お気に入り数が爆増してて、評価もして貰えて、椅子から転げ落ちました。
ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
リオ会長の尋問から数日が経った。
アリウスの件から怒涛のような日々だったと思う。
ワタシの自業自得。何も考えないで、頭に血が上って暴れ回って、年増を撃退したのが原因なのは間違いない
うん、自業自得だ。
後先考えずに行動したワタシが百割悪い。
だとして。
「はぁぁぁぁぁぁぁ」
怒涛が過ぎると思う。
ここ数日生きた心地がしなかった。
変な接触をしてくる連中はいなかったけど、胃がキリキリと痛む。むしろ、いちゃもんつけて喧嘩売ってくれたほうがよかったかもしれない。返り討ちにしていけば気が紛れるし、それはそれでストレス解消になるから。
そしてサオリの視線が何よりも辛い。非常に辛い。めちゃくちゃ辛い。
何であの娘、ワタシにあそこまで忠義MAXなの? 新手の詐欺かと思うくらい、ついてきてくれるんですけど。ワタシ、特に何もしてないよ。本当に。ムカつくおばさんをぶっ飛ばしただけだよ。
“余モード”も疲れるんだ余。
素を出せない小心者のワタシが悪いんだけどね。
だってしょうがないじゃん。素で喋ろうとするとテンパっちゃうんだもん。小さい頃からやってる癖というか、染み付いたものは簡単には拭えないのである。あと、ククッ、って笑ってれば大抵何とかなるんだもん。楽なんだもん。でも後のことを考えると、やっぱり辛い。
と言うわけで、今のワタシは一人である。
やっっっと、落ち着いたので一人でランチなのである。
「随分と、でっけぇため息じゃねぇかお嬢」
カウンターに突っ伏して、注文を取らないワタシを見かねて声をかける男の人の声。
男、というかオス。
人、というかお犬。
つまりは男のヒト。
このヒトは柴大将。柴関ラーメンの店長さんだ。
安くて美味しいラーメン屋さんの店長さんだ。学生はみんなお世話になっている、とワタシは思う。何よりも可愛い。
「色々と大変だったんだよ……」
店長さんはキヴォトスではあまり見ない、しっかりした大人の人だ。
学生だからといって下にも見ることもなく、何だったら利用してやろうなんて考えている男のヒトじゃない。ヒステリック年増おばさんだったり、クックックって笑う黒いのとは違う。立派な男のヒトなのだ。何よりも可愛い。
それもあってか、ワタシも店長さんの前だと素でいられる。仮面を被って、強い自分を演じなくていいのだ。
昼時も過ぎてるからか、柴関ラーメンにはワタシ以外に誰も居ない。
店長さんだって休みたい筈なのに、嫌な顔もせずにニッコリと笑みを浮かべて。
「泣き言とは珍しいじゃねぇか。良かったら話くらい聞くぜ?」
「いいのぉ?」
「おうよ。お嬢にはご贔屓にしてもらってるんだ。これくらいお安いもんだ」
「シヴァさんマジカッコいい……」
ちなみに、ワタシは尊敬を込めて、シヴァさんと呼んでいる。店長さん――――シヴァさんもワタシのことをお嬢と呼んでくれている。
人見知りのワタシにしてはちゃんと人間関係を築けていると思う。直ぐにシヴァさんをもふりたくなる衝動に駆られるけど我慢。人間関係では距離の詰め方が大事。これ絶対。
シヴァさんはカウンターに座っているワタシの隣に座り。
「まぁ、察しがつくけどな」
「というと?」
「随分とヤンチャしてたみたいじゃねぇか」
「うぐっ」
心当たりがありすぎる。
言葉に詰まりながら、ワタシは恐る恐るシヴァさんに聞いてみた。
「ちなみに、シヴァさんは何か聞いてる?」
「あぁ。アリウスの王ってのになったんだろ?」
あぁ、それです。
絶賛の悩みの種はそれなのです。
「しかし、アリウスって学校があったんだな。初めて聞いたぜ」
「何か複雑みたいだねぇ」
「複雑?」
シヴァさんにうん、とワタシは頷いて。
「昔、トリニティで弾圧されたみたい」
「……弾圧とは、穏やかじゃねぇな?」
「ねぇー、恐いよねー。ワタシもよく知らないけど、裏でひっそりと活動してたみたいだよ?」
大手を振ってアリウスで名乗れなかった理由はそこにあるのかもしれない。
表立って動けば、トリニティが睨み、再び弾圧される、という恐怖もあったのだろう。だけど今となっては、良くも悪くもアリウス分校と言う存在がキヴォトス中に知られてしまった。無論、ワタシのせいで。
「でもよ、そうなるとトリニティの生徒達が黙ってねぇんじゃねぇか?」
「どうして?」
「だって、昔にそんなことがあったんだろ? 難癖つけてきそうだが」
「あー……」
なるほど。
何も知らないヒトからみたらそう見えるのか。
確かに普通はそうかもしれない。
ゲヘナのような全生徒が好戦的で腰が軽かったり、ミレニアムのような上と下の命令系統がしっかりしていればそれも考えられる。
でも。
「大丈夫、それはないよ」
ワタシはありえない、と断ずる。
他の学校ならまだしも、トリニティ総合学園に至ってはありえない。
少なくとも連中は直ぐには行動に移さないだろう。
シヴァさんはワタシの自信満々な答えに、首を傾げている。腑に落ちないのだろう。それが少しだけおかしくて、ワタシは笑みを零して。
「シヴァさんにとって、トリニティってどんな学校?」
「お嬢様学校だろ? 品行方正な感じの」
「ブブー。違うよ間違ってるよ。シヴァさん、夢見すぎ」
両手の人差し指を立てて交差し、バツとワタシはジェスチャーをシヴァさんに向けて。
「実態はもっとドロドロしてるよ。陰謀策謀渦巻く派閥争いって感じ」
「マジか?」
「マジマジ。今頃アレじゃない? アリウスを潰す派、静観しよう派、あとはそうだね、取り込もうとする派とかで争ってんじゃない?」
あとはどんな派閥がいるかわからないけど、足を引っ張り合っているのは確かだろう。
現に、突然生えてきたアリウス分校に何もアクションがない。過去に迫害をした対象が息を吹き返した。プライドの高いトリニティが何もしないなんておかしい。ということは十中八九、内部で足を引っ張り合っているに違いない。
トリニティが一枚岩でない事を理解し、なるほど、とシヴァさんは頷いて。
「随分と詳しいな?」
「昔、ちょっとね」
「トリニティにいたとかかい?」
「違う違う。小学校の頃、交流校だったんだよね」
だからある程度の内情は知っている。やけにお高くとまっていたのは今でも覚えているし、忘れもしないのは、あそこの生徒を怪我させて、ワタシの転落人生は始まったからだ。
きっと、地位の高い娘だったのだろう。様付けで呼ばれてたのは覚えている。
人よりもちょっと力が強く、手加減を知らなかったワタシは模擬戦でその娘を怪我させてしまった。
それからは、うん。その娘の敵を取りたいのか、元々ワタシが気に入らなかったのか。弱いくせに徒党を組んで来るヤツを蹴散らして叩き潰して、現在に至る。
でも、変な娘だったな。
怪我をさせたワタシを見る目が何か違った。
化物や怪物を見るような怯えた眼とかじゃなくて、何かこう、アレだ。ワタシを見る眼が、おもしれー女を見るような眼だった気がする。
何て名前だったか。
怪我をさせた癖に名前忘れてるとか、最低すぎないワタシ?
「それじゃアリウスは大丈夫なのかい?」
「うん。アッちゃん――――アツコって娘に任せてるよ」
「お嬢じゃなくてかい?」
「ワタシ、他校生だからねー。アッちゃんはアリウス分校生徒会長の血筋って話だし? そっちに任せるのが筋でしょ?」
「という名の無茶振りな?」
「そうともいうかなー」
へへへ、と笑う。
うん、アッちゃんからしてみたら笑い事じゃない。
でも張り切ってたし。頑張ります、って言ってくれてたし大丈夫だろう多分。
「トリニティからのイチャモンはない、アリウスの運営もひとまず大丈夫とくりゃあ、何をお嬢は嘆いてたんだ?」
「それはアレだよ。うちの会長にだよぉー」
「うちというと、ミレニアムの?」
「そうそう」
リオ会長のことを思い出して、ため息が出る。
嫌とかじゃなくて、何だか申し訳なくて。
「うちの会長、表情とか見せないけど、今回の件で色々と動いてくれてたと思うんだよね……」
「今回の件っていうと、ヤンチャしたヤツかい?」
「うん。頭に血が上って、気に入らないヤツを叩き潰したのはいいけど、その後のことワタシ何も考えてなかったなー」
驚くくらい、ワタシには何もなかった。
連邦生徒会から呼び出し程度はあると考えていたけど、何もない辺りリオ会長が手を回してくれていたのだろう。
「誤解されやすいけど、優しいんだよね会長。その人に迷惑をかけたのが、ね」
「謝ったのかい?」
「もちろん。菓子折りを持って行ったよ」
どういうわけか、眼を丸くしてたのは記憶に新しい。
暫しの沈黙の後「………………そう」と言われたのも記憶に新しい。アレはどういう感情だったのかリオ会長。
「じゃあ、それで終わりでいいだろう。お嬢が気に病む事はねぇさ」
「そうかなー?」
「そうさ。間違った事を謝る。それが出来るヤツはそうそういねぇ。大人でもな」
ニコッ、とシヴァさんは笑みを浮かべて。
「でもお嬢は出来た。立派な事さ。自分を誇ってやりな」
「シヴァさん……。ちょっとワタシ惚れそう……」
「よせやい。でも悪い気はしねぇな。お嬢のような別嬪さんに言われるのはよ」
さて、とシヴァさんは立ち上がる。
「ラーメン、食べるかい?」
「わーい、食べるー! ヤサイマシマシカラメマシアブラマシニンニクー♪」
「あいよ、いつもの」
わーい、と両手を挙げて喜んじゃう。
お腹減ってたし、おかわりもしちゃおうかな、と思っていると。ふと、嫌な予感がした。
「――――」
思考する前に、行動に起こす。
肩に羽織っていた軍用コートをシヴァさんを覆うようにする。同時に、床に何かが落ちた金属音。見るまでもなく、疑問に思うこともない。聞きなれた音。弾丸が落ちる音だった。
「な、なんだ?」
シヴァさんは慌てた様子だ。
それもその筈。ワタシがコートをシヴァさんに覆ったと思ったら、コートに防がれた弾丸は地面に落ちたのだから。
ワタシは弾が奔って来た方へと見る。壁には穴が開いている。
そういえば外が騒がしい。悲鳴にも似た喧騒。連続する乾いた音。遅れて聞こえる薬莢が落ちる音。
「――――シヴァさん、無事?」
「お嬢、これは!?」
「どっかでドンパチやってるね。流れ弾、かな?」
極めて冷静な口調で、ワタシはシヴァさんに尋ねた。
「ここって、アビドスの自治区だよね?」
「あぁ。でも色々あってなぁ。今ではカイザーの連中が取り仕切ってるよ」
「なるほど、なら大丈夫だね」
誰にも迷惑をかけないことがわかった。
ワタシは立ち上がる。
右手に白、左手に黒。自分の得物を握り。
「シヴァさんは頭を下げて、これを被ってて。防弾仕様だから、怪我はしないと思うから」
「……お嬢はどうするんだ?」
ワタシはここが好きだ。
ラーメンは美味しいし、安いし、ワタシが素でいられる数少ない場所だ。
そこが巻き込まれた。
シヴァさんにはお世話になっているし、これ以上被害を出すのは許さない。
故に。
「――――ちょっと黙らせて来るね」
ワタシはちょっと怒っているよ。
△柴大将
シヴァさん。キヴォトスでは絶滅危惧種なちゃんとした大人。保護しなきゃ。
オウヒが素を見せる数少ない人の一人。モフモフしたいけど我慢している。
△お嬢
オウヒの事。
まんざらでもない。特別感があっていいとはオウヒの言。
△ヒステリック年増おばさん、クックックって笑う黒いの
キヴォトスの大人は禄なのがいない(オウヒ談)
△アリウスの王
オウヒのこと
いつの間にか呼ばれるようになった。
△変な娘
オウヒが怪我をさせた娘。様付けで呼ばれており、地位の高い娘。
恐がるでもなく、おもしれー女を見つけた的な眼でオウヒを見ていた。
オウヒ曰く、力は強かったけど、ワタシの方が強かった。人見知りでコミュ症の癖にこんな事を言う。ナチュラルボーン暴君。