こちら、世界征服推進部ソロモンである   作:兵隊

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 ソロモンちゃんねる
 アツコ「殿下、この辺り雷落ちるらしいから気をつけてね」
 オウヒ「余よりも背の高いサオリがいる。問題あるまい」
 サオリ(ふんすふんす、と胸を張って誇らしげにしている)

 ミサキ「リーダー、雷避けにされてない?」
 ヒヨリ「誇らしげです……」
 アズサ「喜んでいる場合じゃないって伝えてあげるべき?」



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 ※ここでいう最終話はVol.0が最終話と言う意味です。次回からVol.1になります。もう少し話しが続くんじゃよ。





最終話 リオ会長がデレないのは不具合だと思う 

 

 ――――私が彼女に会ったのは、偶然だった――――。

 

 

 ミレニアムの学区内にて。

 私は歩を進める。

 その日は会議も終わり、生徒会執務室へと戻るところだったことを覚えている。

 

 

 いつもの日常、いつもの会議、いつもの学園生活、いつもの作業。

 そして――――。

 

 

『リオ会長って、冷たいよね』

 

『わかるー。本当に人間なのかな?』

 

 

 ――――いつもの陰口。

 

 

 どうやら私には敵が多いらしい。

 身に覚えのない、というわけでもない。学園を統治する私のやり方に納得できない生徒、そして私の普段からの振る舞いや言動が癪に障る生徒がいることはわかっていた。

 特に前者、私の学園統治のやり方。つまりは感情論を無視した、数字だけを全とした極めて合理的な運営が反発される原因であった。

 学園に不利益になりえるモノは切り捨て、利益になるモノだけを残し存続させる。その基準はまるで機械のように、その思考の中には、人の感情など無視されている。

 

 人は感情に生きる生き物だ。

 私のやり方は、他人が見たら酷く冷たいモノに見えるのだろう。

 実際、その通りだと思う。しかし、それでも。ミレニアムが繁栄し、延いてはそれがキヴォトスの平和にも繋がるのであれば、私は今のやり方を変えるつもりはない。

 

 

 私に必要なのは友ではない。やり遂げる意志だ。

 例え、私の周りが、敵だらけになったとしても、やり遂げる意志が。

 

 

『ほう、そのリオとやらがここの生徒会長であるのか?』

 

 

 それは割って入るように、突然現れた。

 ミレニアムの学生服を着ていることから、ここの生徒であることがわかる。

 長い黄金色の髪。紅い双眸は陰口を言っていた二人を見つめ、口元には不敵な笑みを浮かべている。

 

 見たことがない。新入生なのだろうか。

 その割に、堂々としすぎているというか、謎の貫禄と威圧が彼女から溢れ出ていた。

 

 

 話しかけられた二人はたじろぎながら。

 

 

『な、なによアンタ?』

 

『新入生?』

 

『で、あるな。入学したばかり故、先輩共に一つ、教導を受けようと思ってな』

 

 

 頼られたのが嬉しかったのか、それとも得体の知れない威圧感にいうことをきくしかなかったのか。

 私には彼女達の感情の機微がわからないものの、彼女達は新入生に語り始める。私がどのような人間なのか、新入生のその子に声高に説明を始めた。

 

 私はそれを、物陰に隠れて全て聞いた。

 その全ては――――紛れもない事実だった。

 

 私が数値でしか物事を判断していないこと、利益を出していない無駄な部活を廃部に追い込んだりしていること、独裁を極め生徒達からは皮肉を籠め『ビッグシスター』とよばれていること、人の感情を軽視した行動ばかりしていること。

 全てが、紛れもない、事実であった。

 

 

 最初は、恐る恐る。

 次第に、言葉に熱を帯びていき。

 最終的には、自分達が何をされてきたか、私の判断で彼女達の所属していた部活が廃部に追い込まれた事を、新入生の子に語っていた。

 

 

 その全てを聞いた、その子は。

 

 

『――――それで貴様達は、そやつの独裁にどれほど抗ったのか?』

 

 

 首を傾げて、抗って当然といった口調で、二人に問いを投げていた。

 

 

『えっと、抗うって……』

 

『貴様達の話を総合したところ、ここの生徒会長は度し難い程の合理主義なのは理解した。感情では左右されない統治者であることもわかった。なるほど、独裁者と呼ばれるのも納得である』

 

『そうなのよ、だから――――』

 

『故に余は問う。件の独裁者に、廃部勧告を受けるまで貴様達は何をしていた。受けてから貴様達は抗ったのか、と』

 

 

 二人は答えない。

 いいや、答えられないというべきか。

 

 

『部活を維持するための部費など、無から湧いてくるモノでもあるまい。何も成果を出さぬ者を放逐しているほど、ミレニアムも余裕がないのだろう』

 

『私達は怠けていたわけじゃ……』

 

『ならば答えられる筈であろう。余の問いに』

 

『それは……』

 

 

 彼女達は黙ってしまった。

 ここまでの反応を察するに、何もしてこなかったのだろう。

 

 

『統治者としては兎も角、リオとやらは励んでいる方であろうよ。問答無用での廃部ではなく、一時の猶予を与え挽回の機会を与えているのだから、温情でもある。故にわからぬな。貴様達は何が不満だと言うのだ?』

 

『私達を、駒みたいに扱うから……』

 

『統治するということは、そういうことだ。己の判断によって学園の方針が決まり、一時の過ちによって学園の経営が傾いてしまう事もある。そんな重責を背負う者に、感情論を求めるとは、貴様達も酷な事を言う』

 

 

 ククッ、と彼女は意地の悪い笑みを浮かべて続けて言った。

 

 

『貴様達が言う血も涙もない生徒会長は、余にはその者が誰よりも自身の責務を理解し、誰よりも励んでいるように見えるがな』

 

 

 そこまでいうと、新入生は真っ直ぐに彼女達を見つめる。

 その紅い両の眼で。欺瞞も虚偽も許さない、と言わんばかりに真っ直ぐに見つめて。

 

 

『――――改めて問うとしよう。貴様達はヤツの独裁を真に理解し、どれほど抗ったのか、と』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その問いに答えることはなかった。

 彼女達は新入生から逃げるように、足早にその場を後にしたのだから。

 

 新入生はその後姿を黙って見つめていた。

 私を助けた、というつもりはないのだろう。何せ、彼女は恐ろしく公平だった。私の行いを独裁だと断じ、その上で励んでいると称し、廃部に追い込まれるまでやりようがあったのに何をしていたのか、と尋ねていただけなのだから。

 

 

『はぁ』

 

 

 新入生はため息を吐いた。

 驚く事に、先程まで纏っていた威圧感はなかった。どこにでもいる少女のような雰囲気で、歳相応の言葉遣いで一言だけ。

 

 

『そんなに気に入らないなら、戦えば良かったのに』

 

 

 それだけいうと、新入生は踵を返し、歩を進める。

 口々には『でもダメかー、戦うのが嫌いな娘もいるしなー』や『だとしたら悪い事を言ったかな。でも頑張ってるのは本当だと思うしなー』などとブツブツ独り言を呟きながら歩いていく。

 

 もちろん、私が立ち聞きしていたことなど知りもしない。

 

 

 それからだろう。

 私が彼女の姿を追うようになったのは。

 他人がたじろぐほどの威圧感を放ちながら、注意深く観察していないと気付けない別の顔を見せる事がある彼女。

 彼女の名前は――――

 

 

 

 

 

 

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 こうして、ワタシは、ミレニアム生徒会の執務室にいます。

 

 空気が、空気が重いです。

 空気の重い原因は二つあります。

 1つ目の理由は、ワタシの目の前に座っているリオ会長の雰囲気。

 そして、2つ目の理由はリオ会長の鬼電を無視したワタシです。というか、理由としては圧倒的に後者が原因です。えぇ、悪いのはワタシです。怒られるから無視しました。赦してね。

 

 

「……………」

 

「――――」

 

 

 なーんて、言う事もできず。

 出来るわけがない。

 

 ワタシ達は、二つある三人用のソファーに対面するように腰をかけています。ワタシ達を隔てるようにして、真ん中には長い机があるけど、これほど机くんさんの頼もしさったらない。

 

 無言で、リオ会長は両手を組み、足を組んでいる。

 ワタシも同じ態勢。少しでも機嫌を損ねないための秘策。これぞミラーリング効果だ。鏡のようにして真似をすることにより、相手に親近感を抱かせる心理的テクニックである。

 

 うん、焼け石に水なのはわかってる。

 こちとら、藁にも縋りたい気持ちなのです。

 

 

「――――オウヒ」

 

「なんだ?」

 

 

 思わずビクッ、と。

 両肩が震えそうになるのを我慢する。こんなとき、アーちゃんやムーちゃんなら。アーちゃんならこんな状況でもカッコよくキメる筈だし、ムーちゃんは要領よく切り抜ける筈だ。心にアーちゃんとムーちゃんを持て。

 

 

「コート、羽織ってないのね」

 

「……あぁ」

 

「失くしたの?」

 

「……ワカモとの戦闘に巻き込んでしまったミレニアムの生徒にくれてやった」

 

「そう」

 

 

 暫くの沈黙。

 すぐに、リオ会長は口を開き。

 

 

「傷を負ったそうね」

 

「あ、あぁ」

 

「どこ?」

 

「お腹を、こう、グサッ、と……」

 

 

 まさか傷のことを聞かれるとは思わなかった。

 

 リオ会長の表情は読めない。

 まだ無表情で、ジッ、とワタシのお腹の辺りを見ている。

 

 

「大丈夫なの?」

 

「あぁ。傷は塞がっている」

 

「……そう」

 

 

 リオ会長は立ち上がり、足早にワタシの座っているソファーまで近付くと、そのまま隣に座ってしまった。

 肩と肩が当たる距離。そういえば、ここまで近付かれたのは初めてかもしれない。

 

 間近で見るリオ会長の瞳は、どこか不安そうに揺れている――――ように見えた。

 

 

「触っても良いかしら」

 

「あ、うん」

 

 

 思わず素で答えてしまった。

 

 ワタシは制服を捲って、腹部をリオ会長に見せる。

 傷は塞がっている。だが、素人のワタシが処置したからか、ハッキリと跡が出来てしまった。水着とかになるとちょっと目立つかもしれないけど仕方ない。

 

 恐る恐る、といった様子でリオ会長は傷跡に触れる。

 その手は冷たく、こそばゆいモノであったからか。

 

 

「ん……っ」

 

 

 変な声を出してしまった。

 ちょっと、いいや、大分恥ずかしい。

 

 でもどうやら、会長は勘違いしたようで。

 

 

「ご、ごめんなさい。痛かったかしら?」

 

「あ、いや。そうではない。こそばゆいだけだ。痛みはない」

 

「そう……」

 

 

 どこかホッ、とした様子で胸を撫で下ろし、会長はジッとワタシを見つめて。

 

 

「無茶は、しないでちょうだい」

 

「……………」

 

 

 もしかしたら。

 もしかしたらだけど、会長はワタシを心配してくれていたのかもしれない。

 

 今だって、どう見ても無表情だけど、でも心配してくれている、と思う。

 あの鬼電も、ワタシの安否を気にしてくれての連絡だったかもしれないと思うと、ワタシは最低な事をしてしまった。わざわざ心配してくれていたのに、怒られると思って、ワタシは無視してしまった。

 

 となれば、ワタシがすることは一つしかない。

 

 

「悪かった。……ううん、違う。心配させて、ごめんなさい」

 

 

 悪い事をしたのなら謝る。

 それは何があっても変わらない。絶対的な行為でもある。

 

 

「わかったなら、いいわ」

 

 

 リオ会長は一度頷いて。

 

 

「――――それはそれとして」

 

「ん?」

 

「私の連絡を無視した理由。それとミレニアム自治区を滅茶苦茶にした理由を聞きましょうか」

 

「ぅぇ……」

 

 

 わぁ、どちらにしても、怒られるんだ。

 そうだよね、そうですよねー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ワタシは事の経緯を説明した。

 ワカモにアリウスの皆が襲われた事、その後にワタシの前に現れた事、そのまま挑発されワタシが乗りそのまま戦闘になった事。

 

 そうして会長は。

 

 

「そう」

 

 

 とだけ呟いた。

 ある程度は予想していたのか、その反応はどこか淡白なものだった。

 

 

「とりあえず、狐坂ワカモはわからせるとして」

 

「待て、リオ。そういう話だったか?」

 

 

 ワタシの微かな抗議を、リオ会長は無視をする。

 というか、まだ隣にいる。正直に言うと、少しだけ落ち着かない。

 

 

「今回の諸々の請求は連邦生徒会に支払ってもらう。既に処理済みよ」

 

「相も変わらず仕事が早いのは結構だが、何故連中に?」

 

「当たり前よ」

 

 

 ワタシの問いに、会長はキッパリと断言するように。

 

 

「彼女達が早急に矯正局から停学中の生徒が脱獄した事を、キヴォトス中に公表していれば、まだ手の打ちようがあったもの」

 

「なるほど、そういう建前か。そう言えば、連中も何も言えまい。こちらの要求を呑むしかないからな。弱みに付け込むとは、政治が上手いなリオ?」

 

「どうとでもいいなさい。そのために、ユウカを向かわせたわ」

 

「手が早い。どこまで読んでいた?」

 

「大まかには。でも貴女が怪我を負わされるのは、予想してなかったわ」

 

「ごめんて」

 

 

 そういわれると、ワタシは何も言えない。

 我ながら無茶をしすぎたかな、とは思う。でもしょうがない。あの手しかなかったと思うし。何よりも愉しかったのだから仕方ないのです。次はバレないようにもっと上手くやろう。

 

 決心を固めるワタシとは対照的に、会長は何やら考えるように黙ってしまった。

 

 長くもなく、短くもない沈黙が、執務室に流れる。

 そうしていると、会長の懐から着信音が鳴り響いた。

 

 取り出して、会長は自身の耳に当てて通話を始める。

 

 

「はい――――あぁ、ユウカ。連邦生徒会はなんと?」

 

 

 どうやら相手は早瀬さんだったみたい。

 人使いの荒い会長のお使いが一段落して、その結果を連絡しているのだろう。

 

 それはそうと、ワタシも暇になってくる。

 会長にはしっかり怒られた事だし、そろそろお暇するべきなのかもしれない。

 

 ワタシはそんなことを考えていたが、どうやら会長の電話が終わったみたいだ。

 とはいえ、どこか表情がおかしい。安心したようなものではなく、無表情ではあるものの、何やら難しそうな雰囲気を纏っていた。

 

 

「早瀬会計はなんと?」

 

「えぇ、ちょっと問題が起きたみたい」

 

「よもや、連邦生徒会がこちらの要求を渋ったか?」

 

「いいえ、それは呑んだそうよ」

 

「ならばどうした?」

 

「……」

 

 

 言うべきか言わないべきか悩むように、会長は渋々と言った調子で口を開いた。

 

 

「外郭地区で、狐坂ワカモが暴れていたそうよ」

 

「――――へぇ?」

 

 

 それは、驚いた。

 暫くは動けないと思ったから。浅くはない傷だった筈だ。それがもう動けるとは思わなかった。

 

 外郭地区か。

 今から行けば間に合うかな?

 

 また戦えるかもしれない。

 そんな高揚がワタシを包むも、すぐにそれは沈静化される事となる。

 

 

「でも直ぐに鎮圧されたそうよ」

 

「直ぐにだと。あのワカモが?」

 

「えぇ、しかも無傷で」

 

「――――」

 

 

 言葉を失った。

 万全ではないとはいえ、ワカモを無傷で鎮圧できる生徒がいるなんて思わなかった。

 もしそれが本当なら――――それはとても愉しいことが起きるかもしれない。

 

 

「それで、誰だ? どこの生徒だ?」

 

「生徒じゃないわ」

 

 

 リオ会長は続けて言う。

 

 

「連邦捜査部シャーレ。その担当顧問、つまりは先生よ」

 

「先生?」

 

 

 聞きなれない単語。

 思わずワタシは首を傾げてしまった。どちらにしても、だ。その先生とやらが、あのワカモを無傷で鎮圧したのは確か。どういう人なのか、どうやって戦うのか、俄然興味が湧いてくるというもの。

 

 居ても立ってもいられない。

 直ぐにその先生とやらを見てみたい衝動に駆られるものの、ワタシは会長を見て冷静になる。

 

 

「……リオ、何を考えている」

 

「……矯正局から停学中の生徒数名の脱獄、連邦生徒会長の失踪、そして今回の先生の出現。これら全てが偶然なのかしら」

 

「全ては仕組まれていたものである、と?」

 

「…………」

 

 

 ワタシの問いに、会長は答えない。

 きっと、彼女も確証はないのだろう。でも確かに、言われてみれば出来すぎている気もする。裏で何かが、ワタシ達の知らない何かが動いている気がしないでもない。

 

 

「オウヒ」

 

「なんだ?」

 

「貴女、『名もなき神』って聞いた事はある?」

 

「知らんな。なんだそれは?」

 

「知らないならいいわ」

 

 

 ふぅ、と会長はため息を吐いて、いつもの調子でワタシに言う。

 無表情で、凛として、自身の行いに迷いなどないように真っ直ぐと。

 

 

「近いうち、貴女の力を借りる時が来る。準備をしておいてちょうだい」

 

「よかろう。存分に余の力を使うが良い。貴様には借りがある故、ある程度は付き合ってやろう」

 

 

 ワタシの勘だけど。

 これから愉しいことが起きる。

 そんな予感がするんだ――――。

 

 

 

 

 

 





 あとがき

 Vol.0が終わりました。本編導入前ということで、よろしくお願いします。
 20話投稿したと思ったら、まだ14話しか投稿してませんでした。遅筆な私ではございますが、駆け抜けた方だと思います。

 オウヒのプロフィールとか考えた方がいいでしょうか。
 あまり深く考えてませんでした。

 これからも、こちら、世界征服推進部ソロモンである をよろしくお願いします。

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