こちら、世界征服推進部ソロモンである   作:兵隊

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Q.イタズラ☆ストレート見たときのオウヒってどうなってるの?

A.オウヒ「うぉぉぉ!! アーちゃん!! うおおおっ!(号泣)(両手にアイドルうちわを持ちながら)」


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第4話 ゲヘナ、ところにより一時トリニティ

 

 

 カリ、カリ、カリ。

 

 書類に目を通し、不備がないか確認し、サインをする。

 それを何度も繰り返す。

 

 普段から銃弾飛び交うキヴォトスで、更に好戦的なゲヘナ生徒が通う学校とは思えない風紀委員会の執務室にて。

 私は一人作業をしていた。右を見ても書類の山、左を見ても書類の山。終わりが見えない。まるでそれは賽の河原のよう。石を積み上げても、完成される前に鬼によって崩されるように。処理しても処理しても、終わったと思いきやいつの間にか書類は増えていく。

 

 違いがあるとすれば、私のやっている行為は必要な事であるということ。

 誰かがやらないとならない仕事であり、私に与えられた責務でもある。

 

 とはいえ、面倒臭いのは間違いない。

 それを私は表情に出さないで黙々と仕事に没頭をする。顔に出したところで状況は変わらないし、口にしたところで作業効率が上がるわけでもない。

 

 

 

「ふぅ……」

 

 

 一息を吐いて、私はペンを置く。そして傍に置いてあったカップを手に取り、部下が入れてくれた――――アコが淹れてくれたコーヒーを飲む。

 口に広がる苦味。そして苦味。更に苦味が溢れ、苦味が口全体に広がった。

 

 うん、いつも通り不味い――――いいえ、苦いコーヒーだ。

 小休止するには適していると思う。気怠るくなった身に活をいれてくれる。単純作業によって緩んでいた気も、引き締めてくれる。

 ただ苦いだけじゃない。アコのコーヒーはそんな成分も含まれている、のだと思う。

 

 

 もうちょっと頑張ろう。

 私はカップを置いて、再びペンを握り書類と向き合い。

 

 

「…………」

 

 

 手を止めた。

 

 そこには真新しい写真がクリップで止められている書類。

 

 内容は数日前に起きた、アビドス自治区において発生した、ゲヘナの生徒とカイザーコーポレーションによって巻き起こされた乱闘騒ぎの仔細が記載された書類。

 きっかけは些細な事だった。ゲヘナ生がカイザーコーポレーションの人間に絡み、カイザーコーポレーションの人間がカイザーPMCを応援に呼び、乱闘騒ぎが拡大し抗争へと発展したといった内容。

 

 見れば見るほど、どうしてそうなるの? と思う。

 ゲヘナの娘達が好戦的であるのはわかってはいたけど、よりによってカイザーコーポレーションの人間に喧嘩を売るなんて。

 

 でも私が注目をしたのはそこではない。

 クリップに止められている写真。それはある人物の写真だった。

 

 

 ミレニアムの生徒なのだろう、指定の制服を着ている。

 スタイルが良く、腰は細く、長い脚。

 右手には白、左手には黒。二挺の拳銃――――デザートイーグルが握られている。共に銃身が既存のモノよりも長く、カスタムされている事がわかる。

 腰ほどの長い黄金の頭髪。綺麗な紅い双眸は真正面を見つめて、口元には挑戦的な笑みを浮かべている。

 瓦礫の山を片足で踏みつけ、傲岸に瓦礫の山を片足で足蹴にしている様は、どこか様になっていると思う。

 

 名前は――――。

 

 

「天上院、オウヒ」

 

 

 私達が現場に駆けつけたときには、既に事が治まっていた。

 件のゲヘナ生達と、騒ぎを大きくしたカイザーコーポレーションの連中達は気絶しており、一箇所に集められていた。

 

 近隣の住人――――柴関ラーメンの店長に話を聞いたが『天上院オウヒが場を治めた』とのことだった。

 彼だけではなく、何人にも聞き込みしたが、金髪のミレニアム生が解決した、と一致しているので間違いないのだろう。

 

 

 悪感情はない。むしろ助かった。

 ゲヘナ生が問題を起こしているのだから、私達風紀委員会が対処しなければならないことなのだが、騒ぎが起きていたのはアビドス自治区。つまりは他校が管轄している土地ということになる。

 そんなところで、私達が出動しても武力を行使したものなら混乱が起き、侵略行為と難癖を付けられかねない。現状、アビドス高等学校が機能していないとしても、私達が他校の自治区に出向いて事に当たるのはリスクが大きすぎる。

 

 そうなると、正規の手順を踏むしかない。

 アビドス高等学校へ要請をし、受理されて、業腹だが万魔殿へ話を通し、そこで漸く動ける。

 それが出来る頃には遅く、どれだけの被害が出ていたのかわからない。

 

 だが彼女のおかげで、被害は最小限に治まり、私達が到着したころには彼女の姿はなく、全てが解決していた。

 

 

「…………」

 

 

 ジッと、私は写真を見つめる。

 

 そこからは彼女がどのような人間か計り知れない。

 今の今まで、名前すら聞いた事がなかった。どこで何をしていたのか。活動はしていたものの争いの絶えないキヴォトスではどこにでもある数ある一つの抗争として処理されていたのか、はたまた目立たないよう潜伏して実力を隠していたのか。今になって頭角を現してきた在野の傑物。

 アリウス分校を他校生でありながら武力で治め、アリウスの王となっても目立った行動はせず、争いを扇動するでのはなく鎮圧するという善性も備わっている。

 

 知名度でいえば、既にミレニアムの美甘ネルに勝るとも劣らない程であり、ミレニアムの二枚看板とまで称されるようになっている。

 

 

 今では誰もがその動向に注目を集めている。

 あのバカマコトですら気に留めて、トリニティを恨む学校同士、同盟を結ぼうと画策しているほどだ。

 甘く見積もりすぎだと思う。アリウスは元々はトリニティと同じ学校だったと聞いている。そんな学校が、私達ゲヘナと手を組むなんて到底思えない。呉越同舟なんて甘い幻想だ。

 

 

 突出された武力。誰にも何も言わせない暴力。

 だが彼女にもしがらみがある筈だ。学園に属している限り、個人で動ける限界はあり、ありとあらゆる勢力に目を付けられ、自由なんて許されない立場にある筈だ。

 

 なのに今回の件のように、アリウスの件のように、彼女は自由だった。

 自由に動き、己の思いのまま行動し、勝手気ままに己の欲望に忠実なまま行動に移す。

 

 それが私には、不本意だけど、とても――――。

 

 

「――――――――」

 

 

 ――――羨ましく思った。

 

 

 彼女のように生きれたらどれほど楽か。

 そもそも彼女はどういった人物なのか。

 彼女は普段から何を思って生きている。

 今まで何を考えて過ごしてきたのか。

 

 考えれば考えるほど、わからなくなって。知りたいと思った。

 私やアビドスの小鳥遊ホシノとは違った強さを持つであろう彼女に、私はいつの間にか興味を持っていった。

 

 そこまで考えて。

 

 

「……そうね」

 

 

 私は席を立つ。

 お礼もまだだったし、いい機会だし丁度いい。何よりそろそろ巡回の時間でもある。

 わからないのなら、直接あって確かめる事にする。

 

 

 メモだけ残して、私は執務室を後にした。

 簡潔に。

 

 ――――アリウス方面に行ってくる 空崎ヒナ――――

 

 

 

 

 

 

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「はぁ」

 

 

 思わずため息が出てしまいました。

 

 

 連日連夜。

 私の耳に入るのは同じ事ばかり。

 同じ事を繰り返し、同じ主張しかせず、同じ意見しか言わない。我がトリニティ総合学園の悪い部分が如実に露となっている毎日。

 

 問題となっているのは、アリウス分校のその処遇。

 

 こちらの傘下に加えよう、と主張する派閥があり。

 堅実に様子を見よう、と提案する派閥もいれば。

 過去のように弾圧し今度こそ滅ぼそう、と血の気が多い派閥までいる始末。

 

 

 一枚岩ではなく、様々な派閥が多く存在し、今となってはどれほどの規模になっているのか把握出来ないのがトリニティの現状。

 しかし、これほどまでに主義主張が違い、足を引っ張り合うとは思いもしませんでした。

 

 このままでは内紛に発展する、とはいかないものの、どうなるかなど想像もつきません。

 いっそのこと、アリウスがこちらを攻めてくれるものなら、足並みを揃えて対応が出来るのですが。

 

 

「それは流石にダメですね」

 

 

 どうやら思っているよりも、私は疲れているようですね。

 連日、派閥の主達を宥める仕事に、本当に参っているよう。

 気分転換に紅茶を淹れて飲もうとするも、ため息が出る始末。なんて淑女とは思えない態度なのでしょう。疲れた大人の人のようじゃないですか。これはいけません。えぇ、いけませんとも。

 

 ですが、一人でよかった。

 こうして落ち着いて一人の時間を満喫――――。

 

 

「やっほー、ナギちゃん☆」

 

 

 ――――出来ないようですね。

 

 実はそんな予感はしていました。

 私は笑顔を浮かべて、襲撃者――――失礼。来訪者――――聖園ミカさんに顔を向けて。

 

 

「ごきげんよう、ミカさん。今日はどうしたのでしょう?」

 

「うん。何か毎日ナギちゃん大変そうだから――――」

 

「ミカさん、貴女……」

 

 

 まさか私の様子を見に?

 だとしたら、私はなんて事を思ってしまったのでしょう。

 襲撃者なんて失礼な。

 

 幼馴染の行動に感動し、少しだけ後悔したものの、直ぐにそれは打ち砕かれる。

 ミカさんはウィンクしながら、楽しそうに。

 

 

「うん、笑いに来たんだよっ」

 

「――――――――は?」

 

 

 ピタッ、と。

 思わず私は動きを止めてしまった。

 

 なんていいました、この人。

 よりにもよって、笑いに来たと?

 聞き間違いであってほしい。そして、もう一度言ってほしい。今、私は冷静さを欠こうとしています。

 

 

「疲れてるねナギちゃん。来た甲斐があったよー」

 

「ミカさん?」

 

 

 あはは、と能天気に笑うミカさんに、私も笑みを向ける。

 覚えておいてください。笑うという行為は、本来攻撃的なものであり獣が牙をむく行為が原点であるということを。

 

 何かを察したのか、ミカさんは慌てながら。

 

 

「嘘、嘘だよー。真に受けないでねナギちゃん」

 

「貴女と言う人は本当に……」

 

 

 とはいえ、私も本当に怒ったわけじゃありません。

 ミカさんが私を、元気付けようとしてくれていることはわかっています。長い付き合いですから、それくらいわかります。

 

 

「纏まらないねー」

 

「えぇ、本当に」

 

 

 主語がないが、何を言わんとしているかはわかっています。

 先も言ったように、アリウスへの対応の件なのでしょう。事態の収拾に奔走しているのは私だけではありません。ミカさんや、ここにはいないセイアさん。他にもトリニティに属する部活の代表者達も奔走していますが、目処が立たない現状。

 

 もしかして、何者かが扇動している可能性があるのでは?

 

 

「………………」

 

 

 いいえ、その考えはよくありません。

 ここで、疑心暗鬼に陥るのは底なしの泥沼に自分から足を踏み入れるようなもの。

 

 

「どうしたのナギちゃん?」

 

「いいえ、何でもありません」

 

「そ? ならいいけど」

 

 

 そういうと、ミカさんは何事もなかったように、私と同じ席につく。

 快活でありながら、上品に着席するミカさんに、何となく口にしていた。

 

 

「ミカさんは、アリウスの件どう見ますか?」

 

「どうってー?」

 

「排除した方がいいのか、傘下に加えたいのか、様子を見るのか」

 

「うーん、そうだなー」

 

 

 ミカさんは少しだけ考える素振りを見せる。

 しかし私には何となくわかります。彼女は既に答えを出しているということを。

 

 それを証拠に、戸惑いもなく、己の考えを彼女は口にしました。

 

 

「私の個人的欲望としては――――叩き潰したいかな?」

 

「――――え?」

 

 

 聞き間違い、でしょうか?

 想定していない意見が、彼女の口から飛び、思わず持っていたカップを落しそうになる。

 

 ミカさんの顔を見る。

 彼女は変わらず、幼い頃から知っている笑顔で、満面の笑みで笑っています。

 でも、その裏には。私が見たことがないような、獰猛といってもいいほどの、闘争心を宿しながら。

 

 

「もちろん、仲良くしたいよ? アリウスの子達がどういった娘達なのかもわからないで、争うのは間違ってる」

 

「でも、貴女、先ほど……」

 

「うん、叩き潰したいと思ってる。私個人で考えるならね」

 

 

 だって、と言葉を区切り朗々とした口調で無邪気にミカさんは続けて。

 

 

「アイツがいるから」

 

「アイツとはどなたでしょうか?」

 

「んー、ナギちゃんは知らない、かな?」

 

 

 そう言うと、ミカさんはどこか遠い顔をして、懐かしむように目を細める。

 まるで良い思い出を語るような口調で。

 

 

「アリウスをどうこうと言うより、アイツを潰したい、かな? アイツには責任を取ってもらわないとね」

 

「……責任、とは?」

 

「決まっているよ――――」

             「――――私を傷物にした責任、だよっ☆」






 △桐藤ナギサ
  ナギちゃん。ティーパーティー。
  多分、トリニティで一番ストレスを貯めている。オウヒに対して特に思うところはない。
  幼馴染の見たことがない闘争心にビックリしている。


 △ミレニアムの二枚看板
  ネルと並び証されつつある
  オウヒ「なにそれ、しらない」


 △オウヒの写真
  前話の後に撮られていた一枚。
  内心冷や汗ダラダラ。
  「ヤッバ、やりすぎちゃった、どうしよう」と狼狽し遠くを見ていただけ。何となく、覇道を突き進む暴君感出てしまった。


 △――――アリウス方面に行ってくる 空崎ヒナ――――
  委員長に興味を持たれてしまいました。


 △「――――私を傷物にした責任、だよっ☆」
  私を傷物にした責任とってもらうんだから(物理)




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