に、やりたいことを全力でやるという意味でも、この二人は似ているし、案外相性が良い気もしなくもない。

 

 そう私はぼんやりと考えていると、意を決した様子でアルちゃんは端末を操作して、片耳に当てて通話を始める。

 

 

「も、もしもし? 久しぶりね……えっ、誰って。私よ私!」

 

 

 案の定と言うべきか、少しだけ雲行きが怪しい。

 ぶっちゃけると、時間がない。ミレニアムでは既に事が始まっているし、私達が準備を始める頃には、手遅れの可能性すらある。

 

 それはアルちゃんも理解しているのか、少しだけ慌てた様子で。

 

 

「私よ、陸八魔アルよっ! オウヒが入院しているときに、連絡先交換したでしょ! ────ちょ、ちょっと切らないで! 今、大変な事になってて……っ!」

 

「……あー、アルちゃん? ちょっと貸して?」

 

 

 埒が開かない。

 そう判断した私は、半ば強引にアルちゃんから端末を奪い取った。

 埒が開かないのなら、開かない埒をこじ開けるまで。

 

 

「もしもしー?」

 

『……今度は浅黄ムツキ? 何なの、私ってそれなりに偉くて、忙しいんだけど?』

 

 

 貴女達とは違って、と()()()()()は暗に語る。

 ミシリ、と。思わずイラッと、端末を握り締めると、嫌な音が聞こえた。横ではアルちゃんが、壊さないでムツキ、と小さく悲鳴を上げているけど、悪いけど無視することにする。

 

 

「……手伝ってほしいことがあるんだ~」

 

『正気? 私が貴女達を助けるわけがないじゃん』

 

「そうだねぇ。あんたと同じ立場なら、私も断ってるもん」

 

『……良かった、同じ考えで。貴女と一致するのは、本当に嫌だけど。それに関しては、本当に良かったよ』

 

 

 良かった、という言葉に反して、電話越しの()()()の声は訝しむそれに変わった。

 当然だろう。私達も()()()も、何かあろうがお互いに助けを求めない事は一致している。

 

 それなのに、だというのに、嫌で嫌で仕方ない筈なのに。

 助けを求めている事実に、()()()は違和感を覚えているのだろう。

 

 癪だけど、そういうところは察しが良くて助かる。

 私達を嫌っているだけで、その眼が曇ってわけじゃないことが分かる。

 

 だからこそ、信頼が出来る。

 本当に嫌いだけど、これに関しては、()()以上に信頼できる存在を、私は思いつかない。

 

 

「────ヒーちゃんがね、今大変な事になっててさ」

 

『─────────』

 

 

 電話越しで息を呑んでいるのを感じる。

 

 そうだ、()()なら信頼が出来る。

 私と同じくらい、ヒーちゃんを大切に思っている()()となら、助けを求めれるし、今の現状を相談する事が出来る。

 

 私は、くふふ、と笑みを浮かべて、

 

 

「今回だけ、本当に今回だけ、手を組もうよ─────聖園ミカ」

 

 

 この世で一番嫌いな、彼女の名を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 




 △走り出すオウヒ
 そうして、彼女は駆け出した。自分が望むハッピーエンドを目指して。
 Vol.2までのオウヒなら暴走して、バッドエンド直行だった。だけど、あの失敗があったからオウヒは走りだすことが出来た。
 こうなったオウヒは手強いです。迷いのないヤツは強いのです。
 なんだか主人公みたいな事をしている。



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。