オウヒ「メークインって可愛いよね~」
アル「えぇ、あのふさふさ具合が良いわよね、メークイン」
オウヒ「うんうん、高貴さがあるよね。アーちゃん似合いそう!」
アル「そ、そうかしら。……アウトローっぽい?」
オウヒ「うん! アーちゃん、カッコいいよっ!」
アル「……飼ってみようかしら、メークイン」
ムツキ(二人はそれで通じているけど、メインクーンなんだよねそれ。メークインはふさふさでもないし、猫ですらないんだよね。……まぁいいか!)
そうして、私達はヒーちゃん達の下へ駆けた。
依頼を迅速にこなして、後始末をカヨコちゃんとハルカちゃんに任せて、私達は一目散にミレニアムへと走る。
アルちゃんと、ヒーちゃんどうしたんだろ、と話したかった。
状況を整理し、何が起きたのか分析し、己を落ち着かせるべきだったのだろう。
でもそんな理性は蒸発していた。
だって、ヒーちゃんは泣いていたから。
長い付き合いだし、小さい頃から知っていた。ヒーちゃんが直ぐ泣いてしまうような子だって事も知っていたけど、助けて欲しいと言われたことは数えるくらいしかない。
そんな彼女が助けを求めて来たのだ。
冷静でなんていられない。居ても経っても居られない。一秒でも早く、ヒーちゃんに会って、安心させてあげたかった。
それはアルちゃんは同じ気持ちだったのだろう。
私達は煤だらけ。衣服も汚れていたし、銃だって置いてきた。アルちゃんに至っては、いつも肩で羽織っていたコートも置いてきていた。
息が切れる。
汗が出る。
それでも私達は走り続ける。
やっとの思いで、ヒーちゃんがいるミレニアム自治区の公園に辿り着いた時には、日は既に傾いていた。
帰宅するサラリーマン、学校での活動を終わり帰路に着く学生、これから夜の仕事へ向かうための大人達。
色んな人達とすれ違って、私達はやっと辿り着いた。
ヒーちゃんは、いた。
ベンチに腰掛けて、力なく項垂れて、華奢な両肩は今も震えている。
顔上げる。
ヒーちゃんと私達の眼が合う。
「アーちゃん、ムーちゃん、ワタシ……ワタシ……」
ずっと泣いていたのだろう。
その目は充血して真っ赤になっているし、今も嗚咽を漏らしている。
どう言葉にしていいかわからない様子のヒーちゃんを、駆け寄って私達は強く抱しめる。
「私達が来たから、安心しなさいオウヒ」
「うん、大丈夫。もう大丈夫だよ、ヒーちゃん」
私達の言葉に安心してくれたのか、ヒーちゃんは抱しめ返してくれて。
「うん、うんっ……!」
ヒーちゃんは声を殺して泣く。
アルちゃんは背中をポンポンと叩き、私は壊れも物を扱うようにヒーちゃんの頭を撫でる。
それから数分後。
落ち着いたヒーちゃんの両隣に私は座る。
ヒーちゃんは、今の自分の置かれている状況を話してくれた。
ポツリポツリ、と。今まで何があったのか、どんな人達と関わりを持つようになったのか、そして────これから何が起きようとしているのか。
正直な話、私には眉唾も良いところだった。
一人の生徒のせいで、キヴォトスが滅ぶといわれても信じれるわけがない。それはつまり、私達の最強の幼馴染であるヒーちゃんでもどうしようもない、ということになるからだ。
私達のヒーちゃんが負けるわけがない。
でも、ヒーちゃん本人が一人の生徒が原因でキヴォトスが滅ぶかもしれない、と信じている。
それだけの説得力があったということだろう。
「リオ会長はね優しくてね、ワタシもずっとお世話になっている凄い人なんだ。カイザーと揉めたときも、庇ってくれたってトキちゃんが言ってたから」
そういいながら、ヒーちゃんは両手を握り締めて。
「でもね、アリスちゃんも良い娘なんだよ。ゲームが大好きで、部活の皆と楽しく過ごしてて、ミレニアムの生徒になれて良かった、って言ってくれたんだ」
一緒にゲームをして楽しかったんだよ、とヒーちゃんは笑っていた。
でもその笑顔は悲しいもので、心から笑っているそれではない。
「二人共、本当に凄く優しくて、良い人達なんだよ。だから、ワタシはどうすればいいのか、わからなくなっちゃった……」
「わからなくなったって……?」
私の問いに、ヒーちゃんは頷いて。
「リオ会長の言っていたことは、正しいのだと思う。寝る間も惜しんで、ずっと考えて、その結果がアリスちゃんのヘイローを破壊するしかない、ってなったんだと思うんだ」
でも、とヒーちゃんは呟いて。
「リオ会長がやろうとしていることは酷い事だけど、ワタシはあの人から離れる事なんて出来ない。何もいわずに去られる辛さを、知っているから」
ヒーちゃんはそういうと、困ったように悲しそうに続けて。
「だけど、アリスちゃんのヘイローを破壊するのもやだ。例えそれしか方法がなくても、絶対にそんなことしたくない」
ヒーちゃんは明確に、拒否していた。
だがそうして、最初に戻ってしまった。アリスちゃんという生徒のヘイローを破壊したくない、だがミレニアムの生徒会長の下を離れるのもしたくない。
つまりは、堂々巡り。ヒーちゃんは答えのない自問自答を繰り返していた。
どちらも見捨てたくないし、どちらも切り捨てることなんてしたくない。
なんともヒーちゃんらしい。自分のことは直ぐに犠牲にするくせに、いざ他人となると選べないとか、本当にヒーちゃんらしい優しい悩みだった。
泣いていたから、どんな深刻な悩みだと思ったのに。
思わず私は笑みを零す。
安堵したのか、実に気の抜けた笑い声だった。
「ぷっ、はは……」
「えっ、ムーちゃん?」
「ごめんごめん。なんかヒーちゃんらしいといえばらしい悩みで……」
ヒーちゃんは要領が得ないと言わんばかりに、ポカンと私の方へと視線を向けていた。
対して、今まで黙って聴いていたアルちゃんは、腕を組み不思議そうに首を傾げて。
「……どうしてオウヒは悩んでいるの?」
「えっ?」
ヒーちゃんはアルちゃんへと視線を向ける。
アルちゃんは本当に何でもないと言わんばかりな口調で。
「あんたは難しく考えすぎなのよ。もっとシンプルに考えなさい」
「シンプル、ってどういう意味アーちゃん?」
「そのままの意味よ。既に答えは出ているもの」
アルちゃんは立ち上がり、居丈高に胸を張り、ヒーちゃんの目の前に立ち上がり。
「どちらか選べないのなら、────
まるではっぱをかけるように、自信満々にヒーちゃんに言い放つ。
私が笑ったのもそれだ。
だって、ヒーちゃんは既に自分の中で答えを出していたから。
どっちも選べないと。どっちも大切だから、見捨てたり切り捨てる事なんてしたくないと。
だったら答えは既に出している。
それが無意識であれ、本人が気付けなかったモノであれ、アルちゃんの言うとおり、もっと単純でシンプルに考えるべきだった。
どちらも選べないのなら、どっちも選んでしまえばいいのだから。
「アルちゃんの言うとおりだよ、ヒーちゃん」
「ムーちゃん……」
私も立ち上がって、ヒーちゃんの正面に立つ。
自信がなさそうに、まだ弱々しいけれど、その瞳には光が確かに宿っている。
いつもの私達の最強のヒーちゃんに戻りつつある事実に、私は笑みを益々深めて。
「やりたいようにやってみようよ。いつだって、そうしてきたでしょ私達」
小さい頃からずっとそうだった。
アルちゃんはカッコいいからという理由でアウトローを目指してきたし、ヒーちゃんは闘う事が大好きで来る者拒まずで闘い続けてきた。私はそんな二人を見てて楽しくて嬉しかった。
いつだって、私達はやりたいことをやって来た。
誰に止められようとも、白い目で見られようとも、陰で何を言われようとも、そうやって生きて来た。
今回も同じだ。
どちらかを選ぶしかないなんて、ありきたりな結末は、私達には関係ない。
やりたいようにやる。
それこそが。
「ヒーちゃんはね、ヒーちゃんのやりたいようにやっていいんだよ」
「えぇ、その通りよ。オウヒが止まらずにやり切ったら、きっとより良い結末に繋がる筈だから」
「でも、暴走は駄目だよ~。テンパって明後日の方向へ突っ走ると、アルちゃんみたくなるから」
「ちょっと、ムツキ! どういう意味よっ!」
「そういう意味だよ。まっ、それはそれで楽しそうだけどね。今度は私達も一緒だし」
くふふ、と笑みを零す私に、アルちゃんは詰め寄るように異議を唱える。
まるでいつものやり取り。沈んでいた気分を晴れやかなモノへと変えていくのを感じる。
現に。
「ふふっ、えへへ……」
ふにゃ、とヒーちゃんは笑みを浮かべた。
今度こそ安心するように、人懐っこい柔らかく笑って。
「ありがとう、アーちゃんムーちゃん。二人が来てくれて、本当に良かった……」
「くふふ~、どういたしまして」
「駆けつけるのなんて、当たり前じゃない。オウヒは私達の大事な幼馴染なんだから」
私達は笑い合う。
いつものように、幸せそうに、楽しそうに笑い合った。
でもそれも束の間。
「……ん?」
ぽん、と何かの通知音が鳴り響いた。
それはヒーちゃんからであり、端末を取り出して確認する。
ヒーちゃんの表情は固くなった。
今の話から察するとそれは。
「……コンサバティブちゃんからだ」
「コンサバティブちゃんって、あの生首の?」
私の問いに、ヒーちゃんはうん、と頷いた。
すかさずに私は問いを投げる。
「何て来たの?」
私の問いに、ヒーちゃんは固い表所のまま、難しい声色で。
「アリスちゃんが……」
そこで言葉が切れる。
でもそれだけで充分だった。話を聞いていた私達は、それだけで充分すぎた。ミレニアムで何かが起きた。それに件のアリスちゃんという生徒も関わっているのだろう。
ヒーちゃんは立ち上がる。
でもその表情に迷いはなかった。ひたすら前を見て、ヒーちゃんが望む未来を見据えて、力強い表情のまま。
「ワタシ、頑張ってみる。今度こそ、誰も不幸にならないよう、頑張ってみるね」
ヒーちゃんはそういうと、私達に背を向けた。
それが少しだけ寂しくて、少しだけ遠くなった幼馴染の背を見て。
「ヒーちゃん」
「オウヒ」
私達は声をかける。
『いってらっしゃい』
ヒーちゃんは立ち止まり、花が咲いたように笑って。
「────うん、行ってくるね!」
そうして、私達はヒーちゃんを見送った。
駆けるその後姿はとても頼もしく、最初に目にした儚げで弱々しいヒーちゃんはいなかった。
目標に向かって邁進する主人公のよう。
今のヒーちゃんは、何があっても走ることをやめないだろう。自分が目指すハッピーエンドを叶えるまで進み続ける。そんな力強さが今のヒーちゃんにはあった。
その姿が何よりも誇らしく、自慢に思う。
でも同時に、寂しくもあるんだ。私達の後ろをついて歩いていたあの子が、今はこうして私達を追い越し、進もうとしている。誰に言われたわけでもない、自分の意思で、ヒーちゃんは進む。
それが誇らしく、寂しくもある。
小さい頃は、いつも自信なさそうにしていたのに。
「……ヒーちゃん、強くなったね」
自然と、意図せずに、私は呟いていた。
傍から聞いたら、ただの思ったことを口にしただけに聞こえるそれに、アルちゃんは耳聡く反応してくれた。
「えぇ、そうね」
私と同じように、遠くなるヒーちゃんの背中を見ながら、片手で私の頭を撫でながら、アルちゃんは事実だけを口にする。
「でも、私達の大切な幼馴染であることは変わりないわ」
その口調は優しかった。
諭すように、言い聞かせるように、寂しさを埋めるように、アルちゃんは呟く。
きっとそれは、アルちゃん自身に向けてのものであり、私に贈るものでもあったのだろう。
まるで見透かされているようで、恥ずかしいけど、相手がアルちゃんだったし良しとしよう。
うん、そうだよね。
アルちゃんも寂しいよね。でもそれ以上に、今のヒーちゃんの姿が見れたことが何よりも嬉しいし、誇らしく思う。
どうだ、見たか。
私達の幼馴染はこれだけ優しくて、欲張りで、諦めが悪くて、何もかもを見捨てられない、凄い娘なんだよ、って大きな声で自慢したくなる。
気分が高揚するのを自覚する。
それも仕方ない。大切な人が頑張る姿を見て、気持ちを抑えられる人なんていないでしょ。
私だって何かをしてあげたい。
そんな気持ちになるのは、仕方のないことだと思う。
「それで、どうしよっか?」
「決まってるじゃない」
それはアルちゃんも同じのようで、にやり、と。いつものような、不敵に笑みを浮かべて。
「私達は私達で、好きにやるわよ」
「それが、私達。だもんね?」
きっと、私も同じように笑っていることだろう。
ニヤリ、とアルちゃんは笑みを浮かべて。私はいつものように、くふふ、と笑みを零す。
でも問題が一つ。
「でも、好きにやる、って言ったけどさ」
「なによ?」
「今の私達じゃ、何も出来なくない?」
アルちゃんも自覚があるのか、浮かべていた笑みのまま、ピタリと停止する。
そう。
私達はここまで来るのに無茶をした。
ヒーちゃんを最優先に動いた。受けていた依頼も、即時かつ即断で、即座に即刻に終わらせてきた。
そのために、あらゆる手を尽くしつくした。弾薬が尽きようとも、爆発物の材料をケチる事もしないで、それこそ今後の生活するに辺り、支障をきたす事になろうとも、私達は全力で一つの依頼をこなして、ヒーちゃんの下へとやって来た。
つまり、今の私達は貧困の極み。
銃はあるのに、撃つための弾がない。起爆スイッチは持っているのに、肝心の爆発物がない。
そんな状態の私達に、一体何が出来るのだろうか。
それでもアルちゃんはたくましかった。
フン、と大きく胸を張って、恥じる事もなく堂々と。
「弾がないなら、銃で殴ればいいじゃない!」
「みんながみんな、ハルカちゃんと同じ事出来るとは思わないほうがいいと思うよ~?」
アレは見事なフルスイングだったな、と。
ここにはいない、ハルカちゃんを思い出して私は呟いた。
自分で言っておきながら確かに、と納得してしまったのか。
アルちゃんは言葉に詰ると、腕を組みうんうん唸り始めた。
悩んだところで、無駄だろう。
だって、ないものはない。無から有を生み出すことが出来ないのと同じように、ないところから、何かを出す事なんて出来ないのだから。
だからこそ、あるところから出すしかない。
そういう意味では、私には考えがあった。
「アルちゃん、私に考えがあるんだよね」
「えっ、本当!?」
それを早く言ってよ、と眼を輝かせて言うアルちゃんとは対照的に、私の笑みは引き攣ったそれだ。
本当に嫌そうに。顔に出るくらい露骨に。頼ることなんて本当はしたくないけど。お願いするくらいなら、自分の舌を切るくらい嫌だけど。背に腹は変えられない。
ヒーちゃんのためだ。
私の下らないプライドなんて、瑣末な事だ。
「ムツキ?」
アルちゃんはいまいち、要領を得ないようで首を傾げる。
なんでそんな顔しているんだろう、と不思議そうに私の顔を覗き込んでいる、もう一人の幼馴染に苦笑を浮かべて。
「私達って、すっっっごく貧乏だよね?」
「えぇ、素寒貧ね」
「お金もないよね?」
「もちろん」
うん、と。
自信満々に頷くアルちゃんに向かって、開き直るように私はニッコリと笑って。
「それじゃあさ、あるところから出してもらうしかないよね。弾代と、装備のお金」
「それもそうだけど、私達にそんなスポンサーいないじゃない」
「いないからさ、こっちから声をかけるしかないよね。お金持ちに」
「だから、そんな人いるわけが─────」
そこまで言うと、アルちゃんは動きを止めて、眼を見開いて、目を泳がせて、右往左往をして、漸く私に向き直り。
「マジで?」
「マジで♪」
心当たりがあるのか、冷や汗を流し百面相をするアルちゃんを見て、私は満面の笑みを浮かべる。きっと、私達は共通の人物を思い浮かべているに違いない。
追撃の手は緩めない。間髪いれずに、私はアルちゃんに催促する。
「ほらほら~、早く連絡してよアルちゃん~」
「な、なんで私なのよ。ムツキが電話してよ!」
「無理だよ~♪ ムツキちゃん、
「なにか、その、流れで……」
そういうと、アルちゃんは自分の端末を取り出して、難しい顔で睨めっこを始める。
そんなアルちゃんを視界に収めつつ、理由になってない返答に、私は浅くため息を吐いた。
人が良いと言うか、何と言うか。
あっちからは、私達は不倶戴天の敵って認識されているのに、どうして警戒心もなく近付いちゃうのかな。
アルちゃんにとっては「私達もオウヒが大好きよ。仲間ねっ!」的な感じだったのだろう。
ある意味で素直だし、ある意味で警戒心がない。
とはいえ、あそこまで露骨に嫌ってくれるのは、逆に清々しいのかもしれない。
陰であることないことを言われるよりかは、100万倍もマシだろう。
そういう意味では、アルちゃんも、
自分の心に正直に、やりたいことを全力でやるという意味でも、この二人は似ているし、案外相性が良い気もしなくもない。
そう私はぼんやりと考えていると、意を決した様子でアルちゃんは端末を操作して、片耳に当てて通話を始める。
「も、もしもし? 久しぶりね……えっ、誰って。私よ私!」
案の定と言うべきか、少しだけ雲行きが怪しい。
ぶっちゃけると、時間がない。ミレニアムでは既に事が始まっているし、私達が準備を始める頃には、手遅れの可能性すらある。
それはアルちゃんも理解しているのか、少しだけ慌てた様子で。
「私よ、陸八魔アルよっ! オウヒが入院しているときに、連絡先交換したでしょ! ────ちょ、ちょっと切らないで! 今、大変な事になってて……っ!」
「……あー、アルちゃん? ちょっと貸して?」
埒が開かない。
そう判断した私は、半ば強引にアルちゃんから端末を奪い取った。
埒が開かないのなら、開かない埒をこじ開けるまで。
「もしもしー?」
『……今度は浅黄ムツキ? 何なの、私ってそれなりに偉くて、忙しいんだけど?』
貴女達とは違って、と
ミシリ、と。思わずイラッと、端末を握り締めると、嫌な音が聞こえた。横ではアルちゃんが、壊さないでムツキ、と小さく悲鳴を上げているけど、悪いけど無視することにする。
「……手伝ってほしいことがあるんだ~」
『正気? 私が貴女達を助けるわけがないじゃん』
「そうだねぇ。あんたと同じ立場なら、私も断ってるもん」
『……良かった、同じ考えで。貴女と一致するのは、本当に嫌だけど。それに関しては、本当に良かったよ』
良かった、という言葉に反して、電話越しの
当然だろう。私達も
それなのに、だというのに、嫌で嫌で仕方ない筈なのに。
助けを求めている事実に、
癪だけど、そういうところは察しが良くて助かる。
私達を嫌っているだけで、その眼が曇ってわけじゃないことが分かる。
だからこそ、信頼が出来る。
本当に嫌いだけど、これに関しては、
「────ヒーちゃんがね、今大変な事になっててさ」
『─────────』
電話越しで息を呑んでいるのを感じる。
そうだ、
私と同じくらい、ヒーちゃんを大切に思っている
私は、くふふ、と笑みを浮かべて、
「今回だけ、本当に今回だけ、手を組もうよ─────聖園ミカ」
この世で一番嫌いな、彼女の名を呼んだ。
△走り出すオウヒ
そうして、彼女は駆け出した。自分が望むハッピーエンドを目指して。
Vol.2までのオウヒなら暴走して、バッドエンド直行だった。だけど、あの失敗があったからオウヒは走りだすことが出来た。
こうなったオウヒは手強いです。迷いのないヤツは強いのです。
なんだか主人公みたいな事をしている。