こちら、世界征服推進部ソロモンである   作:兵隊

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第2話 リオ会長って本当に学生?

 

 

 ミレニアムサイエンススクール。

 それがワタシの通う学校の名前だ。

 

 ゲヘナ学園やトリニティ総合学園と比べて歴史は新しいものの、先の二校と同等の影響力があり、学園の規模や生徒数なども負けていないことから『キヴォトス三大学園』の一角として数えられている。

 

 校風は中庸といったところ。特に厳しいこともない。

 派閥争いがあり息苦しいトリニティよりも緩く、ゲヘナのような混沌とした無秩序というわけでもなく。

 特別、重きを置いている課題というものはなく、強いてあげるのであれば、『千年難題』という今の技術では解けない7つの難題に取り組み、実験や検証を繰り返している、といったところか。

 

 

 正直に言うと、ワタシには全く適性がない学園と言える。

 頭が良いわけではないし。勉強は人並み程度。天才の閃きもなければ、地頭が良いと言うわけでもない。

 単純に、家から近いから。その程度の理由で、ワタシはミレニアムサイエンススクールに通っている。

 

 その点でいえば、ここでもワタシは浮いている存在といえる。

 天才集団の中に何故かいる猪。腕っ節が人よりも少しばかり強い、どこにでもいる女子生徒。それがワタシなのです。

 

 

 安易に学園選びをするんじゃなかった。

 ワタシの適性で言うのなら間違いなくゲヘナだった。

 アーちゃんとムーちゃんと一緒に学園生活を送りたかった。

 

 

 そいうわけで、ワタシのアーちゃん直伝の演技はここでも絶賛継続中。

 

 

 

 

 そんなワタシは今――――。

 

 

「それでどういうつもり?」

 

 

 ――――絶賛、尋問されています。

 

 

 場所はミレニアムサイエンススクールの生徒会――――セミナーの生徒会室。

 学園の上層階に位置する一室。大きな窓からはキヴォトスを一望でき、何気に絶景である。今日も青い空だなー、いい天気だなー、日常で銃弾が飛び交っているとは思えない平和だなー。

 

 なんて現実逃避は許されないようで。

 

 

「もう一度聞くわ。どういうつもり?」

 

 

 有無を言わせない迫力。

 生徒会の長たる執務机に座る女子生徒――――調月リオがワタシに鋭い視線を送る。

 

 

 うん、超怒ってる。何だったら本当に恐い。

 本当にワタシの二つ上? 何か大人みたいなんですけど。迫力が尋常じゃないんですけど。

 

 

「……ククッ、どういうつもり、とは?」

 

 

 声が震えなかったのは偉いぞワタシ。

 ごめんなさい。嘘つきました。震えてました。意味深に笑って誤魔化したけど。アーちゃん曰く、意味深に笑っていればある程度誤魔化せるって聞いたけど本当なのかな?

 

 

「先のアリウスの一件よ」

 

 

 

 あっ、誤魔化せたみたい。バレていない。さすがアーちゃん。

 

 

「何か問題でもあるのか?」

 

「大有りよ」

 

「ほう?」

 

 

 ぎろり、とリオ会長はワタシを睨みつける。

 本当に恐いんですけど。

 

 

「アリウスの内乱に関与していたそうね?」

 

「成り行きだったがな。結果として、我が領地となったが」

 

「それが問題だと言っているの」

 

 

 どういうこと?

 

 

「ミレニアム生徒の貴女が、他校を掌握するなんて立派な侵略行為よ」

 

 

 大袈裟な、とは言えない。

 このキヴォトスにおいて、学園とはつまり国家みたいなもの。

 国境こそはないものの、他校との争いは国同士の争いとなる。小競り合いならまだしも、大きな争いとなれば、それはもう戦争といっても過言ではない。

 

 その点で言えば、ワタシのやったことはそれ。

 ミレニアム生徒のワタシが他校に攻め入って、起きる予定だった内乱を治めて、自分の領地と言っている現状。

 

 あれ?

 やばくない?

 不味い、冷や汗出てきた。

 

 

「ゲヘナやトリニティから咎められて、最悪二校と戦争になりかねない。下手したら他の学園とも争うことだってありえる。連邦生徒会からも処罰があるかもしれない。それを踏まえて聞くけど、貴女どういうつもりだったの?」

 

「……で、あるか」

 

 

 ごめんなさい。

 なにも考えていませんでした。

 ムカつく年増を叩き潰して、向かってくる人を千切っては投げ、千切っては投げを繰り返していました。

 

 本当にヤバイ?

 時代が時代なら、ワタシ処刑される流れでは?

 

 

「――――それなら問題はない」

 

 

 と、ここで助け舟。

 ワタシの背後から、凜とした声が聞こえる。

 

 

「……貴女は?」

 

「私の名前は錠前サオリ。殿下の家臣だ、よろしく頼む」

 

 

 サオリだ。

 リオ会長に呼び出されたと言うや否や、付いてくると言って聞いてくれなかったサオリだ。

 

 何で付いてくるの? ってなってたけど今となっては心強い。助けてお願い!

 

 

「殿下ですって?」

 

 

 対して、ぴくっ、と片眉を上げてリオ会長は何故か不機嫌な声で。

 

 

「……ミレニアムの者が、アリウスの王になったつもり?」

 

 

 面白くなさそうに、ワタシをぎろり、と睨みつける。

 でも何故か、迫力がなかった。どこか子供が拗ねるような目つき。

 

 どうしたのだろう、と考える間もなく、リオ会長はワタシからサオリに視線をずらして。

 

 

「大丈夫とは?」

 

「簡単な話だ。殿下をここからアリウスへ転校させればいい」

 

 

 サオリちゃぁぁぁん!?

 そんな話急にされても、ワタシびっくりするんですけどぉ!?

 

 ワタシは腕を組み、ほう、と感心するように声を漏らす。

 内心は超絶混乱していますとも。

 

 ほら、リオ会長もどこか機嫌が悪くなった!

 でもどうして機嫌が悪くなったのかわからない。天上院オウヒはわからない!

 

 

「転校、ですって?」

 

「あぁ。そうすれば、そちらも知らぬ存ぜぬで済ませられるだろう。何せ、殿下という生徒はいないのだから。連邦生徒会からの追及も言い逃れできる」

 

 

 でも確かに、妙手なのかもしれない。

 ミレニアムのワタシが勝手に暴れたから、ゲヘナとトリニティから何か言われて最悪戦争になるかもしれず、連邦生徒会からも目をつけられるかもしれない。

 であるのなら、いっそのこと。ワタシという生徒はいなかったということにしてしまえば丸く収まるというものだろう。

 

 ワタシとしては、別にそれでもいい。

 むしろ穏便に済むのならそれがいい。

 

 しかし、リオ会長は違うようで。

 

 

「却下よ」

 

 

 考える事すらもせずにきっぱりと。

 

 

「彼女はミレニアムの生徒。貴女達(アリウス)に引き渡すなんてありえないわ」

 

「……しかし、今回の件が原因で他の学園がミレニアムに攻め入ってきたら? 連邦生徒会から追及があったら? 殿下の安全が保障されないのなら、こちらで保護させていただきたい」

 

「いや、といったら?」

 

「こういうことはあまりしたくなかったが、仕方ない」

 

 

 そういうと、サオリは片手を上げた。

 同時にどこからともなく、赤色のレーザーポインターがリオ会長の額を照らしている。

 

 嫌な予感がする。

 

 

「断れば、撃ち抜かせてもらう」

 

 

 ヒヨリちゃぁぁぁん!?

 ちょっと、何してるの本当に!?

 洒落にならない! マジで洒落にならない!

 ワタシの中のイマジナリーヒヨリちゃんがすみません、って言ってるけどすみませんじゃ済みませんよ!?

 

 

「すまない。私は、私達は殿下に返しきれない恩がある。殿下を守るためなら何でもやる。殿下の夢の――――大望の為なら外道にも落ちる。だからこれは、脅しではない」

 

 

 待って、本当に待って。

 話を勝手に進めないで。そもそもワタシの夢って何なのか。そんなこと話したことあったっけ?

 

 心中で大慌てなワタシを余所に、リオ会長は動揺する事無く、そう、とだけ口にすると。

 

 

「ならばこちらも、それ相応の対応をしましょう」

 

「!?」

 

 

 リオ会長も右手を上げようとする。

 それに気付いたサオリは躊躇なく、上げていた腕を下ろして、ヒヨリちゃんに合図を送る――――。

 

 

「――――おい」

 

 

 ――――ことはなかった。

 リオ会長は息を呑み、サオリは表情を強張らせた。

 

 

 間一髪。

 ワタシはなるべく低い声で、サオリの方へ振り向きもせずに告げる。

 これ以上は見過ごせない。絶対にどっちも無事じゃ収まんないもんね。

 

 

「サオリ」

 

「は、はっ」

 

「何を勝手なことをやっているか。いつ、どこで、余が貴様にリオを脅せと命じた?」

 

「も、申し訳ございません。私が勝手にやったことです。咎は私にあります」

 

「ヒヨリは関係ないと?」

 

「は、はい!」

 

「で、あるか」

 

 

 ここで初めて、ワタシはサオリを見る。

 実のところちょっと怒ってます。危ない事はしてほしくないのです。

 

 それが通じたのか、サオリは片膝をついて、ワタシに頭を下げてしまう。

 そこまで恐縮されるのは、心が痛むけど、敢えて鬼になるよワタシは。

 

 

「よかろう。此度は貴様の忠義に免じて、不問に伏す」

 

「はっ! 申し訳ございません!」

 

 

 そうしてワタシはリオ会長に向き直り。

 

 

「許せ、リオ。此度は余の落ち度である」

 

「……構わないわ」

 

「今後は貴様の意見に従おう。それでよいな?」

 

「えぇ」

 

「話がこれだけであるのなら、余はもう往く。()()()も世話をかけたな。出るぞ、サオリ」

 

「はっ!」

 

 

 ばっ、と肩に羽織っている軍用コートを翻して、足早にワタシとサオリは生徒会室を出る。

 生きた心地がしない。はやく外の空気を吸いたいよワタシは。

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 

 オウヒ達が去ってから直ぐに、リオは深くため息をついた。

 自身を狙っていたレーザーポインターもなく、狙撃手も撤収したのだろう。

 

 そんな彼女に、いつの間にか姿を現した女子生徒が一人。

 小柄なものの、剣呑な雰囲気を纏った女子生徒――――美甘ネルが粗暴な口調で。

 

 

「気配消してたってのに、勘付いてやがったか、あの野郎」

 

「えぇ、そのようね」

 

「チッ、相も変わらずいけすかねぇヤツだ。どうする、追撃するか? あたしとしちゃあ、このままアイツとドンパチやってもいいが」

 

「ダメよ」

 

「そういうと思ったよ。あーあ、折角やり合えると思ったんだが」

 

 

 念には念を。

 リオは生徒会室にネルを、ミレニアム最強戦力の一角を控えさせていた。

 

 本当に残念そうに、恨み言を呟くネルに対して、リオは無表情に一言だけ、消え入りそうな声で呟いた。

 

 

「オウヒ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





△調月リオ
 セミナー。生徒会長。
 明らかに子供のそれではない。
 今回のアリウスの件で一番驚いたのは彼女だし、苦労したのも彼女。
 根回しお疲れ様です。

△美甘ネル
 C&Cのリーダー。ミレニアム最強戦力の一人。
 オウヒと白黒つけたいと思っている。
 それとは知らずに、オウヒは小さいのに頑張ってて偉いなぁ、と思っている。なんて暢気。

△「……ミレニアムの者が、アリウスの王になったつもりですか?」
 おや、会長の様子が?

△足早にワタシとサオリは生徒会室を出る
 内心冷や汗ダラダラ。
 



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